【編集部のオススメ】 いらん子クエスト 「生きる価値のない少女たちのデスゲーム、開幕」

ラノオン編集部が読んでオススメしたいと思ったライトノベルを紹介する【編集部のオススメ】

今回はダッシュエックス文庫より発売の兎月竜之介先生が執筆する『いらん子クエスト 少女たちの異世界デスゲーム』をご紹介します。

※多少のネタバレが含まれますのでご注意ください。

いらん子クエスト

生きる価値のない人間、それが「いらん子」

様々な境遇の少女たちが集められ、デスゲームが幕を開ける。

結構エグいところに踏み込んできたな、というのが本作を読んだ第一印象ですね。設定の基幹はデスゲーム。血なまぐさい設定の中で、いらん子と選別された中学3年生の少女たちが異世界で、元の世界に帰って生きるために戦う物語となっています。最初に言っておくとこの物語には徹頭徹尾、救いがありません。救いなど無い中で、キャラクター達がもがき、苦しみ、答えを出す。本当に小さな生きる希望を思い描き、それを糧に戦い抜くのです。いらん子クエストの世界で少女たちを待ち受けるものとは。そして、いらん子バトルを戦い抜いた少女たちに待ち受ける世界とは。犠牲の上に立つことを余技なくされた、少女たちの血みどろな成長の物語となっています。

いじめ、孤独、孤立、空気。

選抜された「いらん子」少女たちの前に――。

自分と同じ顔をした何者かを見た瞬間、異世界へと飛ばされた狩谷友恵。同じ中学校、そして同じ学年の7人の少女たちが邂逅した世界こそ、いらん子クエストの世界であった。「生きる価値のない人間が……いらん子が多すぎる」そんな理不尽な理由から、少女たちはデスゲームへ身を投じることになる。

魔物との戦い――いらん子バトルに挑む少女たち。

そして生き残った少女たちを待ち受けていたもの、それは……。

少女たちがそれぞれ不協和音を奏でる中、1回目のバトルがスタートする。合計3回のバトルを生き抜けば、元の世界に戻ることができる。少女たちは複雑な想いを抱きながら、1回目のバトルに臨む。そしてバトルを終えた少女たちに待ち受けていたのは、非道なまでの選択を行うことだった。

ジョブの役割、持ちかけられる命の取引。

「治療して欲しかったら、私に投票してくださいって言ってみろ」

少女たちは依然として不協和音を奏で続ける。それでもほんの少しだけ分かり合う少女たちと、孤立を深めていく少女たちとの距離は少しずつ開いていた。そして1回目とは比べものにならない魔物との戦いは、苛烈を極めるものの、少女たちは辛うじて耐え忍ぶのだった。だが、バトル中の戦死者の存在が、少女たちの疑念を膨らませ、それぞれの関係に決して小さくない罅を刻み付けていく。

さようなら、いらん子クエスト……。

小さな変化、生きる希望――――それを打ち砕く惨劇。

いらん子としての自覚を持つ少女たちは、小さな変化を生きる希望に変えて戦い抜く。そして元の世界へと戻った少女たちは、少しずつではあるけども、これからのことを考えられるようになっていた。生まれて初めて心地の良い暖かさを、友達という存在に感じていた友恵。もらわれっ子としてではなく、一人で生きていくその時まで頑張っていこう――――そう、友恵は思っていたに違いないのに……。

本作の見どころは、生きていることに希望を見出せなくなった少女たちが、泥臭くもがいてあがいて、本当に小さな答えの欠片を見つける、成長の姿だったらいいなぁ、なんて思うわけです。また、本作の登場キャラクターの思考は全体的に後ろ向きです。前を向いてないです。その後ろ向きの思考や姿勢が、デスゲームに存在する「ジョブ」との関係性を際立たせる大きな一石となっていることも、見どころと言えるでしょう。もちろん、そもそもこのデスゲームを仕切っている存在についても、謎が解き明かされていくといいですね。本作は昨今主流となっている読後の爽快感は欠片ほども得られないのですが、ドラマとして先を見たい衝動に駆られる作品となっています。あとがきを読むに、続刊もある程度は予定調和のようなので、第1巻の最初から最後まで救いのなかったこの物語が、どういった最期を終着点にしているのか。そしてこの先も多くの血が流れることが想定できることからも、流れた血の数だけ覚悟を背負っていくことになるだろう少女たちはどう成長を遂げていくのか、追いかけていきたいからこそ、オススメしたい1冊となっています。

いらん子の少女たちのデスゲームを描いた物語を、ぜひ手に取って読んでみてください。

©兎月竜之介/集英社 イラスト:wogura

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