独占インタビュー「ラノベの素」 ケンイチ先生『異世界転生の冒険者』
独占インタビュー「ラノベの素」。今回は2018年12月10日にマッグガーデン・ノベルズより『異世界転生の冒険者』第5巻が発売されるケンイチ先生です。異世界のファンタジー世界を舞台に、眷属と共に悲劇を乗り越えて人間としての成長も描かれる本シリーズ。誰もが気になるシンプルとも言える作品タイトル誕生の裏話やいよいよ発売となる第5巻の見どころについてお聞きしました。
【あらすじ】 ついに始まった“武闘大会”本戦。ジンやガラットは強敵に苦戦を強いられるが、テンマは順調に勝ち進んでいく。しかし、テンマでさえも手こずってしまうような強敵も登場し――。汚い手を使う対戦者や、卑劣な前回大会覇者も参加。謎の戦士・山賊王も遂にその正体を現し、武闘大会はヒートアップする……! 果たして、テンマのまったり異世界生活は戻ってくるのか!? 怒涛渦巻く、武闘大会編ここに決着! |
――それでは自己紹介からお願いします。
ケンイチと申します。生まれも育ちも福岡県の北九州市出身です。好きなことは本を読むことや釣り、あとはギャンブルも好きです。特に競馬は小倉競馬場が住んでいる家の近くにあり、小さな頃から馴染み深く競馬と共に成長したと言っても過言ではありません(笑)。苦手なことは周囲の注目を集めたりすることなんですが、その一方で目立ってみたいという気持ちもあって、いつも複雑ですね。なので、小説を書く時も書くだけ書いてどこにも発表しないまま自己満足だけで終わろうかと迷ったりもしていました。結局投稿することにしましたが(笑)。
――目立つことが苦手ということですが、小説を投稿してその後書籍にもなっていることを考えると、否応なく周囲の注目を集めることにはなりませんでしたか。
実はそんなこともなく、当初家族にも本を出していると信じてもらえませんでした(笑)。全然信じてもらえないので、収入で証明している感じです。友人も県外に散らばっていて、連絡を取りつつもわざわざ作家になったということまでは伝えてません。知っているのは母親と弟くらいですね。弟からその友達に話が流れているかもしれませんけど。
――なるほど(笑)。それと本が好きだということですが、好きになったきっかけはあったのでしょうか。
我が家の教育方針とでも言えばいいのか、幼稚園の頃から絵本をとにかく読ませられていました。恐らく200~300冊くらいあったと思います。自分自身はあんまり覚えてないんですけど、3歳くらいの時に数十キロ先にある祖父の家に一人で歩いて向かおうとしたりだとか、結構やんちゃだったみたいで。それで下手に動き回らせるよりは、本を読ませて落ち着かせた方がいいんじゃないかという思惑もあったみたいです(笑)。小中高となっても図書館に通ってとにかくいろんな本を読んでいました。その中で最初にマッチした作品が宗田理先生の『ぼくらの七日間戦争』で、そこからさらにいろんな作品を読むようになりましたね。『フルメタル・パニック!』などの有名どころのライトノベルを読み始めたのもこの頃からだったと思います。
――本好きのケンイチ先生がご自身でも投稿することになる「小説家になろう」はどのようにして知られたのですか。
小説投稿サイトなる存在は知っていましたが、自分の中では本は手に取って紙をめくって読むものという想いも強くて、最初はほとんど興味を持っていませんでした。そんな時に弟が買った赤雪トナ先生の『竜殺しの過ごす日々』を借りて読んだらとても面白くて、その作品の原作がWEBにあるということを知りました。そこからどハマりした感じですね。ライトノベルは有名作品しか読んでいなかったんですが、一気に間口が広がりました。
――ではあらためて、自身でも投稿するようになって生まれた『異世界転生の冒険者』はどんな物語なのか教えてください。
前世で少し不幸な目にあった主人公・テンマが、神様に目をつけられ、自分の世界にこないかとスカウトを受けて始まる物語です。2014年頃に書きはじめて、投稿は2015年頃だったと思います。設定としては流行っていたものを取り入れて参考にしながら書きはじめました。本作は悲劇からの成長もテーマのひとつです。第1巻はあんまり冒険していませんが、この物語が動き出す上で必要だったことが非常にたくさん詰め込まれています。
――多くの読者さんも気になっていると思うのですが、作品タイトルもとてもシンプルですよね。タイトルじゃなくてジャンル名そのままといいますか(笑)。
ジャンル名そのままというのはまさにおっしゃられる通りで、いろんな作品に当てはまりますよね。仮にですけど、今同じ内容の作品を書いたとして、このタイトルは自分も付けないと思います(笑)。
――少しだけ商業的な面から触れると、ありきたりで目立たなくなる可能性が考えられるので、ある意味で勇気を必要とするタイトルだなという印象も受けました。
本当にそう思います。それこそ投稿という形で世に出すかどうかも悩んでいた人間が付けたタイトルだったので、仮題にも等しかったんです。なので、逆にいろいろと考えている投稿者の方々は素通りしてしまうようなタイトルだったのかなと。それでも異世界転生ものが好きな方であれば、このタイトルでも読んでもらえるんじゃないかなと思っていました。あらためて見ると、オビに書かれていてもおかしくないですよね(笑)。
――『異世界転生の冒険者』の着想や、執筆の上で気を付けていることなどがあれば教えてください。
前世で掴み切れなかった幸せを、悲劇や不幸を乗り越え成長して掴み取る、これが物語の着想で核心でもあります。気を付けていることとしては、基本的に執筆時は主人公の目線で物事をどう感じたのか書くようにしています。他のキャラクターの視点で描く場合は完全に視点のサイドを分けて書いていて、とにかく読者にわかりやすく伝わるようにしています。あとは文章内で知らず知らずのうちに方言を使っていることがたくさんあって、担当編集さんと校閲さんにはお世話になっていることでしょうか(笑)。小倉弁は昔からずっと使っているので、方言と標準語の違いがわからないんですよ。そこは全部担当編集さんの判断にお任せして標準語に直してもらっています(笑)。
――本作は「成長」が大きなキーワードになっていますが、第1巻の結末は思わず目をつむりたくなってしまう展開ですよね。それでも主人公にとっては必要だったということでしょうか。
第1巻の結末については、違う道もあったのかなと思っています。正直に言えば、執筆する中でそのシーンの手前まではその違う道を書き上げるつもりでした。ただ、主人公のこれからを考えた時に、これは違うとどこかで感じてしまって、あの結末に繋がることになったんです。自分はあまりプロットを書かないので、ぼんやりと思っていたことから全然違う道に進んでしまうことがままあるので。それでもあのシーンを描いたことは後悔していません。
――それでは本作の中心人物にして主人公・テンマはどんなキャラクターなのでしょうか。
この作品の主人公・テンマは、神様に前世とは違う力を数多く与えられ、好きなように生きることもできるキャラクターです。しかしながら現代の日本人の気質といいますか、どうしても踏み込み切れずに一歩引いてしまうようなキャラクターでもあります。身内には手を差し伸べ、敵は全力で排除するという、誰しもが持っている感情が、異世界へと転生したことで大きく明確化されていることも特徴ですね。
※イラストでも「成長」が描かれている主人公・テンマ(キャラクターデザインより)
――テンマはここまでどんな「成長」を遂げてきていると思いますか。
そうですね。本格的な冒険が始まる第2巻では、テンマの気性の荒さが垣間見えるシーンがあります。プリメラとの衝突シーンなんかですね。ただ、人となりを理解していくことで、テンマ自身の行動も変化しており、他人との交流がテンマの人格成長に大きく影響を与えてきていると思います。自分に近い人たちを過剰とも言えるくらいに守ろうとする気質は、第1巻の結末が大きく影響していて、気性の荒さと紙一重なところもありますね。
※容赦のない一面もみせたテンマ
――テンマの旅は眷属と共にあるわけですが、第3巻で初めて人間の同行者が登場します。ジャンヌとアウラとの出会いにはどんな意味が込められているのでしょうか。
テンマの人付き合いをもう一段階成長させる役割を二人は担っています。もちろんそれだけではないんですけど(笑)。テンマの対人コミュニケーション能力は第2巻では決していいとは言えなかったわけです。第2巻でテンマの隣にいる冒険者三姉妹は、テンマが放っておいても後ろをついてくるようなキャラクターでした。一方で、第3巻で出会うジャンヌとアウラはテンマ自身が動かなければ生きていくこともままならない。自発的に関わりを持って、引っ張ってあげないといけないわけです。そこに人間としての大きな成長があったと考えています。
※テンマに大きな影響を与えることになるジャンヌとアウラ(キャラクターデザインより)
※この出会いがテンマの「成長」を促すことに
――テンマの眷属の中では特に思い入れのあるキャラクターはいますか。
思い入れのある眷属は、やっぱり最初にテンマが眷属にしたスラリンですかね。ある意味で、テンマと一緒に成長しているキャラクターでもあります。眷属の中ではシロウマルやソロモンの方が強いのですが、立ち位置としてはリーダー的存在です。テンマにとってスラリンは兄弟分のような感じで、シロウマルやソロモンは小さな頃から育ててきた子供たちみたいなイメージです。テンマとスラリンはお互い成長した段階で出会った二人なので、少し違った思い入れがありますよね。
※スラリンのデザインは3タイプあり「なにもなし」が採用された(キャラクターデザインより)
――作品が書籍化されたことで、多くのイラストも描かれてきたと思います。お気に入りのイラストがあれば教えてください。
悩ましいところですが、全体的に考えるとやはり第1巻の表紙がとても印象に残っています。ネム先生には世界観の奥行きを描いていただいているので、本当に感謝しかありません。ついでに気付いていない方もいらっしゃるかもしれないので、第1巻の裏表紙にはナミタロウが描かれています。ぜひチェックしてみてください(笑)。また、第5巻に登場するアムールとテンマの一枚もお気に入りです。どうしてこんな展開になっているのかはぜひ書籍で確かめていただければと思います。
※ケンイチ先生が最も強く印象に残っているというジャケットイラスト。ナミタロウの姿も……?
※第5巻で描かれたお気に入りという一枚
あらためてネム先生には本当に苦労をおかけしているとは思うのですが、とても感謝しています。自分の中で固まり切っていないキャラクターをしっかりと地に足の着いたキャラクターにしていただけているので、本当にありがたいです。自身に足りていないしっかりと詰める能力を、自分の想像を超えて、デザインとして補完していただけています。書籍だけでなくWEBでもネム先生のイラストに触発されて筆が動くこともたくさんあるので、これからもよろしくお願いします!(笑)。
――本作は今年の9月から「マグコミ」でコミカライズの本格連載もスタートしました。漫画版の見どころも教えてください。
自分が執筆する上ではどうしても細かな描写に限界があるのですが、しばの番茶先生にはそういったところも漫画で補てんしていただけていると思っています。文章以上に世界の広がりを感じていますし、マーリンやリカルド、シーリアの若い頃の姿も描いていただけていて、自分でも新しい発見があって楽しみにしています。丁寧に描いていただけているので、監修という名目で本当に楽しみながら毎回読ませていただいています(笑)。
※今年9月よりコミカライズの連載も本格スタート!
――それではあらためて本作の見どころ、そしていよいよ発売となる第5巻の内容について教えてください。
読みやすい作品を目指して執筆しているので、難しい設定の本を読んで疲れた方や、異世界転生ものの作品を読んでみようと思っている方に手に取っていただけると嬉しいです。第1巻はやや重たい展開になっていますが、そこを超えていただければストレスフリーで楽しんでいただけると思います。発売する第5巻ではナミタロウとの再会、武闘大会の本選、そして第4巻で登場した山賊王の正体が明らかになります。これまで登場してきたキャラクターたちの激闘にもぜひ注目していただければと思います。
――今後の目標や野望があれば教えてください。
目標としてはこの作品をきちんと完結させることです。これまで他の作品も書いていたことがあるんですけど、途中でうまくいかなくなってしまい筆を置いてしまったものもあります。なので、『異世界転生の冒険者』は最後まで全力で走り切りたいです。さらに言えば書籍なり漫画なりでも最後までいきたいですよね(笑)。
――それでは最後に本作のファンに向けて一言お願いします。
これからもテンマの成長する姿を長い目で見守っていただきたいです。書籍についても所々で小ネタを挟んでいますし、第5巻で再登場するナミタロウは存在自体がギャグみたいなキャラクターです。少しでも笑ったり楽しんだりしていただければと思います。
――本日はありがとうございました。
<了>
異世界に転生して、悲劇を乗り越えて成長する少年の物語を綴るケンイチ先生にお話をうかがいました。第5巻では第1巻以来の登場となるナミタロウとの再会、そして激戦ばかりの武闘会本選など見どころも満載です。新キャラクターも登場して新たな展開を迎える『異世界転生の冒険者』第5巻も必読です!
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本作のイラストを担当するネム先生の直筆サイン入り『異世界転生の冒険者』第1巻サイン本を抽選で3名の方にプレゼントいたします。
応募方法はとても簡単。応募対象期間となる2018年12月8日(土)~12月11日(火)の期間中にTwitterで本インタビュー記事をツイート、またはリツイートするだけ。抽選で3名様に「ラノベニュースオンラインの公式ツイッターアカウント(@lnnews)」よりDMにてご連絡させていただきます。応募を希望される方は、ラノベニュースオンラインのツイッターアカウントのフォローをお願いします。
※当選発表は当選連絡のDMにて代えさせて頂きます。
※当選者の方へはプレゼント郵送先の住所や氏名等の情報をお伺いいたします。
※プレゼントの発送は国内在住の方とさせていただきます。
※プレゼントの発送はマッグガーデン・ノベルズ編集部様より実施するため、頂戴した情報はマッグガーデン・ノベルズ編集部様へ共有させていただきます。
©ケンイチ/マッグガーデン イラスト:ネム
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