独占インタビュー「ラノベの素」 SOW先生『ホテル ギガントキャッスルへようこそ』 ※プレゼント企画あり

独占インタビュー「ラノベの素」。今回は2017年3月24日にダッシュエックス文庫より『ホテル ギガントキャッスルへようこそ』が発売となるSOW先生です。インタビューには2回目の登場です。集英社よりデビューされたSOW先生が、新シリーズを携えてダッシュエックス文庫より初刊行。本作の内容はもちろん、世界観や物語のバックボーンなどについてお聞きしました。

【あらすじ】

幼き日に命を救ってくれた皇国の騎士に憧れた少女・コロナは自分も騎士になるべく修行に励み、ついに騎士見習いとなる。だが、それが認められた翌日に大軍縮令が施行。いともあっさり職を失うも、気がつけばかつて最強とされた巨人砦で働くことになった。しかし、そこは大商業都市のシンボルとなるホテル・ギガントキャッスルへと様変わりしていて――。そこには、オークだとかドラゴンだとか、ありとあらゆる種族のお客様が訪れ、膨大な数でそして時に厄介なリクエストがあった。それを一切拒まず応じる「最強のホテルマン」レイアとの出会いがコロナを変えることになる!! すべてのお客様へ最高のおもてなしをするホテルの物語へようこそ!

――ご無沙汰してます。ダッシュエックス文庫(旧:スーパーダッシュ文庫)では初の刊行とのことで、SOW先生のデビューが集英社だっただけに意外でした。

こちらこそご無沙汰しています。そうなんです、ダッシュエックス文庫では今回が初の作品刊行なんですよね。だいぶ前のお話になりますが、レーベル名が変わる前に持ち込みをしていたこともあったんですけど、途中で担当の編集さんがいなくなるという珍事が発生して、その時のお話は流れてしまったりと、振り返ってみると紆余曲折ありましたね(笑)。

――そんな過去が……悲しいお話ですね。

今となっては笑い話ですよ(笑)。当時、担当さんから連絡がこないな~と思って、他の作家さんにお話を伺ってみたところ、転職されたと聞かされまして。それからしばらくして、ようやく門をくぐらせていただいたという(笑)。とはいえ、ノベライズもいろいろとやらせていただいていたり、集英社さんには幾度となく出入りしていましたが。

――そんな過去もありつつ、新シリーズ『ホテル ギガントキャッスルへようこそ』が始動です。どんな物語なのでしょうか。

内容としては、ファンタジー世界のホテルのお話ですね。ファンタジー世界には人間以外の種族もたくさんいるわけです。作中にはドラゴンも登場したりするのですが、そういったお客様を主人公たちがおもてなしをするんです。よく耳にする言葉に「モンスターペアレント」や「モンスタークレーマー」とかあるじゃないですか。だから本物のモンスターが来たらどうなるんだ、みたいな(笑)。

――その発想はまさかでした(笑)。語源の一部になっているモンスターがホテルというサービス業に対してどういった姿勢でやってくるのか、気になりますね。

まさにリアルでモンスターもお客様だったりするんですよ(笑)。作中の一例だと、半魚人のお客様がシャワーから真水が出てくることにクレームをつけるんです。「浸透圧で血管が縮むぞ!」みたいな。そういったクレームに対して、ホテル側はシャワーの水を海水に切り変えて対応するわけですね。ファンタジーに出てくるエルフやオークやリザードマンをはじめとした様々な種族、それこそ多種多様なリクエストのすべてに、完全で完璧に、一切逃げることなく応えていく者たちの姿を描く、接客という名のバトル作品なんです。

――作中では10年前の大きな戦争にも触れられているだけに、バトルや戦場という言葉は様々な意味を持ちそうです。

そういった対比もあるんです。なぜなら物語の舞台となるホテルは、戦時中は最強無敵の軍事要塞として、戦争を平定した帝国を非常に苦しめた存在だったんです。あまりにも強すぎて、帝国は要塞を避けて首都を直接滅ぼすことで戦争を終えることになります。一方、要塞にいた者たちは様々な思惑も入り混じりつつ、なんとか要塞を残そうと考えたわけです。その結果、かつては攻め込んできた者たちをことごとく追い返してきた要塞は、来る人を拒まないホテルへと変貌を遂げます。すべての武力を放棄して、新しい時代に適応するための決断となったわけですね。

――なるほど、ありがとうございます。それではあらためて、本作の着想や執筆経緯についても教えてください。

実はこの作品に着手するにあたっては舞台裏がありまして。担当編集さんと打ち合わせをして、編集会議を通過したプロットがあったんです。そのプロットをベースにいざ書き始めようと、担当編集さんとお話していた中で、ぽろっとファンタジーを舞台にしたホテルものの企画を考えているというお話をしたんです。ぶっちゃけるとその時点ではほとんど考えてなかったんですけど(笑)。ただ、最終的に評判はそっちの方が良くなって、企画が動き始めたんです。ある意味、丹念に作り込んだものより思いつきの方が功を奏したパターンですね。

――ぽろっと漏らした当時はほとんど考えられていなかったということですが、そもそも「ホテルもの」を書こうと考えていた理由はあるのでしょうか。

そうですね、こちらは作品内容的な事情とでも言いますか、HJ文庫で刊行している『戦うパン屋と機械仕掛けの看板娘』を書くにあたって、パン屋めぐりであったり、パン屋の歴史を調べたりしているんですね。そこで日本におけるパンの歴史は、かなりホテルと密接に関わっているんです。あとはファンタジーの観光業に関する作品をどこかで手掛けたいとも考えていました。当初はあまりまとまってはいなかったのですが、一緒に取材もしていました。それと、作家業をやっているとパーティ関連でホテルに行くことがよくあるんですけど、大概そこにはパン屋さんがあるんです。ホテル専用のパンで、それぞれ個性や歴史があるわけです。さきほども言いましたが、パンと一緒に入ってくるホテルのエピソードがとにかく面白くて、いつかやりたいと考えていました。

――なるほど。そうするとこの作品にはホテル業の歴史もベースになっていると?

そういう部分もあると思います。旅館や旅籠ではなく、日本最初の西洋式ホテルは帝国ホテルなんですが、帝国ホテルは当時、外国の来賓向けに日本にも西洋的で近代的な文化があるというアピールのため、鹿鳴館とコンセプトを共にして財政官で作られたものなんです。当時の日本の宿泊施設は、畳や床で眠ることを当たり前としていたし、トイレは汲み取り式だし、外国人にはお風呂の文化も浸透しておらず、くつろげる環境にはなかったんです。なので、くつろげなかった外国の来賓にもくつろいでもらえる空間を作ろうと考えたわけです。これって、作中の流れに似ていると思いません?

――先ほどおっしゃられていた様々な種族の多種多様なリクエストに応える、という点では主人公たちの置かれている状況は似ているかもしれませんね。

いろんな国からやってくる外国人は、戊辰戦争を戦い終えたばかりの当時の日本人からしてみたら、宇宙人みたいなものだったと思うんです(笑)。そういった中で西洋式のおもてなしやサービスを作り上げていき、文化的背景や民族的背景からやってくるリクエストに応え続けて、日本のイメージ向上に繋がっていった歴史もあるんです。そういったエピソードがこの作品の下敷きになっています。作中でドラゴンが出てくるという話をしましたが、彼らは凄く人間種族を見下している。それでも最後までもてなして、ありがとうと言って去っていってもらう。そういう物語を書いてみたかったんです。

※ホテルにドラゴンが宿泊することになるのだが……

――今のお話は、本作を読み終えた読者でもなかなか辿り着けない背景ですよね。非常にしっかりとしたバックボーンがあって驚きました。

そう言っていただけるとありがたいです。ホテルのエピソードは、海外のものも含めると冗談みたいなエピソードがたくさんあるんですよ。ホテルの清掃員に渡したチップが実はお城の権利書だったり、徴兵されたホテルのシェフの配属先が炊事場じゃなく戦場の最前線で、砲撃の才能を開花させたり。そういった面白エピソードをファンタジーの世界にも落とし込んでどんどん書いていきたいですね。

――ホテル ギガントキャッスルは、統合型リゾートに近いイメージを抱いたのですが、設定にはどんな意図があったのでしょうか。

前提として楽しそう、というのがあります。宿泊だけのホテルだとビジネスホテルみたいになってしまって、それじゃあ面白味があんまりないじゃないですか。建物の中に都市をまるごと入れたかのような、そんなドキドキワクワクする楽しさを描きたいなと。ラスベガスだってカジノばっかりじゃなく、複合レジャーで誰でも楽しめるんですよ。野球場のバックスクリーンの一部が窓になっていて観戦できるホテルもありますしね。

――面白いホテルがあるんですね。SOW先生はラスベガスに行ったことがあるんですか。

いえ、ないです。

――この作品がヒットしたらラスベガスの面白ホテルの取材に行ってみたら楽しそうですね。

経費でいけるなら! いいんですか! ありがとうございます!

――編集さんの苦笑いぶりが凄まじいです(笑)。

ありがとうございます!!

――さて、そんな本作はホスピタリティとは何か、を問う物語でもあると思います。SOW先生が作家として心がけているホスピタリティはなんでしょうか。

私の書いた1冊が、初めて読むライトノベルの1冊になっても、読んで面白いと思ってもらえるようにいつも心がけていることでしょうか。ライトノベルを普段読まないような人達がたまたま手に取って、そして読んでみようと思ったとします。ライトノベルを普段から読んでいないとわからないような内容にしてしまうと、読んだ人はライトノベルそのものが自分に向いていないと思っちゃうじゃないですか。そういう風にはしたくない。作中の主人公コロナとレイアの出会いのシーンにもあるように、お金を持っておらずホテルのお客ではないコロナに、レイアはおもてなしをする。そうしたやり取りの結果、コロナはいつかお金ができたらこんなホテルに泊まってみたいと思うわけです。だから最初の1冊が面白ければ、ライトノベルのほかの作品にも手を伸ばしてくれるようになると思うんですよ。そういう1冊を心掛けていきたい。ノベライズの仕事が多かったこともあって、普段は小説を読まない人達が、手に取った時に面白いと思う1冊になるよう心掛けてきたので、その考えが基本にあります。とはいえ、これは他の作家さんも同様だと思うんですよ。1冊の価格はほとんど変わらないわけで。自分の作品を読んだ人を次につなげる義務は、作家全員が持っているはずです。

※様々な想いが込められているコロナとレイアの出会いのシーン

――そんなSOW先生のお気に入りのシーンは、さぞホスピタリティに溢れている名シーンだと思うんですがいかがでしょうか。

ホテル ギガントキャッスルには最高責任者にホウオウというキャラクターがいます。権力主義者というか、やたらとコロナやレイアに突っかかるんですよ。いわゆる上司にはあまりしたくないタイプなんですが、権力を笠に着るキャラクターはやっぱり権力に弱いわけです。それを象徴するシーンがいくつか出てくるんですけど、そういったシーンがお気に入りですね(笑)。書いていてすごく楽しかったです。

※ヘコヘコするのは因果応報?

――ホスピタリティから少し遠ざかった気もしますが(笑)。『ホテル ギガントキャッスルへようこそ』は、どんな人が読むと特に面白いと感じると思いますか。

なかなか小・中学生はわかりにくいかもしれないですけど、高校生くらいからバイトとか始めるじゃないですか。働くっていうことは、ただお金を稼ぐだけではなく、社会とどう繋がっているのかを認識する場所でもあると思うんですね。作中のキャラクターたちは、一度やりたいことがあったけど、それを変えて生きている。自分自身もやりたいことがあったけど挫折した。でもライトノベル作家としてやらせてもらっている。人生にはいろんな道があるんです。どんな形でもいいから働き始めた人達には楽しく読んでもらえるんじゃないでしょうか。

――ちなみにSOW先生は何をやりたかったんですか。

それは言えませんよ(笑)。墓場まで持って行くつもりなんで。

――ダメですか。どういう方向ですかね。芸能関係ですか?

…………だから言えないって言ってるでしょ(笑)。よく他人からは売れないお笑い芸人をやってたでしょって言われますけど、違いますからね!

――そうですか残念です。ではあらためて、これからの目標などを教えてください。

とりあえず本作に関して言えば、まずは2巻を出したいですね。ナンバリングされてないと怖いじゃないですか。それと可能ならメディア展開もしたいですよね。つい最近、集英社さんのところでコミカライズがスタートした作品もあることですし。

――「ジャンプ+」あるでしょう、みたいな?(笑)

そうですね(笑)。

――それでは最後にファンのみなさんに向けて一言お願いします。

もし面白いと思っていただけたようでしたら、またのご来店をお待ちしております!(訳:2巻が出たら買ってね!) あとは読んだら感想をあげていただけると嬉しいですね。とにかく続き書きたいんだ!

――本日はありがとうございました。再び開店することを私も楽しみにしています。

<了>

ファンタジー世界を舞台にしたホテルでの究極のおもてなしを描くSOW先生にお答えいただきました。ギガントキャッスルにはどんなお客様がやってきて、コロナやレイアたちはどのようにリクエストへと応えていくのか楽しみですね。『ホテル ギガントキャッスルへようこそ』は必読です!

『ホテル ギガントキャッスルへようこそ』発売記念プレゼント企画!

SOW先生の直筆サイン入りのサイン本を、抽選で3名の方にプレゼントいたします。

応募方法はとても簡単。応募対象期間となる2017年3月23日(木)~3月26日(日)の期間中にTwitterで本インタビュー記事をツイート、またはリツイートするだけ。抽選で3名様に「ラノベニュースオンラインのツイッターアカウント(@lnnews)」よりDMにてご連絡させていただきます。応募を希望される方は、ラノベニュースオンラインのツイッターアカウントのフォローをお願いします。

※当選発表は当選連絡のDMにて代えさせて頂きます。

※当選者の方へはプレゼント郵送先の住所や氏名等の情報をお伺いいたします。

※プレゼントの発送はダッシュエックス文庫編集部様より実施するため、頂戴した情報はダッシュエックス文庫編集部様へ共有させていただきます。

©SOW/集英社 イラスト:桜木蓮

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