ライトノベルニュース総決算2018 コミカライズ新連載は200作品超、1,000万部突破作品が2シリーズ登場した一年

2018年の筆者が振り返るライトノベルニュースの一番の驚きは、発表されたばかりのガガガ文庫刊『コップクラフト』のTVアニメ化かもしれない。2009年に第1巻が発売され、最新巻である第6巻は2年前の2016年。大好きな作品ではあるが、まさかTVアニメになろうとは。しかしながら、物語の舞台と昨今の流行を鑑みると、このタイミングでのTVアニメ化は非常に面白い試みだとも思うので、今後の続報を楽しみにしたいところだ。さて、筆者が驚いたニュース以外にも2018年はライトノベルの市場、業界、界隈を賑わす様々なニュース、そして出来事があった。ラノベニュースオンラインでは、2018年のライトノベルニュース総決算と題して、2018年の出来事や注目のニュースをまとめてお届けする。

■年間刊行点数は昨年より100点増 新作の刊行点数は600点で横ばい

まず2018年を振り返ると、ライトノベルの刊行点数は約1,900点(ラノベニュースオンラインアワードの主だった対象作品より抽出)となった。昨年は約1,800点だったことから、100点近く増加したことになる。一方で新作の刊行点数は約600点とほぼ横ばいであった。昨年の全体増加分は新作が担っていたが、2018年はシリーズ化した作品がこの増加分を支えている。2018年も新レーベルが立ち上がり、新作の供給元は増えていたことを考えると、既存レーベルのシリーズ刊行率が昨年よりもやや高めであったとも言えるだろう。また、2018年のライトノベルの話題は総じて「穏やか」という印象を筆者は受けた。話題の熱量はどうしても前年と比較せざるを得ないため、致し方ないことなのかもしれない。昨年は『86-エイティシックス-』が話題と売上をしっかりと比例化させていたことも、大きな印象を抱く要因となっていたのだ。とはいえ、特筆すべき作品がなかった、というわけではない。「このライトノベルがすごい!2019」文庫部門で史上初のダブル1位に輝いた第24回電撃小説大賞「銀賞」受賞作『錆喰いビスコ』、こちらも「このラノ」で上位に駆け上がった『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』、また長編シリーズとしては約18年ぶりの最新刊となった『スレイヤーズ』等々。特に『錆喰いビスコ』は刊行時からの熱狂的なファン層から、「このラノ」を経てより広い層への道筋をひとつ切り拓いた。2019年は同作の真価が問われることになるのだと思う。さて、刊行点数の割合からも2019年はより成熟したシリーズが刊行されることになるはずなので、ライトノベル業界を一層盛り上げてくれる作品の成長に期待したい。

■『転スラ』&『ダンまち』がシリーズ累計1,000万部を突破

この1年、具体的な数字でライトノベルの魅力をあらためて感じさせてくれたのは『転生したらスライムだった件』と『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』の2作品だった。1,000万部突破のニュースは本当に久しく目にしていなかっただけに、極めて明るいニュースといえる。両作品とも「努力」「友情」「勝利」といった少年漫画らしさを強く感じさせる要素を内包し、小説をはじめ漫画やアニメでも多くのファンを獲得しながら不動の人気シリーズへと駆け上がっている。いずれも物語は続いており、今後の展開にも大きな期待が寄せられる。2019年も1,000万部を突破する作品の出現を楽しみにしたい。

■2018年も新レーベルが続々と誕生 2019年も……?

昨年の総決算記事で2018年こそ落ち着くのではないかと記した筆者の予想を裏切る形で、今年も新たなレーベルがいくつも誕生した。「ブレイブ文庫」「光文社ライトブックス」「Gzブレイン」「レジェンドノベルス」「BKブックス」と作品の刊行元は増え、書店の棚を巡る静かで熾烈な争いは激化の一途を辿っている。年明けには電撃編集部が「電撃の新文芸」を携えた単行本市場への挑戦を控えるなど、新レーベルが立ち上がるたびに最後発と言われながらも、まだお尻は見えていない。刊行点数が昨年より100点増加しているという状況もあるように、新規参入するレーベルはこの市場でどう読者に認知してもらい、どう作品を売っていくのか、より洗練した参入戦略が必要となることは言うまでもない。なお、今年は撤退に関するニュースはなく、どの出版社も明るい未来を目指して頑張っているので、引き続き応援していきたいと思う。

■漫画業界で席巻するラノベ原作のコミカライズ 年間新連載数200作品突破

2017年の130作品を超えるライトノベルのコミカライズラッシュを大津波と例えた筆者は、今年をどう例えればいいのか皆目見当がつかない。しいて言うなら「大地が割れた」であろうか。それはさておき、2018年は昨年を軽々と追い抜く新連載200作品超えを果たしている。上半期の時点で100作品を超え、その勢いのまま年末まで駆け抜けた。コミカライズの作品規模は一昨年から比較すると約3倍と凄まじい速度で広がりをみせている。漫画の消費者人口はライトノベルの消費者人口を圧倒的に上回るため、その受け皿は大きく、今のところ弊害を耳にすることはない。敢えて触れるなら、上半期の記事でも記した好調のコミカライズと伸び悩む原作の関係性だろうか。さて、200の新連載を数えたコミカライズの内訳は、WEB発ライトノベルを原作とした作品が7割強と依然WEB発作品が牽引している状態だ。ただ、全体の比率としては昨年とほとんど変わらず、コミカライズ規模拡大の恩恵はWEB発の作品だけでなく、業界全体に広く波及していると言っていいだろう。アリアンローズやビーズログ文庫をはじめとした女性向けレーベル作品のコミカライズも着々と増加しており、今年は約20作品を数えた。2019年は全体も女性向けもこの勢いが続くことはほぼ間違いない。作家陣にとっては2018年に続いて、メディアミックスのチャンスが溢れる1年となりそうだ。

そして2019年のライトノベルを原作としたアニメ化は、新旧入り混じる1年となることが予想されるだけでなく、WEB発作品の勢いが凄まじいことになりそうだ。2クール目に突入する『転生したらスライムだった件』、『盾の勇者の成り上がり』、『賢者の孫』、『ありふれた職業で世界最強』、『魔王様、リトライ!』だけでなく、『蜘蛛ですが、なにか?』や『異世界チート魔術師』、『私、能力は平均値でって言ったよね!』、『痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。』、『八男って、それはないでしょう!』など、放送時期は発表されていないものの、いずれも2019年放送の可能性は十分に考えられる。また『ブギーポップは笑わない』や『魔術士オーフェンはぐれ旅』など往年の名作もTVシリーズとして放送が決定しており、豊作の一年となりそうだ。そして2019年は2年ぶりに劇場を盛り上げる年になる。『幼女戦記』や『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』、『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』、『冴えない彼女の育てかた』など、見逃せない劇場版が続くことになる。依然OVA化も活発で、2019年もライトノベルを原作としたアニメ化の波は続くだろう。

■子会社化や事業移管など各社の成長戦略も目立つ

今年4月にブックウォーカーが「読書メーター」などを運営するトリスタを子会社化した。BOOK☆WALKERでは早速、新たなプロモーション施策として読書メーターと連動した企画「新作ラノベ速報」をスタートするなど、連携強化が図られている。アース・スター エンターテイメントも好調なノベル・コミック事業強化のため、泰文堂を子会社化している。また、スマートフォンゲームの開発・運営を主な事業として展開するエディアがサーガフォレストやブレイブ文庫を有する一二三書房を子会社化したほか、ヒーロー文庫やプライムノベルスはメディア連携強化を目的として、主婦の友社から主婦の友インフォスへと事業移管されている。各社ともに成長戦略として位置づけられており、今後の展開に大きな期待が寄せられることになる。

■ソードアート・オンライン新章《ユナイタル・リング》始動

『ソードアート・オンライン』の新章始動が予告されたのは2016年夏、原作小説第18巻の巻末だった。その後、2017年末に「電撃文庫MAGAZINE」にてプロローグが掲載。章名が《ユナイタル・リング》となることが明らかとなる。そして迎えた2018年、『ソードアート・オンライン』の新たな物語が本格的に動き出した。実質、ファンは2年半待つことになったわけだが、これだけの期間を要したのも、川原礫先生にとってひとつ大きなチャレンジになっているのだと思っている。さて、《アリシゼーション編》が全4クールでアニメ化というニュースは大きな衝撃を与えたわけだが、ある意味新章メディア化の道筋をきちんと整備した、と言ってもいいように思う。なにせ《ユナイタル・リング編》を語る上で、《アリシゼーション編》は越えなくてはならない物語であり、ファンにもしっかりとついてきてもらう必要があるからだ。ストレートエッジでは「SAOプロジェクト」と題して同作に関わるクリエイター陣を募集した。より多くのクリエイター、そしてユーザーを巻き込みながら『ソードアート・オンライン』は更なる飛躍を目指していくことになる。

■2018年を席巻したVtuberはライトノベル界隈にも誕生 

2018年はライトノベル界隈にもVtuberが続々と現れる年となった。Vtuber全体では6,000を超える新人(?)Vtuberが誕生するなど、この一年で大きく盛り上がった市場のひとつと言える。ライトノベルでは今年5月に誕生した「ふじゅ」「本山らの」を皮切りに、「リイエル」「軽野鈴」「積読塔のラン」等、数々の読者Vtuberが誕生している。また、類似する活動として『緋弾のアリア』の著者である赤松中学先生がTwitter上で「ちゅうがく☆ちゃんねる」を展開。電撃文庫刊『はじらいサキュバスがドヤ顔かわいい。』も独自のチャンネルを開設するなど、情報発信の場としての試みがみられた。ほかにもチャンネルを開設をしており、今後の動向が気になる『ノーゲーム・ノーライフ』の榎宮祐先生や、ガガガ文庫の某作家さんが手掛ける闇に染まったVtuber「爆死ヶ淵やみ」も今後の活躍(?)が期待されているはず。読者も作家も主に「個」としての動きは一年を通して、流行とともに見ることができたのではなかろうか。一方で、各レーベルをはじめ、企業サイドのアプローチが思いのほか弱かった点はやや残念であった。作品単位では今後もVtuberとのコラボなどが模索されていくのだろうが、レーベル自らの手で立ち上げ、運用していく挑戦がひとつくらいはあってもよかったのではないか。2019年もVtuberの熱量は継続するだろう。しかしながら、いくつかのVtuberプロダクションでは「整理整頓」も少しずつではあるが行われ始めており、熱に浮かされるだけではなく冷静な視点で見ていく必要もある。ぜひ読者Vtuberの皆さまには、既存のラノベファンだけでなくVtuber沼にいるユーザーをライトノベルの土俵にまで引っ張り上げていただきたいと強く期待している。

上記のトピックスは、あくまでも印象に強く残った出来事やニュースである。『とある科学の一方通行』&『とある科学の超電磁砲』第3期のアニメ化発表や、1号限りの復活を遂げた「ザ・スニーカーLEGEND」に収録された『涼宮ハルヒ』の短編をはじめ、気になるニュースは非常に多かった。2018年、ラノベニュースオンラインはライトノベルのニュース記事を約2,600本配信している。この1年、ほかにもどんな出来事や発表があったのか、気になる読者はぜひラノベニュースオンラインで2018年のニュースを振り返ってみてほしい。

ラノベニュースオンライン編集部