独占インタビュー「ラノベの素」 タンバ先生『最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い』

独占インタビュー「ラノベの素」。今回は2019年9月1日にスニーカー文庫より『最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い』が発売されるタンバ先生です。帝位争いが激化する帝国内において、出涸らし皇子とバカにされる一人の皇子が、双子の弟を帝位につかせるために暗躍を始めるファンタジーシリーズ。作品の裏側や内容についてはもちろん、2つの顔を有する主人公の暗躍の魅力、そして本作の見どころについてお聞きしました。

【あらすじ】

無能で無気力な底辺皇子・アルノルト。気ままに過ごす彼は「優秀な双子の弟に良い所を吸い取られた『出涸らし皇子』」と、帝国中から馬鹿にされていた。しかし、皇子達の帝位争いが激化し危機が迫ったことで、遂に”本気を出す”ことを決意する。「皇帝になる気は無いが、負けて殺される気もさらさら無いな」 隠していた類まれな才覚による策略や交渉術、そして「禁忌の古代魔法を操る、最強のSS級冒険者」という真の力とその地位――全てを駆使し、正体を隠して暗躍する出涸らし皇子は、彼に尽くす国一番の美姫を従え、帝位争いを影から支配する! 最強皇子による縦横無尽の暗躍ファンタジー、ここに開幕!

――それでは自己紹介からお願いします。

ペンネームはタンバです。2014年にモンスター文庫さんより『軍師は何でも知っている』を出版させていただきデビューしました。このたびはスニーカー文庫さんから『最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い』を出版させていただきます。好きなものはスポーツ観戦とゲームですね。あとは武道も10数年現役として嗜んできました。苦手なものは……勉強ですね。それとできないわけではないですけど、掃除が苦手でいつも親に怒られています(笑)。

――武道をされていたとのことですが、スポーツやゲームはどんなジャンルが好きなんですか。

スポーツ観戦では野球やサッカーなどのチーム競技が好きです。自分自身がずっと個人競技だったので、チーム競技への憧れが強かったことも影響していると思います(笑)。最初はただ楽しく観ているだけだったんですけど、段々と戦術や戦略的な観点から観戦するようになっていき、監督や選手の視点で、考えながら観ることも多いです。ゲームはFPSやTPSが好きですね。これも目の前の敵を倒すだけでなく、相手がどう攻めてくるのかを考え、どう対処をしながら戦っていくのか、そんな視点で遊ぶことが多い気がします。武道をやっていたからか「勝つこと」への道筋を考えたり、執着のようなものがあるのかもしれません。

――現在は小説家として活動されていますが、長らく携わってきた武道のお仕事はやられていないんでしょうか。

現役を続けることを含めてそっち側の道へ進みたかったという気持ちはありましたけど、段々と気持ちに身体が付いていかなくなって絶望していくんですよね(笑)。頭の中で描いたイメージと、自分の身体で動くイメージが噛み合わなくなっていくんですよ。ある意味で小説の執筆により力を入れることになったきっかけでもありましたね。指導者の立場に……という選択肢もゼロではなかったと思うんですけど、僕自身がとにかく指導者向きの性格ではない(笑)。指導者は選手が試合に負けたら責を負わなければいけないし、試合に勝ったら選手を褒めなくちゃいけないと思うんですけど、僕の場合はどっちの場合にも「我」が出てしまうので、とことん向いてないと自覚しています(笑)。

――なるほど(笑)。現在に至るまで、小説の執筆自体はいつ頃から始められたのでしょうか。

文字書き遊びのようなものであれば、中学1年くらいの頃からだったと思います。僕の友達が僕の家にあったパソコンを使って執筆活動をしていたんです(笑)。常に家に遊びにきていて、その姿を見たり、話をしているうちに自分も書いてみたいなと。我が家の家庭方針として、何をやってもいいけど本だけは読みなさいとも言われていて、本を読み続けていたことも大きかったように思います。今やスマートフォンという暇潰しに最適な媒体が出てきてますけど、当時は親から「待ち時間に本を読めないと今後の人生で退屈することが多くなる」みたいなことを言われて、そこから本を読むようになっていました。『ハリーポッター』から始まり、小説を書く友達に出会い、中学の社会の先生から『ロードス島戦記』を勧められたりもしました。ライトノベルと出会ったのもここで、本当に面白くて読書の幅が広がったんですよね。とまあ、そんな背景がありつつ、文法を無視したような文字書き遊びを中学時代の3年間続け、その後高校では地獄の部活漬けの日々が始まったことで、文章を書くという行為からは一度遠ざかることになりました。

――執筆活動から一度離れながらも、あらためて訪れた小説執筆のきっかけはなんだったのでしょうか。

大学に入学して、小説投稿サイト「小説家になろう」で小説を書いている友人に出会ったことがきっかけでしたね。その友人から自分の書いた作品がとにかく酷評されるんだと愚痴をすごい聞かされていたんです(笑)。小説自体は忙殺されていた高校時代も含めて読み続けてはいて、なら試しにその友人の作品を読んでみようと読んだんですけど、まあなんというか……(笑)。それで友人に「ここをこうしたらいいんじゃないか」みたいなアドバイスをしていたんですけど、やがて「そんなに言うなら自分で書けば?」って逆ギレされてしまったんですよね。友人のキレ具合も冷めやらなかったので、「わかった、書くよ」と。ここで中学時代以来となる文章を執筆するという行為を再開しました。幸いにも大きな反響ではありませんでしたが、作品に感想をいただけたりもして嬉しかった記憶があります。その友人は面白くなさそうでしたけど(笑)。

――中学時代を含めて、友人に触発されるような形で執筆活動をされてきたんですね。

そうかもしれません。特に大学時代の友人には唐突に書けと言われたことで書きはじめたのですが、今こうして作家をやっていることを考えると、ある意味では恩人とも言えなくはない、のか……?(笑)。

――(笑)。ではあらためて、約1年半ぶりの書籍化となる『最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い』はどんな物語なのか教えてください。

本作は十三人もの皇子・皇女がいる帝国が舞台となり、帝位争いに参加することになった双子の弟を、普段からだらけて「出涸らし皇子」と揶揄されている主人公が暗躍しながら弟を助けていく物語です。主人公はシルバーという冒険者の顔も持っていて、実は凄い力を有しているんです。ただ、その力だけではどうにもならなかったり、簡単ではないシーンも多く、本作の「暗躍」というテーマにも強く結びついています。勢力争いや政治争いを描く関係上、人間関係も腹の探り合いが多く、敵や味方、はたまた第三の勢力といったキャラクターの関係性もテーマとしての見どころだと思います。

※冒険者・シルバーの本当の顔は……

――本作はどんな着想のもとで執筆しようと考えたのでしょうか。

あとがきでも触れているんですが、本作はFPSで高校生の子たちと遊んでいた時に、ボイスチャットで直接ヒアリングしながら設定を詰めていった作品でもあるんです。その高校生たちはライトノベルも読んでいて、かつ僕がライトノベル作家であることを知った上で、いろいろと話を聞きました。その中で特に反応の強かった「暗躍」と「皇子」という2つのキーワードから、この作品が生まれたと言っても過言ではありません。特に「皇子」という立場は、これまでに刊行してきた『軍師は何でも知っている』や『使徒戦記』の主人公たちよりも身分や立場が上の位置にある存在で、そのキャラクターをメインにして描いたことはこれまでの作品との大きな違いだと思います。

――現役の高校生からヒアリングしてアイデアを固めた、というのは面白いエピソードですね。

そうですね。そういう意味でもいろんなチャレンジをしている作品とも言えます。特に主人公を「最強属性」にしたのは、僕の中では大きな挑戦でした。『使徒戦記』でも主人公は強かったのですが、あくまでも「上位陣」という位置づけでした。今回の主人公は圧倒的に強いキャラクターにしようと考えていたので、設定周りを含めて非常に難しくなるだろうなとも思っていました。その話を高校生たちにしたら、「そこが作家としての腕の見せ所じゃないんですか」ってストレートにパンチを放たれて(笑)。それならやってやろうじゃないか、と。なので、設定も煮詰めていて、最強の力を有しながらもその力だけではどうにもならない舞台設定を用意しています。皇太子でもあった第一皇子が既に暗殺されているように、相手を倒した、殺したからと言って帝位争いは終わるわけではありません。それも主人公が皇帝になりたいわけではなく、弟を帝位に付けなくちゃいけない。一筋縄では行かない展開が非常に多いこともこの作品の特徴だと思っています。

――主人公が帝位につこうとするわけではなく、弟を担ぎ上げるために「暗躍」するわけですからね。単純なゴリ押しだけでなく、出涸らし皇子としての顔も使い分けながら描かれる物語は本作の大きな魅力だと思います。

この作品では作風的にも誰かを騙すシーンが多くて、勉強のためにというわけではないんですけど、「人狼ゲーム」のアプリで遊ぶようにもなったんですよ(笑)。僕自身、最初は嘘が下手だったんですけど、少しずつ上達はしてきたはずで、人を騙したり欺いたりする行為は本当に奥が深いと感じるようになりました。そういった経験が作品の中でも活かされていると思います(笑)。

――では本作で活躍(暗躍)する主要なキャラクターたちについて教えてください。

主人公のアルノルトは、理想の兄で、理想のぐーたらで、理想の暗躍者を目指しました。アルノルトには双子の弟であるレオナルトにはないところを詰め込み、その結果弟にあらゆるものを吸い取られた出涸らし皇子と揶揄されることになります。考え方や発想力といった努力に寄らない能力に優れている一方で、レオナルトの領分である勤勉さはなく継続はしません。ひとつ言えるのは、混乱した世界や状況でなければ、まず評価されないタイプのキャラクターだということです。シルバーという冒険者の顔と出涸らし皇子という2つの顔を使い分けながら、帝位争いの中で暗躍することになります。

※様々な手段で暗躍を行う出涸らし皇子・アルノルト

レオナルトはアルノルトの双子の弟です。理想の弟で、理想の統治者像を持ち、帝位につけば理想の皇帝になるであろう存在です。レオナルトは努力の人間で、要領も良く様々なことを勉強して自分の力にしています。アルノルトとは対比的な存在ではありますが、わかり合っている部分も多く、理想の兄弟像でもある。ただ、レオナルトからすれば、自分が兄から能力を吸い取ったのではなく、兄に良いところを取られているという感覚も持ち合わせているんです。混乱の時勢で真価を発揮するアルノルトとは異なり、平和な時勢でより真価を発揮するタイプのキャラクターでもあります。

※アルが帝位に付けようとしている優秀な双子の弟・レオナルト

フィーネは本作のヒロインです。公爵家の娘であり、理想のパートナーで、アルノルトの秘密を知り、一番の理解者になってくれる存在です。これは読んでいただければ分かると思うのですが、登場時の彼女の印象とアルノルトの秘密を知ってからの印象は大きく変化します。主人公に近い存在にしたかったキャラクターでもあって、距離の近さはそれだけ周囲には見せない一面を覗かせてくれることでもあると思うんです。周囲への毅然とした姿と、アルノルトに見せる素の部分。この二面性に魅力を感じていただけたらと思います。

※深窓の令嬢かと思いきや思わぬ一面を見せてくれるヒロイン・フィーネ

――オススメのシーンや注目のイラストがあれば教えてください。

注目していただきたいのは、やはり本作のテーマにもなっている「暗躍」のシーン。アルノルトが暗躍するためにシルバーとしての仮面を被るシーンは非常に気に入っています。また、エピローグは新たに加筆した部分でもあるのですが、非常に手ごたえを感じているシーンでもあるので、ぜひ読んでいただきたいですね。イラストについてはどれも素晴らしいのですが、特に印象的かつ自分自身が思い描いていたものと一致したのが、アルノルトの幼馴染みでもあるエルナが、アルノルトに対して死なない誓いを立てるシーン。イラストに込められた緊迫感が強く描かれていて本当に気に入っています。

※エルナに誓いを立てさせる場面からアルの暗躍も始まる

――著者として本作はどんな方が読むと、より面白いと感じることができると思いますか。

そうですね。ふたつあって、ひとつは宮廷物語を描く中国ドラマなどが好きな方には楽しんでいただけると思います。中国ドラマでも政争は多く描かれていて、本作の参考にした部分も少なくありません。もうひとつは、主人公に没入しながら作品を読む方には特に楽しんでいただけるのではないかなと思います。主人公の視点で気に入らないと感じる部分に対して、力を隠しながら物事を進め、時にシルバーとしての仮面を被って暴れる。気分良く読んでいただけるんじゃないでしょうか(笑)。

――ちなみに本作には十三人もの皇子・皇女が登場するわけですが、特に注目してもらいたいキャラクターを選ぶとしたら誰でしょうか。

アルとレオ……と言いたいところですが、第1巻やその先の物語ということであれば、第二皇女のザンドラでしょうか。この帝位争いにおける彼女の動向は、圧倒的な勢力を背後につける第二皇子や、脳筋と揶揄される第三皇子とはまた違った動きを見せてくれると思います。お楽しみに!

※十三人の皇子・皇女の帝位争いは激化していく……!

――今後の目標や野望あれば教えてください。

一番はこの『最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い』を含め、タンバという作家が書く作品は何でも面白いと思ってもらえるファンを増やしていきたいです。それともうひとつ自分のポリシーとして、WEBで公開されている書籍化前の物語より、書籍化された物語の方が断然面白いと思ってもらいたい。その逆だけは絶対にありたくないし、僕自身も編集者さんも時間をかけて面白さに磨きをかけているので。ここだけはこれから2巻、3巻と発売されても、そう思ってもらえるように努力し続けていきたいですね。

――それでは最後にご自身のファンや本作に興味を持った方、読んでみようと思っている方へ一言お願いします。

これまで刊行してきた『軍師は何でも知っている』や『使徒戦記』と比較しても、書籍化に伴う作品作りには手応えを感じている部分も多いので、ぜひ期待していただきたいという思いは強いです。ありがたいことに「ヤングエースUP」でのコミカライズも決定しており、第2巻も今冬の発売を予定しています。WEB版だけでは満足せず、書籍化されたことによって生まれた面白さをぜひ見てもらいたいです。よろしくお願いします!

――本日はありがとうございました。

<了>

出涸らし皇子と周囲に馬鹿にされ続ける第七皇子の暗躍を、帝位争いという舞台で描くタンバ先生にお話をうかがいました。帝位を手中に収めるのは果たして誰なのか、そして皇帝の座へと至るまでにどんな政争や謀略、そしてアルノルトの活躍を見ることができるのか非常に楽しみな本作。帝位を巡る一大ファンタジー、『最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い』は必読です!

『最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い 無能を演じるSSランク皇子は皇位継承戦を影から支配する』(角川スニーカー文庫)
©タンバ夕薙/KADOKAWA

[関連サイト]

『最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い』特設ページ

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