独占インタビュー「ラノベの素」 牧野圭祐先生『月とライカと吸血姫(ノスフェラトゥ)』

独占インタビュー「ラノベの素」。今回は2018年2月20日にガガガ文庫より『月とライカと吸血姫(ノスフェラトゥ)』第3巻が発売となる牧野圭祐先生です。人間と吸血鬼が様々な苦難と障害を乗り越えながら、共に同じ宇宙を目指す物語が魅力的な本作。舞台や登場キャラクターも変化する最新3巻について、物語や見どころについてお話をお聞きしました。

宙と青春の物語、連合王国編始動!

【あらすじ】

有人宇宙飛行で共和国に敗北を喫した連合王国は、名誉挽回のための新計画『アーナック・ワン』を始動。民族融和と科学技術大国推進を打ち出す広報プロジェクトだ。新人技術者のバートは王国初の宇宙飛行士の弟であることを理由に、広告塔へ選出されてしまう。パートナーは吸血鬼の末裔、カイエ。バートは不慣れな業務をカイエとともにする中で、彼女の秘めたる想いを知っていく。「私は月なんて大嫌い」。――これは華々しい宇宙飛行の裏側に存在した、語られることなき地上の星々へ送る英雄譚。宙と青春の物語、連合王国編始動。

――それでは自己紹介からお願いします。

愛知県出身の作家、牧野圭祐と申します。京都の大学を出てからはずっと東京に住んでいます。ガガガ文庫でライトノベルのお仕事をするようになった経緯は他の方とかなり違うんじゃないでしょうか。もともとは実写やゲームのシナリオライターをやっておりまして、あるタイミングでガガガ文庫に繋がりのある方にご紹介をいただいたことが始まりでした。小中学校の頃にはラノベを読んでいて興味もあったのでぜひにと。その後、企画を出したりして、今に至る流れです。あと月に土地を持っています!

――月に土地をお持ちで! 月の土地が購入できるというお話は随分前に話題になりましたよね。

ものすごく昔に3,000円くらいで購入しました。権利書もあります。

――購入された土地はどのくらいの広さなんですか。

覚えてないです。権利書は持ちつつも、本当に有効なんだろうかって気はしています(笑)。どこかの国が仮に月を独占するような日が来たらただの紙切れになるんじゃなかろうか(笑)。

――月に土地を有する牧野先生の好きなものや苦手なものを教えてください。

最近は時間があればずっと本作を含めた資料ばかり読んでいるので、ぶっちゃけ自分の好きなものってなんなんだろうなって(笑)。もはや良い資料を発掘するのが趣味みたいな状態になってますね。テレビも全然見てないですし、ゲームや漫画や小説も延々と積まれている状況で。ソーシャルゲームもとりあえずログインボーナスだけって状態です。苦手なものは駅の人混みですね。

――東京にはかなり長いこと住まわれているようですが、慣れたりはしませんか。 

慣れても嫌です(笑)。渋谷駅の動線を早くなんとかしてほしい。人混みといえば、冬のコミックマーケットもインフルエンザが怖いのでできれば避けたいと思っていたりもします。

――牧野先生の担当編集の方もインフルエンザを罹患されましたし、まさに人混みの弊害ですね。

本当にそうですね(笑)。

――ではあらためて『月とライカと吸血姫』について触れていきたいと思います。第1巻刊行時にはラノオンアワード3部門で選出されました。そして「このライトノベルがすごい!2018」文庫部門4位、新作部門3位にも選出されました。まずは率直な感想をお聞かせください。

『月とライカと吸血姫』の物語は売れ筋とかなり離れたところにある作品だと勝手ながら思っていたんですが、ライトノベルを普段から読んでいる方々に受け入れてもらえたのは嬉しかったです。それとTwitterを見ていて感じたのは、リツイート数が増えるようになったなと。興味を持っていただける方が増えてありがたいと感じています。

――牧野先生の知人や友人をはじめとした周囲の反応に変化はありましたか。

周囲っていうのがTwitterしかないので、お話した通りですね(笑)。なかなか作家さんのお知り合いも少なくて。一度屋久ユウキ先生から忘年会のお誘いを受けたりもしたのですが、締切と被っていて断ってしまったんですよね。同期の受賞者とかもいるわけではないので、まったく繋がりがなく仲間も全然……。もうネットに住んでますとか、そんな状況です(笑)。

――ぜひこれを機に輪を広げていただければ(笑)。では『月とライカと吸血姫』について第1巻と第2巻を振り返りながら、物語について教えてください。

本作は「人類史上初の宇宙飛行士は吸血鬼の少女だった」というキャッチコピーをそのまま物語にした作品です。人間と吸血鬼の間には差別的な観念も強く、宇宙飛行の実験体にされてしまう吸血鬼の少女と、宇宙に強い憧れを抱く宇宙飛行士候補生補欠の青年が、交流を重ねるに連れて親しくなっていきます。この物語には明確な敵は存在しませんが、社会の風潮や利己的な上層部の人間、そして開発技術の問題が障害として立ちはだかります。それに負けず、信念を貫く若者たちの物語でもあります。第1巻と第2巻は上下巻構成になっていて、第1巻も第2巻も熱い内容になっていると思います。

――宇宙やロケット、そして吸血鬼と面白い組み合わせだと思うのですが、着想について教えてください。

きっかけは、どういう企画を作ろうかなとぼんやり考えていた時に、ふと「下町ロケット」のCMを目にしたことが発端だったかもしれません。「ドラゴンクエスト」的な世界でロケットを作って宇宙を目指すという作品は見たことがなかったですし、担当編集の方にお話したら反応も良くて、資料を漁り始めた感じです。もともと宇宙にも詳しいわけではありませんでした。現在の物語は「人間の国」をベースに執筆していますが、当初はもっと魔物だとか、そういった要素が登場する世界観でやろうとしていた時期もありました(笑)。そういった試行錯誤の中で、人間の中に混じる吸血鬼を人間寄りの世界に沿った世界観に組み込めば面白くなるんじゃないか、そういった発想で作品の根幹は決まっていった感じです。

――本作の物語は実際の史実に沿って描かれている点も多々見受けられます。完全な空想ベースからやろうとは考えなかったのでしょうか。

それはあまり考えなかったです。仮に架空のロケットを飛ばすとなると、科学的な考証が非常に難しかったりもするので、ある程度の事実をベースとした方がリアリティも出るかなと。第1巻、そして第2巻のロケットの打ち上げ日や、打ち上げに向かう日程なども史実のスケジュールをベースにしていたりします。キャラクター以外は史実に基づいて忠実にやろうと考えていましたし、変に嘘くさくもしたくなかったので。

――もともと宇宙に詳しくはなく様々な資料を漁られたとのことですが、宇宙の資料を漁って得た発見などはありましたか。 

第1巻、第2巻と書く中で様々な資料を取り寄せましたが、とくに第3巻は日本語の資料が全然なかったんですよ(笑)。 なので、英語のサイトを翻訳して読んでネタを集めていたりもしました。発見というわけではないのですが、1960年代のソ連は宇宙開発の機密を守るために虚偽の情報を世界に発信していて、まんまと騙された記者が書いた資料などもありましたね。おかげで日程などを『史実どおり』にするのが大変でした(笑)。それ以外にも宇宙船に山羊を乗せて旅行すればいいだとか、火星には本当に火星人がいて、火星の周囲を回る惑星は監視衛星だとか大学の教授が真面目に執筆している資料もあって、凄いなと感じました(笑)。ただ、当時の宇宙開発に詳しくなかったからこそ、フラットな視点で資料を見られた点はよかったと思ってます。

――第1巻または第2巻を振り返って、牧野先生のお気に入りのキャラクターについて教えてください。

個人的に好きなキャラクターは読者からほとんど人気のないリュドミラ・ハルロヴァという悪いキャラクターがいるんですけど、彼女が悪巧みをするところが好きですね。共和国最高指導者の秘書官であり側近の女性です。第3巻でもちょくちょく話題に上がったりもするので、注目していたければ。読者の間ではロケット開発主任のスラヴァ・コローヴィンの人気が高いと聞いています。みなさん割と格好いいおじさんキャラに飢えてる?(笑)。

※「革命」という言葉を口にするリュドミラ・ハルロヴァ

※第1巻から登場するロケット開発主任スラヴァ・コローヴィン

――お気に入りのシーンやイラストがあれば教えてください。

第1巻だとイリナとレフが深夜の凍った湖で二人だけの世界に魅入られているシーンでしょうか。イラストではそのシーンを描いたカラーの口絵が印象に残っていますね。あとはイリナが民族衣装を着ているシーンや、リュドミラの悪い表情が描かれたイラストも印象に残ってます。

※凍った湖にて(レフ&イリナ)

※リリット国の民族衣装を身にまとうイリナ

――そして本作は3月8日から「コミックDAYS」にてコミカライズ連載もスタートします。

はい。コミカライズの作画は掃除朋具先生に担当していただいています。コミカライズのお話自体は昨年の初夏あたりに聞いて、当時は非常に驚きました。コミカライズ版ではイリナの高貴なイメージが際立つ大人っぽさがとても魅力的です。かなり描き込んでいただいているので、読者の方もぜひ楽しみにしていただければと思います。

※2018年3月8日より「コミックDAYS」にて連載開始

――いよいよ発売になる最新3巻の見どころを教えてください。

宇宙開発もののお話では第1巻や第2巻のように宇宙飛行士が主役として描かれることが多いと思うんですが、第3巻では地上の技術者たちの物語になります。物語の舞台とキャラクターも変わり、連合王国サイドで物語は綴られていきます。第1巻と第2巻を経て「レプス&ルミネスク・ショック」の衝撃を与えられた連合王国の技術者たちが、差別的な環境に抗いながら壁を打ち破っていく姿を読んでいただきたいです。雰囲気も共和国連邦とは少し違っている点にも注目してもらいたいですね。第3巻に登場するキャラクターはイリナやレフの影響を多分に受けているので、第1巻と第2巻を読んだ上で第3巻を読むと、登場するキャラクターの立ち位置がより明確に把握できるかもしれません。

※第3巻を彩る主役バート&カイエ

※物語は連合王国のロケット技術者たちへ

――第3巻では挿絵を先に見る方に向けた注意があるのだとか(笑)。 

注意というほどではないのですが(笑)。第3巻の挿絵について、今回は特にイラストにおける物語上のネタバレが多分に含まれているので、ネタバレの自爆を避けたい読者の方は今回だけ我慢をして、最初から読み進めていってもらえると、より楽しんでもらえるんじゃないかと考えています。文章を読みながらぜひ挿絵のイラストも楽しんでいただければと思います。

――みなさん、第3巻の挿絵は物語とあわせて楽しみましょう(笑)。そしてまだ本作を読んだことがない方へ本作の楽しみどころを教えてください。

本作の吸血鬼と宇宙という組み合わせは、一見、B級アクション映画のような印象を与えてしまうかもしれません。また、冷戦の宇宙開発競争というと、小難しいお話のように感じてしまうところもあると思います。ただ、それらの要素は物語の背景であって、基本的なストーリーは人間の主人公と吸血鬼のヒロインの普遍的なボーイ・ミーツ・ガールです。なので、難しく考えず試し読みなど冒頭やプロローグに触れてもらえたらと思います。

――今後の目標や野望があれば教えてください。

野望……えっと、じゃあ、アニメ化をぜひ(笑)。私自身、この作品を執筆する際は頭の中でアニメーションを思い浮かべて、ノベライズをしているような感覚で書いています。なので、個人的にはアニメ化しやすいんですよ!(笑)。あとは、本作のタイトルは『月とライカと吸血姫』なんですが、「吸血姫」を「吸血鬼」と誤記されることが多いので、知名度を上げて間違われないようにすることが目標です!

――最後にファンの方へメッセージをお願いします。

第1巻発売時は大きく話題になるような作品ではありませんでしたが、口コミであったり、ラノオンアワードであったり、いろんな投票で盛り上げていただけたことに感謝をしています。ありがとうございます。第3巻では舞台もキャラクターも変わりますが、そちらも気に入ってもらえたらと思います。また、第1巻だけで満足されている方も多いと聞いているのですが、ぜひ第2巻も読んでいただけたらと思います。第1巻と第2巻は上下巻構成となっているので、第3巻発売のタイミングでぜひ第2巻も手に取ってもらえたらと思います。まだ読んだことがない方もこの機会にぜひ『月とライカと吸血姫』に触れていただけたら嬉しいです。

――本日はありがとうございました。

<了>

様々な障害を乗り越えながら宇宙に夢と情熱を注ぐ人間と吸血鬼の物語を綴る牧野圭祐先生にお話をうかがいました。第3巻にて物語は新たな舞台とキャラクターへと移り変わる本作。レフとイリナがもたらした衝撃に揺れ動く連合王国の人間と吸血鬼たちを舞台にした『月とライカと吸血姫』第3巻も必読です!

『月とライカと吸血姫』第3巻発売記念プレゼント企画!

牧野圭祐先生&かれい先生の直筆サイン入り第3巻カバーフォトプリントを抽選で3名の方にプレゼントいたします。

応募方法はとても簡単。応募対象期間となる2018年2月19日(月)~2月22日(木)の期間中にTwitterで本インタビュー記事をツイート、またはリツイートするだけ。抽選で3名様に「ラノベニュースオンラインのツイッターアカウント(@lnnews)」よりDMにてご連絡させていただきます。応募を希望される方は、ラノベニュースオンラインのツイッターアカウントのフォローをお願いします。

※当選発表は当選連絡のDMにて代えさせて頂きます。

※当選者の方へはプレゼント郵送先の住所や氏名等の情報をお伺いいたします。

※プレゼントの発送は国内在住の方とさせていただきます。

※プレゼントの発送はガガガ文庫編集部様より実施するため、頂戴した情報はガガガ文庫編集部様へ共有させていただきます。

©牧野圭祐/小学館 イラスト:かれい

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