2016年のライトノベルニュース総決算 2016年の注目出来事や注目ニュースをお届け

2016年も残すところあとわずかとなった。ラノベニュースオンラインの読者はこの1年、充実した読書ライフを送ることができただろうか。2016年もライトノベルの市場、業界、界隈では様々なニュース、そして出来事があった。その内容は喜ばしいニュースから残念なニュースまで、多くのライトノベルファンの一喜一憂があったに違いない。そこでラノベニュースオンラインでは、2016年のライトノベルニュース総決算と題して、2016年の出来事や注目ニュースをまとめてお届けする。きたる2017年に向けて、2016年のライトノベルを振り返ってもらいたい。

■『この素晴らしい世界に祝福を!』『Re:ゼロから始める異世界生活』の大ヒット

このすば&リゼロ

2016年のライトノベルを語る上で、この2作品のヒットに触れないわけにはいかないだろう。TVアニメを経て、両作品ともシリーズ累計200万部を突破。2013年の終わりと2014年の頭にそれぞれシリーズの刊行をスタートさせた両作品は、晴れてライトノベルだけではなく、アニメーションとしても2016年を代表する看板タイトルの名を欲しいままにした。とことんギャグに傾倒した『この素晴らしい世界に祝福を!』と、死に戻りの力で運命までも変えてしまう『Re:ゼロから始める異世界生活』は、それぞれストーリーの方向性こそ違えど、作り込まれた設定や世界観には多くのユーザーを虜にするだけの地力があったことは言うまでもない。後の話題でも触れることになるのだが、両作品がWEB発作品の未来を大きく切り拓いたことは間違いないだろう。アニメだけで終わるのではなく、ストーリーの続きもきちんと手に取りたくなる両作品は、2016年を代表するコンテンツへと成長した。

■昨年から引き続き、2016年も新レーベルが続々と創刊

モーニングスターロゴ

続いては新レーベルの創刊について。ライトノベルからはやや外れるのだが「ノベルゼロ」をはじめ「GAノベル」「マッグガーデン・ノベルズ」「モーニングスターブックス」「レッドライジングブックス」「Jノベルライト」、年内創刊ではないが「ツギクルブックス」の創刊も控えており、今年も多くのレーベルが誕生した。

「ノベルゼロ」や「Jノベルライト」を除くと、いずれもWEB発小説の書籍を中心としたレーベルとなっており、出版業界のWEB小説に対する注目度がまだまだ強いままであることを感じる。今後はレーベルの発展を視野に入れた展開が求められることになるので、2017年に各レーベルがどのような準備を行い、作品を展開していくのか俄然注目が集まる。また、既存レーベル「KAエスマ文庫」が2016年末より本格的な刊行スケジュールを組んだ書籍の展開を宣言。アニメーションと密接な関係を持つレーベルの動向となれば今後も注目せざるを得ない。

■ライトノベルの舞台化、実写映画化などの3次元メディアミックス展開が拡がる

サイコメ1

2016年のメディアミックスで一際異彩を放ったのが、ライトノベルを原作とした舞台化や実写映画化が相次いで発表されたことだろう。ファミ通文庫刊『サイコメ』が、舞台『サイコメ;ステージ』として2016年初頭に上演されたほか、スニーカー文庫刊『ロードス島戦記』の2017年舞台化も発表。2.5次元とも表現される舞台やミュージカルは、ライトノベルではほとんど開拓されていないジャンルと言える。舞台ではプロジェクトマッピングの導入なども盛んに進み、表現の幅も大きく広がっている。2016年の舞台化の動きは、ライトノベル作品の新たなメディアミックスの可能性に一石を投じたはずだ。

次いでライトノベルの実写化は、極めて珍しいというわけではない。しかしながら、この2016年内の発表は異例なほどに相次いだことも事実。『二度めの夏、二度と会えない君』、『サクラダリセット』、『氷菓』、そしてハリウッドでの実写ドラマとなる『ソードアート・オンライン』と次々に発表が行われた。ライトノベルに限った話ではないが、実写化については賛否両論の声も大きい。アニメーションに比べた多角的な展開が難しい側面はあるものの、作品を発展させる手段のひとつとして、「成功」へと向けたチャレンジが2017年も拡充することを望むばかりである。

■爆発的に展開されるWEB発ライトノベルのメディアミックス

幼女戦記異世界食堂

続いてもメディアミックスの話題となる。ライトノベルのメディアミックスといえば、アニメ化を筆頭にコミカライズやドラマCD化、ゲーム化などが主だったものとして挙げられるだろう。その中でも2016年はWEB発ライトノベルのメディアミックス情報が非常に多く飛び交った。TVアニメとして放送された『この素晴らしい世界に祝福を!』、『Re:ゼロから始める異世界生活』はそれぞれ大ヒットし、アニメを経て両作品ともシリーズ累計200万部を突破した。さらに2017年以降の放送予定としたTVアニメ化、または企画進行中として発表されたWEB発ライトノベル作品は5作品以上にものぼった。

そして、アニメ化以上に盛んな展開が行われたのはコミカライズだった。2016年連載開始、またはコミカライズ企画として発表されたWEB発ライトノベルは45作品以上(スピンオフなどを含めると50作品以上)を数えた。WEBコミック媒体の台頭により、作品公開の間口が広がったことはもちろんあるのだろうが、紙雑誌媒体への連載も少ないわけではない。これはWEB発ライトノベルの特徴のひとつとしても挙げられる「異世界モノ」が、オリジナルコミックで大きく展開されておらず、「空白地帯」に近い状態となっていることも影響している可能性はある。「ComicWalker」で取り上げられた「異世界コミック」も、そのほとんどがWEB発ライトノベルを原作としたコミック群であることにも大きな注目が集まった。2016年2月末に本格的にサービスをスタートさせたWeb小説サイト「カクヨム」からもメディアミックス作品が誕生するなど、2017年も2016年と同様にWEB発ライトノベルのメディアミックスの波は継続する可能性が高いといえそうだ。

■電撃文庫刊『ソードアート・オンライン』完結

ソードアート・オンライン18

全世界累計1,900万部の日本を代表するライトノベル作品『ソードアート・オンライン』の完結は、2016年の大きなニュースと言える。第1巻の発売から約7年、第9巻から第18巻までの10冊に渡って続いた≪アリシゼーション編≫が終幕となり、多くの読者が様々な想いを持って最後の1冊を手に取ったことは想像に難くない。『ソードアート・オンライン』は2017年の劇場映画、ハリウッドでのドラマ化なども控えており、ファンにとってはまだまだ見逃せない展開も多い。そして第18巻の巻末で記された、2017年の新章始動。終わりを迎えた『ソードアート・オンライン』は次の始まりに向けて既に動き出している。

■懐かしの人気シリーズ最新刊が続々発売、メディアミックスではリバイバルも

ゼロの使い魔21

2016年は5年ぶり、はたまた10年ぶりとなるシリーズの最新刊が続々と刊行された。ヤマグチノボル氏の遺志を引き継ぎ、約5年ぶりの最新刊として発売された『ゼロの使い魔』第21巻。アニメ化企画の検討も引っ提げて約10年ぶりの最新刊となった『R.O.D』第12巻。約5年ぶりとなる最新刊と新シリーズが同時に動いた『狼と香辛料』。そして上述の作品ほどではないが、約1年半ぶりの最新刊となった『カンピオーネ!』第19巻、約2年ぶりの最新刊として発売された『生ポアニキ パンプアップ』など、続刊を待ち焦がれていたファンにとっては、世代がひとつふたつ戻ったことを錯覚さえさせる嬉しい刊行フィーバーとなった。

また、コミカライズでも懐かしさを加速させる展開が次々に行われた。『スクラップド・プリンセス』や『魔法戦士リウイ』、『魔術士オーフェン』、『アイゼンフリューゲル』など、5年から10年以上前の読者をターゲットにしたリバイバル展開も2016年は積極的に行われた。アニメ化作品も例外ではなく、アニメ放送から10周年を迎えた『涼宮ハルヒ』シリーズの企画が動いたかと思えば、こちらも約10年ぶりとなる『天地無用! 魎皇鬼 第四期』のOVAが発売。さらに<物語>シリーズでも知られる西尾維新氏14年前のデビュー作<戯言>シリーズのOVAがリリースを開始したほか、新作TVアニメ『フルメタル・パニック!』が2017年秋に放送されることが決定。そして2008年からリメイク版の刊行が行われていた『されど罪人は竜と踊る』のアニメ化企画も発表されるなど、多くの読者を驚かせる展開が続いた。過去への回帰とも見て取れるライトノベルのメディアミックス展開は、2017年にどんな流れを呼び込むことになるのか大変興味深い。なお、商業ではないが川原礫氏のWEBサイト「WORDGEAR」にて、約7年ぶりとなる『Sword Art Online 外伝7 月の揺りかご』の更新にも大きな注目が集まった。

■著者の異なる人気シリーズのスピンオフ・スピンアウト企画が続々と発表

SAO オルタナティブ クローバーズ・リグレット

電撃文庫刊『ソードアート・オンライン』やスニーカー文庫刊『新妹魔王の契約者』などでも行われていた著者が異なる人気シリーズの番外企画が、2016年は続々と発表されたことも印象的だった。『ソードアート・オンライン』では第2のスピンオフとなる『クローバーズ・リグレット』を渡瀬草一郎氏が執筆。『デュラララ!!』と『博多豚骨ラーメンズ』のコラボ小説を木崎ちあき氏が手掛けたほか、『ビブリア古書堂の事件手帖』のスピンオフが峰守ひろかず氏の手によってスタートした。さらに『デート・ア・ライブ』のスピンオフを東出祐一郎氏が手掛けることも決定しており、人気シリーズの世界観を原作者とは異なる作家が広げていく試みに大きな注目が集まった。

■訃報、相次ぐ

パパのいうことを聞きなさい! after 1

2016年、ラノベニュースオンラインではお二人の訃報のニュースを取り上げた。お一方はMF文庫J刊『勇者と魔王が電撃同盟!』でライトノベルデビューを果たしたあごバリア氏。ゲームのシナリオライターとして活躍していた同氏は、第2巻の準備半ばで急逝された。もうお一方はスーパーダッシュ文庫刊『パパのいうことを聞きなさい!』などの著者で知られる松智洋氏。後日談にあたる『パパのいうことを聞きなさい! after1』の刊行・発売を見届けることなく逝去された。これからライトノベルでも活躍されるはずだったあごバリア氏と、ライトノベル業界を長らく支えてきた一人でもあった松智洋氏のお二人の訃報は大変悲しいニュースとなった。

■鎌池和馬氏の28ヶ月連続刊行と『りゅうおうのおしごと!』の快挙

新約 とある魔術の禁書目録(17)りゅうおうのおしごと!

個人や作品のトピックスとしては、ラノベニュースオンラインでも追い続けている鎌池和馬氏の連続刊行記録が2016年は途切れることなく、通算28ヶ月連続の書籍刊行が達成されている。また、作品の快挙としては、GA文庫刊『りゅうおうのおしごと!』が将棋ペンクラブ大賞にて「優秀賞」を受賞した。我々に馴染み深いライトノベルや漫画などのエンターテイメントコンテンツからの受賞は初となる快挙だった。同作は「このライトノベルがすごい!2017」でも第1位に選ばれるなど、大きな注目を集めている。

■ライトノベルに再びラブコメの波、来たる

俺を好きなのはお前だけかよ非オタの彼女が俺の持ってるエロゲに興味津々なんだが……

2013年頃よりライトノベル市場で大きなうねりを作りだしてきた「異世界転生/転移」作品は、2016年も引き続き好調だったことは間違いない。一方で、そのうねりの中において2016年はライトノベルに再び「ラブコメ」作品の波が少しずつ、それも力強く押し寄せ始めたことを感じる1年でもあった。毎月開催しているラノベニュースオンラインアワードの選出でも同様の流れを感じられたことは、単なる気のせいではないということの裏付けのひとつとなってくれるだろう。

電撃文庫刊『俺を好きなのはお前だけかよ』、ファンタジア文庫刊『非オタの彼女が俺の持ってるエロゲに興味津々なんだが……』など、新人賞の受賞作からも強力なラブコメ作品が誕生しており、2017年に向けて新たな風を呼び込んでいると言ってもいい。おぼろげな記憶ではあるが、2006年頃よりライトノベルに「ラブコメ」作品の波が押し寄せはじめていたと記憶している。そうなると約10年の時を経て、再び「ラブコメ」作品が小さな波から大きなうねりへと変貌するのかもしれない。2017年のライトノベルからもますます目が離せそうにない。

上記のトピックスは、あくまでも印象に強く残った出来事やニュースであり、「Kindle Unlimited」の日本上陸や『クオリディア・コード』、『アルカディア=ガーデン』などのシェアワールドプロジェクトの展開など、気になるニュースは他にもあった。まだまだ足りない方は、ぜひラノベニュースオンラインで2016年のライトノベルニュースを振り返ってみてもらいたい。

ラノベニュースオンライン編集部