【特集】「CHIBA 高校生のためのサブカル教室」登壇ライトノベル作家に聞く!【第1回:秀章先生】

2016年8月から官民協力のもと開催された「CHIBA 高校生のためのサブカル教室」。『ライトノベル』、『イラスト』、『漫画』の3コースで行われたワークショップの『ライトノベル』講座には、3人のライトノベル作家が登壇した。そこで今回、すべての講義を終えた3人の作家にインタビューを実施。いつもは書く側にいる3人の作家は、現役の高校生たちとどのように接して、どんな話をしたのだろうか。また、どんな準備や考えをもって臨んだのだろうか。全3回でお送りする特集の第1回を飾るのは秀章先生。ワークショップでは「世界観」と「キャラクター造型」を担当した。

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――『脱兎リベンジ』のインタビューから2度目のご登場ということで、あらためて自己紹介や好きなものとか教えてもらってもいいですか。

 

埼玉生まれ埼玉育ち埼玉在住、作家の秀章です。第5回小学館ライトノベル大賞「ガガガ賞」を『脱兎リベンジ』で受賞してデビューしました。好きなもの、と言いますか、日本語ラップのブームが到来していて凄く嬉しいです。ついにこの時代が到来したなと。ラップが大好きで、日本語ラップはなかなか日の目をみなかったんですけど、最近の取り上げられ方をみたらもう胸が熱くなりますね。

――深夜番組でも積極的に取り上げられていますよね。ご自身もラップはされるんですか。

高校時代に遊びのレベルではありましたが(笑)。今はファンとして好きです。ただ、あらためて考えるとそれが自分の創作活動の原点にもなっているんじゃないかなと。一緒にやっていた友達が辞めていってしまい、自分一人でできる創作活動を考えて、小説を書き始めたことが今に至るルーツかもしれないです。

――作家となるまでのご自身の経験なども踏まえて、今回ワークショップの講師を担当されたわけですが、講師のような経験はこれまであったのでしょうか。

一切ないです。今回が初めてだったので、いい勉強になったというか。あんまり緊張もしませんでしたし、熱心に生徒さんも聞いてくれて、やりやすかったです。

――渡航先生からは資料を入念に準備されていたと聞きました。

いや、そうでもないと思うんですけど(笑)。ワークショップでは第2回のテーマ「世界観」と第3回のテーマ「キャラ造型」を担当しましたが、ひとつひとつ掘り下げて授業ができるように、自分の中で話したい内容を資料にまとめて授業をしただけです(笑)。

――それでは早速、秀章先生が担当された第2回の「世界観」と第3回の「キャラ造型」ではどのようなお話をされたのか教えてください。

「世界観」については、まず作り方ですね。たとえばファンタジー世界を作る場合、世界をまるまるひとつ作らないといけません。一からいろんなことを考えなくてはいけないわけで、やっぱり難しいよねと。こだわることも大切なんですけど、こだわりすぎてしまうと物語そのものを書けなくなったりもする。なのでどこまで掘り下げるのか、その見極めの大切さを話したりしました。またファンタジー世界だけの話ではなく、現代を舞台にした学園もの――それこそ異能力とかが出てこなくても世界観というものはあると思うんです。

――確かにそうですよね。ギャグ系の作品では「死ぬだろそれ」という状況でもへっちゃらだったりします。

そうですね。世界観を作るというのは、その作品の中で許されることと許されないことの線引きを明確にする、という意味もあると思っていて。極端な話ではありますけど、日常系のほのぼのとした作品では人死には出さないだとか、そういったものですね。それこそ徹底的にストレス値をなくすことがベストな作品であれば、そもそも悪人が登場しないことが前提になったりもします。そういうお話もしました。

――秀章先生ご自身は、世界観を構築する時に気を付けていることはありますか。

設定的な世界観については、掘り下げることが大好きな人と、そうでない人がいると思っていて、僕は苦手な方だと自覚しています(笑)。なので、ハイファンタジーのような世界観をとことん突き詰めて考証も重ねて……っていうような作品は書かないと割り切ってしまったり(笑)。僕も必死に考えはするんですけど、本当にすごい人達にはかなわないので、勝負するべきところは別の長所でカバーをしようと常々考えてはいます。

――キャラクター造型についてはどのようなお話をされたんですか。

そもそもキャラクターはどうやって作るのか、みたいな話から始めました。自分の考え方を例にして、身近にいる人をモデルにするだとか、属性からもってきて逆算で考えていくだとか、キャラクター同士の配置から考えるだとか。あとはどうやったら面白い掛け合いを書くことができるのかだとか、そういったお話をしました。

――すごく気になるんですけど、面白い掛け合いってどうやったら書けるんですか。

これは持論になるのですが、友達と話すことがとても重要だと思っています。それこそ些細な冗談を言い合ったりすることは、すごく身になるんだろうなと。実際に作品の中でキャラクター同士の掛け合いが面白い作家さんとお話をすると、やはりその作家さんご本人が話していて面白いんですよね。それこそ、川岸殴魚先生や渡航先生はその筆頭だと思っていて、あの二人の会話は常に漫才めいているというか、ボケのひとつひとつが面白くて、培ってきたセンスだったり、間だったり、ワードセンスだったりが凄く洗練されているんですよ。なので、対人関係で培われるものが大きいんだろうなと、僕は思ってます。

――なるほど。一方でコミュニケーションを苦手としている方も少なくないですよね。

まさにその通りで、内気な方やコミュニケーションが苦手な方が、書く側にまわることも少なくないと思います。そういう場合においては、バラエティ番組を見て、番組の中で展開される芸人さんの掛け合いを勉強するのもひとつの手じゃないかなと。漫才を見るのもアリだと思っています。そういったことも授業でお話させてもらいました。

――今回、ワークショップに臨むにあたって気を付けたことや、準備をされたことはありましたか。

どこから話せばいいんだろうという点には悩みました。生徒さんが高校生で限定されているとはいえ、創作経験の有無はもちろん、高校1年生から高校3年生まで年齢のバラつきもある。実際に小説を書いたことがある人への説明は、経験もあるのでわかってもらいやすい反面、あんまり面白くないんじゃないだろうかとか。かといって難しい話をし過ぎると、このワークショップに来て初めて小説を書いてみようと思っている人にはハードルが高いんじゃないだろうかというのもあって、いろいろ考えました。僕は今回だけでもすごく悩んだので、学校のような教育現場でもこんな悩みがたくさんあるんじゃないかとそっちの心配もしてしまいました(笑)。

――悩まれた中で、実際の講義はどのように行われたのでしょう。

幸いなことに、授業時間が長かったことと、生徒さんの数も非常に多いというわけではなかったので、全体の時間と個別の時間を取りました。全体に向けた講義では基本的なことを、個別の時間ではそれぞれにあったアドバイスができればと思っていたので、実際にやれてよかったです。せっかくの機会でしたし、個別に踏み込んだアドバイスができればと思っていたので。

――ワークショップは全6回。秀章先生、渡航先生、土屋つかさ先生で分担されていました。三人で決め事などはあったのでしょうか。

3人の共通目標としては、全6回の講義で生徒さんが一本の作品を仕上げるところまで持って行こうと決めていました。なので、トピックスをそれぞれ順序立てて、授業の回を重ねるごとに作品を創る上での全体的な流れとなるように進めました。生徒さんの情報も3人でしっかりと共有できていたので、講師は代わる代わるでしたが、一連の授業として生徒さんには受け取ってもらえたかなと思っています。

――各トピックスは各人のスケジュールを鑑みて采配されていました。「世界観」や「キャラクター造型」以外で担当してみたかったトピックスはありましたか。

そうですね……強いて言うなら「プロット」のトピックスはやってみたかったですね。僕自身、ストーリーラインにこだわることが多くて、キャラクターもストーリーに合わせて練り上げたりすることが多いんです。そういった作り方をしてるからこその失敗ですとか、落とし穴も自覚してる部分が多々あるので、教えてみたかったというのはありますね(笑)。

――実際に授業をしてみて、現役高校生たちの反応はいかがでしたか。

最初はシャイな印象を受けましたが、こちらから質問を投げかけたり対話したりするにつれ、徐々に心を開いていってくれたかなぁとは思います。最初は自分の企画、書きたい物語について発言するのも照れくさそうでしたが、後半は嬉々として語っていましたから(笑)。あれはいい笑顔でした。ほっこりしましたね。あとみんな礼儀正しくていい子でしたね。一人一人、帰り際にはきちんと挨拶をして帰っていってくれて。

あと、相手が高校生ということで、僕としては世代間ギャップみたいなものを期待していったんですけど、あんまり感じなかったです(笑)。まぁ、今回は時間も限られてましたしね。多分もっと話す時間が取れれば、そういうのも見えてきたと思うのですが。それが惜しかったです。もっと話したかった。

――ワークショップで教鞭をとって、気付いたことや再確認したことなどはありましたか。

うーん、僕の呂律が回らなくなっていたこと?(笑)。

――求めていた答えではないんですけど、肉体的な衰えを感じた、と?(笑)

そうですね、ワークショップで肉体的な衰えは感じました(笑)。普段はあんまり喋らないので、ホント噛み噛みだったなと。やっぱり誰かと話さないと呂律は回らなくなるし、舌が衰えるんですね。3時間くらい喋っただけで喉が痛くなるとか。もっと小粋なジョークとか飛ばしたかったんですけど、無理でした(笑)。

――声を出す機会を作らないといけませんね(笑)

定期的にカラオケに行かないとダメだと悟りました(笑)。

――気を付けている、という観点からお聞きしたいのですが、執筆が行き詰った時にはどんなことをされているのでしょうか。

執筆作業そのもので苦痛を感じることはほとんどないんですけど、集中力を欠いて手につかなくなることはありますね。あとはネタが出てこない場合とか。そういう時は基本的には身体を動かしたり、アニメやら漫画やら映画を観たりして気分転換をすることが多い気がします。学生時代からボルダリングをやっていますし、ランニングと筋トレも日課ですし、音楽を聴いたりもしますね。そういえばボルダリングが東京五輪の種目に決まりましたね。頑張れ日本!

――多様な趣味をお持ちで羨ましいです。

広く浅くって感じですけども(笑)。友達と飲みにいくのも気分転換になりますね。

――先ほど、普段は喋らないというお話があったと思うのですが、ボルダリングは私も1年通っていて、そこそこお喋りの機会があったような……。

僕、ダメなんですよ(笑)。毎週通っていて顔見知りではあるんですけど、「こんにちは」と挨拶するくらいで。常連の輪に今ひとつ馴染めてなくて、輪の中に入れていない的な……。それに超集中して登っているんで、それが原因で……ってこれは言い訳ですね。たとえそうじゃなくても馴染めている自信がない(笑)。とにかく! 気分転換やストレス発散にはあんまり事欠いてないです!

――書くこと以外にもひとつふたつ趣味を持っていた方が、執筆もはかどりそうですね!

そうですね! 事実、小説のネタにもなり得ますし、スポーツであればそのスポーツ独自の思想もあったりするので。趣味を持つことは凄く良いことだと思います。

――現役の高校生たちと接してみて、意外だったことはありましたか。

課題として企画書をまとめてもらったのですが、企画書に個性がすごく出ていたなと感じました。どんなキャラクターが好きなのかとか、作品作りで何を重視してるのかとか、多分実体験を元にしてるんだろうなとか、書き込み量とは関係無しに見えてくるんですよ。それが意外というか、驚きでしたね。他人の企画書を見る機会もほとんどないので。編集者さんはこういうところに、仕事の楽しさがあるんだろうなと感じたのは発見でしたね。

――ライトノベル作家を目指す高校生に今後期待することはなんですか。

才能ある若い人達にどんどん出てきてもらって、ライトノベルというジャンルを盛り上げていってもらいたいという気持ちはあります。ライトノベルには面白い作品がすごく多くて、一般の人達にももっと気付いてもらいたいと常々思っていますし、どんどん若い人が入ってくれたら面白いことになるんじゃないかなと思ってます。衰退はさせたくないし、大きなポテンシャルのある分野だと思っているので。……と言いつつ、凄い才能が出てきちゃうとすごく悔しい思いもしちゃうので、ほどよい才能がいいです(笑)。自分と被らない才能だとなおいいですね。僕の上位互換みたいな才能にこられちゃうと居場所がなくなるので。悔しいから来ないでという気持ちと、ガンガン来てほしいという矛盾した気持ちを、現場の人間としては抱いております(笑)。

あと、ラノベ作家を目指すのであれば、まず頑張って作品を一本書き上げてみよう、と。一本を書きあげることの難しさはやっぱりあって、書きあげられること自体がひとつの才能だと思います。最初の一本を途中でつまらないと気付いても、仕上げることはとても大事で、推敲は後からいくらでもできますし、直せます。推敲そのものも経験値になる作業ですし、書きあげなくちゃそもそも推敲だってできない。これは高校生に限った話じゃないですね。面白い発想やアイデアを持っている人達はたくさんいると思うんですけど、形にしないと世には出ないし才能も評価されない。うだうだ悩む暇があれば、一本書いてほしいです。で、頑張って書いたはじめの一本ですから、すごく思い入れもあるでしょうが、処女作で他人を認めさせたり生活を変えられたりすることなんて、そうそう滅多にありません。ですから処女作を書き上げられたら、推敲して反省点を探りつつ、それに固執しないで次の一本にさっさと取り掛かる。そうやってどんどん書きましょう。才能が埋もれることほどもったいないことはないので。えらそうな感じになっちゃうのは恐縮ですけど。お前も書けよ、って話ですよね。すみません。頑張って僕も書きます(笑)。

――それでは、最後になりましたが秀章先生の今後の刊行予定などがあれば教えてください。

11月1日にスニーカー文庫から最新作『サークルクラッシャーのあの娘、ぼくが既読スルー決めたらどんな顔するだろう』が発売となります。ファンタジー世界が舞台で、秘宝を狙うパーティーにサークルクラッシャーが加入して色々大変なことが起こるという、ドロドロしてるけど明るく楽しい、昼ドラ系ラブコメです。「オタサーの姫」とか、そういうのが好きな人にも楽しんで頂けるんじゃないかなぁと。ぜひ手に取ってみてください。

サークルクラッシャーのあの娘、ぼくが既読スルー決めたらどんな顔するだろう

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――本日は貴重なお話ありがとうございました。

ありがとうございました。

<了>

「CHIBA 高校生のためのサブカル教室」登壇ライトノベル作家に聞く! 第1回は秀章先生にお話を伺いました。作家として作品を書くだけではなく、作家を目指す若者たちへ考え方や技術を伝える。そうして若い人たちが新たにライトノベルの世界へと足を踏み入れてくれるのであれば、これほど嬉しいことはないでしょう。本特集の第2回には土屋つかさ先生が登場予定! 土屋先生は第4回「プロットの作り方」と第5回「作品を広げる・物語をより面白くする」を担当されました。次回はどんな話を聞くことができるのか、どうぞご期待ください。≪第2回へ続く

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[関連サイト]

千葉市の高校生のためのサブカル教室特設サイト

主催: 公益財団法人 千葉市文化振興財団

開催協力: AKIBAPOP:DOJO

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