【編集部のオススメ】りゅうおうのおしごと！ 「おかえりなさいませ！ お師匠さまっ！！」
ラノオン編集部が読んでオススメしたいと思ったライトノベルを紹介する【編集部のオススメ】
今回はGA文庫より発売されている白鳥士郎先生が執筆する『りゅうおうのおしごと！』をご紹介します。
※多少のネタバレが含まれますのでご注意ください。
「おかえりなさいませ！ お師匠さまっ！！」
幼女の押しかけ弟子とクズ竜こと竜王の座に就く少年との師弟物語が開幕！
将棋、押しかけ弟子、そして竜王の座に就いたものの燻る少年棋士の物語。と書くと、すごく堅そうなイメージではありますが、あの「のうりん」の白鳥先生が手掛けている時点でそんな心配は微塵もございません、ご安心ください。さて、本作は10月に開催された「ラノベ読み超会議」でも非常に評判の良かった作品でもあります。読もう読もうと思ってようやく手に取ることができたわけですね。齢16にして竜王の座に就いた棋士、九頭竜八一。そんな八一のもとに、遠路はるばる押しかけた弟子希望の幼女こと、雛鶴あい。将棋という少しお堅いスポーツを題材にしながら、そんなものは一切合切吹き飛ばし、しかし将棋の熱さを怒涛のように展開する本作。対局の棋譜を作中に挟み込むことはなく、それでいてドラマチックに、そして熱いストーリーに仕上げられています。熱さあり、笑いあり、そして苦しさや悔しさありと、「将棋」の醍醐味を詰めに詰めた物語となっています。
クズ竜王と押しかけ幼女。
将棋の新たなタイトル「ロリ王」誕生！？
最年少にして将棋界最高位タイトルのひとつ「竜王」の座に就いた少年、九頭竜八一。師匠である清滝九段との師弟対決は、八一が勝利するも師匠の暴走により泥仕合の様相を呈した。一方、タイトル獲得後に連敗続きの八一は、ほうほうのていでアパートへと帰りドアを開けると、そこには幼女もとい雛鶴あいの姿があった。
「あいの棋才は本物です」
似たもの師弟の八一とあい。内弟子（仮）が誕生！
八一の竜王戦での戦う姿に憧れを抱き、棋士になりたいと懇願するあいの姿は、かつての八一そのものだった。姉弟子である銀子は大反対する中、師である清滝九段に背中を押され、八一は晴れてあいを内弟子（仮）にすることを決める。そしてあいは八一の内弟子として、将棋会館へと足を踏み入れる。
ドラゴンキングVS白銀の聖騎士。
「倒されちゃうよね、竜王」「そんなことないです！ 師匠は最強ですっ！！」
目下11連敗中の八一はリーグ戦に臨む。片やタイトルへの挑戦権が近い対戦相手。片やリーグ陥落が決まっている八一にとって、この対局は消化試合だった。対局が進むにつれて諦めや投了の型を意識するようになる八一はしかし、対局室にいるはずのないあいの姿を目にする。師の勝利を疑わないあいの姿に、八一は泥臭く戦い勝利を目指す決意をするのだった。
両親の反対、そしてあいへの試練。
立ちはだかるのは将棋千四百年の歴史で、最強の女性棋士――！
同年代の仲間と研究会を開いたり、道場で着々と成長する弟子の姿は、もはや八一にとって日常になりつつあった。そして、研修会試験を翌日に控えた八一とあいの前に、雛鶴あいの両親が姿を現すことに。棋士となることに反対する両親は、あいに将棋を続けるチャンスを示すのだが……。
本作の見どころは、将棋への熱さもさることながら、きちんとエンターテイメントに落とし込まれている点だと思っています。本当に白鳥先生は凄まじいですね。キャラクターのネーミングひとつとっても、きちんとズラすことでエンタメになるのですから。燻っていた少年の起爆剤は幼女であった。これは真実でもあり曲解でもあるのですが、八一とあいの師弟関係は、ひとつの理想形かもしれないですね。これはロリ王が将棋界に誕生する日も近いのかもしれません（違）。本作の中では、白鳥先生の取材に基づいた将棋界のお話も随所で出てきます。キャラクターたちの掛け合いにばかり目を向けていると中々頭の中に納まってこなかったりもしますが、将棋の世界の厳しさも表現されているのです。それは銀子の在り方であったり、桂香さんに突き付けられつつある現実であったり。ガチでありながらもコメディである本作が、将棋の世界にどこまで踏み込み、そしてどう厳しく楽しく描いていくのか、本当に楽しみです。将棋にガチで打ち込む押しかけ幼女とクズ竜王の汚名を返上するべく立ち上がる少年の、笑いあり熱さありを描くオススメの1冊となっています。
9歳幼女と16歳少年のドタバタ師弟ガチ将棋コメディを、ぜひ手に取って読んでみてください。
[関連サイト]