オリジナルインタビュー「ラノベの素」。幾谷正先生『神童機操DT-O』


――2作品応募してたんですね。DT-0が受賞したということはやはり熱い男気が伝わったということなんでしょうね。

いえ、初めて編集部に伺ったときに編集さんたちに「君のは売れないね、覚悟してね」って笑顔で言われましたから伝わってないと思います(笑)。

――そうだったんですか(笑)。ところで作中で一番気に入ってるセリフはありますか?

気に入ってる台詞は沢山あるんですけどやっぱり「愛する世界を手に入れたいと~」、「愛する世界を守りたいと~」の掛け合いです。

――あの場面は本当にかっこいいですね。

ええ、ちょっとカッコつけて言うと実はこの掛け合いって、作品そのものよりも先に自分の中にあったんです。それでまずこの台詞が浮かんで、白紙の原稿にこの二行を書いてそこから広げていった作品なんです。(ドヤ顔)

――素晴らしいドヤ顔を見せていただいたところで、今までの投稿歴を教えてもらえますか?

小説を書き始めたのは、高校二年の辺りからだったと思います。友達しか見に来ないHPで、こそこそと色んなものを。応募をし始めたのは大学に入ってから で、そこから五年間、長編は四作ほど書いたのですが、ずっと一次落ちと二次落ちを繰り返してました。それぞれ五回ぐらい。書いたのはロボットものが三つにヒーローモノが一つと、ライトノベルとしては過酷な道ばっかり挑んでたよう な気もします。まあ今もそうなんですけど。

――あきらめようと思った事は? 

実はこの作品を応募したのが、あきらめようと思っていたちょうどそのときでした。『今回がダメだったら、もう諦めて普通の大学生に戻ろう』と決意して挑んだ 賞でした。ちょうど夏コミに当選していたので、落選したら大人しく同人小説家にでもなろうかなー、とか思って。とある漫画に『夢はあきらめたら叶う』とい う一節がありましたけど、本当にあの漫画はノンフィクションなんだなあと痛感しました。

幾谷先生の旧執筆環境

大学入学と同時に買ったノートPC。
応募者生活を続けた五年間ずっと付き添ってきたメイン機体だったが、

筆者の受賞直後に役目を果たしたかのように永眠。

――初めて読んだライトノベルを覚えてますか?

意識して読んだ最初の作品は、榊一郎先生の『スクラップド・プリンセス』でした。アニメがすごく面白かったので、原作が気になってという形で。ライトノベルは友 達か図書館かから借りて読むだけが殆どなんですけど、ちゃんとシリーズで買って読んでた作品は後にも先にも捨てプリだけでしたね。そう考えてみると、まさ か榊先生と同じレーベルで名前を並ばせていただける日が来るとは夢にも思いませんでした。

――作家になろうと決めたきっかけを教えてください。

話すと長いんですが、きっかけは二つありました。

一つは高校三年生で受験期真っ盛りの頃。近くの学校に『あの冨野監督が講演にいらっしゃる』と聞きつけて、なんとなくミーハー気分で遊びに行ったんですが、そのとき聞かせていただいた色々なお話が『自分も作る側に立ちたい』と思ったきっかけでした。

二つ目は、夢枕獏先生の本が昔から好きで、そのおかげで小説を書くという方向に憧れを持つようになりました。

――講談社ラノベ文庫にはどんなイメージを抱いてましたか?

そりゃあもう、このタイトルを通して下さったからには、よほど豪胆で懐の深いレーベルなんだろうなあと。講談社という出版社自体には、硬派ながら作家さんを 大切にしてくださるいい会社なんだろう、と読者の視点から思っていたので、その講談社さんからでデビューさせていただけて本当に幸運だなと思っています。

――受賞後に印象は変わりましたか?

とにかく皆さん、誰も彼もノリが良いんです。自分も結構悪ノリする方だと思ってたんですが、いい大人の人たちがそれ以上に凄まじい(いい意味での)ノリ の良さを発揮して下さって。今回イラストを担当していただいたお二人のイラストレーターさんも『まさかこんな凄い人たちを自分なんかに紹介してくださるとは』という心境で。講談社って、もっと堅いイメージだったけど、おかしいなあって度々思っています。

――受賞式はどうでしたか?

最初の方はずっと受賞者さんたちと隅っこで固まってました。まわりが大作家ばかりで完全に怯えてました(笑)。一応、先輩作家さんには何人かご挨拶はさせていただいて、選考委員の平坂先生や藤島先生にもご挨拶とお礼ができたので、目的は果たせました。

――担当編集さんとはどんなお話をしてますか?

担当さんからはよく『作家になることより作家であり続けることが難しい』という言葉を頂いております。僕はその点に関しては、書き始めたそのときから今までの五年間、ずっと自分が作家になれる人間だと信じて書き続けて来たので、大丈夫かと思っています。なにせ作家にもなっていないときから気分だけは作家気取りでしたので(笑)。

――自分の本を初めて手に取った時の気持ちを教えてください。

『これどんな内容なんだろう』って素で思ってしまいました(笑)。 勿論、内容を知ってはいるんですが、挿絵がついて製本されたものとして見ると、何かもう全 く自分とは関わりのないところから出てきたものみたいに見えてしまって。感慨というよりは、そんな不可思議さの方が強かったです。

――受賞作「神童機操DT-O」を執筆した際に、一番苦労したことはどんなことですか?

とにかく“恥を捨てること”が大変でした。

やっぱりどうしても、自分で書いてて照れたり笑っちゃったりすることがあるんです。『俺、なんでこんなもの真面目に書いてるんだ!?』って、ときどき正気に返っては叫んでみたり。

――登場人物で一番好きなキャラクターは誰ですか?

真田さん、というのはまあ半分冗談で。親バカみたいでアレなんですけど、全員です。むしろ自分が好きだと思えなければ、そのキャラにページを与える必要はないとすら思っています。出番の多さがイコール好き嫌いって意味ではないですよ。(笑)

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