【レポート&インタビュー】次回開催への期待も大きく。「#ラノベの仕事したい」持ち込みオフライン交流会の様子をお届け
4月9日(土)に東京・秋葉原で開催された「#ラノベの仕事したい」持ち込みオフライン交流会の模様をお届けする。本イベントはライトノベルの仕事をしたいと考える、イラストレーターやライター、さらには出版関係者・編集者などが集まり、会場にて直接交流や交渉などを行うという主旨のもと開催された。申込当初は50名の定員として募集が行われていたのだが、開催1週間前には定員枠が埋まり、急きょ追加での募集も行われ、最終的には70名近くまで参加者は膨れ上がった。テスト開催ということもあり、試行錯誤や手探りの中で実施されたわけだが、参加者からは好評の声が多く聞こえるイベントとなった。「興味はあったけど今回は……」「日程が合わなくて……」と、参加を見送った方はもちろん、気になる会場の雰囲気などを本レポートではお伝えする。また、主催者にはこのイベントの開催の意図や、今後の展開などについてもお話を伺ったので、ぜひチェックしてみてもらいたい。
●参加者は総勢70名。愛知県や静岡県から足を運ばれた方も
イベントは13:00よりスタート。19:00までの長丁場だったこともあり、筆者は約30分遅れで会場に入った。もともと定員50名での開催を予定していただけに、会場の手狭感は否めなかったが、筆者到着時には既に50名を超える参加者が会場全体にひしめいていた。会場ではオープンスペースに加えて、具体的な交渉や説明、ヒアリングなどを行う会議室が5つほど、さらにパーテーションで区切られたスペースが2つほど用意されており、開始から30分時点で1対1での話を既に進めている参加者も数多くいた。また、関東圏外から足を運ばれていた参加者もおり、オープンスペースではあちらこちらで、名刺交換をはじめとした交流が途切れる様子なく行われていた。
●参加者の中には現役作家にゲームライター、漫画家や他分野で活動するイラストレーターも
ここで唐突なのだが、みなさんはこのイベントに対してどのようなイメージを持っていただろうか。筆者自身はぶっちゃけてしまうと「交流会以上にはならないのではないか」というイメージを漠然と持っていたことは否めない。和やかに業界のことを知りたいライトノベル作家志望の方やイラストレーター志望の方が、編集者や関係者から交流の中でお話を聞く会に留まるのではと、そう思っていた。ところがどっこい、そんな和やかなムードはほとんどなかった。無論談笑がなかったというわけではなく、会場のあちこちで印刷したポートフォリオが飛び交っていたり、編集者に見てもらいながら自己アピールをしていたり、タブレットを使って自身の関わった作品を説明していたりと、会場に足を運んでいたライトノベル編集者や関係者へと猛烈にアピールをしていたからだ。中には「もっと仕事がほしい!」と声高に叫ぶライトノベル作家や、何作か挿絵も担当しているイラストレーターなど、非常に幅広いジャンルの参加者が会場へと足を運んでいたこともわかった。筆者の抱いていたイメージなどまるで当てはまらず、まさにガチ。なんとしてもライトノベルに関連する仕事を掴む、その意気込みがはっきりとわかるほど、会場は大きな熱気に包まれていた。
※賑わう会場の様子
●檀上ではトークショーも……参加者は交流や交渉に大忙し
これは後に主催者のインタビュー内でも言及されるのだが、会場内に設けられた檀上では要所のタイミングで、トークイベントも行われていた。ステージには青井硝子氏や伊藤ヒロ氏など現役で活動しているライトノベル作家も登壇。仕事の獲得の仕方やWEB小説などにも触れた内容でトークショーは行われていたのだが、オープンスペースの一角で開催されていたこともあり、トークショーへと耳を傾ける参加者は残念ながら多くはなかったようだ。みんな仕事に繋げたくて来場しているのであって、檀上のライバルに耳を貸す暇はそう多くはなかった、と言えたのかもしれない。
※左:青井硝子氏/中:伊藤ヒロ氏/右:坂ノ上九郎氏(進行)
しかしながら、さすがに4時間を経過すると会場は落ち着きを見せ始めた。トークイベントの終盤では、文学フリマの事務局代表の望月氏や設定考証やデザインなどで活躍する小倉信也氏も登壇するなどして、参加者はそれぞれ耳を傾けていた。
●参加者の多くから「今日は来てよかった」という声。次回開催へ更なる期待も
6時間という長丁場ではあったが、来場者の多くからは「足を運んで良かった」という声があちらこちらから聞こえてきたイベントとなった。中には実際にお仕事の話に結びついた、という声もあったようだ。ライターやイラストレーターが、現役編集者の生の声を聞く機会はそう多くはないだろうし、面と向かって話をすることで人となりも確認することができる。編集者の方ともお話をさせていただく中で、直接会って話をすることの重要性を再認識した、という声も少なくはなかった。インターネットの普及などにより、面通しをしなくても仕事の受発注ができる時代ではある。それはそれで利点だ。ただ、実際に対面で話して、イベントを含めた空気そのものを体感することの意味は、やはり大きいと筆者自身も感じた。そして、大きな次回開催への期待と展望。今回参加した方はもちろん、「もし次回があるならば」と考えている方も多いに違いない。以下からは今回のイベントを企画、実現した「AKIBAPOP:DOJO」所属の岩上氏へのインタビューとなる。イベント開催のきっかけから、実際にイベントが終わってみての感想。そして今後の展望など必見の内容となっているので、ぜひ読んでもらいたい。
――イベントお疲れ様でした。大盛況でしたね。
岩上:ラノベニュースオンラインさんもお疲れ様でした。おかげさまで良いイベントになりました。
――こちらこそ色々と楽しかったです。早速ですが、今回のイベントを主催した「AKIBAPOP:DOJO」さんについて、どのような会社なのか教えてもらってもいいですか。
岩上:株式会社虎の穴も所属しているユメ(ノ)ソラホールディングスという系列グループがありまして、「AKIBAPOP:DOJO」はその一部として活動しています。もともとはアキバ系やサブカル系に特化した学びや集いの場を提供するカルチャースクールとして銘打っていたサービスですね。いろいろな講師の方に所属していただいて、小説講座やGIF画像を作ろうだとか、様々な企画を実施している会社です。
――様々な主旨の企画を実施されていますが、今回の「#ラノベの仕事したい」オフライン交流会開催のきっかけを教えてください。
岩上:「AKIBAPOP:DOJO」に所属いただいている講師の方々には、サービス当初から様々なニーズをうかがっていました。その中でも特に多かったのは、仕事へと繋がるニーズ。ボーカロイド講座を担当されていた講師の方からもクリエイターとクリエイターをマッチングさせる場所を作り、最終的にひとつの作品を作りたい、なんてお話も聞いていました。我々としてもいつかお手伝いできればなと、その時はそれで終わってしまったのですが。そんな折に、Twitterのハッシュタグで「#ラノベの仕事したい」がトレンドに取り上げられていて。私が見つけた時には既に勢いは落ち始めていたのですが、実際にハッシュタグの中を覗いてみると多くの方がイラストをアップロードしてつぶやいていました。一方で、イラストをアップロードして、ハッシュタグをつけて、それでおしまい、という空気を個人的には感じていて、本当に仕事をゲットするためにはオンライン上だけで終わってしまっていいのかなと。仕事は人となりだとか、いろいろ伝わらないとわからないことも多いじゃないですか。会ってみて初めてわかるものもあるといいますか。なので、だったらオフライン交流会やろうよ、と。それがきっかけでしたね。ほぼ勢いでした(笑)
――勢いって大事ですよね。結果として大盛況だったわけですけど、イベント参加者の傾向や割合はどんな感じでしたか。
岩上:当初は50名席で募集を行ったのですが、おかげさまで開催1週間前に満席となりました。その後、追加で募集枠を増やした結果、最終的には70名ほどになりました。イラストレーターや漫画家など「絵師」と呼ばれる方は全体の約30%、小説家やライターなどの「物書き」と呼ばれる方は28%、「出版関係者」が15%ほどになりました。アンケートをお送りして回答をいただいた結果なので、回答いただけていない方など「その他や不明」が25~26%くらいですね。振り返ってみるともう少し出版社の方に来ていただければ良かったと思っています。
――こうしてみると確かに出版関係者がもう少し多い方が良かったのかもしれませんが、バランスは悪くなかったですよね。
はい。その点は安堵していて、たとえば絵師さんばかりで需要と供給のバランスがとれない、そんな可能性も懸念はしていました。結果論ですが、絵を描く人と文字を書く人の割合が同じぐらいだったこともあって、その点は良かったのかなと思います。また、異業種の方も交じってコミュニティが形成されていた点も良かったですね。
――今回のイベント開催から見えた今後の課題などはありましたか。
そうですね。スペシャルトークを設けて、識者がいろんなお話をする中で、いろいろな方向性に対して刺さる時間も併せて提供できればいいと思っていたのですが、そもそも参加される方はそこを求めていませんでした。交流や持ち込みだけでなく、次に繋げることを考える上での企画ではあったんです。ただ、イベントタイトルにもある通り、どのように交流をするか、どのように持ち込むか。その点を重視している方がとても多く、噛み合いませんでした。その結果、少しごちゃごちゃしてしまった点は改善の余地があると思っています。
――ぜひ次回に反映して更に良いイベントにしていただければと思います。今後の開催予定はありますか。
またTwitterのトレンドであがったときでしょうか(笑) いずれにしても、1回実績として作ることができたので、営業材料にはできると思っています。また、トレンドに乗ることだけでなく、クリエイターさんの動きやすい季節や時期を見計らって開催できればと思います。さすがにコミケの前に開催を設定しても、みんな死んじゃうでしょうし(笑)
――そうですね(笑) 早くてもコミケの後とかになりそうですね。
そうなんですが、たとえば遠方から来られる方には旅費などの関係上、コミケの期間内にやってしまうという手もあったりなかったり。それはそれでキツそうなので、今後は要検討ですね(笑)
――ちなみに自分から1つ質問なのですが、今回はクリエイターのためのイベントでしたよね。ならユーザーのためのイベントを開催してもらうこともできるのでしょうか。そうですね、たとえばライトノベル読者のためのイベントとか。
要望が多く上がれば、実現の可能性は十分にあります。それこそ著者さんを呼んでトークイベントを開催したり、ですよね。ただ、そのためにはやはり声が必要で、その声を集めるためには我々を知ってもらいたいです。イベント開催後に、「知ってたら参加したのに」とか「こんなイベントあったのか」とかもったいないじゃないですか。なので、ぜひ今後も応援していただきたいですし、要望やリクエストが欲しいです。Twitterでもメールでも、半分スパムでも構わないのでお気軽に要望をお待ちしています!
――スパムはダメな気がしますけどみなさんもぜひ要望やリクエストを寄せてみてください。本日はありがとうございました。
ありがとうございました。
<了>
第1回開催は非常に好評だった「#ラノベの仕事したい」持ち込みオフライン交流会。次回開催への主催側の意欲も高く、次の開催も大いに期待される。今回のイベント参加を見送った方や、参加することができなかった方は、ぜひとも次回開催に注目してもらいたい。
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