独占インタビュー「ラノベの素」 広重若冲先生&藤真拓哉先生『ぜんぶ死神が無能なせい』

独占インタビュー「ラノベの素」。今回は第4回講談社ラノベチャレンジカップにて「佳作」を受賞、4月28日に講談社ラノベ文庫より受賞作『ぜんぶ死神が無能なせい』が発売となる広重若冲(ひろしげじゃくちゅう)先生、そして本作のイラストを担当する藤真拓哉先生のお二人です。著者とイラストレーターそれぞれの観点からお話をおうかがいしていますので、ぜひチェックしてみてください。

ぜんぶ死神が無能なせい

【あらすじ】

夜中に俺・狭間孝一の部屋をノックしたのは自称「死神」を名乗る少女ラノ子。彼女いわくおれの余命はあと6時間。しかも手違いぃ!? どうやら《余生会》という謎の集会に参加できれば、俺の理不尽な死は回避できるらしいのだが、その地図も手違いで闇の中へ。おい死神『あちゃあ』じゃない。俺を助ける気無いだろ!? さらに余生を手に入れようとする俺の前に、ライバル死神や対立している天使まで邪魔してくれて……ああっもう時間がない! 軽快なテンポで畳みかけてくるギャグの波。キミはこのテンションについてこれるか!? 第4回ラノベチャレンジカップ佳作受賞作!

――それではまず広重先生。本日はよろしくお願いします。また、第4回講談社ラノベチャレンジカップ受賞おめでとうございます。

広重:ありがとうございます。

――早速ですが自己紹介、ご出身や好きなもの、ハマっているものなどがあれば教えてください。

広重:埼玉県出身、在住の作家です。映画が大好きでハリウッド映画やアクション映画をはじめ、オールジャンルで観ています。ライトノベルも好きで、竹井10日先生の『ここから脱出たければ恋しあえっ』や『彼女がフラグをおられたら』は特に好きですね。他ジャンルでは柳広司先生の著作は好きで、全部読んでいます。特に『ジョーカー・ゲーム』がお気に入りです。それ以外だと最近は将棋のルールを覚えて、インターネットでたまにやるようにもなりました(笑)

――映画にラノベに将棋にといろいろと嗜まれていますね。

広重:漫画も含めてサブカルチャー全般が好きなんです。ただ、ゲームは最近してないですね。ソーシャルゲームをやろうにもまだガラケーなので(笑) そろそろ買い換えようとは思ってるんですけど、面倒でなかなか。

――たくさん好きなものをお伺いしましたが、逆に苦手なものはありますか。

広重:車の車線変更が慣れなくて大変ですね。立体駐車場や車庫入れもちょっと……。高速道路の合流なんて不可能ですよ(笑)

――免許をお持ちなんですね。車には結構乗られるのですか。

広重:免許を取って4年くらいになりますけど、頻繁ではないですね。電車の便がいいので車に乗る必要もそんなにないというか。

――車の運転には十分注意してくださいね(笑) それでは受賞の報せを聞いた時のお気持ちをお聞かせください。

広重:嬉しかった以上に、ほっとしたという感情の方が大きかった気がします。

――なるほど。広重先生の小説賞への応募歴や執筆歴はどのような略歴なのでしょうか。

広重:映画や本をはじめ、昔から物語が好きでした。作家になりたいと考え始めたのは中学生くらいからでしたけど、実際に本気で書き始めたのは20歳を過ぎてからでしたね。応募を始めたのも同時期で、年間7~8本書いては送り、書いては送り、これを数年間続けていました。

――つまり特定のレーベルを意識して書いていたわけではないということでしょうか。

広重:そうですね。1本書きあげたら締切が一番近い小説賞に送る、という形でずっと書き続けていました。ただ、自身の作風は少しずつ変わっていきました。最初はハードボイルドタッチの作品が多かったのですが、段々とギャグ路線になっていきましたね。『ぜんぶ死神が無能なせい』もギャグ路線ですし。

――執筆するジャンルの路線が変わったきっかけはなんだったのでしょう。

広重:TVアニメで放送されていた「銀魂」がギャグのお手本になっているかもしれないですね。作品投稿時に、ちょうどケーブルTVで200話くらいの一挙放送があって、その時にハマりました。個人的にですが「銀魂」はボケに対するツッコミの在り方が少し変わっていると感じていて、そのツッコミが非常に心に残りました。そこから少しずつギャグ路線になっていった気がします。

――それでは次に受賞作『ぜんぶ死神が無能なせい』について教えてください。

広重:あんまり熱血漢ではない主人公の元に死神がやってきて余命を宣告され、物語がはじまります。そんな主人公は魂を狩られないよう課題達成に向けて奮闘するのですが、ボケボケが止まらない死神のラノ子と兄に対して少しあたりのキツい妹の未樹と一緒になって、課題に立ち向かっていく物語ですね。ギャグ重視で重いことにはほとんど足を突っ込んでいない作品に仕上がっています。

――広重先生のお気に入りのキャラクターは誰ですか。

広重:死神のラノ子が可愛いくて好きですね。基本的にアホな娘で、すらすらとボケを積み重ねるんですけど、そこがとにかく可愛いと思っています。

ラノ子

※死神のラノ子

――主人公である孝一の妹・未樹ちゃんも登場シーンもかなり多いですよね。

広重:ラノ子の次にお気に入りのキャラクターで、自然と出番が多くなりましたね。かなり自由に動き回っているキャラクターで、兄である孝一にもまったく媚びていないので、孝一にとってはあたりがややキツい妹です(笑)

孝一未樹

※左:主人公の孝一/右:主人公の妹の未樹

――本作のイラストレーターは多方面で活躍されている藤真拓哉先生ですが、聞いた時はいかがでしたか。

広重:最初に聞いた時は藤真拓哉先生がイラストを担当するという事実にあんまり現実感がありませんでした。ラフイラストをはじめ、実際にイラストを見られるようになってから、担当してもらっている実感が湧きました。なによりも藤真拓哉先生にも『ぜんぶ死神が無能なせい』を好きになってもらって描いていただいているので、非常に嬉しいです。

紗希

※孝一の姉の紗希

――原稿執筆時とイラストが仕上がってからで、キャラクターへの印象は変わりましたか。

広重:イメージ自体はかわりませんが、想像以上のイラストが出来上がって、愛着がますます深まりました。

――『ぜんぶ死神が無能なせい』を執筆する上で苦労したことがあれば教えてください。

広重:初稿の段階では会話劇が主体だったのですが、一歩引いた状況の描写の必要性について指摘され、緩急をつけるところに苦労しました。特定のシーンで場面描写が薄く、誰がしゃべっているのかわからないところもあり、一生懸命修正しました。私自身がシーンを描くときにインスピレーションとして絵や映像を思い浮かべたりせず、文章を文字でとにかく書き重ねていく執筆スタイルなので、そのあたりが今後の課題かもしれません。

――『ぜんぶ死神が無能なせい』はどんな方が読むとより楽しく読めますか。

広重:ギャグが好きな方ですね。世間の荒波にもまれ、疲れ切って何も考えたくない方。ちょこっと読んで楽しんでもらえると思います。

――作家として、今後の目標など教えてください。

広重:一作品ずつ大事に書いていきながら、たくさんずっと書いていきたいです。現在は兼業作家ですが、いずれは専業作家になれればいいなと。とにかく作家を続けていきたいですね。それと今はギャグ路線をしっかりと突き詰めていきたいです。そうしたらミステリー作品なんかにもチャレンジしてみたいですね。

――最後に『ぜんぶ死神が無能なせい』に期待しているみなさんに向けて一言お願いします。

広重:とにかく軽い作品なので、軽い気持ちで読んでいただきたいです。藤真拓哉先生の可愛いイラストも必見ですよ!

――本日はお忙しいところ、ありがとうございました。

広重:ありがとうございました。

――それでは続いて、『ぜんぶ死神が無能なせい』のイラストを担当する藤真先生にお話をお伺いします。ご存知の方も多いかと思いますが、簡潔に自己紹介をお願いします。

藤真:千葉県出身のイラストレーターです。イラストだけでなく漫画なども手掛けてさせていただいていて、現在は「月刊コンプエース」にて「魔法少女リリカルなのはViVid」を連載させていただいています。好きなものは猫、苦手なものは虫です。猫については、短足で折れ耳のマンチカンという猫を飼っています。

――今作『ぜんぶ死神が無能なせい』のイラストを担当することになった経緯を教えてください。

藤真:実は今作の担当編集さんとは以前スニーカー文庫の『R-15』の時に一緒にお仕事をさせていただいた事がありまして、今回久しぶりにお声をかけていただきました。その編集さんから「この作品はぜひ藤真先生にお願いしたいんだ!」と熱く言っていただきまして、実際に作品を読ませていただいたところ、キャラクターの可愛さにやられてしまい、引き受けさせていただきました。

――『ぜんぶ死神が無能なせい』を読んでみていかがでしたか。

藤真:とにかくヒロインのラノ子ちゃん(死神)が可愛いかったです。これは本文読んでくださいーというところなのですが、喋り口調がとっても可愛いんです! 淡々とした口調なのですがそれがお人形さんみたいでぎゅーってしたくなります。そして世界観がシンプルでわかりやすかったのと、キャラクター同士の掛け合いが楽しくて、クスッとしてしまいます。テンポよく話が進んでいくので藤真はサラッと読めちゃいましたね。

――キャラクターイラストの設定に関して、とても細かく設定されている印象を受けました。気を付けた点やこだわった点などがあれば教えてください。

藤真:魅力あるキャラクターに負けないように、出来るだけじっくりキャラクターデザインはさせていただきました。そのため没案なども結構あるんですよ(笑) 藤真は小物やアクセサリーが大好きなので、ごてごてと色々付けてしまうのですが、世界観がシンプルだったので見やすさを心がけてデザインしております。といいつつラノ子は胸にドクロマークを入れてみたり、王冠をつけたりしていますがそこは作家的なこだわり、というところです(笑)

藤真:妹の美樹は主人公に対して上から目線で精神的に優位に立っているという事で低年齢ですが少しマセてる感じでデザインしてみました。中学生なんですけど少し背伸びしちゃってる感じです。こういうタイプの娘は初めて描いたかもしれません。ですので挿絵描いてても新鮮な感じで楽しいですね。

――藤真先生のお気に入りのキャラクターがいれば教えてください。

藤真:もちろん一番はラノ子ちゃんです。破天荒で予想も出来ないことをしてくれるので。それに振り回される孝一が面白いです。妹の美樹も良いキャラしてますよね、わかり易いツンデレっ娘なので読んでいてニヤニヤしてしまいます! また主人公のお姉ちゃんもキャラがぶっ飛んでいて大好きです。

――そのラノ子ですが、カバーイラストではパンツが見えています。そういった指定だったのでしょうか。

藤真:いえ、完全に僕の趣味です(笑) たぶん、編集さんも好きです(笑) キャラ紹介ページはさらにレベルが高いかもですよ。

――今作『ぜんぶ死神が無能なせい』でお気に入りのシーンなどはありましたか。

藤真:ベヤング(国民的食物っぽい何か)を食べるシーンなんかは特に気に入ってます。ラノ子がベヤング食べてる姿って想像するだけでとってもキュートなんですよね。挿絵でも2枚も描かせていただいておりますのでぜひご覧になっていただけたら嬉しいです!

――ファンの皆さんに今作、そしてご自身のイラストで注目してもらいたい点があれば教えてください。

藤真:最近、ライトノベルの挿絵では、大人っぽい女の子を描く事が多かったのですが、今回久しぶりにロリっ子をたくさん描かせていただきました。ラノ子ちゃん、美樹の可愛さ・表情など、楽しんでいただければと思います。

――本日はありがとうございました。

藤真:ありがとうございました。『ぜんぶ死神が無能なせい』は4月28日発売です。今回は店舗特典もいろいろ描かせていただきましたので藤真のブログでも紹介していこうと思います! こちらもぜひチェックしていただけたら嬉しいです!

http://fujima-blog.cocolog-nifty.com/

藤真拓哉_自画像

<了>

今回は著者である広重若冲先生とイラスト担当の藤真拓哉先生にお答えいただきました。著者もイラストレーターも絶賛する可愛さを誇る死神のラノ子。そして軽快なテンポのギャグがたっぷり詰まった受賞作『ぜんぶ死神が無能なせい』は必読です!

©広重若冲/講談社 イラスト:藤真拓哉

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[関連サイト]

講談社ラノベ文庫公式サイト

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