『僕の学園生活はまだ始まったばかりだ!』 岡本タクヤ先生インタビュー

オリジナルインタビュー「ラノベの素」。今回は6月29日にファミ通文庫より新刊『僕の学園生活はまだ始まったばかりだ!』を発売される岡本タクヤ先生です。

著:岡本タクヤ イラスト:のん

高橋、部活はじめるってよ。

無駄に溢れる才能を持つ(勉強を除く)高橋【たかはし】。彼は孤高を気取り、王道学園生活から目を逸らし、背を向けてきた結果、ぼっちのまま2年生となってしまった。そんな彼の下へ千載一遇のチャンスが訪れる。完璧な(性格を除く)美少女・佐藤【さとう】が現れ、自らを生徒会長にすべく、才能を活かして暗躍するよう高橋に要請したのだ。そのために偽りの部活”高橋部”を得た彼は彼女をサポートしつつ、真の学園生活を取り戻す決心をする。恋もない友情もないロストピース学園コメディ!

本日はお忙しいところお時間を作っていただきありがとうございます。よろしくお願いします。まず自己紹介をお願いします。

こちらこそよろしくお願いします。岡本タクヤといいます。関西出身で、今は東京に住んでいます。これまでの作品としてファミ通文庫『千の剣の舞う空に』『武装中学生2045 -夏-』シリーズなどがあります。

先生の新シリーズ『僕の学園生活はまだ始まったばかりだ!』が発売となりますがどんな作品か紹介をお願いします。

部活動というものが学園生活において重要なウェイトを占める巨大学園を舞台に、どんな部活でも活躍できる、あらゆる分野の才能を持ちながら、コミュ力の低さゆえ学園内で孤立している帰宅部の少年高橋が、その才能に目を付けた生徒会長を目指す少女、佐藤さんに利用されながらも、愛と夢と希望に溢れた真の学園生活を手に入れるために様々な部活の間で奮闘する――という物語ですが、あらすじだけでは誤解を生む気もします。コメディ寄りの、力の抜けた軽い物語です。今ならFBonlineさんで冒頭部を試し読みできるみたいなので、よかったら読んでみてください。

本作の見所やセールスポイントなど教えてください。

キャラクターが多めです。数行しか出てこないキャラも含めれば、かなりの数になると思います。気に入ったキャラクターを見つけていただければ嬉しいです。あとは、過剰な自尊心と被害者意識をこじらせた主人公の高橋が、考えすぎなくらい余計なことを考えるところに共感したり、逆に、こいつバカじゃねーの、と思っていただければ。

主人公やヒロインについて教えてください。

主人公の高橋君は特に理由なく天才なので、スポーツ、芸術、料理などあらゆる分野において超高校級のエキスパートですが、社交力や人間性に問題があり、学校の中で孤立しています。彼に友達がいないのは自業自得な部分が大きいです。『孤立・怠慢・勝利』をコンセプトにキャラ造形をしました。

ヒロインの佐藤さんは、主人公・高橋の天才的な能力に価値を見出し、自分が生徒会長に成り上がるという野望のために利用しようとする、野心的で打算的な女の子です。彼女も性格に問題はありますが、容姿の良さに加えて、上っ面を取り繕う社交力に長けているので、高橋君以外からの人望はあるようです。高橋君はそんな佐藤さんが改心し、ラブコメに発展することを期待しているようですが……。今更ですが、ろくな主人公とヒロインじゃないな、と思いました。

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岡本先生が一番お気に入りのキャラクターは誰ですか?

何だかんだで高橋と佐藤は書きやすいですが、本作には一行、二行しか出てこないキャラ、名前さえ出てこないキャラも多くいて、そういったキャラ達にも思い入れがあります。視点人物である高橋と佐藤の物語の中に一瞬しか登場しないキャラにも、彼らの物語があったのだろうと考えたりします。今にして思えば、学校ってそういうものだったなと。

というわけで誰が一番というわけではありませんが、メインの二人以外だと、どぶに落とされる関連の記述しかない坂本君が、書く側の人間として想像力を刺激されてお気に入りです。読者の皆様も、坂本君が登場するシーンを探してみてください。

特にお気に入りのシーンはどこですか。

高橋(主人公)が佐藤(ヒロイン)を囮にして逃げようとするシーンと、佐藤が高橋を見捨てて逃げようとするシーンです。

あと、作中の後半で高橋は様々な激闘に挑むのですが、その中でも最大の死闘、高いところにあるバナナを工夫して取る対決がお気に入りです。

ネタバレな質問になると思いますが、主人公高橋にはモデルがいるんでしょうか?

高橋に特定のモデルはいませんが、強いてあげるなら、小説『パンク侍、斬られて候』の主人公、掛十之進と、ラジオドラマ『ラジオ青春アニメ劇場 燃えろヒカル』の主人公、伊集院君のキャラクター造形に影響を受けていると思います。また、全てのキャラに長所と短所を設定することにしているのですが、高橋を含めた全キャラの短所は自分と共通するところがあると思います。

近藤(リア充)が最初に話しかけてくるところとかすごく心が痛かったです。

高橋も近藤もそれぞれ別の意味で空気の読めないキャラですが、誰もが人生のどこかの局面で、近藤であったことも、高橋であったこともあるのではないでしょうか。

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作中に出てくるライフハックが面白かったですけどああいったアイデアはどこから思いつくんですか? やはり岡本先生の経験から?

高橋式ライフハックは、もともと高橋自身の基本能力が反則級に高いため、逆に使う必殺技のほうは誰にでも使えるようなもの、という縛りを設けながら考えました。読んだその日から訓練なしですぐに使えるという点で、フィクション中の主人公が使う必殺技としては画期的なものではないかと。

ただし本作に登場する高橋式ライフハックを駆使することによって、人生が少し豊かになることは保証しません。むしろ友達が減ったり、社会的な信用を失ったり、現実を見失ったりと厄介なことになる可能性が高いと思うので、高橋君を反面教師として素直に生きたほうがいいと思います。

ライフハックという言葉自体は僕の発明でも何でもなく「生活の中で、特にビジネス周辺の雑事を快適にするための簡単な工夫、テクニック」というような意味の言葉で、四、五年前からビジネス系雑誌などでよく見かけるようになりました。

昔のゲーム雑誌によく載っていた『ウラ技』記事を読むような感覚でライフハック関連の本をよく読んでいたので、高橋の必殺技に総称を付けるにあたって、『ライフハック(LifeHack)』の「名前はスタイリッシュな感じなのに実際にやっていることはおばあちゃんの知恵袋と大差ない」というギャップが好きだったので、そこから名前を拝借することにしました。

本作の執筆にかかった時間はどれくらいですか?

期間としては二ヶ月半くらいでしたが、ノートパソコンの電源を入れてテキストエディタを起ち上げるまでに三週間くらいかかったりした時期もあったので、執筆していたのは実質ひと月ちょっとくらいだと思います。書こうと思ってから五分以内に最初の一行を書き始めるためのライフハックをご存知の方は教えてください。

作家になろうと決めたきっかけや、そのきっかけになった作品などはありますか?

作家になろうと決めた切っ掛けは色々とありますが、大きな契機となった一つは就職が決まったことでした。

内定式や事前研修で背広を着て同期と並んでいたときに、達成感よりも「あ、これで自分のこれから四十年の人生が大体決まってしまった」ということを思い、それに自分で違和感を覚えたことが大きかったです。今考えれば就職くらいでその後の人生が全て決まるわけでもないのですが、その時はこのまま行っていいのだろうか、などと思いました。

また同期が百人以上いる大きな会社だったのと、モノやサービスを作り出すというより、右から左に動かして儲けるというタイプの仕事だったので、自分が社会に対してどういう価値を生み出しているのかが個人として実感しにくいんじゃないかとも思いました。そんなことは就活前に考えておくべき事なので会社は全く悪くなく自分の責任なのですが、「これは自分が作ったんだ」というような手応えがある仕事がしたい、と思い、手探りで道を模索していたら作家になっていました。

小説体験としては、小学生のときに父親から勧められて読んだ司馬遼太郎先生の『燃えよ剣』が最初の、児童文学ではない小説の記憶であり、今でも自分の作家としての根っこになっています。

所謂ライトノベルとしては、高校生のときに別の学校の友人に勧められた『ブギーポップは笑わない』が原体験になっていると思います。どちらも楽しんで読みましたし、そういった読書体験から他の小説へと興味を広げていくのが本読みの王道かと思うのですが、中高生時代はほとんど小説を読まず、専ら漫画のほうを読んでいました。そして大学生になってから、たまたま読んだ町田康先生の『くっすん大黒』をはじめとした作品群に感銘を受け、そこで「今までほとんど読んでこなかったけど、小説って面白いじゃないか」と思い、そこからはジャンルや年代、国内外を問わず濫読するようになりました。

特定の作品が作家を目指すきっかけになったわけではありませんが、その時期の読書体験が今の支えになっていると思います。

小説を書くのに一番気をつけているのはどんなことですか?

小説であること、つまり文字だけによる物語表現であるということ、その特性と限界を意識することです。勿論、ライトノベルというものはイラストが付くことが前提ですし、イラストの力に支えていただく部分も大きいわけですが、やはり情報量の大半は文字だけなので、漫画の原作でも映像作品の脚本でもなく、小説という形態だから意味があるものを書こうということは意識しています。

作家としてのこれからの目標を教えてください。

今の目標は、次の一作を世に出す、ということに尽きます。次が出たら、その次が目標になると思います。

先生にとってファンになってくださる読者はどんな存在ですか? あとファンレターはやはり嬉しい?

見ず知らずの人間が書いた小説に、自分の時間とお金を遣ってくれるというだけで、大変にありがたい存在だと思っています。また、もし以前の作品から追いかけてくれている読者さんがいましたら、毎回作風変わってごめんなさい、まだ追ってくれているのであれば本当にありがとうございます。

最後に読者の皆さんに一言お願いします。

『僕の学園生活はまだ始まったばかりだ!』は始まったばかりなので、学園生活が始まったばかりの人も、学園生活がマンネリ化してきている人も、学園生活なんてとっくの昔に終わったという人も、皆様よろしくお願いします。

本日はお忙しい中ありがとうございました。

こちらこそ、ありがとうございました。

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