ラノベの素SPECIAL 『作家・三田誠』

ラノベの素、今回はスペシャル版です!

いつもは特定の作品についてお尋ねするところなのですが、今回は三田誠先生をお招きして、最近の事情からデビューした直後の話まで、根掘り葉掘り聞いてみました。

気になる作家の生活スタイルや体調管理方法、ライトノベルと呼ばれてなかった頃の話や、新作の『クロス×レガリア』、奈須きのこや虚淵玄、成田良悟といった錚々たるメンバーで話題沸騰の『レッドドラゴン』まであらいざらいのインタビューです。お見逃し無く!

 

              (C)三田誠・ゆーげん /角川書店                         (C)三田誠・Pako /角川書店

――本日はお忙しいところありがとうございます。自己紹介お願いします。

ええと、三田誠(さんだまこと)です。

ライトノベル市場では『レンタルマギカ』(スニーカー文庫)や『イスカリオテ』(電撃文庫)。三月一日に出たばかりの新作だと『クロス×レガリア』(スニーカー文庫)など、バトルものを中心にやらせてもらっています。

逆に、それ以外の市場だと星海社さんの『レッドドラゴン』や、講談社ノベルスの『幻人ダンテ』だとか、少し変わり種の作品が多いですね。

――では最初に。定番ですが、三田先生が作家をめざしたきっかけは?

もともと本は大好きだったんですが、13才の頃に菊地秀行先生の『風立ちて”D”』(吸血鬼ハンターシリーズの第2巻)をたまたま手に取ってしまったんです。

ちょっと好みだったら買おうかなーって立ち読みしてみたら、もうこれがどうしようもないぐらいに面白くて、そのまま最後まで読んじゃったんですよ。いや本屋に迷惑な子供ですよね(笑)。

もちろん『風立ちて”D”』はそのまま購入して、菊地先生の作品をそこから半年で100冊ぐらい集めました。で、「小説ってこんなに面白くていいんだ。よし、俺、作家になろう」と思ったんです。

――菊地先生はライトノベル作家でもファンが多いですね。三田先生のデビューは大学生の時でしたっけ?

はい。当時、グループSNEさんから『央華封神TCG』が出版される直前でして、制作の手が足りないということで安田均社長から声を掛けていただいたんです。で、お手伝いする内に自作の小説をいくつか見せていたら、じゃあ今度出す『モンスター・コレクション短編集』に書いてみろということになりまして。これが20歳くらいのことですね。

――なるほど。では次に、気になる作家の生活ということで、三田先生の一日の時間割をお聞きします。

執筆に関して言えば、集中してPCの前に座って書くのは3~4時間くらいですね。

集中する時間はなるべく短くしてます。あとは普段の生活の中で何かしながら原稿を考えるんです。例えば散歩してる時なんかも原稿のことを考えながら歩いてますね。座りっぱなしだと足が萎えちゃうんで、運動も兼ねて一日30分以上は外を歩くようにしてます。

まあ、ほとんどは本屋か喫茶に行ってるわけですが……実は今の住居も書店との距離を考えて決めたんですよ。だいたい20分歩けばアニメイトもとらのあなもあるっていう(笑)。

――(笑)。執筆中の生活サイクルは夜型なんですか?

普段は朝型だったり夜型だったりですが、修羅場になると朝方で規則正しい生活にしますね。

修羅場中に作家が倒れることが周りにとって一番困っちゃうことなんです。だから無理してペースを上げるよりもとにかく倒れないように、体調に気をつかいます。

――やはり体調管理が大切なんですね。

でもデビューして数年ぐらいはよく徹夜してましたよ。『スプラッシュ』(富士見ファンタジア文庫)最終巻のあたりは3日で200ページくらい書いたことがありますね。2日徹夜でした。さすがにあれだけ一気に書くと気持ちよかった記憶があります。

リンク:三田先生の『スプラッシュ』はJコミで無料で読めます。

――それが三田先生の最高記録ですか。

そうですね。たぶんこの記録を破ることはもうないでしょうし、あって欲しくもないです(笑)。

――体調管理など出てきましたが、三田先生にとってプロというのはどういうことですか?

あくまで僕の場合ですが、「読者を意識する」ということでしょうか。

ライトノベルに限らず、エンターテイメント業界は華やかです。そこを楽しんでもらって、憧れてもらって、新人として入ってもらってぐるぐる回ることで成り立ってると思います。

だから、作品でもなんでも、読者にがっかりされないようにしたいなと。

別に「真面目にやろう」なんてのじゃなくて、遊ぶのもふざけるのも、読者に見られる場なら意識して楽しんでもらおうぐらいのことですね。これも作家のタイプによるとは思います。

――作家のタイプ! では三田先生は自己分析すると、どんな作家ですか?

プロデュースタイプ、ということになるでしょうか。

ほら、ゲームのレベルアップでどの能力をあげるとか決められるじゃないですか。あんな感じで自分に向いてるやり方とかを考えながら、「じゃあこういう風にやったらもっとうまく書けるんじゃないか」とか、長期的に切り盛りしている感じです。どちらかというと編集者に近い考え方かもしれませんね。

――自分を俯瞰してみるんですね。

そうですね。

ただ、この「向いてるやり方」っていうのは、自分が好きで続けられるものというのを含みます。

好きでないのに長期シリーズなんて超人的な精神力がないとできませんから。ただ、微調整で利く範囲なら頑張ってみてもいいかなと思います。

『おおきく振りかぶって』(アフタヌーンKC)で「エースになりたければ性格くらい変えてよ」っていう名言がありますけど、まさにあんな感じで(笑)。

たとえばバトルものだったら、普段は超能力ものが好きだけれど、この一年は格闘ものの本を増やして、好みのレパートリーを増やしてみようってぐらいですね。でも、もともと素養のないジャンルを好きになるとかは無理ですし、僕の場合ナンセンスギャグは恥ずかしながらまったく素養がなくて、分からなかったりします。

――好みのスライドですか。面白いですね。

いやもう単純に、自分が好きなものしか書けないんですよ。

だからなるべく好きなものの多い方が得だろうなと。分析してどうこうという方もいますし、そういう方は凄いと思いますが、僕は中に入って自分が楽しまないと、うまく書けないんです。

――そうすると、最近刺激になったことと言えば?

インドア派なので、ほとんど本とゲームです。

虚淵さんもハマってた『スカイリム』とか『ドラゴンエイジ2』とか『アーマードコア5』とか。

最近のマンガだと『スカイブルー』(ガンガンコミックス)がスゴク好みでした。真っ向勝負の異能バトルが気持ちよくて。

あとは、『昭和元禄落語心中』(講談社)や『ファンタジウム』(モーニングKC)も大好きです。どちらも気持ちのいい連作短編なんですよ。小説ももちろんあるんですけど、自分に近すぎる業界なので列挙するのはやめておきます(笑)

――自分自身もファンになるんですね。三田先生はシリーズも多く、固定ファンも多いと思いますが。

いるといいんですが。

作家名で売れるタイプの市場ではありませんから、一シリーズごとに本当に全力を尽くしてます。そこが面白いところだとも思ってますね。

僕の作品シリーズを複数買っているのに、同じ作者だとは気づかなかったって感想も結構見ますよ(笑)。

――ファンの存在はやはり嬉しいものですか?

それはもう!

作者につくにしろ、作品につくにしろ、ファンがいて僕らは初めてやっていけます。

それに、さっきも言いましたけれど、読者に買ってもらって、憧れてもらって――その中の誰かが書く側にまわってくれることで、業界が若さを保てますから。古びてしまうと、伝統芸能になれない限りは業界として死ぬということですしね。

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