【日刊試読タイム特別編】試し読みから読み解く新作ライトノベル事情(1)

まず試し読み(或いは立ち読み)について簡単に解説したい。試し読みは公開場所やタイミング、そして文章量など程度の差こそあれ、いまやほとんどのライトノベルレーベルがWEB上で公開しているコンテンツのことを指す。作品の冒頭や挿絵の一部などを閲覧することができ、書店における立ち読みと似たことができるのだ。「日刊試読タイム」記事はそんな試し読みを利用して、様々な作品を読者になり得る可能性のあるユーザーへと、手軽に、そしてわかりやすく興味をもってもらいたいというテーマからスタートした記事コンテンツである。2016年8月からスタートした「日刊試読タイム」も一年を待たずして100号を数えた。取り扱った作品もすべて新作である。そこで「日刊試読タイム」の100号突破を記念して、記事のアクセスデータを参考に新作ライトノベルの傾向や課題を少し紐解いてみようと思う。

調査時点でもっともアクセス数の多かった作品はMF文庫Jより2017年1月に発売された『可愛ければ変態でも好きになってくれますか?』の記事だった。後にも少し触れるが、本作は重版も行われており、多くの変……もとい、紳士の方々のもとへ届けられた作品だ。みんな変態でも可愛い女の子であれば大好きなことが証明された瞬間でもあった。第2巻も楽しみな作品である。

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アクセス数の多かった新作の特徴に「セリフ調」タイトル

記事のサムネイル画像となる作品のジャケットがとても大切であることは言うまでもないのだが、決め手はなにもそれだけではない。新作100タイトルのアクセスデータをもとに、作品タイトルにおいて、アクセス数と比例したひとつの傾向が見られた。それが「セリフ調」のタイトルである。セリフ調といっても様々で、疑問を投げかけてみたり、懇願してみたり、ちょっと独白してみたり。いずれも共通しているのは、タイトルを目にした人達に対して、返事や返答に類する事柄を即興的に思考させる仕掛けがあるという点だ。もっと砕けて表現をするのならば、作品タイトルと会話ができるタイトルということになる。例に挙げた『可愛ければ変態でも好きになってくれますか?』もセリフ調のタイトルであり、さらにアクセス数の上位にみられたもうひとつの要素を兼ね備えていた。それがジャケットイラストとの連動だ。これもわかりやすく表現するのなら、ジャケットデザインそのものが漫画の一コマとしても成立しているということである。ライトノベルは漫画の延長線上と例えられることもしばしばあるわけだが、表紙の一コマ漫画化はまさに延長線上と例えるに相応しい試みと言えるだろう。セリフ調のタイトル、そしてタイトルと連動したジャケットイラスト。この2点を押さえた作品は、今後さらに増えていくのかもしれない。新作の購入者は、事前の情報をほとんど持たないことが常である。ゼロベースからのアプローチとしては有効な手法である可能性は高いと言えそうだ。

やっぱり長文タイトルって人を惹きつける魅力があるの?

長文タイトルのメリットで良く言われているのは、作品を読まなくても内容を想像することが容易い、という点だろう。何文字から長文タイトルであるのかについては様々な意見があるだろうが、ここでは15文字をボーダーとして調べてみた。アクセス数上位50作品中、15文字を超えるタイトルは30作品。100作品中もおおよそ半々であったため、興味を惹くための手段としてメリットがあるという点は、現時点においても大きく的を外れているわけではなさそうだ。それでも長文のタイトルを見る読者の目線も少しずつ変化してきているようで、状況を説明するタイプのタイトルにはあまり注目が集まらなかったのも現状だ。長文タイトルを使用する場合においては、与える印象とイメージをさらに一歩踏み込んで、どれだけユーザーに対して提供できるのかが重要となるのかもしれない。

興味を惹くのに強い言葉、弱い言葉

異世界ブームと言われている昨今、タイトルに「異世界」の文字が入っていれば注目度が必然的に上がるのかと言われれば、そんなことはなさそうだ。短いタイトルでも長いタイトルでもこれは共通で、アクセス上位10作品にも「異世界」という文字はなかった。と、ここまでは単なる確認だ。さて、少し興味深いデータとしては、カタカナ文字オンリーで構築されたタイトルにはアクセスが集まりづらい傾向が見られたことだ。とはいえ、全世界累計発行2,000万部を突破する『ソードアート・オンライン』だって全部カタカナ文字だ、というご指摘はごもっとも。決してカタカナ文字だけのタイトルに問題があるということを述べたいわけではなく、あくまで現在のユーザーにどう見えているのかという点が、重要だということだ。SAOシリーズ刊行時の8年前と現在を同列で比較することもまた難しいわけで、そうなるとこれはあくまで想像の域を出ないのだが、カタカナ文字でタイトルが構築された作品は、その内容をユーザーがこれまで以上に想像しづらくなっているという点があるのだろうと思う。そうなってしまうと、少しでも触れてみようというユーザーの数は、かなりの率で減少してしまうようだ。

さて、少し単語ベースまで落としてみてみると、「奴隷」や「妹」という単語は、興味を惹くワードとして有効であることがうかがえる結果にもみえた。「魔王」や「魔法・魔術」という単語は上にも下にも振れていたため、単語を組み合わせてパワーワード化できるかどうかが課題となるのだろう。一方「ギャル」という単語を使用する場合は、大いなる工夫が必要そうである、というアクセス結果も見て取れた。いずれにしても、作品のタイトルをたったひとつの単語だけで表すことは稀有な事例であり、組み合わせによって可能性はいくらでも広がるわけで。どんな単語をどのように組み合わせることで、少しでも多くの人達から注目を得られやすくなるのか、これは創作者たちの永遠の課題と言っていいだろう。

次回は日刊試読タイムのアクセス上位30作品中、3割の重版に繋がっているという点を鑑み、見えてくる作品の内容や傾向にも触れてみたい。

⇒ 試し読みから読み解く新作ライトノベル事情(2)へ続く

本記事は、ラノベニュースオンラインの日刊試読タイムの記事データをもとにしており、市場全体に対して触れているものではありません。