平成28年度「朝の読書」で高校生に読まれた作品が変化した要因はあったのか ライトノベルは楽しく本を読む間口になってほしい

先日、株式会社トーハンが発表した小中高を対象とした「朝の読書」で読まれた作品のランキングに関する記事をお届けしたわけだが、同記事内で少しだけ言及した高校生の「朝の読書本」の選定に関して、ちょっとした追加記事をお届けしたい。

●実際に聞いてみました

気になった筆者は今回、株式会社トーハンの「朝の読書」に関する広報のご担当者に、高校生の選択図書の変化に関して、実際に問い合わせを行ってみた。結論から申し上げると、選定図書における制限や変化などは感知していないという回答をいただいた。もちろん自治体単位などで何らかの変化があった可能性はゼロではないものの、「朝の読書」の取り組み上における変化はなかったということである。昨年度やその前年度と比較して「朝の読書」におけるライトノベルの人気が減少したという事実は、本の中のライトノベルという単位から見ると大きな変化として見て取れたわけだが、本全体という観点からみれば、早い話が今回はたまたまそういう結果になった、ということだ。取り組みの上で変化があったわけではないという回答をいただいた点については、ひとつ安心材料となった。さて、そうなると気になってくるのは、高校生の「朝の読書」の取り組みにおける図書選定の基準はどこにあるのか、という点だ。ライトノベルは中高生を対象としている点からも選択肢として出てくるものとし、そうではない作品は、いったい何を起因にして選ばれているのだろうか。

●高校生はベストセラーとメディア化作品、そして大人の世代の話題作も

お話の中で興味深かったのは、トーハンのニュースリリース内にも記載が行われているように、ベストセラーやメディア化作品に集中する傾向が、高校生では特に強いという点だった。さらに学生間で話題となった作品だけではなく、ひとつ上の大人の世代で話題になっている作品にも手を伸ばす傾向が見て取れるという。確かに平成28年度の調査結果を振り返ってみると、2016年に映画化された『植物図鑑』や『オオカミ少女と黒王子』をはじめ、映画やドラマとして放送されたシリーズ作品が多数上位となっている点からもこの傾向は頷ける。高校生という多感な年代は、興味の幅も広がっていく世代であり、変化もまた大きな形となって現れるということなのだろう。

●ライトノベルは本を読むことが苦手な中高生の間口になってもらいたい

さて、「朝の読書」の記事は日々の記事閲覧ランキングでも上位に位置し続けており、多くの人達の目に留まっている。その一方で、ライトノベルが読書本として選択されていることへの忌避を示す意見もちらほらと見受けられる。ただ、筆者はライトノベルには若い世代が本を読むという習慣の間口のひとつになってくれる可能性があると思っている。筆者自身も学生時代は本を読むという行為そのものに楽しさを見い出せず、読書の時間は難儀をした記憶がある。ましてそういった学生に選択権を与えず特定の本を強引に押し付ける行為は、未来の本の読者を率先して潰してしまうのではないかという危惧さえある。「朝の読書」の時間で選ばれる本は、読書好きでも読書嫌いでも「自分が選んだ本」であってほしいと思う。大人になって初めて見えてくる本に対する感性も、学生だからこそ本に抱く感性も、それぞれもっと寛容であってもらいたいというのが筆者の願いだ。本を読むことが楽しいことを知れば、自然と手に取る本の種類も数も増えていくはずなのだから。本の楽しさ、文章を読むことの楽しさを知ってもらう。学生たちの選択肢のひとつに、ライトノベルは今後も残り続けてほしいと思う。

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