ライトノベル原作のコミカライズが前年同時期の約1.8倍に 2017年上半期は40作品を超える新連載がスタート

ライトノベル作品のコミカライズラッシュが止まらない。昨年の総決算記事でも少しばかり触れたライトノベルのコミカライズは、2017年も凄まじい勢いでコミック業界へと進出を続けている。その数は前年同時期の約1.8倍となっており、2017年上半期のライトノベルを原作としたコミカライズ新連載は40作品を超える。仮にこのペースで下半期もコミカライズラッシュが継続するとなれば、年間で100作品を超える連載がスタートしてもおかしくはない。ライトノベルを原作としたアニメ作品が再び盛り上がりを見せている中、コミックもこれまで以上に多くの作品がユーザーの目に留まるようになっている。コミカライズを筆頭にライトノベルのメディアミックス攻勢は、再び加速する兆候を見せ始めている。

●早まりつつあるコミカライズの決定、連載開始のタイミング

加速度的にライトノベルを原作としたコミカライズ作品が増え続けている要因はどこにあるのか。そのひとつにコミカライズの決定タイミングが次第に早まってきていることが挙げられそうだ。コミカライズをはじめとしたライトノベルのメディアミックス戦略は、特殊な販売戦略などを除くと一定のファンや人気を獲得した後、晴れて成立するパターンが多い傾向にある。2巻、3巻、4巻と続く堅調なシリーズがコミカライズを行い、コミックの読者を原作小説の物語へ誘導する、あるいは原作ファンをコミックへと誘導する、新規ユーザーの獲得と相互ユーザーの環流が肝要だった。一方で2017年上半期では、第1巻の刊行時点でコミカライズが発表されていた作品、さらには小説の刊行よりも早くコミカライズの連載がスタートする作品が登場するなど、昨年と比較しても第1巻の刊行がコミカライズ決定のキーポイントとなる例は増加している。そして、そういった作品の多くがWEB発のライトノベルだという点も見逃せない。

●2017年上半期のコミカライズ新連載の約7割がWEB発ライトノベル作品

コミカライズラッシュを牽引しているのは、「小説家になろう」や「カクヨム」をはじめとしたWEB発となるライトノベル作品の影響が大きい。2017年上半期に連載がスタートしたコミカライズのうち、WEB発となるライトノベルを原作とした作品は約7割と、数字だけでもその影響力の大きさがうかがえる。また、コミックサイドでもWEB発ライトノベルの扱うテーマが、コミックのユーザーに広く受け入れられている点も大きい。これはコミックスと原作小説の発行部数の逆転現象が発生している作品も散見されていることなどからも、テーマとユーザーとが合致する非常に活況な市場であることを指し示している。そしてWEB発の作品にはファンや人気が事前に定着しているパターンも多く、ライトノベルの編集サイドからもメディアミックスに推しやすく、コミックの編集サイドからも漫画として注目してもらいやすいアドバンテージが少なからずあるのだろう。WEB発となるライトノベルが牽引するコミカライズラッシュは、下半期も引き続き継続することはまず間違いない。

●課題はコミック読者をライトノベル読者にすること

コミカライズの増加は、それだけライトノベル作品に多くの読者が触れる機会をつくり出すことにほかならない。ライトノベルの読者人口が減少していると囁かれている昨今、このチャンスを活かさない手はないのだ。これはメディアミックス化した作品を担当する編集者、あるいは編集部そのものの腕の見せ所だとも言える。ライトノベルを原作とするコミカライズの読者は、テーマに共感しファンとなっているその時点で、ライトノベルの読者になり得る可能性を大きく秘めている。コミカライズの増加はターゲット層の拡大・増加に繋がる。ぜひコミカライズ読者へのアプローチに様々な工夫をこらして、ライトノベルのファンを増やしてもらいたいと願わずにはいられない。

なお、ラノベニュースオンライン編集部で確認できているだけでも、7月24日時点でコミカライズ企画が進行中、あるいは決定している作品は40作品近くある。下半期は過去2年を振り返っても、上半期以上にコミカライズ連載のスタートが増加する。つまり上半期の勢いは、このまま2017年下半期、そして2018年に向けて、勢いを増していくことが予想される。コミカライズが増えればライトノベルも話題となる。ライトノベルを知るきっかけのひとつとしても、コミカライズの更なる拡充と盛り上がりに期待が寄せられる。

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