【特集】『真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました』ざっぽん先生&池野雅博先生 刊行&コミカライズ記念インタビュー

2018年6月1日に第1巻の発売、そして5月26日に発売された「少年エース7月号」より一足早いコミカライズの連載がスタートした『真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました』より、ざっぽん先生池野雅博先生のお二人にお話を伺いました。WEBでも大きな話題を呼び、大幅な加筆を経て発売となる本作。その魅力を小説とコミックのそれぞれの立ち位置から語っていただきました。

【あらすじ】

「君は真の仲間ではない──」最前線での戦いについていけなくなってしまった英雄・レッドは、仲間の賢者に戦力外を言い渡され勇者のパーティーから追い出されてしまう! 「──はぁ、あんときは辛かったなぁ」レッドが抜けた事で賢者達が大パニックになってるとは露知らず、当の本人は辺境の地で薬草屋を開業しようとワクワクした気分で過ごしていたのだが・・・・・・「私もこのお店で働いていいかな? 住み込みで!」突如かつての仲間であるお姫様が自宅まで訪ねてきて!? ”のんびり楽しい薬屋経営”、”お転婆姫とのイチャイチャ生活”、報われなかった英雄による素晴らしき第2の人生がはじまる!

――それでは早速、ざっぽん先生の自己紹介よりお願いします。

ざっぽん:宮崎県出身で、今年4月にデビューしたばかりの新人ライトノベル作家のざっぽんです。『真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました』がデビュー2作目となるのですが、4月下旬にダッシュエックス文庫より発売となった『100年後に魔術書として転生したけど現代魔術師は弱すぎる』の作業とずっと並行していたので、気分的にはどちらもデビュー作のように思っています。

――好きなことやハマっていることなどがあれば教えてください。

ざっぽん:読書やテレビゲームも好きなのですが、特にハマっていることはTRPGでしょうか。「クトゥルフ神話TRPG」や「ソードワールド」、「迷宮キングダム」もずいぶんやりましたが、ここ数年は「パスファインダー」というファンタジーTRPGを楽しんでいますね。クトゥルフ神話TRPGはオンラインセッションの募集に出没したりしますので、見かけたら遊んであげてください(笑)。

――ちなみにざっぽん先生はどんなキャラクターを作って遊ばれているのですか。

ざっぽん:私の使っているPC(プレイヤーキャラクター)は、キャットフォークという猫の獣人種族です。「深きものの長老」という、神格ではないくせに信者に呪文を与えることのできるクリーチャーを信仰するクレリックを使っています。私の場合、TRPGではルールやシステムからキャラクターの性格や設定を作っていく感じで楽ぶことが多いですね。

――ありがとうございます。さて、発売となる本作は小説投稿サイト「小説家になろう」に投稿されていた作品ですが、大幅な加筆など非常に力を入れられている印象を受けます。刊行に至るまでの経緯を教えてください。

ざっぽん:『真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました』を「小説家になろう」に投稿し始めてから、1ヶ月後くらいにお声をかけていただいたと記憶しています。ありがたいことに複数の出版社から打診をいただきました。最終的にスニーカー文庫に決めたのは、担当編集の方に宮崎まで足を運んでいただいたこともそうなのですが、どこまでを第1巻に収録するのか、どんな方向性で加筆を考えているのか、イラストレーターはどなたを考えているのか、そういった細かな点までしっかりとお話できたことが大きかったように思います。個人的に驚いたのは、作中の登場人物リストまで一覧化されていて、非常に読み込んでいただけているんだなと。そういった担当編集の方の熱意にあてられました(笑)。もちろん声をかけていただいた他のレーベルをはじめ、様々な可能性があったと思いますが、少なくとも本作に関しては、スニーカー文庫の担当編集の方と一緒でなければ刊行に至ることはなかったんじゃないかと考えています。

――ざっぽん先生が小説を書きはじめたきっかけは何だったのでしょうか。

ざっぽん:最初に小説を書いたのは小学生の頃でしたね。あまり外で遊ばず一人で黙々と遊んでいるような子供で、宿題の日誌のネタにいつも困っていました。その時、何を血迷ったのか物語を書いて提出したのが最初だったと思います。今思えばよく怒られなかったなと(笑)。その後はフリーゲームのRPG製作という形で、なんだかんだ創作活動を社会人になっても続けていました。

――小説に限らず創作活動を長らく続けてこられたのですね。

ざっぽん:そうですね。実際に長編小説を書くようになったのは、フリーゲームの製作を辞めてからです。新人賞にも応募してみましたが、残念ながら賞をいただくまでには至りませんでした。その後も懲りずに新人賞に送ってみようかと調べていた時に、「小説家になろう」へと辿り着き、しばらく書くことを辞めて読者になっていました(笑)。その後は賞に応募するのではなく「小説家になろう」で書くようになりました。読者からの反応がモチベーションになっていましたし、上手さではなく面白さが評価される点に魅力を感じました。読者の反応から様々な試行錯誤をする必要があったりと、小説を執筆する練習場所としても良い環境だなと。本作はそういった試行錯誤を経て、読者が面白いと思ってくれるような要素を意識して散りばめるようにした作品でもあるんです。

――それではあらためて『真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました』はどんな物語なのか教えてください。

ざっぽん:物語の舞台は勇者と魔王が戦う、剣と魔法の世界です。主人公のレッドは、仲間から「お前は真の仲間じゃない」と勇者のパーティーを追い出されてしまい、冒険を辞め辺境の町で楽しくスローライフをはじめようとする物語です。タイトルのまんまですね(笑)。

――仰る通りで(笑)。主人公のレッドはなぜ、「真の仲間じゃない」と追い出されることになってしまうのでしょうか。

ざっぽん:レッドは生まれつき「導き手」という加護を持っていました。「初期レベル+30」という誰も持っていないスキルを持ち、生まれたときから精鋭騎士並の強さを誇っていたのですが、最初からレベルが高い以外何の取り柄もありません。RPGでいうところの、最初から強いけれど成長性が悪く、序盤で外れるようなキャラクターだったんです。レッド自身も足手まといになっているという自覚があり、最終的には同じパーティーにいた「賢者」の糾弾によって追い出されることになってしまいます。そんなレッドは、自分が追い出されたという不名誉を所属していた騎士団が被らないよう、辺境でひっそりと暮らすことを選択するんです。交通の便も悪く、土地としての戦略的な価値もなく、余所で住みにくくなった人々が流れ着く町ゾルタンを舞台に、物語は描かれていくことになります。

――スローライフを題材とした物語はたくさんありますが、本作はどういった着想から誕生したのでしょうか。

ざっぽん:ヒンドゥー教における生まれつき職業が決まっている、というネット記事がきっかけでした。そこから転職やジョブチェンジがないRPGのキャラクター達は、生まれた時からどう成長するかが決まっているけれど、彼らは自分たちの「役割」が決まっていることについてどう思っているのか、と考えたことがスタートになりましたね。

――なるほど。宗教における考え方とRPG的な考え方を融合させたことがきっかけになったわけですね。

ざっぽん:そうですね。そこからはタイトルを決めて、物語の内容を考えました。「勇者」という単語を入れて剣と魔法やRPGの世界観が伝わるように考え、ちょっとした捻りを加えるため、主人公には勇者本人ではない勇者の周りにいる仲間に着眼しました。その中で、自分の立場に疑問を持ちそうなキャラクターを考えた結果、序盤で外れる仲間を主人公にしようと決めました。それも見返したり復讐したりするわけではなく、着想にある「与えられた役割」を活かすために、役割から外れた主人公が自分の人生を歩む物語にしたんです。役割がある世界だからこそ、スローライフという生き方を選んだ主人公の幸せが、より尊いものになるよう目指したつもりです。

――気になる登場キャラクターについても教えてください。

ざっぽん:主人公であるレッドの本名はギデオン・ラグナソンという青年です。勇者の旅立ちを導く「導き手」という加護を持ち、妹であり勇者でもあるルーティと共に戦う日を見据え、幼い頃から研鑽を続けてきました。当時は周囲から天才や英雄扱いをされるほどの実力者でした。ただ、戦闘経験も知識も豊富であるがゆえに、自分の加護の問題点や足手まといになる己を自覚していて、自己評価を必要以上に低く考えてしまう欠点も持っています。戦いが身近な人生を送ってきたことから、時折ちょっとした影も覗かせます。そんな彼がスローライフをスタートさせ幸せな生活に馴染んでいくことで、影が少しずつ薄まっていく姿を見てもらいたいですね。

※本作の主人公・レッド(キャラクターデザインより)

ざっぽん:ヒロインであるリットの本名はリーズレット・オブ・ロガーヴィアというロガーヴィア公国のお姫様です。かつて勇者やギデオン達とは反目しながら、最後には協力して国を救った英雄姫です。一度迎えたレッドとの別れでは自分の気持ちに素直になることができず思い悩んでいましたが、再会の時にはその気持ちを伝えようと心に決めていたわけです。彼女は押しかける形でレッドのお店で一緒に暮らすことになるのですが、積極的なのに照れ屋という矛盾する性格の持ち主でもあります。二人は一緒に暮らし始めることで、お互いの悩みを少しずつ解消していき、想いを寄せていくことになります。レッドとのスローライフでは最高の相性を持つヒロインと断言します。

※本作のヒロイン・リット(キャラクターデザインより)

ざっぽん:そしてもう一人のヒロインであり、レッドの妹でもある勇者ルーティ。世界を救う役割を持つ「勇者」の加護を宿す人類最強の少女です。ただ、彼女の加護は世界に対する役割が大きく、困っている人を助けないと激しい苦痛に苛まれたりと、大きな衝動も与えられています。彼女の場合は役割としての強制力が働いていると考えてもいいかもしれません。そのため、人間の精神構造としてはかなり不自然な状態でもあり、人間味が非常に希薄です。そんな彼女も勇者としてではなく妹として扱ってくれるレッドのことが大好きで、重度のブラコンでもあります。今は遠く離れた兄妹の物語ですが、今後二人の物語が交差する時が来ることになるでしょう。

※レッドの妹であり勇者・ルーティ(キャラクターデザインより)

――WEB版から大幅に加筆をされたとのことですが、具体的にどういった点を加筆されたのでしょうか。

ざっぽん:WEB版では展開のテンポを重視する必要があったことから、主人公のレッドとヒロインのリットの回想シーンは大幅に削っていたんです。書籍ではこの描きたかった回想シーンを大幅加筆という形で盛り込み、リットはなぜレッドに想いを寄せるようになったのか、その物語を完全に補完しています。現在でこそ主人公にデレデレなヒロインですが、その過去は勝ち気で自信家な性格が目立っていました。レッドと出会ったことで、リットはどう変化したのか。過去と現在のリットを比べることで、レッドに想いを寄せる彼女の気持ちを一層感じていただけるのではないかなと思っています。

――お気に入りのシーンやイラストがあれば教えてください。

ざっぽん:やすも先生には素晴らしいデザインをおこしていただきました。特にリットがレッドのお店で働くことを言い出すシーンですね。照れだけでなく不安も入り混じったリットのイラストは本当に素晴らしいの一言です。

※イラストによって最も印象深いシーンになったという一枚

――いよいよ発売となる本作ですが、一足早くコミカライズの連載もスタートしました。第1話を読まれた際の感想をお聞かせください。

ざっぽん:コミカライズ版1話は、原作にない全く新しいエピソードになっています。いきなりオリジナルエピソードの打ち合わせから入ることになって池野先生にはご負担をかけてしまったと思います。第1話では勇者ルーティのレベルがまだ低かった頃、つまり最初からレベルが高かったレッドが一番輝いていた頃の話ですね。強くて頼りになり、仲間達を導く者としての騎士ギデオン(レッド)と、後半の追い出された後の冒険者レッドとのギャップも見どころだと思います。感想は「面白かった」の一言に尽きると思います!

※漫画版でも描かれる凛々しいレッド

――作家としてこれからの目標や野望があれば教えてください。

ざっぽん:まず今の目標は、本作で書きたいシーンを全部書ききることですね。WEB版だけでもすでに40万字以上ありますし、毎巻数万字加筆することも考えたら5巻分くらいあると思います。その後もまだまだ書きたいエピソードやテーマが沢山ありまして、二桁巻を超えるくらいシリーズ化できたら、すごいハッピーですね! それとクトゥルフ神話が好きなので、機会があればホラーファンタジーのような作品も書いてみたいと思っています。

――最後に本作に興味を持たれた方へ一言お願いします。

ざっぽん:ここまでインタビューを読んでくださりありがとうございます! 本作は、世界に複雑な背景が色々あっても、一番重要なテーマは、報われなかった英雄が報われて幸せに暮らすということです。主人公・レッドとヒロイン・リットの、幸せなスローライフを皆さんと一緒に楽しむことができましたら、作者として一番の喜びです! どうか、応援よろしくお願いします!

――本日はありがとうございました。

――それでは続いてコミカライズを担当されている池野雅博先生にお話をお伺いします。よろしくお願いします。

池野:よろしくお願いします。

――『真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました』のコミカライズを担当することになった経緯をお聞かせください。

池野:以前からエースでお世話になっている担当編集さんからの打診でした。とても熱心にアプローチしてくださったのでお受けしました。

――原作である本作を読んだ時の率直な感想はいかがでしたか。

池野:とても楽しく読ませていただきました。すごく気持ちのいい作品だな、というのが第一印象でした。物語や人物はもちろんなのですが、文脈やセリフも読んでいてとても気持ちがいいんです。担当さんにWEB版の掲載URLを教えていただいて、読み始めたその日に公開されているところまで一気に読んじゃいました(笑)。

――本作のコミカライズを担当するにあたり、どんなことに気を付けて取り組まれているのでしょうか。

池野:ざっぽん先生のイメージする世界観や作品の空気感を、なるべく汲み取りながら作っていければ良いなと思っています。後、やすも先生の描く女の子は可愛いので、挿絵と漫画で大きな差ができないよう頑張ろうと思ってます。

――池野先生のお気に入りのキャラクターを教えてください。

池野:基本的に女の子はみんな好きです。どの娘も可愛い(笑)。でも、多分一番はレッドでしょうか。個性の強いキャラクターの中でもしっかり作品の中で主導権を握れている魅力的な主人公だと思います。すごくしっかり者で、世話焼きで、配慮のあるキャラクターだったので、文章で読んでいた印象だと、もっとおっさんかと思ってました(笑)。

※漫画で描かれるレッドの姿にも注目だ!

――早くも連載がスタートした第1話の見どころや力を入れたシーンについて教えてください。

池野:正直、期間もあまりなかったせいか、まだキャラクターや画面全体のイメージが固まってなくて、とにかく絵を手に馴染ませるので、イッパイイッパイでしたが、なるべく女の子は可愛く描くよう頑張りました。

※「少年エース」ならび「ComicWalker」などでも連載開始

――コミカライズ版の今後の見どころはどんな点になるでしょうか。また、早く描きたいキャラクターはいますか。

池野:アクションシーンなど動きのあるシーンはなるべく頑張りたいと思ってます。描きたいキャラクターというより、出番待ちをしてるのはダナンさんですね! 筋肉が描きたい! 後、デオドラさんも! 少年漫画しか描いてこなかったせいもあって、武闘派のキャラクターを描くのは今から楽しみです。

※迫力あるアクションシーンも大きな見どころに!

――原作小説、コミカライズの双方に興味を持たれている方へ一言お願いします。

池野:原作版は和製ファンタジーの流れを汲んだ、とても良質で素敵なファンタジー作品だと思います。コミカライズ版も原作に見劣りしないような、エンターテイメントにできるよう頑張りたいと思います。

――本日はありがとうございました。

<了>

原作小説を執筆するざっぽん先生、そしてコミカライズを担当する池野雅博先生の両名にお話をうかがいました。与えられた役割を是とする世界で、自らの人生を歩もうとする、そしてそんな主人公に寄り添おうとする二人の辺境スローライフを描く本作。小説でも漫画でも、ささやかな幸せを掴み取っていく二人の姿に注目ですね。『真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました』は必読です。

©ざっぽん池野雅博/KADOKAWA

©ざっぽん/KADOKAWA 角川書店刊 イラスト:やすも

[関連サイト]

『真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました』特設ページ

スニーカー文庫公式サイト