独占インタビュー「ラノベの素」 円城寺正市先生『機動城砦サラトガ』 ※プレゼント企画あり

独占インタビュー「ラノベの素」。今回は8月15日にサーガフォレストより『機動城砦サラトガ』が発売となる円城寺正市先生です。お盆の影響で販売店には既に並び始めている本作。また、コミックマーケット90では大ボリュームのコミカライズ小冊子の配布も決定しているなど、本作の見どころについてお聞きしました。

機動城砦サラトガ

【あらすじ】

エスカリス=ミーミルーーここは砂洪水《フラッド》と呼ばれる現象から逃れる為に、多くの人々が機動城砦という移動型都市で生活している砂漠の国。地虫《バグ》と呼ばれ蔑まれる砂漠の民の少年ナナシは、機動城砦に攫われた義妹キサラギを救うべく、単身城砦都市サラトガに潜入するが、街で遭遇したサラトガ伯ミオに変質者と間違われた挙げ句、銀嶺の剣姫セルディスの力によって捕えられてしまう。自身の処遇を決める場で、妹を攫ったのはサラトガが追っている別の機動城砦ゲルギオスである事を知ったナナシだったが、砂漠の民が有する砂洪水《フラッド》の発生を予測する能力に目を付けたミオによって、ゲルギオスまで連れて行ってもらう代わりにサラトガへの協力を命じられるのだった。こうして少年は城砦都市間の勢力抗争に巻き込まれていく……。これは、銀嶺の剣姫と地虫《バグ》と呼ばれた少年の物語。

――本日はよろしくお願いします。

よろしくお願いします。

――早速ですが、円城寺先生のプロフィールを教えてください。

大阪南部にある泉州の出身で、これまでは本を読む側にいました。学生時代は柔道やバンド活動、社会人になってからはサッカーやフットサルと、書くこととは程遠い生活をしていました。書く側に身を置いたのはここ数年のことだったので、作家としてデビューする現在の状況についてはとまどっているのが本音ですね。嫌いなものはたこ焼き。お陰でニセ関西人の疑惑をかけられることがあります(笑)。子供の頃はお誕生日会なんかでいつも出てくるたこ焼きを延々と食べていたはずなんですけど、どこかのタイミングからか一切食べられなくなってしまったんですよね……。

――何事も過剰の一歩手前がよいという事例でしょうか……。逆に明るく楽しい好きなものを教えてください。

納豆が大好きで、納豆の海で泳ぎたいです(笑)。あとは本を読むことがとにかく好きですね。本に関しては年がら年中ジャンルを問わず何かを読んでいます。特に好きなのは中国の歴史小説ものです。「晏子」とか「楽毅」とか。漫画ももちろん読みますし、特に「ドリフターズ」が大好きで台詞まわしが凄いなと思いながらいつも読んでいますね。

――ライトノベルも結構読まれたりするんですか。

ライトノベルを読むようになったのは「這いよれ! ニャル子さん」のアニメをきっかけに、そこからドハマりしました(笑)。それからは1日に3冊くらいのペースでライトノベルを読むようになって、最終的には自分が書く側になるという。

――ハマることの楽しさはわかるのですが、1日3冊は相当なペースですよね。

実は速読が特技なんです(笑)。

――どれぐらいの速度で読まれるんですか。

たとえば300ページくらいの文庫1冊を誰かに話せるレベルで理解しようと思って読むのであれば1時間くらいでしょうか。自分の中だけで理解するのであれば、もっと短い時間で読めます。今は書く側にまわって、1日1冊程度に落ち着いていますが(笑)。

――羨ましい。速読能力をシェアしてほしいです(笑)。本作はWEB連載作品ですが、WEB小説も読まれていたりするのですか。

実はまったく読んでいなかったというか、小説投稿サイトの存在さえ書き始めるまでは知らなかったんです。長いこと本を読み続けてきたんですけど、あるタイミングで自分の身になっている感覚が薄れてきて。ずっとインプットばかりだったので、アウトプットをしないといけないんじゃないかと感じるようになりました。最初はブログでも書こうかなと思ったんですけど、そんな折に小説投稿サイト「小説家になろう」を目にして、こういったサービスがあると初めて知りました。2014年も終わろうかというタイミングで知って、投稿するようになりました。

――それでは円城寺先生のデビュー作『機動城砦サラトガ』の物語について教えてください。

本作は砂漠の国「エスカリス=ミーミル」で、地虫(バグ)と呼ばれ蔑まれている少数民族「砂漠の民」の少年が主人公の物語です。砂漠の国は城砦都市が常に動き回っている特殊な国で、ある城砦都市にさらわれた義妹を助けるために、主人公が城砦都市のひとつである「サラトガ」への潜入から物語が始まるわけなのですが、主人公は機動城砦同士の勢力争いや巨大な陰謀に巻き込まれていくことになります。書籍第1巻では主人公と銀嶺の剣姫との出会いがメインになっています。

――見どころのある設定やビジュアルが満載な本作ですが、どのようにして生まれた物語なのでしょうか。

本作の前にも何作かWEBで投稿していたのですが、リアリティとの兼ね合いというか、言葉にするのは少し難しいんですけど、実際の問題と照らし合わせた時との整合性など、足枷を感じていた部分がありました。そこで、もっと漫画的な表現の作品を書きたいと思ったんです。最初はギャグっぽいものにしようと考え、団地が巨大ロボットに変形して蝦蛄(シャコ)の怪物と戦ったり、ヒロインはお隣の未亡人にしてみようとか。なので、最初は機動集合住宅で案を練っていて、プロローグも書きはじめていました。そんな折にふと『機動城砦サラトガ』というワンフレーズが浮かんで、漠然と「いいな」と感じたんです。そこでタイトルをベースに新しく書き始めたら、しっくりときて、こっちを書き進めようと思ったのが誕生のきっかけでした。『機動城砦サラトガ』はタイトルありきで書いた小説ということになりますね。

――初期案とのギャップが凄まじいですね(笑)。しかしタイトルから物語が生まれるというのは珍しい創作過程のような気がします。

そうかもしれません。漠然と浮かんだフレーズに対して、どんな風景になるのだろうと考えました。そうすると砂漠があってだとか、城壁があってだとか、ぼんやりとでしたが城壁を登っている男の子の姿が浮かんだりもしました。

――なるほど。作家さんの中には頭に浮かぶ文字をそのまま書きだすタイプや、浮かんだ映像を文章に落とし込むタイプなど、様々なスタイルがあるようです。円城寺先生はどちらかというと後者のタイプでしょうか。

少し違う気がします。自分も変なタイプだなとは思っていて、頭に浮かぶのは映像やシーンではなく、風景や景色であることが多いです。登場する人間はのっぺらぼうですし、特定のワンシーンと表現するにも漠然としすぎていて、自分自身もよくわかっていないことが多いかもしれません(笑)。

――そんな本作に登場するキャラクターですが、二面性を持つキャラクターが多いことも特徴的だと感じました。

そうですね。登場するキャラクターたちは全体的に二面性を意識して書いてます。これは物語の構造とも関係してるんですけど、本作のストーリーではコメディ的な要素を排してしまうと非常に重たい話になってしまうんですよ。なので、コメディ要素で物語上における「重さ」を軽減していたりもします。キャラクターにはそれぞれシリアスな面とコメディな面があり、ある意味二種類の人間を一人に同居させるイメージの作りになっていて、それが二面性として映るようにしています。

――それでは物語の中で躍動するキャラクターについて少し詳しく教えてください。

まず主人公のナナシは、本作誕生のきっかけにもなった「城壁を登っている男の子」がモデルになっています。主人公らしい主人公にしようと考え、誠実で真面目で強い少年です。一方で、完璧な人間というわけではなく、自己評価が極端に低い性格を持っています。これは地虫(バグ)と蔑まれる民族であることも関係していますが、それを差し引いても常に自分を低いところに置きたがるキャラクターなんです。

本作のヒロインの一人でもある銀嶺の剣姫ことマスマリシス=セルディスについては、ある意味悲劇的な背景の持ち主と言えます。強くなり過ぎたがために国を追われ、主を探すという目的にしがみつく人間として描いています。国を追われたといっても、追放されたわけではなく、様々な事情が重なって出て行かざるを得なかったわけですが。もともとは明るくて天然ボケな性格なんですけど、それが隠れてしまうような抑圧した生き方をしてきています。

ナナシ2マリス2

※砂漠の民の少年ナナシと銀嶺の剣姫ことマスマリシス=セルディスのキャラクターデザイン

そしてWEB版では読者に一番人気があると思われるサラトガ伯のミオは、他の機動城砦に留学したりと天才的な気質の持ち主です。一方で、父親が非常に英明な領主だったこともあって、その跡を継ぐプレッシャーは大きく、自然と肩肘を張ってしまうようなキャラクターでもあります。そういった反動なのか、ミオは随所でボケたりツッコんだりしていますね。

ミオ2

※サラトガ伯ミオのキャラクターデザイン

――なるほど。二面性のお話も含めて、特に銀嶺の剣姫はプロローグがある意味本当の性格とも言えそうですね。

そうですね。もともとの性格についてはプロローグで垣間見えるんじゃないかなと思います(笑)。

――続いて機動城砦が動き回る本作の世界についても教えてください。

本作は砂漠の国が舞台ですが、北側には銀嶺の剣姫の故郷である永久凍土の国などがあり、東側には磁器の国(ネーネア)という国があります。南側には海が広がっていて、ひとつの巨大な大陸が存在しているわけです。そして、砂漠の国「エスカリス=ミーミル」には、9つの機動城砦が存在しています。本作の舞台でもある「サラトガ」は全長が3km、全幅が1.5kmあり、とにかく巨大です。機動城砦は居住区などをはじめとした人工物の塊で、山や川というような自然物はありません。せいぜい畑や牧場があるくらいですね。

――第1巻では「サラトガ」以外にも2つの機動城砦の名前が出てきますよね。

「ゲルギオス」と「メルクリウス」ですよね。簡単に説明すると「ゲルギオス」は全長が3km、全幅が3kmの正方形型の機動城砦で、城壁に傾斜があり台形に見えることが特徴です。「メルクリウス」は最強の機動城砦と言われていて、戦闘城砦というあだ名も持っています。全長が6km、全幅が3kmと「サラトガ」や「ゲルギオス」よりも巨大な機動城砦です。今後の登場に期待していただければと思います(笑)。

――機動城砦以外にも、本作には魅力的なキャラクターが多数登場しています。円城寺先生のお気に入りのキャラクターを教えてください。

お気に入りというより、書いていて楽しいのはキリエとミリアのアルサード姉妹ですね。この2人はキャラクターデザインのラフの段階から、がっちりとイメージがハマったキャラクターでもあって、本当に理想通りというほかないです。イラストレーターのERIMO先生のイラストがすごく良いので、WEBの読者の方にもご満足いただけるのではないかと思います。

キリエ

※アルサード姉妹の姉であるキリエのキャラクターデザイン

――本作の執筆にあたって苦労したことはありましたか。

本作を書籍化するにあたっては、丁寧にやりたいと担当編集さんにも伝えて動き出したわけなんですけど、書籍化範囲を決定した後、文字数が足りなくて加筆する必要があるというお話をいただきまして。「どれぐらい足りないんですか?」と聞いたら「5万字足りません」と(笑)。通常のライトノベル1冊が10万文字ぐらいですので、まるまる半分足らず、「これは頑張らないといけない」と思いながら大幅な加筆修正を行いました。ここまではまだ良かったんですが、WEB小説の横書きフォーマットを縦書きに換えた途端、いろんなものが崩れ去りまして。文章のリズムの違いや、読んだ時の感覚的な肌触りがまったく違っていることに愕然としながら、最終的にはほとんどまるまる1冊分を書きなおすハメになりました。話の大筋はWEBとは変わらないですけど、文章のレベルでは別物になっていると思います。

――さて、そんな本作ですが何やら限定のコミカライズ化が行われるとか。詳細について教えてもらってもいいですか。

はい、お話をいただいた時はホントびっくりしました。コミカライズは紹介の読み切り漫画なんですけど、28ページの大ボリュームでコミケ期間中に一二三書房さんの企業ブースで小冊子の無料配布が行われるそうです。ネームも拝見させていただいたのですが、コミカライズを担当していただいたマツリセイシロウ先生には『機動城砦サラトガ』を凄く読み込んでいただいているなという印象を受けました。キャラクターの表情一つとっても、的確に表現されていて凄いなと。漫画になるだけでも凄いことなので、とても嬉しいですね。

――28ページというと連載の1話分にも相当するボリュームです。拝見させていただいたのですが、紹介用なのが惜しいくらいの素晴らしい出来でした。

見せ場を本当にたくさん詰め込んでいただきました。紹介用なので多少駆け足ですけど、「ジゲン」のシーンや最後の銀嶺の剣姫のシーンは、ラフを見ただけでも強烈なインパクトがあってとても印象に残っています。これ、小冊子は自分も貰えるんですかね?

――担当編集さんに確認したところ送るとのことです(笑)。コミケに立ち寄られる方はぜひゲットしてもらいたいですね。一部書店でも立ち読みができるようになるそうです。

お世辞抜きに素晴らしい出来なので、コミカライズ小冊子もよろしくお願いします!

――せっかくなので、コミカライズ版の一部も限定で公開いたします!

サラトガ_漫画1

サラトガ_漫画2

サラトガ_漫画3

――続いて作家としての今後の目標などがあれば教えてください。

スタートラインに立てたということが奇跡に近いんですけど、せっかく立てたわけですから、作品を読んだ方に対して何かポジティブな印象をもってもらえるような作品を作っていきたいですね。

――それでは最後にファンのみなさんに向けて一言お願いします。

WEBでお読みいただいている方にはお待たせしました、と。かなり早いタイミングに書籍化しますと発表させていただいていたので、やきもきされていたのではないかなと思っています。ただ、それだけ時間をかけさせていただいたということで、自信をもって読んでいただけるものができあがりました。ぜひお読みいただければありがたいなと思います。また、興味を持った、書籍で読んでみたいと思われた方には、本作はコミカライズからでもインタビュー記事からでも試し読みからでも、作品への様々な入口が用意されています。「手が切れるような研ぎ澄まされた作品」になっているかと考えながら書きあげましたので、ぜひ読んでいただければと思います。

――本日はありがとうございました。

ありがとうございました。

<了>

タイトルから生まれた物語を巨大なスケールで書き綴る円城寺正市先生にお答えいただきました。シリアスだけじゃない愛嬌溢れるキャラクター達の登場する砂漠の国のファンタジー『機動城砦サラトガ』は必読です!

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『機動城砦サラトガ』発売記念プレゼント企画!

円城寺正市先生のサイン入り原作小説の第1巻、そしてコミックマーケット90限定配布のコミカライズ小冊子をセットで5名の方にプレゼントいたします。

機動城砦サラトガ機動城砦サラトガコミカライズ

応募方法はとても簡単。応募対象期間となる2016年8月8日(月)~8月11日(木・祝)の期間中にTwitterで本インタビュー記事をツイート、またはリツイートするだけ。応募者の中から抽選で5名様に「ラノベニュースオンラインのツイッターアカウント(@lnnews)」よりDMにてご連絡させていただきます。応募を希望される方は、ラノベニュースオンラインのツイッターアカウントのフォローをお願いします。

※当選者の方へはプレゼント郵送先の住所や氏名等の情報をお伺いいたします。

※プレゼントの発送はサーガフォレスト編集部様より実施するため、頂戴した情報はサーガフォレスト編集部様へ共有させていただきます。

※当選発表は当選連絡のDMにて代えさせて頂きます。

©Masaichi Enjouji/HIFUMISHOBO イラスト:ERIMO

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