独占インタビュー「ラノベの素」 鶴城東先生『クラスメイトが使い魔になりまして』

独占インタビュー「ラノベの素」。今回は2019年5月17日にガガガ文庫より『クラスメイトが使い魔になりまして』が発売された鶴城東先生です。第13回小学館ライトノベル大賞にて「ガガガ賞+審査員特別賞」を同作で受賞し、満を持してデビューされます。落ちこぼれの魔術師である主人公が、才色兼備なクラスメイトの美少女と主従関係を結んで始まる本作。軽快なテンポと物語に込められている核心も大きな見どころとなっており、作品の内容やキャラクターについてお聞きしました。

【あらすじ】

クラスの美少女を侍らせてみたい。誰もが一度くらいは考えるんじゃなかろうか。でもまあ、正直オススメしない。落ちこぼれ魔術師の俺、芦屋想太には藤原千影という使い魔がいる。彼女は魔術師の名門出身で、ついでに誰もが憧れる学年一の美少女だ。え、羨ましい? まじか、じゃあ譲ってやるよ。まず、こいつはご主人様に求める理想が高い。負けん気が強く、中々反抗的で、絶望的に貧乳だ。それでもいいならぜひ引き取って……あ、うそ! 許して、藤原さ―――この物語は主従関係からはじまる、ふたりの恋(?)のヒストリー……らしい。

――それでは自己紹介からお願いします。

第13回小学館ライトノベル大賞「ガガガ賞+審査員特別賞」を『クラスメイトが使い魔になりまして』で受賞させていただきデビューすることになりました鶴城東です。出身は福岡ですが育ちは佐賀、大学は広島で、現在は山口に在住しており、普段は薬剤師としてお仕事をしています。好きなものはラノベと漫画で、嫌いなものはゴルフです。元々ゴルフは好きでも嫌いでもなかったのですが、仕事の都合上月に一度、日曜日を潰してゴルフをせねばならず、ただでさえ年間72日しかない休みが60日まで減らされているので、憎悪の対象になりました。坊主が憎かったらやはり袈裟まで憎いものです。平日もたまには仕事終わりに練習をしなければなりませんし、時間をゴリゴリ削られる。有休も就職五年目にしてまだ一度しか使わせてもらってないし……社会人、つらい。

――お仕事はかなり多忙のようですね……(笑)。小説の執筆については、一時期筆を置いていた時期もあったとお聞きしました。

はい。新人賞への応募は学生の頃にやっていたのですが、大学生活の半ばくらいから読み専になりました。あらためて執筆活動を再開したのは一昨年あたりだったと思います。実は19歳の時にガガガ文庫様ではない他のレーベルの最終選考まで残ったことがあり、編集さんについていただいたこともありました。ただ、大学の実習やアルバイトで忙しかったりと、疎遠になってしまったんですよね。とはいえ、こうしてガガガ文庫様に拾っていただけたので、結果オーライということで!

――あらためて第13回小学館ライトノベル大賞「ガガガ賞+審査員特別賞」受賞の感想をお聞かせください。

本作は執筆を再開しての2作目でした。第13回小学館ライトノベル大賞には2作を応募していて、両方とも一次選考を通過していました。私自身はもし受賞することがあるのなら、漠然とこの作品ではないもう一方の作品だろうなぁと考えていたので、お電話をいただいたときは二重に驚きました。「小学館ガガガ文庫編集部!? マジでぇ!? え、そっちですか!? お、おぉ…………やったぜ!」みたいな(笑)。落選したもう一方の作品は、意図した上でかなり尖った作品として書いていたのですが、力みすぎの作品もダメなんだなと感じる結果になりましたよね。自然体で、趣味を楽しむように、好きなものを詰め込みながら書いたこの作品だったからこそ、よかったのかもしれません。ちなみに電話をいただいてからはしばらく不眠症になりました。脳が興奮しすぎて自律神経が乱れ、半月ほど全然眠れなかったんですよね。睡眠導入剤を飲んでも夜中に目が覚めるという恐ろしい経験もしました(笑)。

――眠れないくらい喜ばしい出来事だったわけですね(笑)。そして本作は同新人賞でも異例の「ガガガ賞+審査員特別賞」のW受賞となりました。

W受賞に関しては本当にただただ驚きました。しかも私も含めて二人という異例さでしたし(笑)。浅井ラボ先生よりいただいた恐れ多い講評は、多分死ぬまで忘れることはないと思います。

――また、以前には異なる新人賞に応募されていたこともあったとのことですが、本賞に応募しようと思ったきっかけは何かあったのでしょうか。

小学館ライトノベル大賞に応募したのは、田中ロミオ先生の作品全般や『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』、『下ネタという概念が存在しない退屈な世界』など、好きな作品が多かったからですね。あと担当さんからはそんなことはないと言われましたけど、尖った作品はここに送れという風潮もありましたから……(笑)。

――ありがとうございます。それでは受賞作『クラスメイトが使い魔になりまして』はどんな物語なのか教えてください。

本作はやる気のないクズ男子が、才能に溢れて意識の高い可憐なクラスメイトの美少女を使い魔にしてしまい、四苦八苦する物語です。女の子がたくさん出てきます。キャラ同士の会話や、主人公のブレない行動を笑っていただければとても嬉しく思います。登場人物はほぼ全員、己の目的や野望を達成するために全力を尽くしますが、そういった点を頭の片隅において読んでいただければ、また違った楽しさがあるかもしれません。

※クラスメイトの美少女を使い魔にしてしまい……!?

――本作はどのような着想で執筆をされたのでしょうか。

原案を考えたのが10年ほど前になるので、何に着想を得たのかはまったく覚えてなくて……。ただ、完成品は当時考えていたそれとは別物にはなっています。魔法が存在する現代日本が舞台で、主人公がクラスメイトを使い魔にする、この二点以外の共通点はないと思います。私は魔法や超能力みたいな異能が好きですし、美少女の集団はもっと好きですし、ひねくれた主人公はそれ以上に大好きなので、自然とこのような形に仕上がったのだと思います。とはいえ単純にコメディのみで押し切れる地力があるかは甚だ不安でしたから、全体を通したストーリーを置くことによって、読者の方の興味を継続的にひければなと考えました。

――なるほど。ご自身でも仰られていますがコメディの裏側には芯の通ったストーリーが組み込まれているのも大きな特徴だと思います。この物語は主人公のためだけの物語ではないような印象も受けました。

主人公とヒロインである藤原千影と三条茉莉花には、過去に浅からぬ因縁があるのですが、主人公はとある理由からさっぱり覚えていないんですよね。なので、主人公はヒロイン二人に執着される理由がわからないまま物語は動いていきます。設定だけを見ると、身に覚えがないのに美少女に執着されるって、なんかいいと思うんです。仮に自分が同じ立場になったらただただ怖いだけだと思いますが(笑)。なんにせよ、それに必然性を持たせるためのストーリーでもありますから、主人公とヒロイン周りの設定、物語はとても真面目に作りました。

――それでは本作のストーリーには欠かせない登場キャラクターについても教えてください。

主人公の芦屋想太は、口が悪く、煽りの才能に秀で、努力が嫌いで、むっつりスケベで、一言で表せば駄目人間です。しかしそんな性格でありながらも芯はしっかりとあって、どうしても譲れないことがあったり、大切なものを守らなければならないときは、困難に立ち向かうこともできる少年です。巻き込まれ型の主人公でもあり、劇中ではたびたび悲惨な目に遭いますので、性格がアレで口汚くとも、楽しく追いかけてもらえるキャラクターだと思います。

※意識低い系(?)主人公の芦屋想太

正ヒロイン(?)の藤原千影は、名門の出で、責任感が強く、己の才能におごらず常に上を目指して努力を続ける、意識が高い少女です。しかしながら過去の出来事によって本質的には自分に自信がなく、気丈な態度も自分を奮い立たせるためのものです。現在の想太に複雑な思いを抱いていて、何かと気にかけていますが、意識が低い想太には苛立つことも多く、最終的には罵声を浴びせ、口論することになります。そのやりとりも見どころの一つ……だと、思います。あとは胸が平らです。平らなんです。

※主人公に使い魔とされてしまう藤原千影

三条茉莉花は、想太を不自然なまでに高評価する学園の生徒会長です。藤原千影同様に名門の出で、正義感が強く、高潔で、公明正大です。学生でありながらトッププロ顔負けの実力を持ち、人当たりもいいため、多くの生徒に慕われています。しかし完璧超人というわけではなく、心に弱さも持っていたり、若干思い込みも強かったりしますね。才能に恵まれているので、できない人の気持ちが理解できないところもあります。物語後半における想太のパートナー(?)でもあります。それと眉毛の太いキャラが好きなので、このキャラに担当してもらっています(笑)。

※チャームポイントは太眉という生徒会長・三条茉莉花

ソフィアは最強の魔人です。異世界の皇族であり、藤原千影によって召喚されました。作中最強の存在であり、その高い実力に比例した傲慢さ、プライドの高さを持っています。基本的には自分以外の存在を虫けらとみなしていますが、気に入った存在に対しては極めて寛容です。ただしその信頼が裏切られたときは悪魔と化します。これまで書いたことがなかったタイプのキャラなので、登場するシーンは毎回これで大丈夫かと不安になっていました。また、イラストレーターのなたーしゃ先生の手により想定以上の爆乳になっています。これは本当に素敵で素晴らしいことです。胸は大きければ大きいほどいいので!

※最強の魔人・ソフィア

――主人公については、軽快な煽り文句や軽口、ひねくれ具合も非常に大きな魅力になっていると思うのですが、執筆する上で気を付けたことがあれば教えてください。

主人公が極端なクズにならないようには気を付けました。やはりコメディ作品なので、読んでいる方に不快感を持たれてしまうと、主人公が何をしても笑えなくなると思いましたので。クズはクズでも感情移入できるクズにできればなと。基本的に主人公は身の程をわきまえていますので、可能な範囲で極力リスクが生じないような行動を取る小賢しさがあります。また、主人公が悪さをすれば、それに対する罰が下るようにもしているんですよね。酷いことを言う場合も、笑えるような言い回しを考えたり、主人公以上のクズを出したり、ほんとにうまくできているのだろうか不安になることも多いのですが……(笑)。魅力は、そのひねくれたところや、他のキャラとのやり取り、最後の最後では決して自分を曲げないところにあると思います。どんなに強い相手でも、譲れないことがあれば、決して迎合しない。友人や仲間だと思っている人間に対しては優しさも見せるので、いろいろ言ってはいますが根は善良な男の子なんです。

――本作ではクラスメイトを使い魔としてしまう、召喚や召喚獣も大きなキーワードになっています。あとがきでは鶴城東先生も稀代の召喚士だったと書かれていますが、ご自身の召喚にまつわるエピソードがあれば教えてください。

正直どこまで言っていいものかという躊躇いは禁じ得ないのですが……。ひとつは飲み屋街でキャッチのお兄さんに捕まり連れて行かれた健全なお店で、戦士のような屈強な女性や全身入墨の異国のシャーマンのような女性を立て続けに召喚したことがあります。ファンタジーのような世界観を味わうことはできたのですが、召喚をキャンセルすることもできず、とにかく無心で時がたつのを待っていました。もうひとつは私が大学生の頃に、友人の知り合いが通う他の大学に連れていかれ、いろんな紆余曲折を経た結果、その大学の授業を受けてから帰ろうという話になりまして。この時点で何やってんだってお話なんですけど、友人の説得に失敗した私も授業に紛れ込んだ……ところまではよかったのですが案の定、即侵入者だと看破され、警備員だか守衛だかのおっさんを召喚される羽目になり、全力で逃亡したこともありました。もしあの時逃げ切れていなければ、もっと強力な魔物を召喚されていたかもしれません。……あらためて振り返ると、私が召喚したというよりは、私の周りで召喚事件が頻発しているような感じですね、すみません。

――まさに稀代の召喚士(笑)。あらためてご自身の中でお気に入りのシーンやイラストがあれば教えてください。

イラストはどれも素晴らしいのですが、特に表紙と藤原千影と三条涼華が戦っている構図の口絵が気に入っています。表紙はこの物語をたった一枚で実に正確に表現していただけていますし、なにより色っぽいです。口絵は単純に格好いいですよね。挿絵であれば、マジックアイテムの透視眼鏡で近衛美砂の下着姿を見た主人公が大笑いしているものが気に入っています。シーンとしても馬鹿っぽくて楽しく書けました(笑)。作中でお気に入りのシーンは、最後の決戦のところです。徹頭徹尾シリアスにやるべき展開なのですが、主人公や藤原千影のキャラクター性のおかげで笑えるようになっているのではないかなと。

※印象に残っているというカバーイラスト

※マジックアイテムで悪ノリしちゃう想太と美砂

――本作はどんな読者が読むと、より面白いと感じてもらえると思いますか。

ラブコメが好き、少し毒がある主人公が好き、ケンカップルが好き、強い女キャラが好き、頭がおかしい女キャラが好き、恋愛脳な女キャラが好き、ツンデレが好き、ほんのり感じられるシリアス要素が好き、そんなシリアスをぶち壊すコメディが好き、キャラ同士のおかしみのある会話が好き、なたーしゃ先生の絵が好き、鬱要素は大嫌い……そういった方には楽しんでいただけるのではないかと思います。とにもかくにも楽しく読める作品であることを心掛けました。現実はストレス社会ですから、本作で笑って生きる活力をチャージしていただければと。主人公は最初から最後までストレスに晒され続けますが、それはそれです(笑)。

※格好いいと評した口絵イラスト

――これからの目標や野望があれば教えてください。

作家としての目標は、生き残ることですね。今のこの業界は、素人目に見てもわかるほど苛烈な戦国時代ですから、討ち取られずに長年生きていける、それだけですでに選ばれし者であるように思えます。そうやって生き残っていく中で、あわよくばメディアミックスの機会などがあればなお嬉しいのですが、どうでしょうか。ちょっと贅沢ですかね?

――それでは最後に発売への意気込み、本作へ興味を持った方へ一言お願いします。

断言できますが、絶対に面白いです! 私一人だけの感想だと信頼度はゼロを通り越してマイナスに感じられるかもしれません。そもそも私は私を世界で一番信用していません。ですが審査員である浅井ラボ先生とガガガ文庫編集部一同のセンスは間違いないのです! つまり面白くないわけがない!(虎の威)。さらにW受賞を記念してタペストリーが付属する有償特典も「ガガガ文庫公式通販」で発売されているので、こちらもぜひよろしくお願いします!

※タペストリーイメージイラスト

――本日はありがとうございました。

<了>

才色兼備なクラスメイトの女の子を使い魔にして始まる魔術学園ラブコメを綴った鶴城東先生にお話をうかがいました。魅力的なひねくれ主人公、なぜか主人公のことを気にかけるヒロインたち、そして何人も手を出せない最強の魔人。コメディだけでなく物語としての魅力も詰まっている『クラスメイトが使い魔になりまして』は必読です!

©鶴城東/小学館 イラスト:なたーしゃ

[関連サイト]

ガガガ文庫公式サイト