【ラノベの車窓から】第14回 『勇者になれなかった俺はしぶしぶ就職を決意しました。』

とあるライトノベル読みが読者としての視点・観点で、オススメをピックアップして紹介する「ラノベの車窓から」の第14回です。相も変わらず【 購入数 > 読破数 】の壁を打ち破れていませんが、新作がどんどんきてますね! そんなラノベの螺旋回廊に脱出する術なんてどこにもなかった!

さて、第14回のオススメとして取り上げるライトノベルは「勇者になれなかった俺はしぶしぶ就職を決意しました。」です。本作は第23回ファンタジア大賞の「金賞」を受賞した作品ですね。第23回では、大賞と読者賞のW受賞を果たした「ライジン×ライジン」に大きな脚光が当たりましたが、本作もまた負けず劣らず非常に面白い作品となっています。

勇者になれなかった俺はしぶしぶ就職を決意しました。

著:左京潤 イラスト:戌角柾

出版社:富士見ファンタジア文庫

「勇者」や「魔王」を含むタイトルの氾濫については、第3回でも書いた通りなので割愛します。気になる方はまずそちらに。本作はある意味、ファンタジーなのに最も現実に近しいストーリーと言えるのではないでしょうか。就職氷河期を迎える昨今、まさかのファンタジーでも就職氷河期!? 本作最大の魅力は、ファンタジーで我々が知り得る知識や単語が身近なものに置き換わり、世界観に対して大きな違和感を抱くことなく読むことができる素晴らしい作品となっているのです。

勇者となるための勇者試験直前に魔王が倒されてしまい、勇者になる道を断たれてしまった主人公ラウルは、王都にあるマジックショップに正社員として就職することに。華々しい勇者という道を閉ざされたラウルのもとに、アルバイトとして父親を倒されてしまい居場所がなくなった魔王の娘がやってくることになるのです。

今巻では、王都に業界最大手のマジックショップの出店が決まり、ラウルとフィノの働くお店が閑古鳥となってしまうのです。そんな中、2人はライバル店への偵察に向かうのですが、そこにはかつてラウルと共に勇者を目指したあの少女がレジ打ちをしていて……。勇者への夢を捨てきれないアイリと魔王の娘であるフィノを中心に魔族を巻き込んで物語は展開されていくのですが、後半は本部から賞味期限ギリギリのポーションの在庫が大量に送られてきたりと、マジックショップの店員としても奔走することになります。ファンタジー世界の小売業に焦点を当てた本作は、非常に目の付けどころが面白い作品となっています。勇者モノ、魔王モノ、という観点は一度置き去り、読む価値は十分にある作品だと感じます。元勇者志望と魔王の娘が巻き起こすドタバタ労働ファンタジーは必見なのです。

花道を歩いていた矢先に突き落とされる絶望感。それでも掴んだ正社員。非常に世知辛い展開から始まる本作ではありますが、各キャラクターがしっかりとしており、ストーリーにも笑いありと、かなり明るい作品に仕上がっているのも魅力です。これを読めば、貴方も仕事への考え方が変わるかも!?(笑)

【記事:らお】

URL:「とある僕等の小説目録(ライトノベル)」

(C) 富士見書房 左京潤/戌角柾

[関連サイト] 富士見書房

[商品データ]