独占インタビュー「ラノベの素」 清水苺先生『こんな僕(クズ)が荒川さんに告白(コク)ろうなんて、おこがましくてできません。』

独占インタビュー「ラノベの素」。今回は2018年5月2日に講談社ラノベ文庫より『こんな僕(クズ)が荒川さんに告白(コク)ろうなんて、おこがましくてできません。』第2巻が発売となった清水苺先生です。ラノベニュースオンラインアワードでは第1巻が「新作総合部門」で選出。ラブコメありの青春群像劇を描く本作。自称クズの主人公が、文化祭の劇という一大イベントを終えて迎える最新2巻について、第1巻を振り返りながら物語の見どころについてお話をお聞きしました。

【あらすじ】

自称クズ、趣味は諸般のエロい事(ほぼ二次元)そのくせ成績優秀の主人公・浅井悠馬。クラスのセンターヒロインである荒川唯たちと仲良くなった悠馬だが、人気者になったわけでもなく、悠馬に迫るのは相変わらず幼なじみの明日香だけ――そんなヤツにもバレンタインデーは訪れる。唯のお節介で仲間の明人とメイをくっつけようと企んでいると、事態はおかしな方向へ!? 急接近する明日香と明人、おいてけぼりの悠馬。同じく好きな人に振り向いて貰えない唯。意外なところからバレンタイン後の週末を共にすることになった二人の、一方通行の想いのその先は!? そして悠馬が抱えた重大な秘密とは!? 自称クズが自らの恥ずかしいところ全開全力で再定義する、真の青春ラブコメ群像劇2巻登場!!

――それでは自己紹介からお願いします。

清水苺です。生まれは香川県で、その後はずっと東京に住んでいます。第3回講談社ラノベチャレンジカップで「佳作」を受賞させていただき、『今日、となりには君がいない。』でデビューをしました。それから『ありえない青と、終わらない春』を刊行して、このたび『こんな僕(クズ)が荒川さんに告白(コク)ろうなんて、おこがましくてできません。』の第2巻が発売されます。

――清水先生には大変失礼なお話で恐縮なのですが、本文やあとがきから、正直男性の可能性もあるんじゃないかと考えていました……。

――そんな可能性が(笑)。Twitterをご覧いただいている方はご存知だと思いますが、清水苺は女性です。大丈夫ですよね? みなさん勘違いしてないですよね?

――あらためてここではっきりと、清水苺先生は女性であることを主張しておきます(笑)。好きなことや苦手なことも教えてください。

好きなことはキャラクターカフェに行くことをはじめとした、オタク活動全般ですね。可愛いカフェにひたすら行っている気がします。苦手なのは朝の早起きと協調性とチーム作業です(笑)。兼業ではあるのですが、自分が社会不適合者であることを痛感する日々を送っています。

――でも実際にお仕事をこなされているということは、苦手意識がありながらも協調性を発揮できていると思うのですが。

それがないから困ってるんですよ!(笑)。まだ社会人歴も浅いんですけど、社会的に自分が合っていないと実感しまくりです。もっと自分がうまく働けたらよかったですよね。

――清水先生の協調性問題が、協調性を嫌う本作の主人公・浅井悠馬に通じているような気がしてなりません(笑)。

好きなことはサービスシーン。嫌いなことは協調性。まんま私ですね(笑)。

※清水先生も好きだというサービスシーンも満載!?

――清水先生はキャラクターカフェにたくさん行かれているとのことですが、魅力を教えてください。

ずばり空間ですね。キャラクターカフェに限ったお話ではありませんが、原画とかが飾られている空間が大好きで、ひたすら写真を撮ったりします。コラボメニューで貰った特典を飾ったりもしますし、イラストレーターさんの個展にも足を運んだりします。何か特定の作品にのめり込むというよりは、空間が作り上げる雰囲気にこだわっていると置き換えてもいいかもしれませんね。あらゆるキャラクターカフェに黙々と通い続けてます。

――ありがとうございます。清水先生は講談社ラノベチャレンジカップで受賞し、デビューされているわけですが、本小説賞に応募した理由はなんだったのでしょうか。

あくまで理由のひとつですが、好きな本が講談社に多かったことがあります。小学校の頃に「青い鳥文庫」が大好きで、この頃に漠然と作家になりたいと考えるようになりました。ただ、親に作家になりたいと言ったら猛反対されて(笑)。ちょうど中学受験も控えていた時期でもあって、しばらくは作家になろうと考えていたことも忘れていました。その後、中学校で漫画にドハマりして、漫画家を目指そうと思ったらまた親に猛反対されたんですが、そこで兼業作家であれば親を説得できるんじゃないかと考え、もう一度作家を目指し始めるきっかけになりました。高校時代には『終わりのセラフ』にドハマりして、これは講談社に向けて応募するしかないと。幸いにも賞をいただけたわけですが、『終わりのセラフ』とは全然違う青春もので受賞したのはいったいどういうことなのか(笑)。

――清水先生はすっかり青春ものの作品が定着しているようにも感じますが、3作目にしてシリーズ化となりました。

『こんな僕(クズ)が荒川さんに告白(コク)ろうなんて、おこがましくてできません。』は、私自身すごく楽しみながら書いた作品なので、第2巻の刊行は作家としてひとつのスタートラインに立てたのかなという想いもあります。過去2作品は単巻でしたので。そして自分が楽しんで書けた作品が、読者さんに支えていただいて、続刊へと繋がったわけですから単純に嬉しいですよね。

――それではあらためて『こんな僕(クズ)が荒川さんに告白(コク)ろうなんて、おこがましくてできません。』がどんな物語なのか教えてください。

作品のコンセプトはスクールカーストで最底辺だった主人公が、頂点にいる荒川さんと仲良くなって、文化祭の劇を通して、成り上がっていくという想定のもと描いた作品です。実際に成り上がれているかどうかはともかくとして(笑)。幼なじみの児玉明日香以外と一切の交流を持とうとしなかった悠馬が、荒川さんをはじめとしたスクールカースト頂点のメンバーの優しさに触れて、じょじょにクラスの仲間と交流をはじめて、前を向いていくお話……だと思います!(笑)。

※悠馬を取り巻く様々なクラスメイトたち

――作中ではスクールカーストの頂点を「人助け」や「ヒーロー」という言葉で表現されていたシーンもあったと思います。これはご自身の経験によるイメージなのでしょうか。

ある意味経験であり、ある意味そうではありません。スクールカーストの頂点を「人助け」や「ヒーロー」と称したのは、本来スクールカーストの頂点にいる人達が、こうだったら学校生活楽しいよね、という理想像でもあるんです。私は中高時代、スクールカーストの頂点にいる人達は本当に嫌な奴だと思っていたタイプなんで(笑)。どこの学校も一緒だと思うんですけど、概ね嫌な奴で間違いないんですよ!(笑)。

――偏見の凄まじさを感じますが(笑)、清水先生は中高時代スクールカーストではどういったポジションだったのですか。

恐らく変人枠だったのかなと。最下層だけど、勝手に独自性を築き上げたひねくれ集団みたいな(笑)。私は中高一貫の女子校に通っていて、スクールカーストの頂点をずっと眺めていました。そこでは10人以上が様々な理由で不登校になったりだとか、言えないことが多すぎるくらい、どす黒い世界が広がっていたんです。頂点なんて我が強くてどうしようもない奴ばっかりですよ! 嫌な奴ばっかりです!(笑)。

――なるほど。そういった現実の裏返しでもある、と。

そうですね。ライトノベルの世界だからこそ、スクールカーストの頂点にいる人達を、とことん良い人として描きたかったんです。先にも言いましたが、そういう意味では経験と相反する理想の姿ですよね。

――そんな本作ですが、着想について教えてください。

この作品は、過去2作品で描いた青春ものとは違うジャンルの作品を書くことを目標としていました。正直なところ、私自身としてはラブコメにチャレンジしたつもりだったんです。気付いたらいわゆる青春もの、と呼ばれる作品に近い形になってしまっていたわけですが(笑)。

――本作はこれまでの2作品に比べると、ヒロインに特殊なギミックがなくなりましたよね。

そうですね。ラブコメ作品は主人公とヒロインの1対1という像よりも、主人公とヒロインたちという1対多の構造になる場合が多いと思うんです。なので、登場する女の子を平等に扱うことが、私個人としてのラブコメらしさかなと思っていました。登場するキャラクターみんなに焦点を当てて、要素や特徴を分散させた結果、ギミックに相当する点が薄れたわけです。これまで一人に持たせていた特性をみんなに与えた結果、みんながそれぞれ普通になったということですね。そして、この作品においては全員の恋愛を、それぞれ一方通行にして描きたかったという想いもあります。主人公とヒロインが大好き合っている作品もたくさんあるけど、それぞれが一方通行でも面白んじゃないかと思ったんです。これは第2巻を読んでいただくと、よりはっきりわかるのかなと。あとは、荒川唯という存在は、誰ともくっつかないからこそ可愛いんじゃないか、そんな見せ方もあるんじゃないかと考えていたところもありますね。

――あらためて本作に登場するキャラクターについて教えてください。

主人公の浅井悠馬は、共感できる主人公をモットーにしています。これまでは個人的に少しいけすかない感じの主人公を書いてきていたつもりですが、この作品では嫌味さを感じさせることなく、共感できる主人公として描いています。

※浅井悠馬・キャラクターデザイン

――浅井悠馬は変態だとか、自称クズだとか、マイナスの面がパッと見目立ちますが、一方でヘタレ要素の少ないしっかりとしたキャラクターという一面も見せてくれていると思います。

あくまで個人的な意見ですが、ヘタレの主人公はあまり好きではなかったりします(笑)。キャラクターがあまりにもヘタレすぎて、ストーリーが進まないことにイライラすることってありません?

――そう感じることも確かにある気がします(笑)。

どうせ後々行動するんだから、さっさと進めよ!みたいな(笑)。悠馬はもともと夢を叶えるために凄まじい努力もしていますし、元から行動力はあるタイプなんです。実行力のある彼が、勉強以外でも切羽詰まされたら、行動するんだぞ、と。共感は行動から生まれると考えていて、そういう意味ではちゃんと行動する男の子を描きたかったんです。読者をイライラさせないこと、物語をしっかりと前進させて、サクサク読んでもらうこと。この2点は特に意識しましたね。

そして本作のヒロインでもある児玉明日香と荒川唯の二人は、それぞれ女の子の理想形をイメージしています。明日香は自分に対して可愛くあり続けてくれる純粋な女の子としての魅力を詰め込みました。唯はスクールカーストの頂点にいながら、とにかく良い子として描いています。彼女はクラスの華であり、クラスのおせっかいやきであり、まさに誰からも好かれるような理想の女の子です。もう一人のヒロインである石田メイは、ひたすらに恋に生きている女の子で、この子もある意味男子の理想とする女の子かもしれませんね。

※荒川唯/児玉明日香/石田メイ・キャラクターデザイン

そしてスクールカーストの頂点にいる唐沢明人と遠月肇。唐沢明人は第2巻を盛り上げてくれる一人でもあります。思いやりもあってノリのいい男子ですね。遠月肇は、一番スクールカーストの頂点らしい存在かもしれません。イケメンで、ちょっとした裏があるみたいな。イケメンだからとにかく何でも許されちゃうみたいな。でも決して悪いキャラクターではありません。

※唐沢明人/遠月肇・キャラクターデザイン

――発売となる第2巻の見どころを教えてください。

第2巻では第1巻から描かれている悠馬と明日香はなぜ付き合わないのか、その理由に踏み込んだ物語になっています。あれだけ理想の塊のような女の子に言い寄られているのに、悠馬が心を動かさないようにしているのはなぜなのか。その物語を明日香が悠馬以外の男子を好きになったらどうするのか、そして悠馬と明日香の過去という展開も交えて描いています。この作品の恋愛の矢印は一方通行だというお話をしましたが、状況はさらにこじれていくことになるかもしれません(笑)。バレンタインデーやホワイトデーで描かれる登場キャラクターたちの動きに注目してもらいたいです。

※第2巻では荒川さん、明日香、悠馬にどんな心の変化が訪れることになるのだろうか

――あらためて、この作品はどんな人が読むと、より面白く感じることができると思いますか。

この作品を執筆していた時に考えたのは、気軽に笑ったり泣いたりできるような作品でした。電車の中をはじめ、物語としてサクサク読むことができるラブコメですね。コメディ的な観点でも、青春的な観点でも、群像劇的な観点でも、興味を持ってもらえれば楽しんでいただけるんじゃないかと思います。こんな学校に通えていたら、こんなキャラクター達の中に自分がいられたら、学校生活はきっと楽しいに違いない、なんて考えながら読んでもらえると嬉しいです。

――これからの目標や野望があれば教えてください。

新しいことにチャレンジしたいですよね。最初の方でも少し触れましたが、この作品は青春ものの次として、ラブコメにチャレンジしたつもりでいました(笑)。なので、様々な執筆ジャンルに挑戦したいと思っています。目下は……ダークなエロス方面で模索しています(笑)。あとは人並みですが、作品が売れてほしいということはもちろん、漫画やアニメといったメディアミックスも目標ですね。自分はまだ青春とラブコメしか書いていないので、読者の方に提示できている自分の可能性はまだまだ少ないと感じています。頭脳バトル系も書いてみたいですし、少し触れたダークなエロス方面にも挑戦したい。いろいろと試行錯誤はしている最中ではありますが、自分の可能性を広げていきたいです。

――それでは最後にファンの方、また本作に興味を持たれた方へ一言ずつお願いします。

まず、インタビューのきっかけにもなったラノベニュースオンラインアワードへ投票いただいた皆様、ありがとうございます。第1巻が「新作総合部門」で選出をされ、読者のみなさんの応援があったからこその第2巻でもあります。私個人としても非常に嬉しい思いで、第2巻に取り組ませていただいたので、ぜひ読んでみてください。また、現在スクールカーストの只中にあるみなさんをはじめ、本作に興味を持っていただけたみなさん。こういう学校だったら楽しいなと思えるスクールライフを描いています。こんなクラスメイトがいたら楽しいに違いない、そういった理想の学校像という視点からも楽しんでもらえたらと思います。学校に希望が持てる! ここにあなたの学校があるかもしれない!(笑)。この作品を通してみなさんに、あったかもしれない学校生活をお届けできればと思っているので、ぜひ読んでみてください。今後とも応援をよろしくお願いします! また、第2巻の感想もTwitterでもなんでも構いませんので、つぶやいていただいたり、送っていただけたりすると嬉しいです!

――本日はありがとうございました。

<了>

理想の学校像や理想のクラスメイト像を描き、青春とラブコメに邁進する物語を綴る清水苺先生にお話をうかがいました。第2巻では恋愛模様がより複雑になりながら、あらためてキャラクター同士の関係性や立ち位置がはっきりと示されることになります。自称クズの主人公が青春を読者と共に送る『こんな僕(クズ)が荒川さんに告白(コク)ろうなんて、おこがましくてできません。』第2巻も必読です!

『こんな僕(クズ)が荒川さんに告白(コク)ろうなんて、おこがましくてできません。』第2巻発売記念プレゼント企画!

清水苺先生のサイン入りカバー色校を抽選で2名の方にプレゼントいたします。

応募方法はとても簡単。応募対象期間となる2018年5月2日(水)~5月5日(土)の期間中にTwitterで本インタビュー記事をリツイート、またはつぶやくだけ。応募者の中から抽選で2名様に「ラノベニュースオンラインのツイッターアカウント(@lnnews)」よりDMにてご連絡させていただきます。応募を希望される方は、ラノベニュースオンラインのツイッターアカウントのフォローをお願いします

※当選発表は当選連絡のDMにて代えさせて頂きます。

※当選者の方へはプレゼント郵送先の住所や氏名等の情報をお伺いいたします。

※プレゼントの発送は国内在住の方とさせていただきます。

※プレゼントの発送は講談社ラノベ文庫編集部様より実施するため、頂戴した情報は講談社ラノベ文庫編集部様へ共有させていただきます。

©清水苺/講談社 イラスト:シソ

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