ライトノベルニュース総決算2017 今年も続いた創刊ラッシュ、コミカライズも130作品に迫った一年

2017年の筆者が振り返るライトノベルニュースの一番の驚きは、HJノベルス刊『異世界はスマートフォンとともに。』のTVアニメ化だったような気がする。一言で表すなら予測不能だった。アニメ化の情報も放送の約3ヶ月前という電撃的なタイミングで解禁され、より強い驚きとなって筆者に印象付けたことだけは間違いない。さて、筆者が驚いたニュース以外にも2017年はライトノベルの市場、業界、界隈を賑わす様々なニュース、そして出来事があった。ラノベニュースオンラインでは、2017年のライトノベルニュース総決算と題して、2017年の出来事や注目のニュースをまとめてお届けする。

■年間刊行点数は昨年とほぼ横ばい――新作の刊行点数は1.1倍に

まず2017年を振り返ると、ライトノベルの刊行点数は約1,800点(ラノベニュースオンラインアワードの主だった対象作品より抽出)となった。昨年は約1,750点となっており、市場全体の刊行点数はほぼ横ばいだった。その一方で、新作の刊行点数は昨年の約550点から約600点へと増加。全体の刊行点数における増加分のほぼすべてが、新作であったということになる。2017年も新たなレーベルが立て続けにスタートしたことを考えると、新作に傾いだ刊行点数の増加は必然とも言える。また、今年は新作で印象に強く残る作品も多かった。特に各レーベルの新人賞受賞作の話題は、昨年と比較にならないほど増加したように思う。第29回ファンタジア大賞「大賞」受賞作『通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?』、単巻で10万部を突破した第23回電撃小説大賞「大賞」受賞作『86―エイティシックス―』など今年を象徴する作品はもちろん、WEB発以外でも話題を呼んだ作品が多数登場したことは、ひとつ明るい話題と言えよう。新作が盛り上がることはライトノベル業界全体から見ても喜ばしいことなので、2018年も大いに期待したいところだ。

■2017年も止まらなかった新レーベルの創刊

そして2016年に引き続き、2017年もライトノベルの新レーベル創刊は止まらなかった。ヒーロー文庫の兄弟レーベルとして創刊した「プライムノベルス」から始まり、「ツギクルブックス」「Kラノベブックス」「ガガガブックス」「ブックブラスト」「Dノベル」「UGnovels」と続いた創刊ラッシュ。毛色こそ違えど、クラウドファンディングを利用した「スーパーノヴァブックス」などもそのひとつと言える。一部を除き、多くのレーベルがWEB発小説の作品を刊行対象としている点は、2016年に立ち上がった多くのレーベルと変化はない。

そして2018年(と思われる)には株式会社キリスト新聞社が、キリスト教ライトノベルレーベルを立ち上げようと新人賞の募集も行っており、レーベルの創刊は続きそうだ。ただ、去年や一昨年に比べれば、2018年は立ち上がる数こそ落ち着くのではないかと考えている。市場は文庫・単行本ともに飽和状態と言ってもいい。挑戦するにしても、市場で戦い抜く戦略と企業体力が求められることになるのは明白だ。新規レーベルの参入で市場が盛り上がること自体はとても喜ばしいことではあるのだが、現在の市場は決して甘いだけの状況ではないということをしっかりと認識した上で、乗りこんでくるレーベルが望まれる。また、進出の明るい話題と撤退の暗い話題は表裏一体。2016年末に創刊した「レッドライジングブックス」は1年を待たずして新刊の刊行を取りやめたほか、「ホワイトブックス」を刊行していた合同会社白好出版も解散。撤退の動きもまた、少しずつ表面化してきている。

■劇場版が盛り上がった2017年――今後のアニメ続編はOVA&映画が主流に?

映画館なんてほとんど行かないのに、今年は結構足を運んだかもしれない、という読者もいるのではないだろうか。今年はライトノベルを原作とした劇場アニメが大きな話題を呼んだ。『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』、『劇場版 魔法科高校の劣等生 星を呼ぶ少女』、『映画 ノーゲーム・ノーライフ ゼロ』。いずれの作品も大ヒットを記録し、あわせて関連書籍も市場で大きな動きを見せた。また、2017年には『冴えない彼女の育てかた』の劇場版制作が発表されているほか、『映画 中二病でも恋がしたい! -Take On Me-』も年明けから公開スタートとなるなど、劇場化の流れは2018年も継続しそうである。実写映画も2016年の発表を受けて『サクラダリセット』や『二度めの夏、二度と会えない君』、ライトノベルにニアなポジションにある『氷菓』が劇場で公開された。

また、OVA化もより活発になった印象を受けた。昨年からリリースされていた『ストライク・ザ・ブラッドⅡ』、『天地無用! 魎皇鬼 第四期』、『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』などに続き、『Re:ゼロから始める異世界生活』や『エロマンガ先生』、『新妹魔王の契約者』のOVA展開も新たに発表されている。アニメ制作の予算なども関係している可能性は否定できないが、一方で作品のファンから確実にお金を落としてもらう方法へとシフトしているようにも見えなくはない。これは世の中のコンテンツが、より強度なファンの囲い込みに動いているとも言える。TVシリーズは海外への配信権など新たな収益モデルを模索・確立しようとしている中、確実に刺さるファンをしっかりと捉まえるOVAや劇場版は、今後の作品展開手法における主要モデルのひとつになるのかもしれない。

■コミカライズの新連載は120作品以上――WEB発ライトノベルの原作が約8割

「WEB発ライトノベルのメディアミックスの波は継続する可能性が高い」。昨年の総決算記事で触れたこの波は、2017年を振り返るとまさに大津波であった。2017年に連載がスタートしたコミカライズ作品は、昨年の1.5倍を超えて130作品に迫る新連載がスタート。うちWEB発となるライトノベルを原作とした作品の割合は約8割という驚異的な数字を残した。2017年の大コミカライズ時代を築き上げた要因は、間違いなくWEB発となるライトノベル作品の牽引あってこそだろう。特に今年はモンスター文庫が「モンスターコミックス」にてコミカライズ戦略を本格化。アース・スターノベルも同様に「コミック アース・スター」で本腰を入れた展開を行ったことも、大きな要因のひとつとなっている。また、昨年はほとんど見られなかった女性向けライトノベルのコミカライズも大きく動き出した1年となった。アリアンローズをはじめとして女性向けレーベルも続々とメディアミックスに乗り出す一方で、女性向け市場もまたWEB発の作品に大きく支えられていることも明らかとなった。

そしてアニメ化の波は2018年に向かって一層強くなることが予想される。年内にはヒーロー文庫より初のアニメ化作品として『ナイツ&マジック』と『異世界食堂』が放送。年明けからスタートする『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』や『オーバーロードⅡ』を皮切りに『ありふれた職業で世界最強』や『異世界居酒屋「のぶ」』、アニメ化企画進行中で2018年の展開が期待される『盾の勇者の成り上がり』や『賢者の孫』などのビッグタイトルが並ぶことになる。2018年にもアニメ化の発表が行われるであろうことを考えると、WEB発のライトノベルを原作としたメディアミックスプロジェクトは、業界を通じてまだまだ続くだろう。

■ライトノベルを盛り上げてきた長編シリーズが続々と完結

そして今年は、近年で稀に見る10巻以上の長編シリーズが惜しまれながら続々と完結した1年でもあった。遺志が引き継がれ13年のシリーズに幕を下ろした『ゼロの使い魔』にはじまり、9年間シリーズが続いた『カンピオーネ!』など、長らくライトノベルを盛り上げてきた人気シリーズが物語にピリオドを打った。「すごく良い話の終わり方だった」と感じた人もいれば「もっと続いて欲しかった」と感じた人もいただろう。作品と共に数年、或いは十数年という決して短くない時間を過ごしてきた読者にとっては、いずれも万感の想いで結末を見届けたものと思う。完結した作品の作家のみなさまもお疲れ様でした。これからの新シリーズにも期待しています。

【完結した10巻以上の作品】

『魔弾の王と戦姫』(MF文庫J)/『カンピオーネ!』(ダッシュエックス文庫)/『冴えない彼女の育てかた』(ファンタジア文庫)/『ゼロの使い魔』(MF文庫J)/『空戦魔導士候補生の教官』(ファンタジア文庫)/『うちの居候が世界を掌握している!』(GA文庫)/『アウトブレイク・カンパニー 萌える侵略者』(講談社ラノベ文庫)/『新妹魔王の契約者』(スニーカー文庫)/『魔技科の剣士と召喚魔王』(MF文庫J)/『落ちてきた龍王と滅びゆく魔女の国』(MF文庫J)/『なれる!SE』(電撃文庫)/『僕の文芸部にビッチがいるなんてありえない。』(講談社ラノベ文庫)/『ゼロから始める魔法の書』(電撃文庫)/『機巧少女は傷つかない』(MF文庫J)/『世界の終わりの世界録<アンコール>』(MF文庫J)など ※本編の完結を含む

■業務提携や子会社化、共同プロジェクトの発足――業界連携が強まる

年末にはTSUTAYAなどを有するCCCグループのカルチュア・エンタテインメント株式会社によって、ヒーロー文庫やプライムノベルスを有する主婦の友社が子会社化され大きな話題を呼んだ。同社は3月にも徳間書店を傘下に加えており、新たな出版社と販売店の在り方、連携の手法に変化をもたらそうとしている。またエイベックス・ピクチャーズ、松竹、エブリスタの三社による《次世代》型原作の創出を目的とした新作開発プロジェクト「エブリスタジオ」の創設。SSS合同会社、伸童舎株式会社、株式会社デジタルパブリッシングサービス、プレアデスアニメーション株式会社の4社協力で誕生した「スーパーノヴァブックス」。そして株式会社アルファポリスと東宝株式会社の業務提携による賞レース「Webコンテンツ大賞」の共同開催。後の3つはいずれも新たな才能・コンテンツの発掘に重点を置いた提携や共同プロジェクトとしてスタートしており、強力なコンテンツを生み出したい、有したいという強い意図が感じられる展開が続いたことも印象的だった。

■『とある魔術の禁書目録』約7年ぶりとなるTVシリーズ第3期が発表

2013年に劇場版こそ公開されていたが、TVシリーズとしては2010年から2011年にかけて放送された第2期より約7年ぶり。長らく沈黙を続けてきた『とある魔術の禁書目録』TVシリーズ第3期が遂に発表となった。シリーズ累計は1600万部を突破しており、新約とナンバリングを一新してからもその刊行ペースが落ちることはなく、シリーズ50巻も見えてきている本作。ファン待望となるアニメ新シリーズには大きな注目が集まることは間違いない。

■ライトノベルのアナログゲームが次々発表

『妹さえいればいい。』のアニメでも注目を集めたTRPGをはじめとするアナログゲーム。2017年はライトノベルをもとにしたアナログゲームが複数発表されるという珍しい一年であった。『ソードアート・オンライン ボードゲーム ソード・オブ・フェローズ』、『サクラダリセット』カードゲーム、スマートフォン向けアプリ『ソードアート・オンライン コード・レジスタ』のビジュアルブックには「スカウトバトル」カードゲームも付属して発売が行われた。また、『妹さえいればいい。』からは現在制作中となっている「ラノベ作家の人生」、そして『ゴブリンスレイヤー』のTRPG化の発表も記憶に新しい。エンターテインメントだけでなく、実生活においてもデジタル化が急速に進む昨今。ライトノベルとアナログゲーム、この2つがタッグを組んで、どのような「遊び」を我々に提供してくれることになるのか、楽しみにしたいところである。

※長編シリーズの完結トピックスにおいて『織田信奈の野望 全国版』が完結と誤解を招く掲載が行われておりました。シリーズは現在も継続しております。関係者の皆様には深くお詫びを申し上げます。(2018年1月10日修正)

上記のトピックスは、あくまでも印象に強く残った出来事やニュースであり、『ソードアート・オンライン』の新章始動や《アリシゼーション編》のアニメ化決定、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』のifシリーズの始動をはじめ、作家・イラストレーターの訃報など、注目すべきニュースはまだまだ多い。2017年ラノベニュースオンラインではライトノベルのニュース記事を約2400本配信した。どんなことがあったのかもっと知りたいという読者は、ぜひラノベニュースオンラインで2017年のライトノベルニュースを振り返ってみてほしい。

ラノベニュースオンライン編集部

©井中だちま/KADOKAWA 富士見書房刊 イラスト:飯田ぽち。
©安里アサト/KADOKAWA アスキー・メディアワークス刊 イラスト:しらび
©2016 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス刊/SAO MOVIE Project
©ヤマグチノボル/KADOKAWA メディアファクトリー刊 イラスト:兎塚エイジ
©鎌池和馬/アスキー・メディアワークス/PROJECT-INDEX