独占インタビュー「ラノベの素」 入栖先生『マジカル★エクスプローラー エロゲの友人キャラに転生したけど、ゲーム知識使って自由に生きる』

独占インタビュー「ラノベの素」。今回は2020年3月1日にスニーカー文庫より『マジカル★エクスプローラー エロゲの友人キャラに転生したけど、ゲーム知識使って自由に生きる』第2巻が発売される入栖先生です。愛してやまないゲーム「マジカル★エクスプローラー」の友人キャラとして転生した主人公がゲーム世界を自由に生きる本作。熱いゲーム愛を有し、登場するキャラクター全員が幸せになれるよう奔走する友人キャラの主人公。作品の内容はもちろん、キャラクターや執筆に至った動機まで、様々にお話をお聞きしました。

【あらすじ】

愛するゲームヒロイン達をハッピーエンドに導く為に。不遇な友人キャラでありながら”最強”になる決意を固めた瀧音。チート主人公・聖伊織との出会いを果たし、遂にゲーム本編の舞台であるツクヨミ魔法学園へと入学する。勝手知ったる美少女キャラ・そして友人との出会いに胸踊らせる瀧音であったが、これに浮かれもせず貪欲に強さを追い求めていく。そしてゲーム知識を活用し隠れダンジョンの深層へと潜るのだが……「茶目っけ溢れるわたしの、新たなご主人様は貴方――?」 待ち望んだ相棒との邂逅で瀧音のマジエク攻略は加速する! 話題沸騰の転生魔術学園譚。入学、そして飛翔の第二幕!!

――それでは自己紹介からお願いします。

入栖と申します。東北の田舎の方で細々と生活しておりまして、好きなものは作品を通じて感じ取っていただけているかと思いますがゲームです。題材となっているエロゲだけでなく、RPGにアクション、レース、シューティング、全ジャンルを幅広く遊んでいます。RPGだと『ロマンシング サ・ガ』シリーズ、アクションだと『モンスターハンター』、エロゲだと『Fate/stay night』あたりが好きです。ハマっていることは車でのドライブなんですけど、私は方向音痴なので助手席に座らせられる友人はいつもやきもきしているんじゃないでしょうか(笑)。苦手なものは、基本的に不器用なのであらゆるものが苦手だと言っても過言ではないと思っています。

――ものすごくゲームがお好きなんだろうなという雰囲気がひしひしと伝わってきます(笑)。

もともと家族がゲーム好きで、私自身も小学校低学年の頃からゲームにどっぷりと浸かった生活を送っていました。両親からはゲームのやりすぎだとめちゃくちゃ怒られていましたけど、散々隠れてこっそりやっていましたね(笑)。

――また、不器用さゆえにあらゆるものが苦手とのことですが、小説の執筆はうまくかみ合ったということでしょうか。

我ながらよく小説家になれたと思っています(笑)。もともと小説や文章も得意ではなくて、学生時代の国語の成績もずっと低かったんですよ。今でこそ文章にはどっぷりと浸かっていますが、文章に触れるようになったのもかなり遅めです。自分自身、読解力や理解力は決して高い方でではなかったので、そんな自分でも理解できるようにと、わかりやすく書くことを心掛けています。不器用ながら読みやすさを心掛けて書いていることが、自分の小説のわかりやすさに繋がっているんじゃないかなって思います。そういう意味でも、文章や小説が苦手だという中高生にもさらさらと読んでいただけるんじゃないでしょうか。

――決して得意ではなかったにも関わらず、自分で小説を書こうと思ったきっかけはなんだったのでしょうか。

私が最初に小説を書いたのは、小説投稿サイト「小説家になろう」だったんですけど、あそこには面白い作品がたくさんあるんです。いろんな作品を読みながら、「自分が思った展開と違う」や「こんな展開になればもっと面白くなるんじゃないか」と考えることが増えていったんですね。そのまま読み続けたとしても、そこから自分が望む展開になるとは限らないわけじゃないですか。それならいっそ、最初から最後まで自分で書いちゃおうと思ったのがきっかけでした。

――ありがとうございます。それではあらためて、大反響を呼んだ第1巻を振り返りながら『マジカル★エクスプローラー』がどんな物語なのか教えてください。

本作は「マジカル★エクスプローラー」というゲームをこよなく愛している主人公がゲーム世界のキャラクターに転生してしまうこととなり、世界を楽しみながら大きな目標を掲げて突き進んでいくというのが物語の走りになります。「マジカル★エクスプローラー」というゲーム自体は、ダンジョンや浮遊都市をはじめ、近未来とファンタジー世界が融合したような世界にある学園で、自らを成長させていくゲームです。そんなゲーム世界において、主人公が転生したキャラクターはいわゆるゲームの主人公のために存在していると言っても過言ではない友人キャラなんです。ゲームでは裏方として主人公を支える友人キャラが、周囲の運命を変えていくことも、面白さのひとつだと思っています。第1巻は「決意の巻」をテーマにして物語を描かせていただきました。

※こよなく愛するゲーム「マジカル★エクスプローラー」の友人キャラに転生する

――第1巻は「決意の巻」とのことで、印象的だったのはラストの見開きイラストで描かれたシーンだったと思います。

私は『マジカル★エクスプローラー』を書くにあたって、どうしても描きたいシーンがいくつかあったんですけど、そのひとつが第1巻のラストでもありました。別に敵対するわけではないんですけど、友人キャラが主人公キャラと出会い、超えるべき目標であると宣戦布告をするわけです。あのシーンは神無月先生が見事に描き切ってくださったからこそ、より印象に残るシーンになったと思っています。私も気持ちを込めて書きましたし、神無月先生にも気持ちを込めていただきました。

※主人公と友人キャラの必然の出会いからメインストーリーは動き出していく

――熱い思いで描かれた第1巻は発売直後に大規模な重版も行われるなど、反響は非常に大きかったと思います。

本作はエロゲがテーマのひとつです。作品としてはニッチなテーマだと思っているのですが、そのジャンルが好きな方々には面白く読んでもらえるよう執筆したつもりでもありました。なので、一定の購買層はいるだろうと考えていましたが、さすがにあれだけ大規模な重版がかかるとはまったく思っていませんでした。まさに狐につままれたような感じで、まったく実感はありませんでしたね(笑)。ただ、発売前から作品の情報を発信するたびに、ユーザーさんからリアクションをいただけていたことも大きかったように思います。本当にありがたい限りです。

――続いては本作の着想についてもお聞きします。本作は瀧音幸助の考え方も非常に面白いと思っていて、自分がゲーム世界を楽しむことはもちろんなのですが、それ以上に誰も不幸にはさせないというゲーム愛を強く感じるんですよね。

そこはおっしゃる通りで、瀧音幸助はヒロインたちの幸せを第一に願っていて、誰かと恋愛関係になったりすることを前提として考え始めた物語ではありません。書籍版はWEB版とは違いヒロインも増えているので、そのあたりは少し変わってくるかもしれませんが、キャラクターひとりひとりへの瀧音の愛は本物です。全員が幸せになれることを目標に、読者もキャラクター全員を好きになってくれるよう考えて書き始めました。

――エロゲ(美少女ゲーム)を物語の舞台として選んだことにはどんな理由があったのでしょうか。

私は乙女ゲーム系のWEB作品をかなり読んでいるんですが、舞台を普通のRPGやそれこそたくさん存在している乙女ゲームの世界にしても、埋もれてしまうのではないかということを考えました。そこで次に考えたことが、自分も好きなエロゲの世界観ならどうだろう、ということでした。多少ぶっちゃけたお話をすると、私が書きたい物語はRPGの世界でもできなくはないんです。ですが、突拍子もなかったりちょっと笑えたりするお色気シーンとは相性がよくないなとも思っていました。でもエロゲの世界観であれば、往来の寛容さとの相性も良いだろうと。結果として第1巻のダンジョンの水着シーンも違和感なく描くことができ、読者のみなさんにも楽しんでいただけたと思っています(笑)。

※ダンジョン攻略のご褒美的なシーンも見どころのひとつ

――そうした背景もありつつ、エロゲを題材にしたラノベを刊行することで為し得たいこともあるそうで。

そうですね。エロゲや美少女ゲームというジャンルがあらためて盛り上がってほしいと個人的に思っているんです。TYPE-MOON、アリスソフト、リーフ、Keyをはじめとした有名作品を全盛の時代にプレイしてきた身として、熱い気持ちにさせてくれたり、大笑いさせてくれたり、泣かせてくれたり、私にいろんな感情を作ってくれたわけです。ジャンルとしてはニッチなので、普通に生活していたらなかなか触れる機会の少ないエンターテイメントだと思うんです。でもプレイしてみたら意外にすごく楽しいというジャンルでもある。業界に対して何かしら関係があるわけでもないのですが、いちプレイヤーとして、個人的に青春時代を彩ってくれたという大恩を感じているメーカーさんの一助に微力でもなれれば、そこに自分の作品が一役買ってくれれば、そんな思いを持っています。

――エロゲ、美少女ゲームにおける魅力をあらためて教えてください。

作品によるとは思いますが、熱い作品であれば熱い展開、泣ける作品であれば泣ける展開、笑える作品であれば笑える展開。それを音とイラストと文字と動き、すべてで表現できることが魅力だと思います。これはアニメの表現ともまた違うと思っています。やっぱりエロゲや美少女ゲームは文章が主体で、文章を読んで脳内で消化し、プレイヤーは想像力を働かせる。そこから得られる様々な感情は何物にも代えがたい本当に大きな魅力だと思っています。

――それでは本作に登場するキャラクターについても教えてください。

本作の主人公である瀧音幸助は、「マジカル★エクスプローラー」というゲームをこよなく愛していた人物が転生した友人キャラです。キャラクターとしての能力は非常にピーキーな力の持ち主です。ゲームの知識をそれこそ隅々まで熟知しており、ひとつのことに集中する力が半端じゃありません。ゲームそのものはもちろん、キャラクターへの愛着も凄まじく、自らの身を投げ出して助けることができる人間でもあります。ゲーム内では不遇な友人キャラではありますが、周囲の運命を変えることができ、ゲームの主人公である聖伊織を超えようと努力する姿にも注目してもらいたいです。

※友人キャラであり本作の主人公でもある瀧音幸助(キャラクターデザインより)

聖伊織は「マジカル★エクスプローラー」というゲームの主人公です。女性からの好意に鈍感な、ある種の典型的な主人公タイプと言えばいいでしょうか(笑)。キャラクターとしての能力は、主人公らしく万能型であり、成長の余地も非常に大きいです。とある理由から、今の時点では性格面に関して触れづらいのですが、そのあたりは彼の成長と共に感じ取っていただけたらと思っています。瀧音が超えるべき目標であり、ライバルでもある。王道の主人公ですね。

※ゲーム「マジカル★エクスプローラー」の主人公・聖伊織(キャラクターデザインより)

そして第2巻から登場するななみにも触れさせてください(笑)。第2巻の特典にもなっているオーディオドラマを制作するにあたって実施した人気投票で一番人気だったキャラクターでもあります。瀧音にとって彼女は仲間であり、そして協力者でもあります。毒舌メイドで瀧音に好意を寄せる、普段のクールさと瀧音と繰り広げる夫婦漫才のような軽快な掛け合いをはじめ、魅力的なキャラクターになっていると思います。ななみのキャラクターイベントはたくさん追加しているので、ぜひ楽しみにしていただければと。

※第2巻から登場するななみ(キャラクターデザインより)

――本作のイラストは神無月昇先生が担当されています。第1巻ラストの見開きのお話もありましたが、あらためて印象に残っているイラストや注目のイラストを教えてください。

まず、神無月先生には感謝しかありません。いずれのキャラクターも「これしかない」というデザインで描いていただけたと思っています。神無月先生もかなり本作を読み込んでいただいたようで、ほとんどイメージ通りでした。印象に残っているイラストは第1巻ラストの見開きイラストはもちろん、ダンジョンでの水着イラストもすごくよかったですし、口絵で描いていただいた水守雪音のイラストも細かく丁寧に描いていただけて大変印象深いです。また、第1巻のリバーシブルカバーのエロゲパッケージ風イラストも最高でした。そして第2巻で登場したななみが堕天使のコスプレをしているイラスト、そして生徒会をはじめとした三会初登場となる会長職3人が一堂に会した一枚も非常に印象深いです。いずれも口絵として描いていただいているので、ぜひ見ていただきたいですね。

※神無月昇先生が描く美麗なイラストも見どころ満載

――そして本作は早くもオーディオドラマ化しています。瀧音幸助役を島﨑信長さん、ななみ役をM・A・Oさんが熱演されていますが、著者としていかがでしたか。

やっぱりキャラクターに声がつくと全然違うなということを、あらためて感じることができました。非常に残念ながら収録には半分しか立ち会うことはできなかったんですけど、自分の脚本を何倍どころか何十倍にも魅力を増して表現してくださいました。瀧音に軽快さだけでなく思わずドキッとしてしまう色気も声にのせていただいた島﨑信長さん、そしてななみのクールで物静かなイメージとボケる時のギャップを的確に演じてくださったM・A・Oさん、お二人の凄さをあらためて実感しました。聴かなければ損をしてしまうクオリティなので、ぜひ聞いていただきたいです。

※第2巻の紙本初回特典にボイスドラマが聴ける限定イラストカードを封入。また、アニメイト限定購入特典として「ななみのドキドキ添い寝ボイス」が聴けるシリアルコードの配付も行われる。

――さて、第2巻より物語はいよいよゲーム本編へと突入していくことになります。新キャラクターも多数登場しますし、あらためて第2巻の見どころについて教えてください。

第2巻から物語はメインストーリーへと突入していきます。まず注目してもらいたいのは瀧音の立場でしょうか。入学当初はみんな一番下からのスタートですが、そこからのし上がっていく瀧音の姿を期待していただきたいです。そして今巻より学園に巣食う強者でありエリートの集団、三会が登場します。生徒会、風紀会、式部会の3つの組織には学園のトップに君臨する会長職の人間もいます。瀧音にとっては、そんな彼らさえも超えるべき存在であり、その邂逅にも注目してもらいたいです。

※瀧音とななみの出会いはもちろん、二人の軽快な掛け合いも必見

――せっかくなので、三会についてもう少し詳しくお聞きしたいです。生徒会や風紀会は想像できるのですが、式部会とはどんな組織なのでしょうか。

式部会は生徒会や風紀会の信任や不信任を担う、監査組織のようなイメージですね。例えるなら、生徒会が行政を担い、風紀会が警察権を有する、そして式部会が二つの組織の権力を監査している。構造としては3すくみというわけではないのですが、このあたりの詳しい話は物語が進むにつれて明かされていくことになると思いますので、ぜひご期待ください(笑)。

※第2巻から登場する三会(生徒会・風紀会・式部会)のトップ

――今後の目標や野望があれば教えてください。

やはりエロゲや美少女ゲームの業界がもっと活性化していただければ、に尽きるのかな(笑)。それを達成するために、私の作品をもっと盛り上げることができればと思っています。そうしてメーカーさんからどんどん新作があふれ出してくるようになったら理想ですね。その一環にも繋がりますが、このたび『SHUFFLE!』というゲームとのコラボも実施させていただいています。Navelさんとコラボをさせていただき、コラボSSを執筆させていただきました。コラボSSを読んで、続編が出ることを知っていただいたり、『SHUFFLE!』が気になる!という方にはぜひ買っていただければと。私としてはこういったコラボを繰り返して、貢献することができればと思っております!

※コラボSSなども公開されているので特設サイトもチェックしよう!

――それでは最後にファンのみなさんへ一言お願いします。

『マジカル★エクスプローラー』という作品の物語はまだまだ序章です。ゲーム的な表現を用いるとすれば、第2巻もチュートリアルを超えた先の物語がようやく動き出した地点、と言っても過言ではありません。これからもどんどん面白さが加速していきますので、仕込まれている伏線ともども今後の展開にご期待をいただけたらと思います。また、WEB版からも大幅に加筆しています。キャラクターを魅力的に描くための深堀りや、WEB上では敢えて描かなかったエピソードなども追加しているので、ぜひ書籍版で読んでいただければと思います。コミカライズも鋭意制作中ですので、こちらもぜひお楽しみに!

――本日はありがとうございました。

<了>

エロゲ『マジカル★エクスプローラー』の世界に入ってしまった友人キャラの活躍を綴る入栖先生にお話をうかがいました。自由を謳いながらもゲーム愛、キャラクター愛を忘れない特異な主人公が織り成す本作。第2巻より物語は本線に足を踏み入れ、魅力的な新キャラクターも続々登場する『マジカル★エクスプローラー エロゲの友人キャラに転生したけど、ゲーム知識使って自由に生きる』は必読です!

©入栖/KADOKAWA スニーカー文庫刊 イラスト:神無月昇

[関連サイト]

『マジカル★エクスプローラー』特設サイト

スニーカー文庫公式サイト

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