【ラノベの車窓から】第6回 『だから少女はおもいでをたべる』

とあるライトノベル読みが読者としての視点・観点で、オススメをピックアップして紹介する「ラノベの車窓から」の第6回です。寒暖の差が激しく体調を崩しやすい日が続いていますが、心温まるラノベを読みながら体調管理をしましょう!

さて、第6回のオススメとして取り上げるライトノベルは「だから少女はおもいでをたべる」です。本作は一迅社文庫から2012年2月に刊行された作品ですね。著者の七烏未先生はシナリオライターということで、ストーリーの芯もしっかりしており、オカルティックな残酷で優しい物語が描かれた感動を呼びこむ作品になっています。

だから少女はおもいでをたべる

著:七烏未 奏   イラスト:Rけん

出版社:一迅者文庫

感情や表情の乏しい主人公が登場する作品の場合、周りの登場人物たちが主人公に不足している部分を彩ったり支えたりしているストーリーを目にすることは多いのではないでしょうか。主人公が強烈なキャラクター性を持っている作品だったとしても、周りのキャラクターの在り方は非常に重要だと思うわけです。本作は「おもいで」と「まもの」をキーワードに、少し影の薄めな主人公を、2人の少女が引っ張りながら、真実へと導かれる物語になっています。

「おもいで」をたべるという「まもの」。駄菓子屋を営む主人公の前に突如としてあらわれた「まもの」の少女。他人とは少し変わった生活を営んでいる纊樫華は、妹の言葉に逆らうことができぬまま、「まもの」の少女の唐突な申出を受け入れることになり、一緒に暮らし始めることから本物語は始まります。元気いっぱいな、この世の存在ではない妹のユメと、「おもいで」をたべる「まもの」の少女アメとの不思議な生活に、華はちょっとした違和感を覚えながらも3人での生活を楽しむことになります。

ところが、クラスの同級生である柴田圭子を糧としようとする「まもの」の存在を知ることになる華は、アメと共にその正体を探ろうとします。そして、出会うことになる「まもの」と、「まもの」に課せられた存在意義を突きつけられ、華は困惑の内に自らが思いだせずにいた「おもいで」の一端に触れることになります。「まもの」が糧とする「おもいで」。柴田圭子のおもいでの中に潜む「優しさ」とそれを飲み込む「残酷」さ。過去に起こった出来事、その記憶。それは、華とユメの悲しい物語へと行き着き……。華と、そして妹のユメとの間に起きた過去の真実が明らかとなった時、アメが2人の元に現れた意味を、華は知ることになるのです。「おもいで」に宿される優しさ以上に、残酷さが際立つ本作。それでも最後はたくさんの、そしてめいいっぱいの「優しさ」を垣間見ることのできる感動作です。

「おもいで」に宿る綺麗事だけに目を向けていない作品だからこそ、物語としての秀逸さが目立った本作。個人的な感覚ではありますが目を背けたくなるような現実の描写を薄くすることで、「童話」にもなり得る作品だと思っています。あらためてこの作品を読んで感じたのは、人の「想い」の強さ。良い意味でも悪い意味でも、「想い」は力になるということですね。一迅社文庫は月間の刊行数が多いレーベルではないので、興味がある人はぜひこの機会に手に取ってみるのもいいかもしれません。

【記事:らお】

URL:「とある僕等の小説目録(ライトノベル)」

(C) 一迅社 七烏未奏/Rけん

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