独占インタビュー「ラノベの素」 氷高悠先生『テンプレ展開のせいで、おれのラブコメが鬼畜難易度』

独占インタビュー「ラノベの素」。今回は7月20日にファンタジア文庫より『テンプレ展開のせいで、おれのラブコメが鬼畜難易度』が発売となった氷高悠先生です。注目のハイテンションテンプレートラブコメディについてお話をお聞きました。

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この恋は、テンプレすぎて新次元。

【あらすじ】

幼なじみの天里美織(貧乳)と結ばれるために「お約束」を司る『テンプレの神様』の加護を得たおれ、結野奏汰。ところが突然窓をブチ破り降ってきたのは、皇女で、許嫁で、巨乳で、おれへの好感度MAXな美少女、ティナだった! ティナのオタク文化を誤解したアプローチのせいで、おれの日常は崩壊。しまいにゃ暗殺者に命まで狙われるし……。しかも「幼なじみは噛ませ犬なのがお約束」だからって、美織とくっつくのが無理ゲー化するとか、これ加護じゃなくて呪いじゃねーか!? テンプレすぎてテンプレじゃない、新次元ラブコメ降臨!!

――本日はよろしくお願いします。

よろしくお願いいたします。

――早速ですが、氷高先生のプロフィールを教えてください。

第26回ファンタジア大賞で「銀賞」をいただき、『今すぐ辞めたいアルスマギカ』でデビューしました。『テンプレ展開のせいで、おれのラブコメが鬼畜難易度』は2作目になります。出身は広島県で、上京してからは関東在住になりました。大学時代にマンガサークルに所属していて、小説だけではなく漫画原作を作っていたりもしました。今にして思えば、この時期の切磋琢磨があったからこそ、現在作家として活動できているのかなと思っています。

――好きなものや苦手なものがあれば教えてください。

テレビを見るのが大好きで、ニチアサの特撮番組や女児向けアニメなんかは面白く視聴しています。逆に苦手なものは運動で、スポーツ全般を通してやるのも苦手ですし、観戦したりすることもほとんどないです。運動はしたいと思っているんですけど、なかなか実現できてないですね(笑)。

――それでは『テンプレ展開のせいで、おれのラブコメが鬼畜難易度』がどんな作品か教えてください。

本作は結野奏汰という主人公が『テンプレの神様』によって、テンプレの加護を得るラブコメディです。主人公はあわよくば幼なじみの天里美織と付き合いたいと期待するのですが、フラグが立つのは空から降ってきた美少女の皇女とばかり。さらにテンプレの影響で、幼なじみと結ばれることが難しくなってしまい、タイトルの通りテンプレ展開のせいで、幼なじみとのラブコメが鬼畜難易度になってしまった、という物語ですね。

――タイトルが作品の本質をすごく語ってますよね(笑)。本作の着想には何かきっかけがあったのでしょうか。

前作が終わってから、新作のプロットをいろいろと作っていたのですが、自分の書きたいものが奇をてらった作品になりがちで、なかなか通らなかったんです。そこでいっそのこと、奇をてらわずテンプレな話を書いてやろうと思ったわけです。でも、普通にテンプレを使えば良いというわけではないので、テンプレ展開ばかりにしたら、新しい物語が書けるんじゃないかと思い、そこから本作は生まれました。

――なるほど。十分奇をてらった作品になっている気もしますが、すごくハイテンションな物語になりましたよね。

作品のノリや物語のスピード感は、前作『今すぐ辞めたいアルスマギカ』を継承していると言ってもいいかもしれません。自分がコメディを書くと、キャラクターが暴走気味になるので、ハイテンションにならざるを得ないというか(笑)。

――そんなハイテンションさの中に「テンプレ」はテーマでありながら、挑むものというイメージも受けました。

そうですね。お話としてテンプレ展開はひたすらに起き続けます。そして主人公はそのテンプレと常に向き合うことになるわけですね。本作はコメディ色が強いのですが、その根幹には主人公のテンプレに抗う熱いものがあります。ある意味、テンプレって人生のどこにでもあるものだと思いますし、なかなか崩せないものでもあると思っていて、物語の端々にそんな要素も詰まっています。

――では続いて、そんな本作に登場するキャラクターについて教えてください。

まず、主人公の結野奏汰ですけど、とにかく可哀相なやつというイメージですね。普通に幼なじみが好きな少年だったんですけど、テンプレの加護を受けることになり、これで幼なじみとうまくいくと思いきや、距離の遠ざかるイベントに巻き込まれ続けてしまうわけです。結果として幼なじみとの距離がどんどん遠ざかってしまう悲運に見舞われるわけですね。一見常識人っぽく喋っていますけど、美織への気持が時々暴走したりと異なる一面も持っているキャラクターです。

次に本作のヒロインの一人、ティナリア=アルゼクランは、空から降ってきたり、皇女だったり、許嫁だったり、巨乳だったり、まさにテンプレの権化です。猪突猛進な性格で、とにかく主人公が大好きな点もポイントです。ただ、猪突猛進が過ぎるところもあり、ウザカワ系のヒロインになりました。

テンプレ展開のせいで、おれのラブコメが鬼畜難易度_挿絵1

※正真正銘、空から降ってくる皇女ティナリア=アルゼクラン

――本作の表紙も飾るティナですが、物語前半はすごく暴走してますよね(笑)

さきほどウザカワ系と言った通り、前半は暴走しまくりなのですが、後半はヒロインらしさが出てくるので大丈夫です、ご安心ください(笑)。

続いて天里美織ですが、目指したところはストーリーの根幹にある幼なじみの負けフラグです。可愛いけど負けそう、という感覚をイラストでもすごく体現していただきました。ティナが暴走気味なので、美織は抑え気味にしようと思ったんですが、胸に異常なまでのコンプレックスがあり、それをスイッチに暴走することもしばしば。とても応援したくなるキャラクターではあります(笑)。

―― 一方でそんな3人とはポジションの違う『テンプレの神様』にも俄然興味が湧きます。

『テンプレの神様』に関しては、キャラクター制作時点で、ブラックボックス化しています(笑)。奏汰のRINE(※作中におけるメッセージをやりとりできるアプリ)に可愛い女の子のスタンプを送ったりしていますけど、実際は男か女かもわからないんですよ。本人を直接見る機会もなければ、声を聞く機会もなく。なので、ネカマなのかもしれないし可愛い美少女なのかもしれない。その点も今後に期待してほしいです(笑)。

――そんな『テンプレの神様』も含めて、魅力的なキャラクターがたくさんいますよね。氷高先生のお気に入りのキャラクターは誰ですか。

Wヒロインでもあるティナと美織はどっちも好きで、優劣はつけられないですね。二人の気持はどちらも奏汰に向いているので、書き手としてもどちらかに肩入れはできないです(笑)。イラストについても、自分のイメージしていた以上の可愛さで描いていただきました。檜坂はざら先生には感謝しかないです。

テンプレ展開のせいで、おれのラブコメが鬼畜難易度_口絵

――注目のイラストがあれば教えてください。

カバーイラストのティナについては、表情といいポーズといい、ティナの可愛さが凝縮されているので注目してもらいたいです。

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※カバーイラストを飾るティナ

また、挿絵のひとつにティナがとある仮面をかぶって暴走するギャグシーンがあり、こちらのイラストも必見です。なんでこのシーンを担当編集さんが指定したのか小一時間問い詰めたいところではあるのですが、檜坂先生の新境地かもしれません(笑)。とにかく可愛いイラストがたくさん詰め込まれているので、ぜひ 見てもらいたいですね。

挿絵3

※氷高先生必見の暴走するティナを描いた挿絵はぜひ本書で確かめてほしい(本記事ではモザイク加工しています)

――イラストにも注目ですね。さて、本作のテーマでもある「テンプレ」について、氷高先生の考える「テンプレ」とはなんでしょうか。

……そうですね。テンプレって一般的にどうかなと考えた時、今はあまり褒める意味で使われているイメージはないように感じています。

――確かに。どちらかというと物事の揶揄として使われる方が多いかもしれませんね。

どっちかというとそういうイメージがあって。ただ、ライトノベルに限らず、じゃあ実際にそういったお約束が皆無な作品があるかっていうと、そんなこともないと思っていて。物語においてテンプレイベントは食材であって、そこをどう調理するのかが作者の腕の見せ所だと考えています。自分は未熟者ですが、その調理法のひとつとして、この作品を作りました。

――作品はもちろん、「テンプレ」って見方次第では我々の人生にも当てはまりますよね。

そうですよね。たとえば中学校や高校を卒業して、大学にいくなりして就職する。この流れもテンプレといえばテンプレ。ただ、我々もそういうテンプレがありつつも、どう生きていくのかはみんな抗っていると思うんですよね(笑)。

――ちなみに氷高先生に「テンプレ」的な展開が起こるとしたらどんなことが起きてほしいですか。

前提として、人生的にもっと早く何か起きてほしかったです(笑)。中学・高校と男子校だったので、女の子降ってこないかなとか、幼馴染いねーなーとか思ってたんで(笑)。

――人生にまで及ぶと「テンプレ」には深い業を感じます。そんな本作の執筆で苦労した点はありましたか。

実のところあんまり苦労はしてなかったりします。キャラクターがすごくよく動いてくれて、書きはじめたらキャラクター同士の会話もすごく弾んで、一気に書き進めることができました。しいて挙げるなら、プロット時点におけるティナのキャラ付で試行錯誤したことでしょうか。案のひとつに大人しく献身的な美少女という設定もあったのですが、最終的には破天荒プリンセスに落ち着いて、作品の魅力でもあるハイテンションさが増したと思います。ただ、この破天荒プリンセスが誕生するまでにもひと悶着あって、こちらはぜひ本作のあとがきで確認していただければと思います(笑)。

――『テンプレ展開のせいで、おれのラブコメが鬼畜難易度』はどんな方に読んでもらいたいですか。

幅広く読んで欲しいと思います。ハイテンションなコメディ作品なので、本を笑って読みたい人にオススメの作品です。また、テンプレばかり起きるので、安心感を求める人にもオススメできますし、脱テンプレという方にもテンプレから生まれる新しいテンプレとして楽しんでもらえるかなと思います。前作『今すぐ辞めたいアルスマギカ』を楽しく読んでいただいた方や、ファンの方にもぜひ読んでもらいたいですね。前作を読んでいない方は本作を読んで、ぜひ『今すぐ辞めたいアルスマギカ』にも興味をもってもらえたらと思います。

――氷高先生が作家を目指したきっかけについて教えてください。

小学生の時に児童文学などの本が好きで結構読んでいた記憶があります。初めて小説と呼べるものを書いたのは小学校4年生の時で、授業のリレー小説でしたね。それが気に入って、授業が終わった後も自分で続編を書き始めて、小説を書く人になりたいと思い始めたのがこのタイミングだったと思います。小説大賞への応募は大学に入ってからで、サークル仲間をはじめとした周囲の人たちの姿を見て、応募しようと思うようになりました。ただ、大学生の頃は一次選考落ちばかりでしたね(笑)。もう諦めようかなと思った矢先に、とある小説大賞で最終選考まで残ったりもしました。ただ、その後は就職などの影響もあって、しばらく書くのを辞めてしまいました。

――挑戦とデビューの間にもブランクがあったわけですね。

そうですね。趣味で短編は書いていた気もするのですが、応募という意味では3年近く書いていない時期がありました。ただ、一度最終選考に残ったことも記憶の片隅にはあって、もう一度応募をしようという思いに繋がりました。書くのを辞める前までが全部一次選考落ちだったら、今は書いていない可能性も十分あったと思います。一度最終選考まで残っていたからこそ、再チャレンジ、デビュー、そして今に繋がっていると思います。

――作家として今後の目標や野望があれば教えてください。

ライトノベルについてはもちろんですが、幅広く執筆していきたいです。自分は女の子が頑張る物語が好きなので、そういった作品も書いていきたいですし、児童文学のようなジャンルにも挑戦してみたいです。常にライトノベル市場で女の子の主人公が爆発的に流行しないかなと思ってます。来たらいつでも書いてやるぞ、と(笑)。書きたいものと市場と、どっちも大事だと思うので、その間に入るベストな作品を書いていきたいですね。迎合しすぎちゃうと自分は書けなくなってしまうと思うので。

――それでは最後にファンのみなさんに向けて一言お願いします。

前作から筆者を知っていただいている方には、どうもお待たせしました、と。いろいろと方向性を模索した結果、前作同様のハイテンションコメディとなりました。キャラクター同士の掛け合いをぜひ楽しんでもらえたら嬉しいです。また、本作から筆者を知っていただいた方は、どうもありがとうございます。辛い時でも笑い飛ばせるような作品を目指して書いていますので、最後まで楽しんでもらえたら幸いです。

――本日はありがとうございました。

どうもありがとうございました。

<了>

人生とテンプレにも言及された氷高悠先生にお答えいただきました。「テンプレ」だけどただの「テンプレ」ではない最新作『テンプレ展開のせいで、おれのラブコメが鬼畜難易度』は必読です!

©氷高悠/KADOKAWA 富士見書房刊 イラスト:檜坂はざら

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