独占インタビュー「ラノベの素」 飛田雲之先生『《このラブコメがすごい!!》堂々の三位!』

独占インタビュー「ラノベの素」。今回は2018年5月18日にガガガ文庫より『《このラブコメがすごい!!》堂々の三位!』が発売された飛田雲之先生です。第12回小学館ライトノベル大賞にて「ガガガ賞」を同作で受賞し、満を持してデビューされます。気になる受賞作の内容はもちろん、まとめサイトやネット小説などにも着眼して描かれる本作に込めた思いなど、お話をお聞きしました。

【あらすじ】

ライトノベル系まとめサイト「ラノベのラ猫」を運営する高校生・姫宮新。彼はとある記事作りをきっかけに、最近行われたネット小説賞で三位に輝いた作品の著者が意中の少女・京月陽文であると知る。彼女の投稿作品はラブコメではなかったが、ネット民の悪ふざけで炎上気味に盛り上がり三位をとった。そして、新こそがその悪ふざけを煽った張本人。だが、それを知った陽文は怒るワケでもなく、こう言った。「わたしにラブコメの書き方を教えてほしいの」まとめサイト管理人と作家志望の少女が紡ぐ青春サクセスラブコメ!

――第12回小学館ライトノベル大賞「ガガガ賞」受賞おめでとうございます。本日はよろしくお願いします。

よろしくお願いいたします。常日頃から見ているラノベニュースオンラインさまからのインタビュー依頼とあって、本日は気合をいれてきました。

――当サイトはよくご覧になっておられるのですか。

もちろんです。ライトノベルに関するニュースサイトやまとめサイトが、今回執筆させていただきました作品のテーマの一つになっていますから。その参考にするため、どういった記事があがっているかを研究しておりました。もちろん、そういう打算的な視点だけではなく、私自身が単純にライトノベル界隈の情報に興味を持っているというのもあります。

――なるほど。何か参考になっていれば幸いです(笑)。それではあらためて、自己紹介からお願いいたします。

飛田雲之と申します。『《このラブコメがすごい!!》堂々の三位!』という作品で、第12回小学館ライトノベル大賞「ガガガ賞」を受賞し、このたびデビューさせていただくことになりました。

――ライトノベルの新人賞は様々にありますが、ガガガ文庫の新人賞に応募してみようと考えたきっかけは何だったのでしょうか。

作品の着想的な点にもあたるのですが、ありがたいことにライトノベル作家の先生と交流する機会に恵まれておりまして、その方々が面白おかしく業界のことを語っておられるのを聞くうちに、このことをライトノベルにしたら面白いのではないかと思ったんです。本小説賞に応募したのは、内容に多少過激な描写もあり、ふと選択肢をいくつか考えた際に「ガガガ文庫くらいしか出版してくれない気がする……」と思ったことがきっかけでしたね。

――その直感が見事的中したわけですね(笑)。受賞の連絡を受けた時はどのようにお感じになりましたか。

まずは何よりも感謝の気持ちでいっぱいになりました。取材というと少し語弊があるかもしれませんが、この作品を書くにあたってたくさんのライトノベル作家の先生にお話を聞きましたので、その方々にすばらしい報告ができるなと。あと、周りの支えがなければ執筆に集中できなかったと思いますので、家族への感謝も。もちろん、本選考に関わっていただいた関係者の方々にも、深く感謝いたします。

――好きなことや趣味などもあれば教えてください。

好きなものは最近のネット文化でしょうか。動画やまとめサイト、ツイッターなどを見て回るのが趣味と言えば趣味です。現代人としては、それはほとんど無趣味なのかもしれませんが(笑)。あと最近はライトノベルの数字を追いかけるのも好きですね。公表されている書籍売り上げの指標がありまして、それをエクセルに並べて比較する……と。自分でもわりと病的かなと思ったりもしますが、経済学部の出身ということもあって、統計や数字を並べることが癖になっているのかもしれません(笑)。

――実際に数字を追いかけてみて、昨今のライトノベル市場で見えたものはありましたか。

その辺りのことは発売された『《このラブコメがすごい!!》堂々の三位!』に書かれておりますので、多少宣伝臭くなりますが、この記事を読んで気になった方はぜひそちらを手に取っていただけると幸いです(笑)。主人公と私はまったく性格が違いますが、ある程度思想も共有しておりますので。

――それでは受賞作『《このラブコメがすごい!!》堂々の三位!』はどんな物語なのか教えてください。

主人公はライトノベル系まとめサイトの管理人です。そこに彼女の書いた作品の記事を載せることで、彼女を作家としてプッシュしていこうとします。タイトルにもなっております《このラブコメがすごい!!》というのは、ラブコメをテーマにしたとあるネット小説賞です。そのコンテストにおけるヒロインの注目度を上げるために、主人公は自分の管理するまとめサイトに、彼女の書いた作品の記事を掲げようとするわけです。

――作品のタイトルですが、某ガイドブックを彷彿とさせますよね(笑)。

ガガガ文庫の作品も毎年たくさんランクインしているあのガイドブックに似ていますよね。包み隠さず申し上げますと、その本を意識して寄せにいきました(笑)。ただ、その本自体やその本の読者の方々を馬鹿にしようとか茶化してやろうとかそういう意図はなくて、インパクトのあるタイトルにしたいと考えた結果、ライトノベルに関心のある方ならば誰でも知っているであろうその言葉の響きを、使わせていただこうと思った次第です。

――作品のタイトルとしては、後付けの難しそうなタイトルだと感じました。本作はタイトルからのスタートだったのでしょうか。

本作に限って言えば、おっしゃる通りタイトルからですね。ただ、物語をこのようなかたちで執筆したのは初めてでした。普段ならテーマ、ストーリーを考えて、それに必要なキャラクターを配置していって、最後にタイトルを決めるのですが、本作はまずタイトルを思いついて、「このタイトルで作品を書いたら面白いんじゃないか?」と、そう感じました。

――タイトルからどのようにして物語を形作っていかれたのでしょうか。

このタイトルを使う以上、創作系のテーマにすべきだろうとは思いました。ライトノベル業界や、漫画業界をテーマにするような作品ですね。それこそ昨年アニメでも放送された『妹さえいればいい。』のような。人気作ですし、ニーズも十分にあるだろうと思いました。「創作」をテーマにして、主人公とヒロインの役回りを設定しました。本作ではヒロインの陽文が作家志望……というか、ネットに小説を投稿していて、彼女が作家になるのを主人公である新が支援するという役回りですね。ここまで決まってしまえば、あとは普段通りの作品執筆とあまり変わりはなかったように思います。

――なるほど。タイトルからキャラクターが生まれ、物語が生まれたわけですね。そんな本作を彩る主要なキャラクターについて教えてください。

主人公の姫宮新は、まとめサイトの管理人です。まとめサイトはネット上で叩かれることも多いですし、そういうことに半ば慣れっこになっているタフな少年でもあります(笑)。学校で普通の学生を演じられずに周りから浮いてしまっていますが、それをまったく気にすることなく、日々自分の関心事であるまとめサイトの記事づくりに勤しんでいます。

※姫宮新・キャラクターデザインより

そしてそんな彼が恋に落ちてしまった少女が、ヒロインの京月陽文ですね。彼女は普通の女子高校生ですが、唯一、新と接点のありそうな趣味を持っていました。それが小説の執筆です。そのことを足掛かりにして、二人は関係を深めていくことになります。

※本作のヒロイン・京月陽文

――失礼ながら、まとめサイトはネットでも叩かれることが多く、いわゆる負のイメージも強いテーマだと思うのですが、主人公をまとめサイトの管理人にしようと考えたきっかけは何だったのでしょうか。

まずは、そういった作品がこれまでライトノベルとして世に出ていなかったことがひとつあります。ただ、ネタとして誰も思いつかなかったわけではないと思います。実際に企画を提出されていた作家さんもいたかもしれません。それでもここまで踏み込んだ作品は世に出ていなかった。「最初のペンギン」という言葉があるように、誰もやっていないことをやって成功できれば、競合者がいない状況で戦えるんじゃないかなと。もちろん、新人賞でガガガ文庫さんに拾っていただけたからこそ、実現できているわけですが(笑)。

また、まとめサイトがやっかみの対象となりやすいのは、「楽して稼いでいる感」が出てしまうこともあるのかなと感じていたりもします。掲示板に書かれたコメントを引用してサイトに張り付けるだけで、広告収入を得ている。中には著作権や転載で問題になったりするサイトがあることも事実です。その一方で、クリーンに運営しているまとめサイトも多いので、そういったイメージを変えたいという思いもありました。まとめサイトは情報収集の場として非常に役に立ちます。良くも悪くも現代のネット文化のひとつで、文化が形作られたからには必ず理由があります。いまや新聞やテレビと同じようなメディアのひとつだとも考えていて、そういった思いもあり、まとめサイトの管理人という設定を用いました。

――非情に興味深いテーマだと思います。また、主人公が要所で口にする「いまの時代、面白さなんていらない」という言葉も印象的でした。

誤解を恐れずに言えば、私自身もいまの時代「面白さ」は作品が売れる上での一要素に過ぎないと思っております。というよりも、面白さの概念は個人によって変わりますし違います。万人に面白いと思ってもらえる作品が存在しえない以上、なぜ売れる作品と売れない作品があるのか、その違いは何なのか。このあたりのことで、私なりに考えた答えを主人公に代弁してもらっています。ただ、それは新機軸の解釈から生まれた考えというよりは、この記事を読んでいただいている方を含め、みな内心ではわかっているものの、あえて言わないだけのこと、なのかなとも思います。

――明確な答えがないテーマの中で、主人公とヒロインの恋模様も描かれていくわけですが、それぞれの登場人物たちを描く上で気を付けたことなどがあれば教えてください。

この作品は主人公がメインヒロインに恋をしてしまうところから始まる「一強型」のラブコメにあたると思います。なので、主人公やヒロインの周囲にいる登場人物たちにはいろんな立場で頑張ってもらおうと考えました。妹の姫宮麻里は、かやはら先生のイラストも含めてマスコットのような可愛さがあります。幼馴染の三郎(こんな名前ですが、女です)は似て非なる「もう一人の主人公」のような立場にいます。執筆中、三郎を主人公にして作品を書いた方が面白いんじゃないかと思ったことさえありました(笑)。

※「もう一人の主人公」とも言わしめる左衛門三郎梨湖

――お気に入りのイラストやシーンがあれば教えてください。

かやはら先生のイラストは本当にどれもすばらしいですね! 中でも、妹の麻里が怒っているシーンが好きです。ブラコンの妹が、お兄ちゃんを奪う敵のように感じた陽文を、なじるところがとても可愛いです。

※飛田雲之先生イチオシのシーンより1枚

――本作はどんな方が読むと、より面白いと感じてもらえそうでしょうか。

創作ものとして見るなら『妹さえいればいい。』が好きな方には楽しんでもらえるんじゃないかなと思いますし、ひねくれ青春ものとして見るなら『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』が好きな方に楽しんでいただけるのではないかなと。どちらの作品にも共通していると思うのですが、「癖の強い主人公」が好きな方はぜひ手に取ってみてほしいです。

――これからの目標や野望があれば教えてください。

常に流行に敏感でありたいです。本作ではバーチャルユーチューバーの真似事のようなこともやっていますが、執筆段階では今ほどに流行ってはいませんでした。ですので、ある程度自分の嗅覚というか、感性が世間と合っているのだろうという浅はかな自惚れのもと、新しい鉱脈を誰よりも先に掘り当てたいと思っております。

――最後に本作に興味を持たれた方へ一言お願いします。

売れる売れないは別として、コンテンツとしての『《このラブコメがすごい!!》堂々の三位!』を楽しみにしております。これは作者一人で構築できるものではありません。いまの時代、擁護や叩きを含めてコンテンツだと思っておりますので、もし読者のみなさまに本作をお読みする機会がございましたら、何でもいいので意見を発信していただけますと幸いです。面白かった、つまらなかった、本当に何でも結構です。すべてがコンテンツとしての『《このラブコメがすごい!!》堂々の三位!』の力になります。よろしくお願いいたします。

――本日はありがとうございました。

<了>

第12回小学館ライトノベル大賞「ガガガ賞」を受賞された飛田雲之先生にお話をうかがいました。まとめサイトを題材にした挑戦的な作品であると共に、ひねくれた主人公たちが織り成す創作や青春が特徴でもある本作。注目の受賞作『《このラブコメがすごい!!》堂々の三位!』は必読です!

©飛田雲之/小学館 イラスト:かやはら

[関連サイト]

ガガガ文庫公式サイト