独占インタビュー「ラノベの素」 栗ノ原草介先生『魔法少女さんだいめっ☆』

独占インタビュー「ラノベの素」。今回は2018年6月19日にガガガ文庫より『魔法少女さんだいめっ☆』が発売となる栗ノ原草介先生です。第12回小学館ライトノベル大賞にて「ガガガ賞」を同作で受賞し、満を持してデビューされます。これまでの魔法少女ものの作品にありそうでなかった要素と魅力を詰め込んだという本作。萌えと燃えがクロスする本作の魅力や作品としての見どころについてお聞きしました。

【あらすじ】

「やーい、おまえの母ちゃん魔法少女ー!」 幼い頃から魔法少女の息子としてからかわれてきた少年、ハル。ついに母親、ぷるりら☆遥奈が引退すると聞いて歓喜したのもつかの間、まさかの二代目契約を結ばされてしまう! 絶対に魔法少女になりたくないハルは、全力で三代目を探すのだが……?「私は夢見草満咲。魔法少女になる女です!」 ハルが出会ったのは、熱狂的な魔法少女オタクながら“才能ゼロ”の満咲だった! 桜舞う町で、新たな魔法少女の物語が幕を開ける――。熱血にして爽快! マジカル☆夢追いラブコメ!

――それでは自己紹介からお願いします。

栗ノ原草介と申します。このたび第12回小学館ライトノベル大賞で「ガガガ賞」をいただき、ライトノベル作家としてデビューさせていただくことになりました。デビュー作は受賞時のタイトル『お前の母ちゃん魔法少女!』から変更し、『魔法少女さんだいめっ☆』となります。

――好きなものなどがあれば教えてください。

自分は好きなものにひとつハマってしまうと、周りが見えなくなるくらいのめり込んでしまう癖があって、時期によってだいぶ変化しています。10代の学生時代はいわゆるシューターと呼ばれるシューティングゲーム好きで、アーケードゲームの基盤を買っちゃうくらいハマってました。筐体を買おうとしたこともあったんですけど、さすがに親に本気で怒られましたね(笑)。その後、20代の前半ではヘリコプターにハマりました。

――ヘリコプターにハマったというのは、どういう形でハマられたんですか。

自分で操縦したいなと(笑)。その結果、陸上単発ピストンと呼ばれるヘリコプターの免許も取得しました。ヘリコプターはエンジンの種類が違うと飛ばせる機体も免許も違うので、私が実際に飛ばせるのは1、2機種なんですが。飛行機でいうとセスナ機みたいなタイプで、あんまり一般的に目にしないタイプのヘリコプターかなと。航空ショーや教習所くらいでしか見かけないかもしれないですね。作家としてデビューさせていただくことになりましたが、昔は航空自衛官やヘリコプターのパイロットになりたかったんです。

※栗ノ原先生が操縦できるというヘリコプターの写真

――なるほど。ただ、ヘリコプターに関係するお仕事には就けなかったと。

そうなんですよね。航空自衛官には裸眼の視力が足りず諦めざるを得ませんでした。まあ学生時代に寝食を惜しんでシューティングゲーム漬けだったわけで、これは自業自得なのかもしれませんけど(笑)。パイロットについては、自家用の専属パイロットのような感じで就職予定だったんです。一歩手前までは来ていたんですけど、その直前に起こったリーマンショックでお話自体が流れてしまったんですよね。すごい落ち込みました。人生ホントどうしようかなと思った時に、出会ったのが『けいおん!』だったんです。

――ここでまさかの『けいおん!』との出会い。人生の転換期ということですか(笑)。

ライトノベルにはここから繋がっていくことになるので、ある意味私の人生はここがスタートだったのかもしれません(笑)。就職できなくて落ち込んでいたところに、友人が「これでも見て元気出せよ」って『けいおん!』のアニメDVDを置いていったんです。最初は興味もなかったので放置していたのですが、時間だけはあったので、暇潰し程度の感覚で見てみようかなと。言うまでもありませんが、それが運の尽きでした(笑)。そこからどハマりして、友人に他の作品を求めたら『涼宮ハルヒの憂鬱』を渡されて。もう沼ですよ。ズブズブです(笑)。『けいおん!』の時代は「萌え」もかなり確立されていて、世の中にはたくさんの商業作品があったわけです。つまり宝の山があちこちに転がってるわけですよ。SFや純文学をはじめとした小説は趣味として長く読んでいましたが、ライトノベルとはここで出会うことになりました。秋山瑞人先生の『猫の地球儀』を最初に読んで、本当にハマりました。

――そこからライトノベルをご自身でも書いてみようと思ったわけですね。

そうですね。私が感じているライトノベルの魅力は、キャラクターありきで、キャラクターのためにストーリーがあると言っても過言じゃないところです。その世界にどっぷりとハマってしまって、いつの間にか自分の考える最強の萌えキャラみたいなものを考えるようになりましたね(笑)。新人賞はどの文庫本の巻末でも紹介ページがあると思うんですけど、そこで知って書いてみようかなと思いました。気付けばデビューまでに10年ちかくが経っていたわけですが(笑)。

――10年と長い投稿期間を経て、受賞の連絡を受けた時はいかがでしたか。

会社の待機室で電話を受けて、生まれて初めて腰を抜かしました(笑)。ソファの上にストンって落ちてしばらく動けませんでしたね。周囲には自分が執筆活動をしていることは一切伝えていなかったので、その場にいた同僚からは「両親に何かあったのか」とか「長く付き合っていた彼女にフラれたのか」とか、いろいろ心配されました(笑)。自分ではわかりませんでしたが、かなりの驚愕の表情だったようです。自分としては「まさか」以外の感想は正直なかったですよね。10年くらい審査で落ち続けていましたし、応募した作品で受賞を目指すという強い気持ちも、よくわからない状態になっていました。書くことそのものは楽しいので、執筆のついでに応募するという流れになっていたことも否めません。ただ、小学館ライトノベル大賞では一次選考を突破したのが初めてだったこともあって、どこまでいけるかなと軽い気持ちで経過をチェックしていたんですけど、まさか電話がくるなんて(笑)。

――それではあらためて、受賞作『魔法少女さんだいめっ☆』はどんな物語なのか教えてください。

一言で言うと、これまでにありそうでなかった魔法少女もの、でしょうか。主人公に才能があったり、使い魔のような存在に魔法少女にさせられたり、いくつか魔法少女ものにはパターンがあると思うんですが、表紙を飾るヒロイン・夢見草満咲は才能があるわけじゃありません。ただ、魔法少女が大好きなだけの普通の女の子なんです。魔法少女を必死に応援する側にいた女の子が、好き過ぎて魔法少女になりたいと願う。その熱意だけで魔法少女を目指す、スポ根要素のある作品になります。

※魔法少女好きすぎる普通の女の子・夢見草満咲

――仰る通りスポ根の要素は強く感じますよね。物語としては全体的にコメディ風味ですが、端々に描かれる才能や努力の描写が、思わず応援したくなる、そんな熱さを持っていると思います。主人公以上にヒロインが(笑)。

そうですね(笑)。この作品はいわゆる二世もので、20年前に世界を救った魔法少女の息子が主人公です。彼は血統を継いでいるので、魔法少女としての才能があります。母親の魔力が衰える中、悪魔の脅威から世界を守るため、後継者として白羽の矢を立てられ、二代目を託されてしまいます。でも主人公は男の子なので、魔法少女になんてなりたくないわけで。どうにかして二代目の肩書を捨てようと思っているところに、魔法少女に強烈な憧れを抱いた普通の女の子と出会うボーイ・ミーツ・ガールでもあるんです。魔法少女をやりたくない主人公と、意地でも魔法少女をやりたいヒロインが出会うことで、お互いの心がどのように変化していくのかも見どころだと思ってます。

※二代目魔法少女なんてやりたくない主人公・風奉ハル

――ふとお話をうかがっていて気付いたのですが、ヒロインの夢見草満咲は、栗ノ原先生ご自身が根っこにいるような気がします。好きになったことに対して、見境がなくなるところなんて特に(笑)。

ああ……そうですね、そうかもしれません。そう言われるとそうかもしれないなって思っちゃいますね(笑)。この作品に登場するキャラクターにはモデルのような存在がそれぞれいるんですけど、夢見草満咲だけはどこから来たキャラクターなんだろうってずっと考えても浮かばなかったんですよ。……なるほど。納得しちゃいますね。そりゃ気付かないわけだ……(笑)。

※才能がなくても好きな心で突き進むのみ!

――また、作中には魔法少女の敵として悪魔が登場します。彼らが宇宙人という設定にはSF的な要素も垣間見えますよね。

高度に進んだ文明は魔法と区別がつかない、という発想があると思うのですが、マジカルなものでごまかさず、超文明のようなSF的要素を入れたかったんです。既存の作品との差別化という思いもあったのですが、私自身設定を考えることがとにかく好きなので(笑)。

――そんな悪魔として登場するコロネやピロシキは、憎むべき敵というよりは愛すべきキャラクターという印象も受けます(笑)。

悪魔として地球を侵略しに来ているはずなんですが、初代魔法少女に負けてからコロネはマスコット担当というか幼女担当ですよね(笑)。コロネもピロシキも『タイムボカン』のドロンジョ一味を想像していただけると、作中でどんな存在なのか理解していただきやすいのかなと思います(笑)。

※憎み切れない愛らしささえ感じる侵略者の悪魔・コロネ&ピロシキ

――本作を執筆する上で楽しかったことや苦労したことがあれば教えてください。

私自身萌えに命を懸けているような人間なので、キャラクターを執筆するのは本当に楽しかったです。掛け合いやコメディ展開もキャラクター性が前に出てくるところなので、筆がすごく進みました。逆に苦労した点については、受賞段階の本作のページ数が少なかったので、かなりの加筆や設定の変更を繰り返してきました。作品のタイトルが『魔法少女さんだいめっ☆』なんですけど、この作品の執筆も大きく書き直したりしていて、ある意味「執筆3回目」と言えなくもないという(笑)。その点はとにかく大変でした。今振り返れば、応募作は長い企画書だったんだろうなって思います(笑)。

――そんな本作ですが刊行にあたってイラストも描かれました。お気に入りのイラストがあれば教えてください。

風の子先生のイラストは全部すごいです(笑)。ライトノベルで受賞したご褒美というか、絵をつけてもらえるって、受賞した時から楽しみでしょうがなかったんですよ。出来上がるたびにラフを見せていただいて、ずっとワクワクしていました。特に印象的なのは、表紙の夢見草満咲ですね。動画のような躍動感がすごく伝わってきて。自分の目がアニメの見過ぎておかしくなったんじゃないかって疑うくらいにすごいなと感じました。

※栗ノ原先生のお気に入りという一枚

――著者としてこの作品の見どころや注目してもらいたい点はどこですか。

見どころについてはラストシーンになると思います。物語としても大詰めの箇所なので、あまり内容についての言及が難しいですが、風の子先生のイラストも相まって、この作品で一番熱量が高まっているシーンになっていると思います。注目してもらいたい点は、やっぱりキャラクターですね。それぞれのキャラクターの魅力と個性を引き出したくて書きました。そういった魅力が伝わったらなと思います。

――今後の目標や野望があれば教えてください。

こんなキャラクターを書きたいであったり、こんな物語を書きたいというものが自分の中にたくさんあります。そういった欲求を小説として、作品として世の中に出していけたら、というのが目標です。そうして、それだけものを出せるようになれば、コミカライズやアニメ化といったラノベ作家なら誰しも夢見るものが見えてくるのかなと。それが野望ですね(笑)。

――最後に本作へ興味を持った方、これから本作を読んでみようと思っている方へ一言お願いします。

くさかんむりの「萌え」とひへんの「燃え」。この二つがふんだんに盛り込まれた作品なので、可愛いキャラクターたちの熱い展開を楽しんでいただければと思っております。魔法少女ものが好きな方、萌えが好きな方、燃えが好きな方、なにかひとつでも感じるものがあれば、ぜひ手に取っていただければと思います。風の子先生のイラストも素晴らしいので、それだけでも価値があるかと思います(笑)。

■ラノベニュースオンラインインタビュー特別企画「受賞作家から受賞作家へ」

インタビューの特別企画、受賞作家から受賞作家へとレーベルを跨いで聞いてみたい事を繋いでいく企画です。インタビュー時に質問をお預かりし、いつかの日に同じく新人賞を受賞された方が回答します。そしてまた新たな質問をお預かりし、その次へと繋げていきます。今回の質問と回答者は以下のお二人より。

第11回HJ文庫大賞「大賞」受賞作家・北条新九郎先生

 ⇒ 第12回小学館ライトノベル大賞「ガガガ賞」受賞作家・栗ノ原草介先生

【質問】

作品の改稿にあたって、担当編集さんにいろいろ言われるんじゃないかと思ったのですが、思う通りに改稿をさせていただき、編集さんととてもいい関係を築けたと思っています。あなたと担当編集者さんとの相性や良かったところがあれば教えてください。

【回答】

担当編集の方がとにかく熱い方で、妥協がありませんでした。自分はのめり込んでしまうと「そこまでやる?」という感じで、相手がひよることがあるんです。ただ、担当編集の方は絶対にひよらなかったので、それが嬉しかったです。自分もラノベに関しては熱い気持ちを持っていますが、こちらの熱量以上のものを出してくれました。そうすると自分も触発されてさらに熱量が上がるわけです。打ち合わせをした後は本当に創作意欲が高まるのでありがたいです。これからもいいパートナー関係を築いていけるんじゃないかと私は思っています(笑)。

――ありがとうございました。

<了>

魔法少女になりたすぎる女の子と、魔法少女になんてなりたくない男の子のボーイ・ミーツ・ガールを綴る栗ノ原草介先生にお話をうかがいました。魔法少女×スポ根という、これまでにありそうでなかった新たな魔法少女像を描く本作。二代目魔法少女の苦悩と三代目魔法少女の一途さが奇跡を起こす『魔法少女さんだいめっ☆』は必読です!

『魔法少女さんだいめっ☆』発売記念プレゼント企画!

栗ノ原草介先生の直筆サイン入りカバーフォトプリントを抽選で2名の方にプレゼントいたします。

応募方法はとても簡単。応募対象期間となる2018年6月18日(月)~6月21日(木)の期間中にTwitterで本インタビュー記事をツイート、またはリツイートするだけ。抽選で2名様に「ラノベニュースオンラインのツイッターアカウント(@lnnews)」よりDMにてご連絡させていただきます。応募を希望される方は、ラノベニュースオンラインのツイッターアカウントのフォローをお願いします。

※当選発表は当選連絡のDMにて代えさせて頂きます。

※当選者の方へはプレゼント郵送先の住所や氏名等の情報をお伺いいたします。

※プレゼントの発送は国内在住の方とさせていただきます。

※プレゼントの発送はガガガ文庫編集部様より実施するため、頂戴した情報はガガガ文庫編集部様へ共有させていただきます。

©栗ノ原草介/小学館 イラスト:風の子

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