【特集】『精霊幻想記』北山結莉先生&みなづきふたご先生 小説最新9巻&コミックス第1巻発売記念インタビュー

2017年12月27日にコミックス第1巻、そして12月29日に原作小説第9巻が発売となった『精霊幻想記』のW刊行記念特集として、著者である北山結莉先生とコミカライズを担当するみなづきふたご先生をお招きし、本作に関するお話をお聞きした。北山先生は第4巻刊行時のインタビューに続いて2度目の登場となっている。コミック側から見る原作小説、そして原作側から見るコミック、それぞれの魅力について盛りだくさんの内容でお届けする。さらに豪華プレゼント企画も用意しているので、最後まで目を通してもらいたい。

・北山結莉(インタビュー内は

HJ文庫刊『精霊幻想記』を執筆

・みなづきふたご(インタビュー内は

コミックファイアにて『精霊幻想記』のコミカライズを連載中

――まずは原作小説第9巻、そしてコミックス第1巻の発売おめでとうございます。

:ありがとうございます。

――まずは自己紹介をお願いしたいのですが、北山先生は以前のインタビューでお答えいただいているので、本日はみなづき先生お願いします。

:九州出身の漫画家、みなづきふたごと申します。『精霊幻想記』のコミカライズを担当させていただいております。好きなことは漫画を描くこと。苦手なものは野菜のニガウリです。

――好きなことが漫画を描くことという、現在のお仕事そのものなわけですが、好きなことをお仕事に繋げられたということなのでしょうか。

:そうですね。ただ、実際に漫画を描こうと思って描きはじめたのはだいぶ後になってからなんです。学生の頃はスポーツ中心で、就職も別にしていたので。漫画は務めていた仕事を一度辞めた時に、雑誌なんかで掲載されている「漫画大賞」とかあるじゃないですか。あれを目にして、自分でも描けるかもしれないと思ったのが最初です。結局、賞をいただくことは叶わなかったんですが、賞への応募だったり持ち込みだったりを繰り返して、気付けばお仕事に繋がっていたという大変ありがたいお話でもあります。

――子供の頃から漫画家を目指していたわけではなかったんですね。ちなみに描きはじめた頃はどんな漫画を描かれていたんですか。

:描き始めた当時は少女漫画も描いてました。我が家で漫画と言ったら、姉が持っていた少女漫画のことで影響は多分に受けていました。自分が買わなくてもお古がどんどん回ってきたので、読む分には困らなかったのですが(笑)。

――なるほど、ありがとうございます。北山先生とみなづき先生は今回で2回目の顔合わせになるんですよね。

:そうですね。一度謝恩会でご挨拶させていただきました。

:あの時はバタバタしちゃって大したお話ができたわけではなかったですけど(笑)。

――あらためてお会いして、お互いの印象はいかがですか。

:なんですかその質問(笑)。

:北山先生は素敵な殿方ですよね(笑)。

一同:――(笑)。

:あれ、でも殿方って言っちゃだめなんでしたっけ? 性別明らかにされてましたっけ?

:いえ、特に隠しているわけではないです。女性に間違われるということがあるだけで。PN(ペンネーム)が結莉「ゆうり」なんですけど、「ゆり」と読まれて間違われる方も多いのかなと。実際にサイン会も2回やっていますし、いまさらと言えばいまさらなんですが(笑)。

:自分が初めて『精霊幻想記』を読んだ時に、女性らしい感性をすごく感じたので、それで間違う人も多いのかもしれないですね。

:実際に作風が少女漫画っぽいとは言われます。ただ、少女漫画はほとんど読んだことがないので、逆にどんなテイストが少女漫画らしさなんだろうと思うこともしばしばあります。

:北山先生は少年漫画派なんですか?

:そうですね。少女漫画だと『ちはやふる』しか読んだことがないかもしれません。

:自分はバリバリの少女漫画で育ってきたので、そういう意味では面白いですね。

:自分は週刊少年ジャンプを読んで育ってきました(笑)。

:でも『精霊幻想記』は、読んでいるとかなり繊細なお話作りをされてますよね。

:そうなんですかね?(笑)

:そうなんですよ(笑)。なので、あんまり少年漫画で過ごしてきたって感じには見えなかったんですよね。作品に女性らしい感性が垣間見られるのも本当に不思議で。

:どうなんでしょうね(笑)。ただ、さっきも言った通り少女漫画はほとんど読んだことがないので、らしさがあんまりわからないんですよ。逆に、そこを分析しちゃうとマイナスになるような気もしていて、敢えて踏み込まないようにしていますね。

――北山先生が実際に影響を受けた作品はあるんでしょうか?

:これと言って思い当たる作品はない気がします。現在も連載している小説投稿サイト「小説家になろう」は、『魔法科高校の劣等生』の第1巻の発売をきっかけにして知って、それから2年近くはずっと読者でした。そこから何を思ったのか、自分でも書いてみようと思い立って、書きはじめた感じではあります。でも主人公が強いという意味では、『魔法科高校の劣等生』をはじめ、当時のWEB連載作品の影響を広く受けているのかもしれません。

――ありがとうございます。では続いて先日第1巻も発売したばかりのコミックについてお伺いします。コミカライズを担当するにあたって、みなづき先生にお声がかかったのはいつ頃だったのでしょうか。

:動き始めたのは春頃だったと思います。コンペ的な感じでお声かけをいただきましたね。連載もいつからスタートするのか当時はまだはっきりしていなかったので、早めに動き出していたことだけは確かです。

――みなづき先生は現在2誌で同時連載されていますよね。かなり速筆だともうかがいました。

:最近は一進一退ではありますが(笑)。現在は「コミックファイア」で『精霊幻想記』を、「コミックガム」で『たすけてまおうさま』の連載をしています。どちらも7月からスタートしていて、単行本のタイミングがそれぞれ違ったことだけが救いでした。

――『精霊幻想記』では少女漫画らしさを感じているというお話もありましたが、実際に原作小説を初めて読んだ時はどのような感想を抱きましたか。

:リオ君格好いい、この一言に尽きますね。

:ありがとうございます。微妙に恥ずかしいですね(笑)。

:趣味でイラストをばんばん描いてますからね(笑)。

:いつもありがとうございます。

:こちらこそ勝手に散々描きまくっちゃってて恐縮です(笑)。

――『精霊幻想記』を漫画におこす上で、気を付けていることなどはありますか。

:最初にネームを描く段階で、通るか通らないかはさておきなんですけど。これまでも小説のコミカライズは何本か担当させていただいていて、とにかく原作に忠実なパターンと、一定の裁量で自由なパターンの2パターンがあると思っています。自分が一読者として考えた時に、どっちの方がいいのかなというのは常々思っていて、個人的には原作とほんの少しだけ違う「何か」が盛り込まれている方がいいのかなと感じています。もちろん、リオ君を女性にしちゃいました!とか、そんな突拍子の無い話ではなく、物事の脇で起こった出来事や感情が追加されて描かれれば、小説も漫画も大きな話の流れは変わらないまま、少しだけ世界の見方が広がるのかなと。物事や登場人物への親しみや理解に繋がって欲しいと思って、考えながら描くことが多いですね。

:私もネームは拝見させていただいていますが、基本的にはセリフ面をはじめとしたキャラクターのブレのチェックくらいしかしてないですね。

――北山先生はみなづき先生の最初の原稿を見た時、どのような印象を受けましたか。

:なにその質問こわい!(笑)

:1話の原稿を見た時は「お、動いている」って感じでしたね(笑)。小説ではどうしても文字でしか追えないので、小説で表現しきれない動きの部分まで描かれていて、感激しました。

:ネームと全然絵が違うじゃないか!みたいな感想があったりは?(笑)

:コミカライズされるまでネームを見たことがなかったので、面白かったです(笑)。

:実際の作画だと格好いい表情をしているリオが、ネームではほんわかとした表情で描いたりもしているので……。

:ネームと作画の違いは楽しくて印象に残っています。完成稿は想定を超えた仕上がりになっているので、まったく問題ないです(笑)。

――コミックス第1巻で描かれているお気に入りのシーンがあればそれぞれ教えてください。

:本編ではセリア先生がドヤ顔をしているシーンは活き活きしていて好きですね。

:自分は拷問のシーンで表情が活き活きしているシャルル様かなと。北山先生がいいシーンを選ばれたので、私がオチ担当で(笑)。

:シャルル様いい顔してますよね(笑)。

――ちなみにコミックス第1巻にはどこまでが収録されているのでしょうか。

:12月にWEBで掲載されたばかりの6話までが収録されています。なので、次回更新分は単行本の続きが読めます。

――小説では多くのヒロインが登場するわけですが、コミックで早く描いてみたいキャラクターはいますか。

:セリア先生は原作を読んだ時点から描きたいと思っていました。コミックでは1ページ目からセリア先生が登場するわけですけど、描きたかったという思いがひとつ前面に出せたかなと。あとはロアナも描きたかったんですよね。金髪ドリルは夢です。

:夢ですね(笑)。

:表現にはかなり苦労しました。ドリルヘアーといってもいろんなパターンがあって、どれで表現しようかなと。あとはラティーファも早く描きたいですね。

※ラティーファ

:私も見たいですね。

:可愛い仕草も漫画的表現で色づけしていくのも楽しみです。そんなに遠い未来ではないと思っているので心待ちにしています。

――北山先生は漫画として見てみたいキャラクターはいますか。

:リッカ商会の会頭、リーゼロッテですかね。

※リーゼロッテ

:確かに漫画にするととても活きそうなキャラクターですよね。

:そうですね。どんな仕草をするのかとか、良い意味で貴族っぽい女の子なので。成長した後のリーゼロッテが特に見てみたいです。原作でいうと6巻くらいかな? 今後が楽しみです。

――せっかくなので、小説においてもリオとヒロインたちの関係性が今後どうなっていくのか教えてください。

:そのあたりは結構デリケートな内容です(笑)。現在登場しているヒロインたちのことをリオが女の子として、恋愛対象としてみていくことになる可能性は、きっかけこそあれば全員にあります(笑)。ただ、最新巻ではそうなのですが、リオの中における恋愛の優先順位は、リオとして知らなくてはならないことや、やらなくてはならないことよりもずっと低いんです。なので、積極的に恋愛をしようとしなければ、意識を向けようともしない。結果としてみんなから朴念仁扱いされちゃうわけですけど、今後の展開を生暖かい目で見守っていただければと思います(笑)。

――わかりました、今後の展開を楽しみにさせていただくことにします(笑)。続いてはお互いに作品等について聞いてみたいことがあればぜひ。

:ご趣味は?(笑)

:お見合い!

一同:――(笑)。

:うーん、趣味っていうわけではないんですけど、最近は仕事場の構築をしていて、大きな模様替えをしました。家具も一掃して入れ替えたんですよ。そういう意味では模様替えが趣味になるのかな(笑)。自分からもお聞きしたいんですが、みなづき先生が漫画を描く上での強みがあれば教えてもらいたいです。

:どうなんですかね。昔は原稿を書くスピードだけは誰にも負けないと思っていたんですけど。一番ページ数の多かった時は1ヶ月で140ページくらい描いてました。

:それ週刊連載が可能なレベルですよね。

:今はさすがに難しいですが(笑)。あとは、今回の単行本に描き下ろしで収録されているおまけ漫画があるんですけど、とぼけた感じのキャラクターを描くのは好きです。ちなみに北山先生が考えるご自身の強みってなんですか?

:強みというか戦闘シーンの執筆は好きですね。最新巻では終盤の方に戦闘シーンがあるんですけど、頭の中に動きをイメージしながら文章化しています。それが面白くて筆が乗ることも多いです。逆に心理描写は遅くなりますね。何度も読み返して書いちゃうので、そればかりはどうしても……(笑)。

――ありがとうございます。それではあらためて、発売となった小説第9巻はどのような物語となるのか教えてください。

:ストーリー的な面では第9巻と第10巻でセットです。夜会編の前後編という感じでしょうか。これまでに登場した勇者と呼ばれるキャラクターたちが軒並み登場する巻でもあります。今巻は今まで以上にWEB版との違いも大きいので、書籍を読んでいる方もWEB版を読んでいる方も楽しんでいただけたらと思います。

――第9巻で注目のイラストを教えてください。

:夜会編を象徴する夜会への登場シーン、あとは勇者の登場シーンでしょうか。口絵で描かれている夜会の見開きイラストも華やかでイチオシです。

※華やかな夜会の一幕

――では発売したばかりのコミックス第1巻についても内容を教えてください。

:ストーリーの大筋の流れは原作小説と基本的には同じです。ただ、要所で少し違う点や追加されている描写もあるので、書籍の小説を読んでいる方もWEB版の小説を読んでいる方も楽しんでいただたけると思いますのでぜひ。

:漫画では書籍版で触れられなかった点にも触れていただいていたりするので、原作を読んでいる方にも楽しんでいただけると思います。

――コミックスにはおまけ漫画と書き下ろしの小説も収録されているんですよね。

:それが言いたくて言いたくて!(笑)。おまけ漫画のテイストは本編とはまったく異なります。シリアスやバトルがメインの本編とは真逆の空気で、セリア先生をメインに描いています。本編を読み終えた後に肩の力を抜いて読んでいただけたらと思います。

:収録されている書き下ろしの小説は、漫画の本編を補完する内容になっています。リオの拷問シーンから目を覚ますまで、その間の出来事をセリア先生の視点で描いています。原作小説でもこの視点からは描かれていないので、ぜひ読んでいただければと思います。

:Riv先生の描き下ろしイラストも収録されていて、感動しました!

:Riv先生には第1巻当時のリオを描いていただきました。成長していないリオは貴重なイラストなので、ぜひ見ていただきたいですね。

――コミックスが発売されたことで原作小説に興味を持たれる方も増えると思います。『精霊幻想記』をこれから読んでみようと思っている方へ一言お願いします。

:小説に関しては、とりあえず第5巻まで読んでほしいです。ライトノベルの構成としてはかなり珍しい作りになっていると思っていて、第1巻から第3巻が『精霊幻想記』という物語のプロローグにあたり、第4巻から第5巻にかけて物語は大きく動き出すことになります。そこからどんどん盛り上がっていく作品だと思っているので、まずはぜひ第5巻まで読んでいただきたいです!

:いろんなライトノベルを読んでいる方も、新鮮な気持ちで楽しめる作品だと思います。

――お二人のこれからの目標や野望があれば教えてください。

:ミリオンセラーを狙いたいです。第20巻くらいまで出せたらミリオンいかないかな、なんて(笑)。

:まずはトータルでミリオン。その後、単巻でミリオン!

:すごいハードル上がりましたね!

:そしてゆくゆくはハリウッド!

:ハリウッド! 実写化!?

:実写が難しい場合はCGで!

一同:――(笑)。

――では最後にファンの方へメッセージをお願いします。

:原作小説第9巻とコミックス第1巻の連動購入キャンペーンも実施しています。それぞれのオビにIDとパスワードが記載されていて、オビのURLにアクセスすると、みなづき先生の描き下ろしイラストと外伝小説を読むことができます。電子書籍でも対応しているとのことなので、小説9巻とコミックスをぜひ読んでいただければと思います。

――ちなみに外伝はどんな物語なのでしょうか。

:リーゼロッテ率いるリッカ商会にスポットを当てたお話になっています。第2巻で宿屋の娘として登場したクロエというキャラクターは、再登場した際にリーゼロッテの侍女の一人になっています。その間にどのような出来事があったのかに焦点をあてて描いています。約5万字の大ボリュームとなっているので、読みごたえもバッチリあるかなと。

:すごいですよね5万字。大盤振る舞い(笑)。

:この物語は原作小説第2巻を刊行したタイミングから考えていたお話で、いつか書こうと思っていました。なら、このタイミングでやってしまおうと(笑)。みなさまのおかげで書籍や外伝ストーリーを書くことができています。今後とも『精霊幻想記』をよろしくお願いします。

:コミックス版とあわせて『精霊幻想記』をよろしくお願いします!

――本日はありがとうございました。

<了>

HJ文庫の人気シリーズ『精霊幻想記』を手掛ける北山結莉先生と、コミカライズを手掛けるみなづきふたご先生のお二人にお答えいただきました。さらなる盛り上がりを見せていく原作小説第9巻、漫画という新たな形でストーリーが描かれるコミックス第1巻と、今後の展開がますます楽しみな本作。原作小説、そしてコミックスの双方で『精霊幻想記』に注目です。

『精霊幻想記』W刊行記念プレゼント企画!

北山結莉先生&みなづきふたご先生両名のサイン入り『精霊幻想記』ポスターを抽選で3名の方にプレゼントいたします。

※写真はサイン入り前のものです

応募方法はとても簡単。応募対象期間となる2017年12月29日(金)~2018年1月1日(月・祝)の期間中にTwitterで本インタビュー記事をツイート、またはリツイートするだけ。抽選で3名様に「ラノベニュースオンラインのツイッターアカウント(@lnnews)」よりDMにてご連絡させていただきます。応募を希望される方は、ラノベニュースオンラインのツイッターアカウントのフォローをお願いします。

※当選発表は当選連絡のDMにて代えさせて頂きます。

※当選者の方へはプレゼント郵送先の住所や氏名等の情報をお伺いいたします。

※プレゼントの発送は国内在住の方とさせていただきます。

※プレゼントの発送はHJ文庫編集部様より実施するため、頂戴した情報はHJ文庫編集部様へ共有させていただきます。

©北山結莉/ホビージャパン イラスト:Riv

©みなづきふたご北山結莉/ホビージャパン

[関連サイト]

『精霊幻想記』特設ページ

HJ文庫公式サイト

精霊幻想記 9.月下の勇者

北山結莉(著), Riv(イラスト)

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精霊幻想記 1

北山結莉(原作), みなづきふたご(作画)

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