独占インタビュー「ラノベの素」 九曜先生『佐伯さんと、ひとつ屋根の下 I’ll have Sherbet!』

独占インタビュー「ラノベの素」。今回は2017年10月30日にファミ通文庫より『佐伯さんと、ひとつ屋根の下 I’ll have Sherbet!』第3巻が発売となる九曜先生です。佐伯さんがあまりにも可愛すぎるという声が各所から聞こえてくる本シリーズについて、佐伯さんの可愛さの秘密や気になる最新3巻の展開についてお聞きしました。

【あらすじ】

4ヶ月ぶりに帰省したり、桜井さんの提案で佐伯さんと一緒にプールに行ったりと、僕こと弓月恭嗣と彼女の同居生活は夏休みも順調と言えた。そして、9月。2学期に入った水の森高校では、1ヶ月後に開催される学園祭の準備がさっそくはじまりだした。一年も折り返し地点。大きなイベントを控え、何かが起こりそうな気配が――。常に冷静な弓月くんと、とびきりの美少女なのにちょっとHな佐伯さんが繰り広げる同棲&学園ラブ・コメディ、第三幕。

――それではまず、自己紹介からお願いします。

九曜と申します。大阪で生まれて大阪で育ち、今も大阪に住んでいます。まだインターネット上に小説投稿サイトがなく、小説を公開するのはもっぱら個人サイトだった頃から小説を書いています。2014年にアルファポリス様で初めて作品を刊行し、今はファミ通文庫様とお仕事をさせてもらっています。小説を書くこと以外の趣味と言えば、最近はMikuMikuDanceで動画を作って遊んでいます。さっぱり再生数が伸びないのが悩みですが。

――ありがとうございます。では早速ですが、本作はどのような作品なのか教えてください。

身も蓋もない言い方をすれば、ある日突然ルームシェアという名の同棲をはじめたふたりが、家で学校でドタバタする学園ラブコメです(笑)。特にテーマや訴えたいことといった小難しいものはありませんので、頭を空っぽにして読めるのではないかと思います。

――頭をからっぽにして読めるラブコメということですが、本作の着想はどういった点だったのでしょうか。女の子とルームシェアという男の子にとっては夢のシチュエーションも盛り込まれていますよね。

わたしが書くものって、高校生を主人公にした学園ラブコメが多いんです。でも、そうなるとだいたい舞台が学校ばっかりで、何となくワンパターンになってくるんです。だったらもう、いっそのこと朝から晩まで一緒にして、学校でも家でもわちゃわちゃさせてしまえと(笑)。まぁ、同棲してるヒロインが朝から主人公を起こしにくるとか、古臭さすら感じる王道ですけどね。

※二人の物語はフラットシェア(ルームシェア)から始まる

――古き良き王道とも言えるでしょう(笑)。そんな王道を歩むヒロインの佐伯さんが読者を魅了しているわけですが、彼女はどのようにして誕生したのでしょうか。

佐伯さんは、今まで自分が書いたことのないタイプのヒロインを書こうと思って生まれました。それまでわたしは年上のヒロインばかり書いていたので、じゃあ次は年下ヒロインだな、と。そこからなぜか『ぇろい正統派ヒロイン』という飛び散ったコンセプトが生まれ、今に至ります(笑)。

――なるほど(笑)。ご自身の理想の女の子像がスタートというわけではなかったのですね。

どうでしょう(笑)。ただ「いま書くなら、こういう女の子しかない!」と思ったという点では、理想の女の子かもしれませんね。

――年上ヒロインから年下ヒロインへの挑戦で誕生した佐伯さんですが、彼女を可愛く表現する上で気を付けていることがあれば教えてください。

天真爛漫で、弓月くんに一途であること、ですね。太陽のように明るい女の子は、見ていて気持ちがいいですから。そこが皆様にかわいいと思ってもらえている理由のひとつだと思います。弓月くんに一途であることについては、世間的に賛否両論であることは何となく耳に届いてきています。

――具体的にはどんな意見を耳にされているのですか。

最初から好感度MAXなのが謎、とかですね。わたしもその点については悩みました。もう少し説得力をもたせたほうがいいのかな、と。でも、そこはもう開き直ることにしました。ライトノベルのヒロインには大なり小なりそういうところがあると思いますしね。異世界もので主人公が負けたり、窮地に陥ったりする展開が好まれない、というのに似てるかな? 表現したいのが恋愛模様や両想いになるまでの道のりなら丁寧に書きますが、そこじゃないですから、書きたいのは。

――恋愛模様の駆け引きを超えた先にいるヒロインを書きたかったと(笑)。

そうですね(笑)。

――続いては作品のタイトルについてお伺いしたいのですが、第2巻の作中でも回収されている『I’ll have Sherbet!』にはどのような意味があったのでしょうか。

『I’ll have Sherbet!』のタイトルには、特に意味はありません(笑)。あちこちでよく言っているのですが、わたしは内容とからめてタイトルに意味を持たせるよりも、「この作品にはこのフレーズ(タイトル)!」とか「こういうタイトルで作品を書きたい!」とか、そういう直感を優先しています。そのほうがモチベーションが上がるんです。『I’ll have Sherbet!』の場合も真っ先にこのタイトルが決まって、それから作品の内容を考えていったんだと思います。それと誤解されている方も多いんじゃないかと思うのですが、この作品は『佐伯さんと、ひとつ屋根の下』が前サブと呼ばれる副題なんです。

――『佐伯さんと、ひとつ屋根の下』が本タイトルだと思ってました……。

WEBで連載していた頃のタイトルのまま、『I’ll have Sherbet!』が本タイトルであることをこの機会にぜひ覚えていただければ(笑)。と言っても覚えやすい方で覚えてもらえたらなと思います。

――『佐伯さんと、ひとつ屋根の下 I’ll have Sherbet!』ですが1巻、2巻と刊行して周囲の反応はいかがですか。

この作品がファミ通文庫様からの刊行が決まった際には、多くの人に喜んでもらいました。最初に個人サイトで公開して、それから小説家になろう様、カクヨム様、と公開の場所を広げるたびに細かい修正を重ねてきましたが、やはり商業で出すということで改稿作業にも力が入りました。最終版と銘打ってもいい出来になっていると思います。おかげさまで1巻、2巻ともに重版もかかりましたので結果は出せているのかな、と。ただ、気合いの入った加筆修正に反して、実は刊行後の手応えはあまりないんですよね。出してしまえばそんなものなんですかね。

――ご自身でお気に入りのキャラクターがいれば教えてください。

自分が生み出したキャラクターですから、いっぱいいますよ。何人か挙げるなら、主役ふたりは別として、まずは宝龍さんでしょうか。こういう頭がよくて超然とした女性は大好きですね。もしかしたら佐伯さんよりも、宝龍さんのほうが理想の女の子かも。それから弓月くんの妹のゆーみですね。なに考えてるかわからないくせに、何でも見透かしてるような感じがいいです。ちなみに彼女は、重要そうなキャラクターに見えて、さっぱり重要じゃなかったりします(笑)。

※留年していたり、弓月君の元カノでもある宝龍美ゆき

――挙げていただいた宝龍さん、そして主役ふたりも描かれるコミカライズの連載もスタートしました。率直な感想をお聞かせください。

コミカライズ、本当にありがたい話ですよね。コミカライズのお話自体は2巻が刊行されたあたりに出たのかな? 正直「うーん……」と首を傾げました。なにせ『佐伯さんと、ひとつ屋根の下』という作品は非常に動きの少ない話で、活字以外のものにするのは難しい気がしたんです。でも、古川五勢先生が見事に動かしてくれていますね。さすがです。しかも、小説版にはないアレンジが加わっていて、それがまたいいんです。つい先日、コミカライズ第2話の初稿を拝見しましたが、第1話以上に佐伯さんの表情が豊かになっていて、とてもかわいいです。コミカライズ版、まだ見ていない人はぜひに!

⇒ コミカライズ版『佐伯さんと、ひとつ屋根の下 I’ll have Sherbet!』はこちら

――あらためて、1巻と2巻を振り返って印象的なシーンや力を入れたシーン、見どころなどがあれば教えてください。

先にも述べた通り、商業作品になるということで、全面的に改稿しました。最初から最後まで力が入っています。でも、強いて挙げるなら、宝龍さんの留年に関するエピソードでしょうか。web版では理由に触れないままだったのですが、書籍版ではちょっとだけ語られています。実に天才型の宝龍さんらしい理由と片づけ方になっていると思います。あと、見どころはやっぱりフライ先生のイラストですね。真面目な話、web小説との大きなちがいのひとつはイラストが入ることだと思います。その点では、わたしは素敵なイラストを添えてもらえて、とても幸せ者ですね。第2巻では調子に乗ってケモミミ佐伯さんを描いていただきました(笑)。

――そしていよいよ第3巻が発売となります。こちらも見どころを教えてください。

この作品は弓月くんと佐伯さんを中心にした話で、そこは3巻も変わりません。その中で見どころを挙げるなら、新キャラクター桑島先輩vs弓月くん、でしょうか。3巻の終盤は非常に大きく改稿していて、その結果、弓月くんが桑島先輩に投げ飛ばされるシーンもあったり(笑)。それと、中盤からは読んでいる皆様にとっては胃の痛くなるような展開が続きます。でも、ちゃんと落ち着くところには落ち着きますし、その後には恒例の巻末番外編が待っていて、こちらは実に『佐伯さんと、ひとつ屋根の下』らしい明るいお話となっていますので、楽しみにしてもらえたらと思います。

――作家としてこれからの目標があれば教えてください。

これからも多くの小説を書き続け、世に送り出し、多くの人に読んでもらうことですね。これは無欲なようで、小説家の究極の目的、目標ではないかと思います。特に今は『(小説家に)なるのは易し、続けるのは難し』みたいな時代ですから。小説を書いて、出し続けることは目標であり、夢です。

――それでは最後に第3巻の発売を楽しみにしていたファン、そしてこれから本作を読んでみようと思っている方に向けて一言お願いします。

おかげ様で、どうにかこうにか3巻までこぎつけることができました。どこまでいっても安定軌道とは言い難いのですが、これまで通り変わらず応援いただければ完結まで完走できるのではないかと思います。これからもどうぞよろしくお願いいたします。そして、『佐伯さんと、ひとつ屋根の下 I’ll have Sherbet!』をまだ読んだことのない皆様。あなたが学園ラブコメ好きなら読んで損はさせません。書店で見かけたら、ぜひ手に取ってみてください。

――本日はありがとうございました。

<了>

具体的な第3巻の内容にも触れながら、可愛い佐伯さんの誕生秘話など九曜先生にお答えいただきました。第3巻では投げ飛ばされてしまうらしい弓月くんと、佐伯さんのラブコメ模様からは目が離せそうにありません。ラノベニュースオンラインアワードでも「萌えた部門」に選出された学園ラブコメに注目ですね。『佐伯さんと、ひとつ屋根の下 I’ll have Sherbet!』第3巻も必読です!

©九曜/KADOKAWA エンターブレイン刊 イラスト:フライ

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『佐伯さんと、ひとつ屋根の下』特集ページ

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