【編集部のオススメ】アフターブラック 「いつか少年が夢見た、物語がいま始まる」

ラノオン編集部が読んでオススメしたいと思ったライトノベルを紹介する【編集部のオススメ】

今回は、2015年7月31日に発売となった川田戯曲先生が執筆するデビュー作『アフターブラック』をご紹介します。

※多少のネタバレが含まれますのでご注意ください。

アフターブラック

憧れる世界がそこにはあった――。

これはライトノベルの世界に憧れ、夢見た少年の物語。

第4回講談社ラノベ文庫新人賞で「優秀賞」を受賞した川田戯曲先生のデビュー作となる本作。主人公はライトノベルの世界に大きな憧れを持つ普通の少年です。誰しもが持つフィクションへの憧れへ真っ直ぐと突き進む少年の姿は、大人にとっては少し眩し過ぎるかもしれないですね。一方で、ここまで真っ直ぐいられることへの憧れをベースに、共感もできるわけです。本作は中学生や高校生にライトノベルの入り口として読んでもらいたい作品だと思っています。これはライトノベルの世界に憧れる少年と、何でもない日常を望んだ少女、そして少年を引きずり込んでしまった少女が、それぞれの「夢」と「今」との間で葛藤をしながら、一歩ずつ歩みを進めていく物語となっています。

フィクションを夢見る少年と、日常に思いを馳せる少女。

そして現れる、季節外れの転校生――。

「この世界のどこかには絶対、俺の望む世界があると思うんだよ」そんなフィクションに夢を描き、憧れる夜町空也。夢見る少年に呆れる幼馴染の少女は雨宮詩帆。フィクションを望む少年と、フィクションを望まない少女は、それぞれの描く夢を口にしながら、いつもの日常を過ごしていた。そんな空也のクラスに季節外れの転校生、水軋幽花が現れ――。

月下に佇む少女、それは――。

そして少年は、別世界へと足を踏み入れる。

空也と幽花が昼食を一緒に摂るようになってしばらくしたある日、空也は見えない”何か”と戦う少女の姿を垣間見る。憧れた世界、夢見た力が目の前にある。「なら空也は、不思議な力を宿して、化け物と戦いたいの?」少女の問いかけに、戸惑いの中空也は頷き――自分が描いていた夢がどういうモノなのかを、間違えていたことに気付くのだった。

空也を引き込んだ幽花の苦悩、そして――日常を夢見た詩帆の願い。

「これから――あんたを取り返してくるから」

憧れの世界に足を踏み入れたことへ期待を膨らませる空也とは異なり、幽花は空也を引き込んだことをただ後悔していた。そして≪黒祓い≫となる意味に答えを見つけ出せない空也は、幽花の過去を知り、ひとつの決意をする。そしてもう一人。幼馴染が”こちらの世界”へと引きずり込まれたことへ、静かな怒りを湛える少女の存在。そして少女は大切なものを取り戻すために、動き出す――。

自分たちは何を諦め、何を望むのか?

憧れた世界の中で、空也は真っ直ぐと突き進む!

≪黒祓い≫の正しさとは何か。人を殺すことが人類にとって『悪』だと知らない悪魔と出会った時、一片のためらいもなく断罪することができるのか。空也が覚悟を決めきれずにいた結果、事態は悲劇の結末へと向かい動き始めていく。だからこそ空也は決意する。今こそライトノベルの主人公たちがそうであったように、空也は最高の結末を迎えにいくため、ただ真っ直ぐに道を選び取る――。

本作の見どころは、ライトノベルに憧れる主人公のひたむきな真っ直ぐさであり、眩しいくらい夢に向かって突き進む姿勢にあると思います。夢とフィクションへの憧れ。憧れた世界と現実のギャップ。一番大切なことを見誤らない真っ直ぐな心。主人公の傍にいる2人のヒロインもまた、求めていたものへの渇望が、主人公を中心に描かれていきます。フィクションは意外にも身近にある、ということも体現した作品ですね。また、異能を手にしたことによって、大人たちの考える「諦めること」への挑戦もひとつのテーマになっているのかなと。諦めないことの難しさや、正しさを考えることの意味が、結果としてこの物語の行き着くヒロイズムを形成するに必要不可欠な要素にもなっています。ライトノベルらしいライトノベル。前述もしていますが、中高生にぴったりな、そして大人には少し眩しい作品です。だからこそ、オススメしたい1冊となっています。

7月31日に発売したライトノベルの世界に憧れた少年の物語を、ぜひ手に取って読んでみてください。

©川田戯曲/講談社 イラスト:ファルまろ

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[関連サイト]

講談社ラノベ文庫公式サイト

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