【ラノベの車窓から】第8回 『ヘルカム!』

とあるライトノベル読みが読者としての視点・観点で、オススメをピックアップして紹介する「ラノベの車窓から」の第8回です。2週連続の富士見ファンタジア文庫の作品ということで、なにか大いなる力が介在しているのでは……と、そんなことはありませんよ?

さて、第8回のオススメとして取り上げるライトノベルは「ヘルカム!」です。本作は第22回ファンタジア大賞で「読者賞」を受賞した作品ですね。2011年の1月に第1巻が刊行され、2012年の3月に発売された今巻が最終巻となっています。ここ1年間のライトノベルを振り返ってみても、珍しいくらいに登場するヒロインのすべてが極めていじらしい可愛さを持った作品なのです。

ヘルカム!

著:八奈川景晶 イラスト:ななせめるち

出版社:富士見ファンタジア文庫

ヒロインの魅力、というのは当然ながら今のライトノベルには欠かせない要素と言ってもいいでしょう。むしろヒロインに魅力のない作品はライトノベルとして発売にこぎつけることは難しい。う~ん、これは少し言いすぎでしょうか。いずれにしても、可愛いヒロインの存在というのは、物語に華麗な花を咲かせ、読者の憧れとなるに越したことはありません。この「ヘルカム!」に登場するヒロイン達は、それぞれの個性を一切ブレされることなく、あざといぐらいに貫き通したことにより、真の可愛さを体現した作品と言っても過言ではないでしょう。敵であろうが味方であろうが、好きになった人へと全力投球。そんな、地獄と天国との物語なのです。

「あの…地獄ってステキだと思いませんか?」

この一言からすべてが始まった本作。地獄と天国との関係が、主人公である黒田義貴を懸け橋として着実に近づき始め、和解という可能性の提示から始まる今巻。これまで地獄のイメージアップを図るために様々な手段を講じてきた地獄の自治区統括長である刹那もまた、この千載一遇のチャンスを逃さないために行動を起こします。その一方、現実世界では那由多、都古、涼、伊織の4人が地獄と天国との垣根を越えて友情を育み、義貴を中心に地獄と天国との仲直り作戦は進行していくのです。

ところが、天国から和解の条件として地獄へと突きつけられた内容に、那由多は悲しみに捕らわれてしまいます。そして、ここから巻き起こる騒動を介して義貴は「自分はいったい何のために地獄と天国を仲直りさせようとしていたのか」その理由に気付くのです。天国から新たに派遣された交渉役。嘘を吐けない那由多が決意した一世一代の大ウソ。そして、万に一つとないこのチャンスを是が非でもモノにしようとする地獄。それぞれが、それぞれの思惑を胸に秘めたまま、いよいよ和解調停の日を迎えて……。これまで口にされなかった想いが口にされた時、二人の心は一気に急接近します。純粋で真っ直ぐな、地獄と天国の少女たちが強い想いを胸に秘めて義貴のために走る今巻は、読んでいてとにかく幸せな結末を迎えてくれと願わずにはいられません。4巻で終わりを迎えてしまうのが本当にもったいないくらい、ヒロイン達の魅力がハンパではない本作。とにかく可愛いヒロインとお近づきになりたい! とにかくあの娘を愛でたい! そんな想いを常々持たれている方にはぜひとも手にとっていただきたい作品です。

「ヘルカム!」は今巻で終わりを迎えますが、八奈川景晶先生の描く「ヒロインの在り方」は、ぜひ次回作でも発揮していただきたいと願わずにはいられません。だってもったいないもの! あざといぐらいがちょうどいいのです。貫き通して天元突破するくらいがちょうどいいのです。ヒロインの在り方に決まりはありませんが、八奈川先生の描くヒロインは「ヘルカム!」だけにとどまらせておくにはもったいないくらいに、可愛いのですから。

【記事:らお】

URL:「とある僕等の小説目録(ライトノベル)」

(C) 富士見書房 八奈川景晶/ななせめるち

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