独占インタビュー「ラノベの素」 砂義出雲先生『クロハルメイカーズ 恋と黒歴史と青春の作り方』

独占インタビュー「ラノベの素」。今回は2018年3月20日にガガガ文庫より『クロハルメイカーズ 恋と黒歴史と青春の作り方』が発売となる砂義出雲先生です。本作は黒歴史と青春の二軸から描く高校生クリエイターたちの赤裸々すぎる日常が魅力です。創作者なら誰しもが一度は通ったことのある道を綴った本作について、物語誕生の秘密や作品の見どころについてお聞きしました。

【あらすじ】

必要なのは、好きなものへの憧れと衝動のみ!!「黒歴史を恐れるな」を合い言葉に、同人誌や動画などを制作している「創造部」。クセの強い部員が集まるこの部活で、湊介はあらゆるサブカルに精通する自称ハイパークリエイトプロデューサーとして部を統率していた……はずだったが、部活紹介のクソ映画がオタク知識ゼロのお嬢様・比香里の心を掴んでしまい――!? 純真なる新入部員の加入は奇跡か、新たな闇か。プライド、見栄、自意識、才能……不安と葛藤を超え、創作の道を突き進め!! 痛くも恥ずかしい、むき出しの青春群像劇開幕!

――それでは自己紹介からお願いします。

生きているだけで黒歴史・砂義出雲と申します。神奈川県出身で、第5回小学館ライトノベル大賞で「優秀賞」を『寄生彼女サナ』で受賞してデビューしました。

――好きなものや苦手なものがあれば教えてください。

好きなものは創作物全般とインターネットです。創作物は見るのも作るのも両方です。映画が一番好きですが、ゲームもしますし、漫画やアニメも観ます。自分で音楽もやりますし映画の制作などもやります。少し器用貧乏なきらいもあるんですけどね。苦手なものは……苦手なものというか、言っちゃいけないところで言っちゃいけないことを言って笑いを取りに行く悪癖があることでしょうか。

――言っちゃいけないところで……俗に言う空気が読めないといったイメージでしょうか。

いや、たぶん空気は読めるんですけど……。タチの悪いことに、空気を読んだ上でシリアスな空気があると、身体がどうしても反射的に壊したくなるというか。本当にヤバいときは自重できるんですけど、そうじゃないところではどんどん踏み込んじゃいますね。怒られている時とか、家族会議の時とか……。本当に良くないと思うんですけど、茶化しに行ってしまう……。ネットでも多少その気があって、ネタになりそうなちょっとヤバめな出来事があると、触れたくて仕方がないんですよね。例えば……(この後不謹慎な発言が続いたためカット)。

――いわゆる「炎上」事案に足を突っ込んでいくこともやぶさかではないと?(笑)。

前作である『天網炎上カグツチ』がそういったお話にも踏み込んだ作品なんですが、極論僕自身が炎上することも構わないと思う気持ちがありながら、でもやらかした後に心はしっかり傷ついているんですよ。我ながらとんでもなく面倒くさいタイプですね。繊細な当たり屋ですよ!(笑)。まあそんな悪癖も含めて、これはもう自分ではどうしようもない業だと思ってます。なんだか脇道に話が逸れまくっている気がするんですが大丈夫でしょうか……。

――ご安心ください。順繰りに作品にも触れていきましょう。

よかったです。なかなか自分は他人に心を開かないタイプなので、ありがたいです。

――全然そういうタイプには見えないのですが……。

そうですかね。結構、周りの認識と、自分の認識にギャップがあるんですよね。例えば僕は結構自分自身のことを普通の人だと思っているんですが、周りにあまり賛同してもらえないんですよ。僕は僕自身の世界の常識や法律に則って動いているだけなんですが、みんなから白い眼で見られることも多いんですよね。

――自身の法で動くと日本の法に裁かれる的な(笑)。

まさにそれ(笑)。日本の法の方がおかしいんじゃないかとたまに思――――。

――砂義出雲法と日本の法律については後日またあらためて(笑)。さて、新シリーズは前作の『天網炎上カグツチ』から約3年ぶりとなります。率直な感想をお聞かせください。

ではここから真面目に(笑)。まず、どうして3年空いたかというと、前作『天網炎上カグツチ』は僕にとって渾身の作品だったんです。センセーショナルな問題作で世間に一石を投じ、これで波風を起こしてやろうという思いが強かったんですが、思った以上に反響がなくて……。その結果に打ちひしがれて再起動するまでに3年かかった感じです。

――傷つきやすいという砂義先生の伏線がこんなところで回収されてしまうことになるとは……。

そうですね。心に傷を持つ戦士なんです。まあ、バーサーカーっぽくもありますが。そして回復までに時間もかかるという。つくづく面倒なタイプですね(笑)。ただ、今回無事に再起動できてホッとしている面も大きいです。一応3年間何もしていなかったわけではないですし、企画も少しずつ提出していました。

――新シリーズの手応えについてはいかがでしょうか。

まずは肩の力を抜いて、とりあえず出してみようという感じですね。創作と青春がテーマなんですが、自分が3年間何も書けなかった苦悩なんかも作品の中に込めてみようと思いました。その結果、楽しさと苦さの両方をバランスよく書ききれたと思います。

――それでは新作『クロハルメイカーズ』がどんな物語なのか教えてください。

痛々しくも目が離せない学生クリエイターたちによる青春ラブコメです。オタクたちが好きなものを愛でたり作ったりしている、「創造部」と呼ばれるアマチュアクリエイター集団に、オタク文化に免疫のないお嬢様がやってきて、部活動をかき乱していきます。創作を知る人間と知らない人間の異文化衝突によって生まれる面白さや恋愛模様がメインとなります。また、それぞれのキャラクターの文化のバックボーンがそのままキャラクター紹介にもなっているので、既存の創作物もかなり登場します。映画や漫画など各ジャンルに詳しい方は共感していただける点も多いのかなと。逆によく知らない方には、サブカルチャー入門書のような楽しみ方もできるんじゃないかと思っています。

※創造部の黒歴史と青春を描く!

――私も拝読させていただいて、砂義先生の3年書けなかった想いが込められているというお話をうかがって、『クロハルメイカーズ』が誕生したというのはとても腑に落ちました。

ありがとうございます(笑)。自分としては、書いた文章は自身のクローンであり、切り離された別の物という側面があったりもします。なので、作品が形になる度に、自分じゃないんだけど自分そのものを見せられているような、とても不思議な感覚なんですよね。これを第三者の方が目にしたらどのように映るのか、とても楽しみです。

――3年の書けなかった想いが作品制作の力になったというお話でしたが、あらためてこの作品の着想について教えてください。

はじまりは、3年停滞していた自分のダメな現状も含めてとにかく作品にしようという想いでしたね。いちばん原始的なところに立ち返って作品を創りたいと。そこで描くべきテーマを考えたら、行きついたところが「創作」そのものだったわけです。創作の喜びはもちろん、辛さなんかも含めてですね。

――自身の原点が創作だったというお話ですが、具体的な創作活動はいつ頃から行っていたのですか。

一番遡ると、幼稚園から小学生までの間。オリジナルキャラクターで漫画のようなものを描いていたと思います。中学生になるとパソコンを与えられて、インターネットに触れるようになりました。ここでテキストサイトのようなホームページを作り始めました。テキストサイトを続けながらギターも始めましたね。そこで作詞や作曲もやりましたし、中学時代には曲入りのカセットテープを作っていましたし、高校時代にはフルアルバムを2枚作ったりもしました。

――バイタリティがすごいですね。本当に小さな頃からアウトプットを続けてきたんですね。

高校では放送部に在籍していまして、ここで映像作品の制作に触れることにもなりました。コンテストなんかもあって、1回だけ全国大会に行ったことがあります。ただ、友人が少なかったので音楽も映像制作も大部分を一人でやっていました……。そういった経緯もあって、一人でずっと、友達を求めながら文章と音楽と映像と3本の活動をずっと続けていました。そういう歪んだ青春を送ってきたので、自身の原点に立ち返った時に辿り着いたテーマが「創作」だったんだと思います。

――作中のクリエイターをプロではなくアマチュアで描かれていることも特徴的だと感じました。作家ものの作品をはじめ、プロに視点を当てるテーマも多い中、アマチュアを題材にした理由はなんだったのでしょうか。

先ほども言いましたが、自分にとって創作とは何かという原始的な部分を掘り下げるなら、創作を始めた学生時代に遡って触れていきたいという想いがありました。それと自分に才能があるかどうかっていうクリエイターとしての悩みをダイレクトに表現できるのもアマチュアだからこそなのかなと。プロを題材にすると、どうしても才能がある人達の物語になってしまう。ある意味それは勝者の物語だと思うんです。それでは、そこまで辿り着けていない弱者や敗者の心が描けないと思いました。あとは若さゆえの過ちも含めて、等身大のクリエイターの青春が描きたかったんです。『クロハルメイカーズ』は僕の作品で初めて、超常現象やぶっ飛んだ設定が存在しない作品でもあって、現実のみなさんと地続きの世界を舞台にしています。アマチュアのクリエイター達を主人公とすることで、等身大に共感してもらえるかなと思いました。

――インターネットを創作活動の中心に置いているキャラクターが多い点もとても現代風で印象的でした。

ネットがなかった時代と今の若い子たちの活動はやっぱり違うと思うんです。仮に自分が高校生だったとしたら、どんどん作ったものをネットにアップしていくんじゃないかなって。同人誌だってイベントを待たなくてもネットを介して売れちゃう時代です。そういった部分は今時のアマチュアクリエイターのリアリティに触れている感じですね。

――あらためて思いますが、プロじゃない、まだプロになれていない人にとっては、とても共感できそうな内容ですよね。

ありがとうございます。現役の高校生クリエイターはもちろん、プロを目指していてもいなくても、創作に携わっている方に共感してもらえたら嬉しいです。

――では本作に登場する主要なキャラクターをそれぞれ教えてください。

主人公の澪木湊介はかなりのクズです。プロデューサーという立ち位置であり、文章の執筆もしますが、クズ中のクズ。自分の行動パターンもかなり織り交ぜて作り上げたキャラクターでもあって、そういう意味では作者のクズさ加減を象徴したキャラクターでもあるという……。まあ、真っ当なキャラクターではないという点だけまずは押さえていただければと(笑)。

※左:澪木湊介/右:桃栗みとせ(キャラクターデザインより)

サブヒロインである楠瀬奈絵は最強のサブカル女子を目指しました(笑)。「俺が本当に可愛いサブカル女子を見せてやりますよ!」とばかりに、サブカル女子の生態やいい所を真っ向から描いたつもりです。湊介とは長い付き合いで、サブヒロインという立ち位置でありつつ、ヒロインとして物語にどこまで食い込んでいけるのか楽しみなキャラクターです。

※左:日向夏若葉/右:楠瀬奈絵(キャラクターデザインより)

続いてメインヒロインの星月比香里ですが、「創作部」の面々にとってはまさに異文化の塊のような存在です。一方で、クリエイターにとっては、自分の知っていることを何でも褒めてくれるし、大事なところで尻を叩いてくれる理想的な女の子とも言えます。

※星月比香里(キャラクターデザインより)

――星月比香里はクリエイターにとって理想的な女の子とのことですが、行き詰ったクリエイターにとっては非常に怖い存在だとも感じました。創作者の誰しもが持ち得た、作中の言葉における「初期衝動」を抜き身の刃で突き付けてくる存在とでもいいますか。

なるほど。仰る通り、行き詰ったクリエイターにとっては、自分が失ってしまったものをまざまざと見せつけられてしまう眩しい存在であると言えるかもしれません。彼女を見れば見るほど、今の自分の在り方を痛感させられる、そんなキャラクターでもありますね。ただ、その一方で、比香里については僕のよくないところでもあるんですが、闇の部分も少し含ませているんですよね(笑)。恐らく、作品が闇に近づいていく、そういうヤバそうな匂いがしたら結構わかると思いますんで(笑)、そういった点にも目を向けながら読んでいただけたらと思います。

※クリエイターにとってはまぶしい存在だという星月比香里

――本作において注目のキャラクターやシーンがあれば教えてください。

一押しのキャラクターは楠瀬奈絵ですね。個人的なサブカル女子愛を詰め込んだので(笑)。主人公に対して遠回しなアピールがあったりする点もいじらしい女の子です。注目のシーンについては、深く言えませんが、クライマックスのシーンです。この作品ではまず、このシーンを表現したかったので。ぜひ注目していただきたいです。

――本作は特にどんな人達が読むと、一層面白く感じることができそうでしょうか。

何かを作りたいと思っている人や、上手く作れずこじらせている人、普通に青春ものが読みたい人、アニメや漫画などの創作物が好きな人、可愛い女子が好きな人、いろんな人に向けて間口を広げているので、ぜひ手に取っていただけたらと思います。

――また、今回は独自のキャンペーンも展開されるとうかがっています。どんなことを実施するのでしょうか。

よく僕らは「初動が大事」と言いますが、今まで本を初動で買ってくださったり、すぐに読んでくださったりしていたありがたい読者の方へのバックが少なかったと思うんですね。なので、発売日から期間限定で、早期購入感謝キャンペーンをしようと。ガガガ文庫の公式Twitterでの感想キャンペーンや、僕個人のホームページでも、作品を早めに買ってくださった方向けのちょっとしたコンテンツとかを用意したりする予定です。これらのキャンペーンが、発売日に作品を買おうという気持ちの後押しになってくださればと思います。

――これからの目標や野望があれば教えてください。

ヒット作を出して、作家として作品を出し続けていきたいです。最終的に、若者やネット文化に詳しい作家として、テレビのコメンテーター枠を狙っていきたいですね(笑)。

――それでは最後に本作に興味を持っている方へ一言お願いします。

むき出しの自分だからこそ書ける、むき出しの青春を、むき出しのまま書いています。そして本作は、青春ものとしてまっとうに書ききるつもりです。よろしければリアルタイムで最後まで応援していただけると嬉しいです。

――本日はありがとうございました。

<了>

高校生だから。そしてアマチュアクリエイターだから。突き進みながら悩む姿まで、赤裸々に物語を綴った砂義出雲先生にお話をうかがいました。現代ならではの創作活動をはじめ、中学生や高校生のクリエイターには特に読んでもらいたいと感じる本作。恥ずかしさと熱さと譲れない想いと、創作と青春がクロスする『クロハルメイカーズ 恋と黒歴史と青春の作り方』は必読です!

『クロハルメイカーズ』発売記念プレゼント企画!

砂義出雲先生の直筆サイン入りカバーフォトプリントを抽選で3名の方にプレゼントいたします。

応募方法はとても簡単。応募対象期間となる2018年3月19日(月)~3月22日(木)の期間中にTwitterで本インタビュー記事をツイート、またはリツイートするだけ。抽選で3名様に「ラノベニュースオンラインのツイッターアカウント(@lnnews)」よりDMにてご連絡させていただきます。応募を希望される方は、ラノベニュースオンラインのツイッターアカウントのフォローをお願いします。

※当選発表は当選連絡のDMにて代えさせて頂きます。

※当選者の方へはプレゼント郵送先の住所や氏名等の情報をお伺いいたします。

※プレゼントの発送は国内在住の方とさせていただきます。

※プレゼントの発送はガガガ文庫編集部様より実施するため、頂戴した情報はガガガ文庫編集部様へ共有させていただきます。

©砂義出雲/小学館 イラスト:冬馬来彩

[関連サイト]

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