2018年上半期の新連載は100作品を突破 ライトノベルのコミカライズは前年同時期の約2.5倍と急成長を続ける

大コミカライズ時代。そんな言葉も謳われた2017年は、120作品超のライトノベルを原作としたコミカライズの連載が雑誌、WEBコミックなどでスタート。大きな話題を呼んでいたことは記憶に新しい。コミカライズラッシュという言葉のままに、コミック業界へと怒涛の勢いで流入を続け、ライトノベルを原作としたコミックスの好調の声は各所から聴こえてくる。今や単巻5万部や10万部という数字もあちこちで見かけるようになるなど、破竹の勢いは止まらないままだ。そして2018年、ライトノベルを原作としたコミカライズは、超コミカライズ時代を迎えている。

『即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。-AΩ-』

2017年の上半期は40作品超だった新連載も、2018年上半期では昨年同時期の約2.5倍(一昨年と比較すると約5倍)に相当する新連載100作品超を数えている。既に上半期だけで昨年の年間新連載本数に迫る勢いなのである(2018年8月~9月で昨年とほぼ同数となる見込み)。盛り上がりを牽引するのは昨年から引き続いてWEB発となるライトノベル作品の存在が大きい。さらに女性向けライトノベル作品のコミカライズ展開も、一昨年にはまったくと言っていいほどなかった勢いが生まれている。このままいけば年間新連載本数は200作品を超えてくることが予想される中、2018年のライトノベルのコミカライズは、どこまで加速していくのだろうか。

●強固な関係性が生まれているWEB小説とWEBコミック。雑誌とWEBコミックの繋がりもより密に

2018年上半期のWEB発ライトノベルを原作としたコミカライズ新連載は7割を超えている。2017年の年間割合が約8割であったことから、WEB発と書き下ろし作品のコミカライズ比率はほぼ変化がないと見ていい。どちらかが一方的に増加しているわけではなく、双方とも純増していることは素直に喜ばしいことだと思う。2018年の上半期では「コミックDAYS」「コミックPASH!」「マグコミ」「WEBコミックガンマぷらす」という新たな連載先も登場するなど、コミカライズの展開先は増加を続けている。特にWEBコミックとWEB小説の相性は良く、コミックが更新されるたびに小説へのアクセスが増加するという声は各所から間断なく聞こえてくる。そういう意味ではWEB上でのコミックと小説の連携は図らずとも上手くいっていると言える。また、雑誌連載でスタートした作品も雑誌の発売とほぼ同時(或いは雑誌より早く)に、WEBでの同時連載がスタートする事例も増加した。公開ページ数に差がある場合などもあるが、雑誌を買わなくてもタイムラグなしに読みたいコミカライズ作品に無料で目を通すことができるのは、いちファンとして嬉しいの一言に尽きる。出版業界の中でも雑誌が大きな苦境に追い込まれていることを考えると、連載作品の認知の場としてWEBコミックとの連携は必要不可欠なのだろう。

●女性向けライトノベルを原作としたコミカライズも加速

そしてコミカライズの猛ラッシュに一役買っている要因として、女性向けライトノベルを原作としたコミカライズの純増も注目しないわけにはいかない。2017年下半期より続々とコミカライズが動き始め、2018年も順調に推移している同ジャンル。正直なところ、筆者は女性向けレーベルのコミカライズがここまで順調に増加するとは想像だにしていなかったところがある。というのも昨年の年明けにお話をさせていただいた複数の女性向けレーベルの編集部では、市場状況などからメディアミックスに悲観的(やりたくてもできない)だったのだ。つまり、そこから状況は劇的とまでは言わずとも、ライトノベル側とコミック側の双方において、メディアミックスに前向きな変化があったということに他ならない。そこにはライトノベルのコミカライズの猛烈な勢い、そして女性向けでも無視できないWEB発小説の存在も大きく作用したに違いない。

『なんちゃってシンデレラ 王宮陰謀編 異世界で、王太子妃はじめました。』

●コミカライズの好調、その裏側にある原作小説の伸び悩み

コミカライズが絶好調なことは大変喜ばしい。ただ、その一方で少しずつではあるが、ちょっとした問題に遭遇するタイトルを耳にするようになった。それは原作小説が好調なコミカライズの恩恵を受けられておらず、原作小説書籍の打ち切りさえも視野に入れざるを得ないという綱渡りにある作品の出現だ。特に筆者が耳にするのは、コミカライズの割合としても多いWEB発ライトノベル作品で、コミックが人気でも小説の売上には結びついていないという。これはひとつに、コミカライズの考え方がここ数年で変化したこともある。これまでは人気シリーズをコミックのユーザーにも広く展開する中盤の話題作りとして主に用いられてきたメディアミックスが、書籍との同時スタートなど序盤の話題作りに用いられる例が増えたことも大きい。原作小説の地盤が固まっていない状態である以上、先々の見通しが大変難しくなることは想像に難くない。そしてもうひとつはWEB発小説ならではの現象である、コミックのユーザーが書籍を買わなくてもWEBに掲載されている小説を読んで満足してしまう点だろう。書籍を買わずとも物語の先の展開がどんどん読めてしまうため、書籍を買う「理由」に結びつきづらいという点だ。上述のWEB小説とコミックの連携は、良い面をもたらしている一方で、ちょっとした問題も浮き彫りにしつつある。コミックが好調で、それだけ作品を知ってもらう機会が増えている以上、書籍を買う「理由」作りはもう少し力を入れていく必要があるのだろう。個々として、何をもって成功と考えるかはそれぞれ異なると思う。ただ、小説家でありたいと考える方にとって、もし「コミックは続けますが原作小説は打ち切らせてください」という言葉を投げかけられてしまう事態となってしまった場合、抱く心情は非常に複雑なものになるのではと筆者は感じてしまう。コミックスを買ってもらった上で、原作小説も買ってもらう。応援する側としても、双方が好調であってもらいたいと誰もが思っているに違いない。

例年通りであれば、下半期のメディアミックスの勢いは上半期を上回る。コミカライズが盛り上がるということは、それだけライトノベルそのものにもスポットライトが当たるということなので、コミックさえよければいいではなく、いかに好調なコミック市場から読者をライトノベルまで引きずり下ろせるか。決して簡単なことではないが、指をくわえて見つめるだけではあまりにももったいない。各出版社の手腕に期待したい。