独占インタビュー「ラノベの素」 春日部タケル先生『美少女作家と目指すミリオンセラアアアアアアアアッ!!』

独占インタビュー「ラノベの素」。今回は2017年7月1日にスニーカー文庫より『美少女作家と目指すミリオンセラアアアアアアアアッ!!』が発売となった春日部タケル先生です。満を持して送りだす新シリーズはラノベ業界モノ。作品内容についてはもちろん、タイトル考案秘話や発売前にスタートしたオーディオドラマなど、様々なお話をお聞きしました。

【あらすじ】

文芸編集者になるはずが、なぜかラノベ編集部に配属された黒川清純(くろかわ・きよずみ)。作家の下ネタ電話にいつも涙目の先輩、会社に寝泊まりしてゲーム三昧の副編集長、あげく編集長は失踪中。さらに担当の打ち切り崖っぷち作家は「書きたいものがわからないの」とスランプ状態で、頼みの天才JK作家は「まだ降りて来ないんです」——って、いつまで待てばいいんだよ!! 誰か俺と一緒に最高の物語を作ってくれ!

――はじめまして。本日はよろしくお願いします。

こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。

――早速ですが、自己紹介をお願いします。

出身は茨城県の水戸市で、現在は神奈川県在住です。学生時代から小説賞への投稿をしていて、第15回スニーカー大賞にて「ザ・スニーカー賞」を受賞させていただきました。受賞は就職した後だったんですが、それまではうんともすんとも引っかからなかったですね(笑)。

――かなり長い投稿生活を送られていたようですが、小説執筆のきっかけは何だったのでしょうか。

正直なところ、強烈なきっかけのようなものはなかった気がします。小説やライトノベルをはじめとした本を読むことはずっと昔から好きで、気が付いたら書き始めていた感じですね。

――読書以外に好きなものやハマっているものがあれば教えてください。

特撮系、あとはゲーム全般が好きですね。アニメは最近時間がなくて見られていないんですけど、趣味的な面で言えば完全にインドアです。休日は一歩も外に出ない日とかもあります。あとは週刊少年ジャンプで連載されている川田先生の「火ノ丸相撲」って作品がとにかく面白いんですよ! 基本的にSNSではふざけた内容か自著の宣伝しかつぶやかないんですけど、感想をつぶやかずにはいられないくらい好きです。毎週月曜日は出勤前に週刊少年ジャンプを買って、読んで出社するのが日課になっているレベルでして。本当にすごく熱いんですよ。

――熱く語られますね(笑)。実際の相撲にも興味はあるんですか?

実のところ、実際の相撲には然程興味はなかったんですが、ここ数年は影響されて相撲も録画して見るようになりました。それでまた相撲も面白いんですよ、これが。毎場所見ています。

――イチオシの力士がいれば教えてください。

茨城出身なので、稀勢の里関は定番ですね。今年の3月場所では怪我をおして優勝したんですが、とても凄かったです。後は勢関の取り組みも好きですね。みんなも相撲を見ようぜ!

――ありがとうございます(笑)。ちなみに苦手なものは何かありますか。

鳥です。

――食べる方の鶏肉が苦手、ということですか?

いえ、食べるのも、実際の鳥も、全般がダメです。自分はあんまり覚えてないんですけど、小さい頃に鳥に襲われて気絶したらしいんですよ。鳩がたくさんいる公園で餌をあげていたらしいんですが、餌がなくなった途端に大量の鳩に囲まれてえらい突かれたらしいんですよ。そこで自分は意識を失ったみたいで。それからはもうダメですね。お弁当なんかを買う時も成分表をみて鳥が入ってないのを確認してからじゃないと食べられないです。外食をする時も鳥じゃないメニューを積極的に選ぶようにしています。

――強烈なトラウマですね……。では話題を変えて、新シリーズスタートの率直な感想をお聞かせください。

シリーズとしてはこれが4作目になります。新しいシリーズを刊行する時は、毎回読者の反応が楽しみだという気持ちはあるんですが、それと同じくらい怖い気持ちもあります。出版業界が厳しくて新作がなかなか売れづらい状況が続いているわけで、売れないってことはつまり読んでもらえないってことなので、それがとにかく怖いです。いろんな気持ちが混ざってますね。

――それでは『美少女作家と目指すミリオンセラアアアアアアアアッ!!』の内容について教えてください。

作品のタイトルにミリオンセラーという言葉が入っている通り、ライトノベルの業界モノのお話です。主人公が作家ではなく編集者のお話でして、学生時代からアルバイトで編集の経験を積み、晴れて入社が決定した新人編集者です。あとは、毎回僕の作品で共通している点でもあるんですが、登場する編集者や作家を含め、主人公の周囲にまともな人間があんまりいない作品でもあります(笑)。なので、主人公は終始ツッコミ役に追われることになるのですが、そういった環境の中で単巻100万部を作家と一緒に目指していくストーリーになっています。

――タイトルが非常に印象的なのですが、決まるまでに紆余曲折があったと聞きました。

そうですね。この作品はタイトルがもっとも難産でした。僕は毎回なんですけど、作品のタイトルは最後に決めるんです。今回も例に漏れずではあったんですけど、本文も直しもそのすべてが終わっても決まらないという異常事態でした。担当の編集さんとも散々やり取りをして、100個くらいタイトル案を出していただいたりもしました。一応、より多くの読者さんに知ってもらう、あるいは手に取ってもらえるよう、インパクトは大事にしたいというお話は当初からしてました。基本的に執筆の締切はほとんど破ったことがない……いや、たまにもうちょっとって時はあるんですけど、基本は守る方なんです。それでも今回はタイトルがデッドラインにまで伸びて、最終日の深夜に極限状態であれやこれやと考えていました。最後に3つか4つくらい深夜のテンションで案を提出して、結果的にその中から決定することになりました。まさかそこから選ばれるとは思ってなかったんですけど(笑)。ただ、頭がおかしくなったんじゃないかって思われそうな案ばかりだったので、メールには注釈で「決してふざけているわけじゃありません」と添えて送っていましたね。それが良かったのかもしれません(笑)。

――ちなみに極限状態から産み落とされたボツ案ってどんなタイトルだったんですか。

とある作品にすごく寄せたタイトルがあって、「ミリオンセラー シンデレラスターなライターガールズ」みたいな。さすがに危険だろうってことで取りやめになったんですけど……これ、今思うとホントよくわからないですね。何がシンデレラスターなのか(笑)。極限状態の思考だったので記憶がないんですけど、本当にひどいな!(笑)。

――タイトルに続いて内容についてもお聞きしたいのですが、最近よく見かけるようになったラノベ業界モノとなりました。敢えてテーマに選んだ理由は何かあったのでしょうか。

敢えてっていうと、すごい志があったように思われちゃうんですけど、そんなことはなく(笑)。以前の作品が終わって、次の企画をすり合わせているうちに業界モノという話題が出てきて、ゼロではないですけど主人公が編集者の作品はあまりないので、やってみようと。企画そのものはかなり前に動き出したんですが、そこから少々難航したんです。ここ1年くらいでラノベ業界モノの作品がかなり出てきちゃっていて、他社さんの作品が出そろう前に刊行していく予定だったんですけども(笑)。敢えてというより、結果的に増えてきた現状にぶつかっただけと申しますか。満を持してどころか、結果論のビッグウェーブの渦中という感じしかないです(笑)。

――本作には変態……じゃなく、いろんな作家さんや編集さんが登場しますが、具体的なモデルはいるのでしょうか。

作中に登場するキャラクターはほぼすべて創作で、モデルは存在しないです。唯一、編集さんに電話をして変な単語を言わせようとするキャラクターが、僕の体験がもとになっているくらいですかね。さすがに作中ほど酷いことはしてない……はずですが、別に僕も意図して言わせているわけじゃないんです。電話越しのダメだしで、主に下ネタを削除されちゃうんですけど、業務上どうしても触れなくてはならないわけで、結果的に言わせてしまっているといいますか。

※キャラクターデザイン

――春日部先生の歴代の担当編集さんは全員女性だとうかがいました。

そうなんですよ。毎回どうして僕の担当編集さんは女性になるんだろうって常々不審に思ってます(笑)。僕が言うのもアレですけど、少し可哀相というか、気の毒だなって想いもあって。そういう意味では変な作家さんの相手ばかりをしている編集者さんは大変だろうなと。作中に登場する和先輩のもとになっている部分もあるかもしれないです。ただ、今回は作品の性質上、担当の編集さんにはすごく助けていただきました。

――本作ですが、実際の創作論にもかなり踏み込んだ描写が多いなという印象も受けました。

基本はラブコメを楽しんでもらうことが前提にあるんですが、編集と作家が売れる作品を作ろうというお話である以上は、実際の創作シーンにも踏み込んで描く必要があるだろうと。もちろんギャグの成分は多いわけですけど、物語として楽しんでもらう上で、作品作りにもしっかりとウェイトを置きたかったんです。

――なるほど。今作もラブコメの要素が盛り込まれた作品に仕上げられていますが、春日部先生の考えるラブコメの定義がややおかしいという話も小耳に挟んだのですが(笑)。

そうみたいなんですよね(笑)。僕の2シリーズ目にあたる『僕の脳内選択肢が、学園ラブコメを全力で邪魔している』の第1巻を執筆した時もそうだったんですが「女の子がパンツを見られて恥ずかしがるシーン」を取り入れた時点で、僕としてはラブコメを達成したつもりでいたんですよ。

――「女の子がパンツを見られて恥ずかしがるシーン」はラブコメというかハプニング展開の発生ですよね(笑)。

おっしゃる通りで。当時は初めてギャグ調でラブコメを書いたというのもあって、ものすごいラブコメさせようっていう意識で書いていました。ただ、当時の担当編集さんからは、ラブコメじゃなくてギャグコメディだよねって言われたんですよ。そしていざ発売して読者さんからも同様の反応を数多くいただいて、初めて自分の考えるラブコメは何かがおかしい、って気付いたんですよね。これ以上ないくらいのラブコメを書いているつもりではあったんですけど(笑)。

――「のうコメ」は発売当時私も読ませていただきましたが、抱いた感想はギャグコメディでした(笑)

ほらね、やっぱり!(笑)。でも今回はきちんとラブコメできているって担当編集さんからも太鼓判をもらっているので、安心してください!

――ちょうど過去シリーズの話題も挙がったので、これまでのシリーズと今作の違いがあれば教えてください。

『美少女作家と目指すミリオンセラアアアアアアアアッ!!』は投稿作時代まで遡っても、初めて超常的な現象や能力、異能のような力がストーリーの中に一切含まれていないお話になっています。ただ、やっぱりそのぶん難しさはあって、ストーリーの繋ぎであったり場面の転換であったり、これまでは超常の要素に頼っていたところもあり、今回はそれができなくて苦労しました。ただ、そういった違いこそありますが、楽しい雰囲気だとかちょっと変態な可愛い女の子が登場するだとか、そういった点を期待されている読者にもちゃんと楽しんでいただける作品になっていると思います。

――あらためて本作を彩るキャラクターについて教えてください。

本作の主人公である黒川清純は新人の編集者です。学生時代から一般文芸の編集アルバイトをしていてそのまま就職、編集部に配属されるはずだったんですが、なぜかライトノベルレーベルであるサンダル文庫編集部に配属されてしまいます。主人公にはちょっとした過去があり、ライトノベルを好ましく思っていません。最初は乗り気ではないのですが、様々な作家や編集者と絡みながら、少しずつ変化していく姿にも注目してもらいたいですね。

続いて本作のヒロイン・光星天花は現役高校生で天才と評される作家です。中学生でデビューし、既にアニメ化も行われ大成功を収めている中、次回作を主人公の黒川と共に模索することになります。見た目はかなり正統派の美少女です。見た目は。

※天才作家・光星天花は正統派美少女……!?

――見た目は(笑)。作中の初登場シーンとか、あんまりにも酷すぎますからね……。

確かに酷い登場シーンではありますね(笑)。とはいえ、そこは僕の作品なので見た目通りであるはずもなく、ちょっとおかしいですよっていうところがある。天花の初登場シーンは、当初プロローグで展開しようというお話もあったんですが、残念ながらボツになったという!

そして黒川が担当することになるもう一人の作家でヒロイン・雄鶏ひよこは、光星天花とは対照的なキャラクターです。デビューして刊行した2シリーズが売れなかったという経験をしており、どうしていいのかわからなくなっている状態でもあります。黒川との創作ハウツーシーンで多く登場し、一緒に次回の作品を模索していくことになります。

※作品の方向性を見失いつつある苦労人の作家・雄鶏ひよこ

――雄鶏ひよこが登場するシーンでは、PN(ペンネーム)に言及する描写もありました。春日部タケルというPNの由来もせっかくなので教えてください。

投稿時は春日部武だったんですが、「武」を「タケル」となかなか読んでもらえなくて、デビュー時はわかりやすくカタカナのタケルに変更しました。武の大本は、僕がこれまでの人生で一番好きなゲームの主人公から、願掛けではないんですけどいただいた形ですね。そして春日部の方は……正直思い出せないんですよ。地図でも見ていたのかわからないんですけど、埼玉県にある春日部市には行ったこともないですし、地名ならせめて出身の茨城から持って来いよって話なんですけどね(笑)。たぶん響きが気に入ったから、とかじゃないですかね。

――いよいよ発売となった本作ですが事前にオーディオドラマも公開されました。オーディオドラマ化が決定した時の心境をお聞かせください。

オーディオドラマの話を聞かされた時は、ぶっちゃけ何を言われているのかよくわからなかったです。オーディオドラマをはじめとしたメディアミックスって、1巻の反響を見て決まったりすることが多いものだと思っていたので。なので、最初はPVを作っていただいて、ナレーションを声優さんに担当してもらえるようなものだと解釈してました。

――実際は全5本を収録し、総時間は30分近い内容となりました。

もう全然意味がわからなかったです(笑)。ただ、キャストのイメージを聞かれたり、例えとしてお出しした名前のキャストさんがそのまま来ていただいたりして。ありがたい気持ちでいっぱいではあるんですけど、やはり解せませんでした(笑)。

※第1回~第4回まで無料公開中

――オーディオドラマは既に4本公開されていますが、やはり気になるのは書籍購入特典の5本目です。内容をちらっと教えてください。

特典の5本目は、書籍を購入していただいた方だけが聴けるので、やはり特別感を出さなくちゃいけないなと思いました。なので、ちょいエロ方向になっています(笑)。下ネタ要素が強めにありつつ、キャラクターが持つ特殊な面が曝け出され、各キャラクターがいい感じにはっちゃけて、むしろキャラ崩壊寸前のところまでいってます(笑)。キャストさんには凄く熱演していただいて、聴き応え抜群の内容になっていることは間違いありません。

――オーディオドラマと書籍、どんな順番で触れると一番いいですか?

ネタバレがあるわけではないので、オーディオドラマを先に聴いていただいても問題ありません。ただ、著者としてオススメなのは、オーディオドラマの1本目から4本目を聴いていただいて、その後書籍を読んでもらう。そして最後に5本目のオーディオドラマを聴いていただくのが、一番いいかなと思います!

――これからの目標や野望などがあれば教えてください。

作中の黒川清純の言葉にもあるんですが、商業でやっている以上、売れたいという思いは一番にあります。僕は作品の感想を探す性質で、たとえ批判があったとしても反応がないよりはいいと思ってます。前作でも辛辣な意見がある中で、それ以上に楽しいという反応をしてくださる読者さんがたくさんいて、そういった反応を見ることをとても楽しみにしています。ただ、裏を返すと感想などの反応をたくさんもらうためには、売れなくちゃいけないわけです。なので、第一に売れてたくさんの人に読んでもらって、感想が欲しいです。読者さんの声が一番欲しい。面白い、楽しいという言葉から次への執筆動機や意欲に繋げていきたいです。

――それでは最後に、ファンの方や新しく春日部先生の作品を読まれる方にメッセージをお願いします。

今回は業界モノのラブコメ作品です。これまで僕の作品を読んでいただいていた読者には間違いなく楽しんでもらえると思います。また、他の業界モノ作品を読んだことがないという方や、作家と編集の作品作りに興味があるなっていう方にもぜひ読んでもらいたいですね。物語のラストでは熱いお話にもなっているので、より多くの方に読んでいただいて感想をいただけると嬉しいです。今年の秋頃には第2巻の発売も予定していますので、どうぞよろしくお願いします!

――本日はありがとうございました。

<了>

売れる作品を作るために周囲の人間に振り回されながら奔走する新人編集者と作家の姿を描いた新シリーズを綴る春日部タケル先生にお話をうかがいました。単巻100万部を目指す編集と作家の創作ラブコメストーリー『美少女作家と目指すミリオンセラアアアアアアアアッ!!』は必読です!

『美少女作家と目指すミリオンセラアアアアアアアアッ!!』発売記念プレゼント企画!

オーディオドラマに出演している江口拓也さん(黒川清純役)、阿澄佳奈さん(光星天花役)、田中あいみさん(雄鶏ひよこ役)、3名の直筆サイン入り色紙を抽選で1名の方にプレゼントいたします。

応募方法はとても簡単。応募対象期間となる2017年7月1日(土)~7月4日(火)の期間中にTwitterで本インタビュー記事をツイート、またはリツイートするだけ。抽選で1名様に「ラノベニュースオンラインのツイッターアカウント(@lnnews)」よりDMにてご連絡させていただきます。応募を希望される方は、ラノベニュースオンラインのツイッターアカウントのフォローをお願いします

※当選発表は当選連絡のDMにて代えさせて頂きます。

※当選者の方へはプレゼント郵送先の住所や氏名等の情報をお伺いいたします。

※お伺いした情報はプレゼント発送以外の用途で使用されることはありません。

※プレゼントの発送はスニーカー文庫編集部様より実施するため、頂戴した情報はスニーカー文庫編集部様へ共有させていただきます。

©春日部タケル/KADOKAWA 角川書店刊 イラスト:MikaPikazo

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