【編集部のオススメ】精霊幻想記 1.偽りの王国 「孤児の少年はかくして、前世の記憶を取り戻す」

ラノオン編集部が読んでオススメしたいと思ったライトノベルを紹介する【編集部のオススメ】

今回はHJ文庫より発売されている北山結莉先生が執筆する『精霊幻想記 1.偽りの王国』をご紹介します。

※多少のネタバレが含まれますのでご注意ください。

精霊幻想記

前世と異世界で重なる2つの記憶。

青年はかくして、孤児となる――!?

「孤児に転生」ってどういうことだろうか、と思い手に取ったことが本作との出会いだったわけで。隆盛凄まじいWEB発小説ということと、前述のきっかけもあって読むに至った本作。異世界に住まう少年が孤児となってしまったタイミングで前世の記憶が蘇ることにより、「孤児に転生」というキャッチフレーズに至ったことを理解したわけです。もやもやしていたものが解決できて良かった。さて、本作は異世界で孤児となってしまい過酷な環境で生を繋ぎとめていた少年が、前世である日本人の大学生、天川春人の記憶を思い出すことから始まります。少年リオの7年間の記憶と、大学生天川春人の20年間の記憶。この2つの記憶は重なり合ったまま、リオはひとつの出会いに巡り合うこととなります。前世の伝えられなかった想いと、現世の少年の心に疼く復讐と。2つの記憶を有する少年の出会いと試練、そして旅立ちの物語となっています。

日本の前世から異世界の現世へと。

孤児となった少年は、――そして出会う。

孤児となり、過酷な環境で生にしがみつていた少年リオは、高熱にうなされ生死を彷徨う中、天川春人という前世の記憶を取り戻す。スラム街の無法グループの中で生かされていたリオは、彼らが運び込んだ荷をきっかけに出会いを得るのだが……。

立ちはだかる身分、差別、そして冤罪。

リオはただただ耐え続けるしかなく……。

リオは第二王女救出の一端を担うも、誘拐関与の嫌疑をかけられてしまう。身寄りのない孤児という身分。そして、王女誘拐の失態を演じた近衛騎士団の焦り。リオは近衛騎士団の失態を覆す「手柄」として、理不尽な自白を迫られながら、容赦のない拷問にただ耐え続けるしかなかった。

転機、それは監視という名の王立学院への入学。

重なる2つの記憶はかくして、片鱗を見せはじめる。

誘拐関与への疑いが完全には晴れぬまま、監視という名目で王立学院への入学を果たしたリオ。文字が読めないという問題はあったものの、算術や武術でその片鱗を見せ始める。侮蔑や差別には一切耳を貸さず、黙々と勤しむリオは試験を経て結果を出していく。周囲との軋轢は広がる一方で、ユリアの存在がリオの心を確実に繋ぎとめていた。

流れる五年の月日――。

偽られた真実は、少年に別れと旅立ちを決意させる。

五年の月日が流れ、卒業まで残り一年。騎士団との対抗試合でも好成績を収めたリオはしかし、野外演習で王女を危険にさらした張本人としての疑いをかけられてしまう。巨大な権力の前に歪められる真実は、リオに旅立ちの決意をさせるに至る。リオを信じ続けたセリアとの別れ――そして少年は東の地を目指して旅立つ。

本作の見どころは、2つの記憶を有した少年リオの持つ決意の力に他ならないと思います。リオが有する2つの記憶にそれぞれ眠る「恋慕」と「復讐」の想いは、この先の展開に様々な可能性をもたらしてくれるものであってほしいと願わずにはいられないですね。もともとWEB発小説ではあるので、既にこの続きはあって、もとの作品を読むことはできるのでしょうが、私は発売されるのを楽しみに待ちたいです。リオの学院における周囲との確執は、最後の最後まで取り除かれることはなかったわけで。セリアという存在に繋ぎとめられていた五年という月日にも、終止符を打ち新たな世界へと旅立つ。これはある意味ドライな物語構成でありながら、決して想像できない構成ではない。良い意味で未練がましくないこのストーリー展開にもとても好感を持ちました。まったく異なる記憶を持ち、生まれうるはずの”孤独”を別れと旅立ちで体現した本作の続きがとても楽しみですね。この先、リオの進む道に待ち受けるものとはなんなのか、オススメの1冊となっています。

異世界で2つの記憶を合わせ持つ孤児少年の物語をぜひ手に取って読んでみてください。

©北山結莉/ホビージャパン イラスト:Riv

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