【特集】『魔王の後継者』吉野匠先生&ブレイブ文庫編集部 新レーベル創刊記念インタビュー

2018年4月28日に新レーベル「ブレイブ文庫」が一二三書房より創刊となった。創刊第1弾には『魔王の後継者』と『チート薬師のスローライフ』の2作品がラインナップ。今回は創刊記念インタビューとして『魔王の後継者』の吉野匠先生に新シリーズの内容をはじめとした様々なお話をうかがった。さらにブレイブ文庫編集部にも同席をいただき、ブレイブ文庫創刊の狙いや目指していく方向性についてもお話を聞いている。『レイン』シリーズの吉野匠先生の最新作『魔王の後継者』と新レーベルに注目してもらいたい。

【あらすじ】

同級生達とのお別れ会を終えた高校生天野涼の前に、突如異世界の魔王を名乗る男が現れる。グレイオスと名乗るその男は、とある理由から自身の後継者を探しており、異世界シャンゼリオンに存在する神器のひとつ『トゥルーミラー』の導きにより後継者にふさわしいとされる涼のいる世界に降り立ったのだ。力を試すべく剣を交えたグレイオスにその資質を見せた涼は、魔王とともに異世界シャンゼリオンに渡った。だが、魔族領で後継者としてお披露目された涼を待ち受けていたのは、突然現れた異種族の少年を認められない魔族との決闘であった。

・吉野匠(インタビュー内は吉野

ブレイブ文庫刊『魔王の後継者』を執筆。アルファポリス刊『レイン』シリーズなども刊行中。

・ブレイブ文庫編集部(インタビュー内は編集部

新レーベルを立ち上げたブレイブ文庫の編集部。

――それでは吉野匠先生の自己紹介をお願いします。

吉野:吉野匠です。出身は都内ですがしばらく関西にいたこともあって、関西弁が抜けきっておりません(笑)。このたびブレイブ文庫の創刊第1弾ラインナップとして『魔王の後継者』を発売することになりました。作家としては2005年にアルファポリスより『レイン』シリーズでデビューしました。今でこそ珍しくありませんが、デビュー当時は作家としてかなり特殊な立ち位置にいたような気がします。WEB出身という作家が周囲にほとんどいなかったですし、「WEB出身なんです」とお話しても通じないことが多かったですね。

――続いて好きなものや苦手なものなどがあれば教えてください。

吉野:海外旅行でお城や風景を見るのが好きです。最近はオーストリアのウィーン、ハルシュタットに行ったのと、チェコのチェスキー・クルムロフに行きました。すごく色々巡っているなと思われるかもしれませんが、一人旅をするような根性もなく、すべてひとつの格安団体ツアー旅行です(笑)。苦手なものは、得意でもあり苦手でもある「書くこと」。筆が走ると早いんですが、止まると長いんですよね……。『レイン』シリーズでも読者の方によく指摘されるのが出版間隔でして……。書けなくなると本当に書けなくなってしまうのが難しいところです。そんな時はWEB小説をいち読者として読み漁っていたりします(笑)。

――ありがとうございます。それでは新規レーベルを立ち上げられたブレイブ文庫編集部にもおうかがいします。ズバリ、新レーベル創刊の意図や狙いについて教えてください。

編集部:まず弊社、一二三書房の文庫レーベルには桜ノ杜ぶんこがありましたが、一旦刊行を停止してリニューアルをしたいという話がありました。また、文庫の市場をもう一度しっかりと見直して、どういった作品が市場で大きな反応を生み出しているのかを調べていたんです。編集部内でも様々な意見はありましたが、ジャンルとして目を付けたのが西洋ファンタジーでした。WEB発の小説でも多いジャンルであり、桜ノ杜ぶんこでは扱っていなかったWEB発の作品もブレイブ文庫では取り込みながら楽しんでもらいたいと考え、書き下ろしとWEB発の作品を融合して刊行する新レーベルの創刊に踏み切った形です。

――「勇気あるもの」がキャッチフレーズにもなっている「ブレイブ文庫」の名称はどのようにして決まったのでしょうか。

編集部:「ブレイブ」という名称は編集部の若い人からおじさんまで意見を出し合って、覚えやすい名称であることと、勇者や冒険感のあるものというイメージを添えて決まりました。「ブレイブ」はそのまま「勇者」というより、キャッチフレーズでもある「勇気あるもの」という意味の方が強いです。弊社は後発で、会社としての規模も決して大きくありません。なので、そういう意味では編集部にも勇気が必要なんです(笑)。編集部として新しくチャレンジする「勇気あるもの」でありたいという気持ちと、読者さんには新しい作品を勇気をもって手に取っていただきたいという気持ちも含めて「ブレイブ」なんです(笑)。

――編集部が勇気をもって本を刊行し、読者にも勇気をもって手に取ってもらい、書籍の中で勇気をもったキャラクターに出会えるということですね(笑)。

編集部:まさにおっしゃる通りです(笑)。我々としても面白いと感じた本を著者さんたちと一緒に作り上げて送りだしていきますので、ぜひ勇気をもって手に取っていただきたいです!

――発売となった創刊第1弾タイトル『魔王の後継者』はどんな物語なのでしょうか。

吉野:主人公はもともと日本にいる少年ですが、過去1年分の記憶しか有していない記憶喪失の少年です。そんな彼に異なる世界から魔王が接触してくることになります。魔王はある理由から後継者を探しており、あらゆる世界の中から後継者に最も相応しい存在として、主人公の少年が選ばれることになります。主人公は記憶が欠落しており、地球が自分の本当の世界であるのかもわかっていません。魔王の誘いに乗ることで、主人公にとっても得られるものがあるかもしれないという打算的な理由で付いていくことになり、魔王の後継を争う政治戦争に巻き込まれることになります。

※複雑に絡み合うそれぞれの思惑

――魔王の「座」を巡る争いに巻き込まれることになる登場キャラクターについて教えてください。

吉野:主人公の天野涼は先も述べた通り、過去1年分の記憶しかない少年です。自分がこの世界の人間であるのかそうでないのか、己でも疑いを持っており、魔王の誘いにも動じずに乗ることになります。主人公像としては、やや古めの印象を受けるかもしれませんが、格好いい主人公として描いています。作中で一番力を入れて執筆したつもりなので、読者さんにどのように捉えていただけるか非常に楽しみなキャラクターですね。

※天野涼・キャラクターデザインラフ

吉野:続いてユリアは現・魔王をも凌ぐ力を持つとされていて、恐れられている存在です。僕の中では巨大な剣を振り回す女の子が格好いいという発想から誕生したキャラクターでもあります(笑)。10歳と16歳の姿を使い分けることもでき、作中ではキーキャラクターの一人でもあります。

※ユリア・キャラクターデザインラフ

吉野:ロザリーは天才的なセンスを持ち、神様の恩恵も受けている年若い少女です。勇者と称され実力者ではあるのですが、天野涼やユリアの存在によって、どうしても二線級に見えてしまうのが少々可哀相ではあります。彼女のバックにいる組織が今後物語にどのような影響を与えることになるのかも注目してもらいたいですね。

※ロザリー・キャラクターデザインラフ

吉野:グレイオスは天野涼を自らの世界に招き入れた現・魔王です。魔王も言ってみれば不運の存在とも言えるんですよね。神器に頼りすぎ翻弄されてしまったことが、この魔王の弱さなのかもしれません。見た目も厳ついし実力も相当あるのですが、やはり二線級に見えてしまうという(笑)。

※グレイオス・キャラクターデザインラフ

――ご自身で印象に残っている、あるいは見てもらいたいシーンやイラストはありますか。

吉野:カバーでも使用されているユリアのイラストですが、実は全身図があるんです。それがとにかく素晴らしいんですよ。

編集部:カバーでは切れていますが、等身大パネル用に全身を描いていただいた一枚になりますね。

※等身大パネルも用意されるというユリアの全身イラスト

吉野:あとは口絵として収録されているユリアとロザリーの戦闘シーンを描いた一枚。これも凄くいいです。イラストを見ただけで力関係が一発で分かるのも本当にすごいです。

――イラストの指定などでこだわった点などはあったのでしょうか。

吉野:僕はほとんど注文をつけなかったです。これまでの経験上、あんまり専門分野じゃないところには口を出さない方がいいと考えているので(笑)。

編集部:驚くべきことに本当にほとんどないんですよ。むしろもうちょっと言っていただいた方が安心できるくらいです(笑)。

吉野:イラストレーターさんにもイラストレーターさんの世界観や作品観があると思うんです。なので、余程重大な事態にでもならない限りはそういった観点も尊重したいなと。見ていただければわかると思うんですけど、星咲怜汰先生のイラストはめちゃくちゃお上手なので、本当に言うことはありませんでした(笑)。

――今回レーベルの創刊にあたって、吉野先生はどのようにして創刊メンバーに名前を連ねることになったのでしょうか。

編集部:創刊に向けては様々な方にお声かけをさせていただいていたのですが、ちょうどそういったタイミングで、吉野先生から弊社窓口までご連絡をいただいたことがきっかけでした。ただ、最初のメールでは自著の紹介なども書かれておらず、作家の吉野匠です、とだけ。編集部内ではどちらの吉野匠さんだろうかとざわざわしましたよね(笑)。メールにはご自身のことが詳しく書かれていなかったので、本物かもしれないし偽物かもしれない、と。

吉野:そりゃそうですよね(笑)。普通は自著の紹介とかも入れて連絡しますよね。当時はその部分が完全にすっぽ抜けた状態でご連絡してしまったんですよね。

編集部:最終的には電話でご連絡をして、作家の吉野匠先生だと判明しました(笑)。その後、新レーベルに関するお話もさせていただいて、プロットをいただけますかというお話をしたらすぐに送っていただきました。

吉野:僕的には創刊ラインナップのトップバッターに立たせていただけるとは思っていなかったので驚きしかありません(笑)。

編集部:プロットをすぐにお送りいただいたこともそうなのですが、あらゆるスピードが本当に早かったんですよ。そういった要因もあって、吉野先生にトップバッターとして立っていただくことになりました。

――『魔王の後継者』の執筆にあたって苦労したことはありましたか。

吉野:正直なところ、苦労はほとんどなかったように記憶しています。最初、プロットをいくつか提出させていただいたのですが、この作品は最初にお渡ししたプロット一覧の中には含まれていなかったものなんです。編集さんにプロットを見ていただきつつ、僕自身もあらためてブレイブ文庫の方針やコンセプトに合致するものを考え、別途に提出したプロットから誕生しました。

編集部:最初にいただいたプロットを拝見しながら、他にもありませんかというお話をさせていただいて。そこで『魔王の後継者』のもとになるプロットをみて「これだ」と。ブレイブ文庫のコンセプトにも合致していて、編集会議もすぐに通りましたね。

吉野:プロット決定後も、概ね問題なく完成稿まで進行しましたよね。

編集部:そうですね。企画書の調整能力も非常に高くて、こちらが求めているものを的確に汲み取っていただいた結果、とんとん拍子でお話が進行してきました。一番難航する箇所があっさりと進んだため、執筆にも早い段階で入っていただけました。

吉野:初稿は1ヶ月で書き上げましたからね(笑)。

編集部:プロットOKを出してから、吉野先生が「1ヶ月で書きますね」ってお話をされて、「本当に書けるの?」と。本当に1ヶ月で初稿が送られてきてびっくりしました(笑)。

吉野:速い人はもっと速いと思います(笑)。

編集部:もちろん速い方はいると思いますけど、書き下ろしを1ヶ月で仕上げてくる方もそう多くはありませんよ(笑)。

吉野:WEBでの執筆経験の賜物ですかね。書けなくなるタイミングとぶつからなくてよかったです(笑)。

――WEBに関するお話も出ましたのでお聞きしたいのですが、吉野先生がWEBで小説を書きはじめたのは2000年頃からでしたよね。

吉野:そうですね。『レイン』の執筆をスタートしたのがちょうどそのくらいで、当時はある小説サイトを間借りしていたんですけど、残念ながら消滅してしまって。その後、自分のホームページを立ち上げてやっていました。確かちょうどその時期が「小説家になろう」さんの登場と重なっていたように思います。早い段階から気付けていればそちらで執筆していたかもしれませんが、残念ながら気付くのが遅く……。それと僕のホームページの名前が「小説を書こう」だったこともあって、当時はかなり間違えて訪問されていた方も多かったようです(笑)。なので、WEBでの執筆はかれこれ18年くらいになりますね。

――長らくWEBで小説を執筆されてこられて、今と昔とでWEB小説の置かれている状況はどのように変化したと感じられていますか。

吉野:僕がデビューしたWEB小説の黎明期は、WEB出身作家というライバルがほとんどいませんでしたよね。当時はほとんどのライトノベルが作家さんと編集者さんがタッグを組んで、企画・プロットから立ち上げた書き下ろしの作品だったと思うんです。そういう意味では、今では昔と比べものにならないくらい多くのWEB出身作家さんがいらっしゃる。昨日までは普通の高校生だった方が、その翌日には作家としてデビューしていることも珍しくないわけですよ。時代は変わったなぁと思います。

――WEB出身の作家さんはここ数年だけでも飛躍的に増えましたよね。WEB小説を読む読者側に感じられる変化はありますか。

吉野:読者側の感性の変化は感じることがあります。僕がデビューした当時の『レイン』シリーズでは「主人公が強すぎじゃないか」という主旨の感想をたくさんいただいていました。今でこそ珍しくはないタイプの主人公でしたが、やはり「強いこと」に対して、読み手側にも引っかかるものがあったんだと思います。一方で現在は「苦戦するのはおかしくないか」といった感想や指摘がとても増えているんです。かつてはパーフェクトタイプの戦士(主人公)が読者には支持されづらかったんですが、現在は支持されやすいだけでなく、率先して望まれる環境になっているとも感じます。ここ10年くらいで、WEBで求められるキャラクター像は180度近く変化したようにも思います。

――あらためてWEBからのデビューをはじめとしたWEB小説を取り巻く現在の状況は、作家として幸せなのか厳しいのか、どのような印象をお持ちでしょうか。

吉野:とても難しい質問ですが、兼業として作家業をやられる分には非常にいい環境だとは思います。WEBに投稿して勢いが生まれれば即座に書籍として刊行することができるわけですから。本業と作家業のバランスもとりやすいんじゃないでしょうか。一方で専業としての作家業は、金銭的な面でも後々苦労が生まれそうだなと感じることも多くなりました。WEB小説の初期と現在とでは「売れた」の言葉の意味もかなり違ってきていると思いますし、WEBから書籍化を狙うにしても戦略性が非常に求められるようになったと思います。投稿の方法や更新の間隔、WEB読者のストライクゾーンを把握されている方はアクセスの伸びも早ければ書籍化も早い。今はなんとなく投稿しただけでは、ほとんど日の目をみないのが現状じゃないですかね。

――興味深いお話をありがとうございます。あらためて今後の目標や野望があれば教えてください。

吉野:『レイン』に続くような長編シリーズを展開できたらと思っています。あとはどの作品がというこだわりはないので、アニメ化もぜひ経験してみたいですよね。そういったメディアミックスに繋がるような作品を執筆していければと思います。

――ブレイブ文庫の創刊、そして『魔王の後継者』に興味を持たれた方へ一言ずつお願いします。

吉野:ずっと僕の本を読んでくださっている方がこの作品を読むと、ちょっとした気づきがあるかもしれないしないかもしれません(笑)。本作の主人公は少しだけ古いタイプの主人公像の延長線上にいる強さと格好良さを持っていると思います。ブレイブ文庫の創刊タイトルという形でお披露目できたことをとても嬉しく思っているので、ぜひ皆様にも手に取っていただければと思います。

編集部:ブレイブ文庫は編集部だけでなく営業部を含めて、盛り上げていけるよう取り組んでいます。より面白い作品を創って、みなさまに提供していけたらと思います。ある意味ですごくオーソドックスなヒーロー像の主人公が多いかもしれませんが、読んでよかったと安心していただける作品を目指しておりますので、試し読みなども活用していただきながら、作品に触れていただけたらと思います。また、電子書籍も紙の書籍とほぼ同時に発売となりますので、電子でも紙でもぜひお手に取っていただけたらと思います。ブレイブ文庫は毎月28日頃発売です!

――本日はありがとうございました。

<了>

2018年4月28日に創刊したブレイブ文庫より、吉田匠先生とブレイブ文庫編集にお話をうかがいました。「勇気あるもの」にこだわった新レーベルの創刊第1弾作品『魔王の後継者』、そして『チート薬師のスローライフ』をぜひ手に取ってみてください!

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※当選発表は当選連絡のDMにて代えさせて頂きます。

※当選者の方へはプレゼント郵送先の住所や氏名等の情報をお伺いいたします。

※プレゼントの発送は国内在住の方とさせていただきます。

※プレゼントの発送はブレイブ文庫編集部様より実施するため、頂戴した情報はブレイブ文庫編集部様へ共有させていただきます。

©Takumi Yoshino/一二三書房 イラスト:星咲怜汰

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