独占インタビュー「ラノベの素」 羽田遼亮先生『魔王軍最強の魔術師は人間だった』

独占インタビュー「ラノベの素」。今回は9月30日にモンスター文庫より『魔王軍最強の魔術師は人間だった』が発売となる羽田遼亮先生です。同氏3作目となる作品の刊行にあたり、本作の世界観や、1本の作品を書くことと小説投稿サイトにおける作品の書き方の違いなどについてお話をお聞きしました。

魔王軍最強の魔術師は人間だった

【あらすじ】

魔王軍最強との呼び声高い、魔王軍第七軍団所属「不死旅団」。その団長を務める者の名をアイクという。絶大な魔術で敵をなぎ払うさまは、まさしく「魔物」。だが、アイクはある重大な秘密を隠していた。それは――「実は俺、人間なんだよね!」。魔王軍幹部として働くことになったアイク。だが、転生者は彼だけではなかった――!! 「小説家になろう」発、大人気魔界転生ファンタジー。

――本日はよろしくお願いします。

よろしくお願いいたします。本日は貴重な時間を割いていただき、ありがとうございます。

――それでは早速ですが、羽田先生のプロフィールについて教えてください。

第15回エンターブレインえんため大賞にて「優秀賞」をいただき、ファミ通文庫よりライトノベル作家としてデビューさせていただいています。ファミ通文庫で2冊刊行しており、今回はモンスター文庫より『魔王軍最強の魔術師は人間だった』を出版することになりました。好きなものは映画や漫画、ライトノベルなんですが、特に映画が大好きで、子供の頃から数えきれない程観ています。

――映画が大好きとのことですが、劇場にはかなり足を運ばれているのでしょうか。

実のところ劇場にはあんまり足を運んでないんです。主にレンタルビデオショップですね……あれ、今はBlu-rayやDVDが主流だからレンタルビデオとは言わないんですかね……。子供の頃はVHSで……と、それはともかくチェーン店ではない個人経営のお店がありまして、そこの新作の棚とか全部見つくしちゃうくらい通い詰めていました。もう置いてある映画全部見たんじゃないかなってくらい。

――お店の映画を全部って、数百本どころの話じゃないですよね。

数千本は観たんじゃないですかね。子供の頃にレンタルされていた映画であれば、冒頭3分でどの映画かわかると思います。高校時代はお小遣いのすべてを映画のレンタルに使っていましたから。もっぱら洋画ばかりでしたが(笑)。作家になって観る本数は減ってしまいましたが、それでも月に10本くらいは観てると思います。今でも「ゴッドファーザー」が好きで、台詞を暗記しているくらいです。

――凄いですね。羽田先生お気に入りの「ゴッドファーザー」の好きなところはどんなところですか。

一言で言い表すことが難しいですね。二晩くらいお付き合いいただけるのであれば……。

――すいません、そのお話はまた日をあらためて(笑)。では発売となる『魔王軍最強の魔術師は人間だった』の物語について教えてください。

物語ですが、内容はタイトルのままですね(笑)。魔王軍の一員として転生した主人公ですが、魔族でも魔物でもなく人間で、バレたらその立場が非常に危ういんです。なので、魔族のフリをしながら魔王軍で出世していくことになるわけです。私自身、戦記物が非常に大好きだったので、いざ書こうと思い立ち、アイデアとして主人公の立場を魔王軍に置きました。そして魔王軍なのに人間である、という矛盾した設定の上に物語を構築しています。見どころは最初から最後まで全部、とだけ(笑)。

――戦記をベースにした少し変わった転生モノということですね。世界観が気になるのですが、どんな世界なのでしょうか。

本作の舞台は人間と魔王軍が共に拮抗した状態で争っている世界です。過去には魔王軍が優勢になりかけた状況が何度も生まれているものの、魔王軍の魔族には非常に我が強い者が多く、内輪での揉め事や内乱を繰り返し続けてきた歴史があります。なので、どんなに優勢になっても魔王軍は自滅して人間軍に押し返される。人間側からしてみれば、押しこまれることはあっても、実のところ本当の意味で窮地に立ったことはないんですね。また、種族には魔族や人間の他にもたくさんいます。エルフ族であったり、ドワーフ族であったりですね。そして、主人公と同様に異なる世界の記憶を有して転生している者たちもいるわけです。

――魔王軍は内側がとても脆いですね……。ちなみに他の種族は魔王軍と人間軍の勢力争いには参加していないのでしょうか。

まず、魔王軍の脆さについてですが、今代の魔王によって変化しつつあります。同じことを繰り返さないために、「統率」という観点に重きを置いているわけです。なので、魔王軍は再び優勢になり始めていて、歴史がいよいよ動き出すかもしれない、という状況ではあります。他の種族については、閉じこもっていたり、全滅ではないものの滅ぼされたりしていますね。ドワーフ族は、人間軍と魔王軍との戦いが始まる以前に、人間によって滅ぼされた歴史を持っています。

――なるほど。人間族が中心となって、他の種族との争いを繰り広げているイメージが近そうですね。

そうですね。作中では魔王軍と人間軍がぶつかっているわけで、人間軍は歴史を遡れば他の種族とも戦ってきているわけです。あくまで人間族からしてみたら今の敵が魔王軍というだけ。人間側の目的というか、考え方としては人間以外の種族をひとつもふたつも下に見ている、ある種の人間至上主義が大きく浸透していますね。もちろんそうではない人間もいるにはいますが、極めて少数です。

――見方によっては人間が巨大な「敵」として描かれているわけですね。魔王軍側は魔族と魔物で大別されていると思うのですが、この2つの違いはなんでしょうか。

端的に言うと知能や知性の有無、そして能力です。主人公アイクの側近であるジロンが、オークという魔物でありながら、魔族として扱われているひとつの例ですね。魔物でも力を兼ね備えていれば魔族として扱われ、魔物よりも良い待遇を受けることができるわけです。

――そんな魔王軍を中心に描かれる本作ですが、登場するキャラクターについて教えてください。

まず主人公のアイクですが、魔王軍の中で生まれ育った人間で、魔族になりすましながら魔王軍として戦っています。性格は熱血タイプというわけではなく、冷静さを兼ね備えているタイプですね。アイクを育てた魔族の影響を多分に受けています。もっとも知性派ではあるのですが、魔術的な力も多分に兼ね備えているという点も特徴です。性格的な個性は敢えて薄く描いているので、多くの読者に共感してもらえるかなと。

アイク

※本作の主人公アイクのキャラクターデザイン

次にセフィーロですが、アイクのお姉さん代わりでもある魔族の軍団長の一人ですね。自分の書く作品には気の強いヒロインが登場する傾向があって、今作ではセフィーロがそれにあたります(笑)。アイクが人間であることを理解しながら、魔王軍の中でアイクを庇護する存在でもあります。

そしてアイクの側付きとなるサティは人間です。非常に従順なヒロインとして性格付けされていて、本作における戦記、内政、日常パートの「日常」を支える存在です。魔王軍の中でただ一人の人間であるアイクの人間性を繋ぎとめる役割を果たしていくことになると思います。

サティ

※アイクの従者となるサティのキャラクターデザイン

――いろいろと気になるキャラクターが登場するわけですが、羽田先生のお気に入りは誰ですか。

セフィーロさんですね(笑)。イラストを見た時には、あまりにもイメージ通りのキャラクターとして描かれていて感動しました。KUMA先生には本当に感謝しています。

セフィーロ

※セフィーロのキャラクターデザイン

――ではイラストを見てあらためて好きになったキャラクターはいますか。

そうですね、全部のキャラクターがそうなのですが、敢えて挙げるなら主人公のアイクでしょうか。彼は人間なので魔王軍にいる時は魔族の格好をしています。そうするとビジュアルも少し特殊になるのですが、仮面を付けている姿は自分の想像を遙かに超えたビジュアルになっていました。仮面そのもののデザインもKUMA先生の素晴らしいセンスによって何倍も格好よくなっています。

――口絵や挿絵などをはじめ、お気に入りのイラストを教えてください。

全部なのですが、敢えて選ぶとしたらカバーイラストですね。

魔王軍最強の魔術師は人間だった

――続いて本作を執筆するにあたって、苦労したことがあれば教えてください。

主人公は魔力的にも知識的にも強いうえ、前世の知識や歴史を活用します。その際、誤った知識を展開しないよう、資料を調べながら書いているのですが、その点には苦労しましたね。知識の幅も必然的に広くなってしまうので。あとはファンタジー要素と実在の知識や歴史における面白さとリアリティのバランスには苦労しました。個人的には、ちょうど中間くらいに仕上がっているとは思うのですが(笑)。

――本作は小説投稿サイト「小説家になろう」にて執筆されていた作品ですが、羽田先生が小説投稿サイトを使ってみようと思ったきっかけはなんですか。

サイトの名前だけは、自分が作家になる前に耳にしたことはありました。ただ、その時はまったく触れていませんでした。きっかけはより多くの読者に読んで頂けるプラットフォームを求めてですね。何万もの人に作品を見てもらうことで、自分の技量も上がるのではないか、そう思い投稿を始めました。

――羽田先生は新人賞応募で受賞もしており、小説投稿サイトも利用されています。それぞれの執筆における違いなどがあれば教えてください。

前提として書き方、そして読まれ方もまったく違うと思っています。自分が感じている一番大きな違いは、1冊の作品の場合、1冊(1巻)単位で起承転結とカタルシスを盛り込むわけです。なので、よほどのことがなければ、買っていただいたら最後まで読んでもらえますよね。一方小説投稿サイトでは、1話単位が個人差こそあれ、2,000文字から5,000文字くらいで、その話が面白くなくては次を読んでもらえないんです。

――なるほど。そういった違いの中で、羽田先生が意識していることはなんでしょうか。

自分は1話あたり(2,000~5,000文字)で、大なり小なりはありますが、起承転結を意識して書いていますね。ここは本当に1冊を意識して書くときとまったく違うので、苦労しながら書いている点もありますね(笑)。

――ありがとうございます。それでは作家としての今後の目標を教えてください。

ファンタジーだけではなく、いろんなジャンルの作品を書いていきたいです。たとえば現代ラブコメだったり、ミステリーだったり。主軸としてはずっと小説家でいたいですけど、ライトノベルやWEB小説の枠組みを外れている何かでも、いろんなことにチャレンジしたいです。

――最後にファンのみなさんに向けて一言お願いします。

「小説家になろう」の読者様はもちろん、書籍版から入っていただいた方にも楽しめる作品にしています。書店で見かけたら手に取ってもらえたら幸いです。

――本日はありがとうございました。

ありがとうございました。

<了>

新人賞の受賞と小説投稿サイトの双方から書籍化経験のある羽田遼亮先生にお答えいただきました。魔王軍の中で一人の人間として上へと昇り詰めていくファンタジー戦記『魔王軍最強の魔術師は人間だった』は必読です!

©羽田遼亮/双葉社 イラスト:KUMA

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