【レポート&インタビュー】「ラノベを読んでオシャレになれる!」『魔王は服の着方がわからない』トークセッション&サイン会の模様をお届け

2017年10月22日(日)に東京・ららぽーと豊洲店で開催された『魔王は服の着方がわからない』トークセッション&サイン会の模様をお届けする。イベントには著者の長岡マキ子先生、イラストレーターのU35先生、企画協力と監修を担当したMB先生、ファンタジア文庫統括編集長の森井氏の4名が登壇。制作秘話から洋服のオシャレについてと幅広く展開された。さらにイベント終了後には登壇した3名の先生方に、イベントの感想など様々なお話もうかがっているので、ぜひチェックしてもらいたい。

【あらすじ】

理想の妃を見つける為、異世界から日本の高校へ入学したオタク魔王ダイバルド。早速一目惚れした少女に声を掛けようとするも、場違いな魔王服を咎められ、クラスメイトの瑛美からファッションを学ぶことになり!?

ファンタジア文庫より2017年10月20日に発売となった『魔王は服の着方がわからない』のトークセッションには著者の長岡マキ子先生、イラストレーターのU35先生、企画協力と監修を担当したファッション本作家でファッションアドバイザーでもあるMB先生、そしてファンタジア文庫統括編集長の森井氏が登壇した。天候は生憎の雨模様だったものの、会場には多くのファンが駆け付け、大きな拍手と共にトークセッションはスタートした。

話はまず、『魔王は服の着方がわからない』の立ち上げの経緯について森井氏とMB先生が振り返った。森井氏はMB先生が監修するコミック『服を着るならこんなふうに』を読み、漫画で洋服のおしゃれを指南する革新的な発想に衝撃を受けてオファーしたことを明かした。これにはMB先生も「洋服のことを漫画やライトノベルで教えるなんてことをよく思いつくなと驚きしかない」と笑いながら語り、「ストーリーを楽しんで、読み終えたらなんとなく洋服に詳しくなっちゃったという状態を目指して取り組んだ」と作品への想いを口にした。また、学生時代から『スレイヤーズ』などのライトノベルにも馴染み深いことを明かし、おしゃれに詳しくない人達に洋服の素晴らしさを伝えたいという自身の活動とも大きくリンクすることにも言及。ライトノベルの読者層が中高生であることにも触れ、学生だからこそ得られる華やかさへのヒントにも繋がれば、とも語った。

※左からMB先生、長岡マキ子先生、U35先生、森井氏

続いてお話は執筆を担当した長岡マキ子先生と、イラストを担当したU35先生に言及。森井氏はお二人にオファーした経緯について、企画には女性の視点も重要だと感じていたことを明かした。長岡マキ子先生は「この企画は誰でもやってみたいと感じる企画だと思うし、そんなお話をいただけてすごく嬉しかった」と語り、U35先生も「ライトノベルのお仕事はいくつも経験していますが、ここまで身近で実用的な作品は初めてだと感じました。やってみたいという思いも強かったです」と、非常に高いモチベーションで作品制作に挑んだことを語った。MB先生も「凄くいいメンバーが揃ったと思います」と語り、初稿を確認した時のクオリティの高さと、服のディティールや質感もしっかりと表現したイラストに終始感心しきりだったことを明かした。また作品の注目点について聞かれると「ストーリー性が漫画で携わっている作品よりも強いので、シチュエーションによる洋服のスタイルについて言及できている」とMB先生。ひょっとしたら漫画よりも身近に感じられ、実用的かもしれないとも語った。

さらに話題はMB先生が理論的なファッションについて発信するようになった着想点に及んだ。センスや気分で語られることも多いファッションについて、もうちょっと数学的に話せないかと考えたことが始まりだったという。おしゃれな人にしかおしゃれな情報が回らず楽しめない閉鎖的な環境はもったいないとして、10年に渡り理論を構築。作品制作の過程でMB先生の理論に触れた長岡マキ子先生やU35先生も、服の見方が大きく変化したことを驚きと共に語った。最後にMB先生はおしゃれには「物の価値」と「着こなし」の二軸があり、片方だけでおしゃれになれるわけではなく、組み合わせで変化するのだとお客さんにもアドバイス。お客さんと一緒になってしきりに頷く登壇者たちへも笑みをこぼしながら、作中でも触れているのでぜひ読んで参考にしてもらいたいと締め括った。

トークセッションが終了するとMB先生のトークショーではお馴染みというじゃんけんプレゼント企画で大いに盛り上がり、その後サイン会がスタート。参加したお客さんと会話を弾ませながら、トークセッションとサイン会のどちらも大盛り上がりとなった。

※サイン会の様子

そしてイベント終了後、登壇した3名の先生方よりお話をうかがうことができた。トークセッションでは触れられなかった点など、一歩踏み込んでお話を聞いた。

――まずはトークセッションとサイン会お疲れ様でした。

MB長岡U35:ありがとうございました。

――トークセッションを終えてお客さんの反応はいかがでしたか。

MB:僕はいつも通りな感じでした(笑)。強いて言うなら客層は少し違ったかもしれません。

長岡:今日はMBさんとU35さんのファンの方が多いと思っていたので、私は気楽に行こうと思って最初から最後まで気楽でした(笑)。

MBU35:いやいやいや(笑)。

長岡:おかげで珍しく緊張しませんでした!

U35:私はトークショーなどで人前に出ることがほとんどないので、みなさんの顔を頑張って見ようと。すごく雰囲気も良くて、私もお客さんと一緒になって聞き入ってました(笑)。

――サイン会の最中もお客さんと個別にお話されていたかと思いますが、どんなお話をされていたんですか。

MB:僕はメルマガを読んでますとか、これ買いましたという報告系が多かったですね(笑)。イベントによく足を運んでいただいている顔馴染みの方も結構いらっしゃいましたので。

U35:私は服をきっかけにイラストを見てもらって、可愛かったですと言ってもらえたりして嬉しかったです。普段とは違う層のお客さんから反応をいただけることはほとんどないので、直に声を聴けて良かったです。

長岡:さっきのお話と同じく二人のファンがお話されているところに脇から入るような形でトークしてました。

――長岡先生が自虐に過ぎる気がしないでもないのですが、具体的にはどのような感じでお話を?

長岡:MBさんの制作されたシャツを着てきましたって報告をされている方の横から「それ格好いいっすねえ!」みたいな。

一同:――(笑)。

――では少し作中と絡めた質問を。本作には日本に関する知識の偏りが酷い魔王が登場しますが、みなさんもそれぞれ知識が偏らないように努めていることがあれば教えてください。

MB:僕はもともとファッションバカで洋服のことしか知らないので最初から偏りはあるんですけど、服のジャンルなどで偏りが出ないよう気を付けてはいます。単純に好きだから、関係するものをすべて追いかけているというのもあるので、あまり工夫っぽい工夫はないかもしれないです。

長岡:私は知識の偏りがむしろ足りていないと感じるので、そういう専門性のようなものはむしろ欲しいです。作家をやっているとそういう部分が強みになることも多いので。と思いながら器用貧乏でやらせていただいてます(笑)。

U35:私もイラストメインで、ファンタジーだったり、現代の学園ラブコメだったりで、服装のデザインも変わったりするんですけど、イラストとして古く見られないように常にアンテナは張っているつもりです。

――先ほどの質問と少し関連するのですが、流行りや廃りも一定の周期があるように感じるのですが、ファッション、ライトノベル、そしてイラストとそれぞれの観点で感じているものがあれば教えてください。

MB:ものすごく難しい話なのですが、基本的にファッションでは去年と同じものってほとんどないんです。裾幅だったりウエストの位置だったり、それこそ数センチ単位でちょっとずつトレンドにあわせて変化してるんですよ。洋服のトレンドの周期についてはよく聞かれるんですけど、本当に厳密に言えばリアルタイムで変化しています。ファッションは相対評価なんで、みんながみんな同じものを着ていると価値は自然と落ちていくんですね。増えれば増えるほど落ちていくから、おしゃれな人は次に行こうとする。洋服って生き物と一緒なんです。とはいえ大枠はあって、昔は10年周期だったんですけど、今は情報伝達の速度がはやくて3~4年でころころ変わっています。圧倒的に早くなりました。昔は1枚の写真から製品を起こすって割と難しいことだったんですけど、今は海外のコレクションのショーで発表されたデータがあっという間に日本にもやってきます。そのデータで洋服も簡単に作れちゃう。なので、とんでもなく新しいトレンドの洋服が、発表の何週間後に安価で販売されることも普通にあります。トレンドの回り、そして消費が加速したというのはありますね。

――リアルタイムに新しいものが生まれ、そして追いかける。それを繰り返しているんですね。

MB:着こなしもあるので、ある程度トレンドをカバーすることもできるんですけど、その兼ね合いも人それぞれかなと。好きな人は毎回お金をかけて買うかもしれないけど、そういう人達ばかりじゃない。5年に1回お金をかけて、それまでは着こなしでカバーもできるわけで、ファッションとの付き合い方も人それぞれだとは思います。

――続いてライトノベルでは一人の作家として、どのように感じていますか。

長岡:トレンドでいうと私が『中の下!』という作品でデビューした当時は、学園ラブコメが全盛の時代でしたね。その後かつてほどの勢いはなくなってしまったかもしれませんが、学園ラブコメっていうジャンルは生きているわけです。基本的には完全に淘汰されて次の流行に移ることはないのもライトノベルなのかなと思います。テーマによって流行が長引いたり早く終わったりすることもあると思うんですよね。そういう意味では異世界も随分長いです。なので、結論から言うとそのあたりは作家にはよくわからないのかなと(笑)。ただ私は学園ラブコメしか書けないんで、次の流行が回ってくるのを密かに待ってます(笑)。

――学園ラブコメも勢いがないわけではないと思いますよ。

長岡:一時期が流行りすぎたんじゃないかなと。それからすごく多様化しているんだと思います。

――続いてイラストについて、U35先生はどのように感じていますか。

U35:イラストの流行り廃りは見る人によって違いもあるので難しいところではあるんですけど、すごく流行っているゲームの絵柄をみんなが描いてトレンドになることはあると思います。古いと感じられるような要素が少しずつ減っていって、そこに今の流行が付け足されていくイメージでしょうか。それこそベテランの方でも時代の流れにあわせて変化している方も多くいらっしゃいますよね。時代が変われば見てくれる人も変わるので、受け入れられる絵もどうしても変化していくのかなと。なので、私も変化させず残すところと少しずつ変化させるところと、非常に気を付けて描いています。

――なるほど。数年単位で見比べると大きく見える変化も、少しずつ変化し続けたものの集大成なんですね。

U35:そうですね。もともと見てくれていたファンにとっては嫌なことかもしれないんですけど、受け入れられる絵はどうしても「今」を見なくちゃいけない。一番は消費者に届けることなので、変化することも大事だと思います。

――どのジャンルも変化という面において大きな差はないのかもしれませんね。それでは続いて、本作で印象に残っている、またはお気に入りのキャラクターがいれば教えてください。

MB:全員印象に残っていますけど、僕は真野央大くんですかね。U35先生には写真からイラストを起こしていただいている点もあって、写真がイラストになると良い意味でこうなるんだなと。作中では真野央大くんが、自分のオススメしている服装をしている分身でもあるので、とても感慨深いですね。

※指南され服装が変化していく真野央大

長岡:私は強いて言うなら母さん役のマリルダです。役回りにとても頭を使っているキャラクターなので、印象に残っています。

U35:キャラクターデザインを担当していて、特に誰かと問われれば白石乃音ちゃん。純粋に可愛いという点と、女の子の理想像のひとつとして描いてます(笑)。

※U35先生が女の子の理想像と語る白石乃音

――第1巻のラストには新キャラクターも登場します。第1巻が発売したばかりですが、予定している第2巻の見どころなども教えてください。

MB:第1巻は物語としてもハウツーとしても最初の巻なので、洋服の話もベーシックな話題が多かったのですが、第2巻からはシチュエーション別のようなTPOにも触れていくことになると思います。第1巻から更に半歩進んだオシャレに触れていくことになると思いますのでご期待ください。

長岡:ラブコメの面からいうと、恋愛模様にちょっとした変化が起こるかもしれません。ぜひご注目ください。

U35:私は第2巻のお話を詳しくは聞いていないんですが、イラストを全力で頑張りたいと思います(笑)。

――それでは最後に本作を読んでみようと思っている方へ、メッセージをお願いします。

MB:小難しい話はさておき、単純に面白いラノベを読んで、気が付いたらオシャレになっている。ここに尽きると思います。長岡先生の書かれているストーリーは、僕的にはハイクオリティスタンダードだと思うんですよ。うまくまとまったスタンダードなお話で、誰もが抵抗なく読めるし、面白いと思ってもらえると思う。ただでさえ面白いのにプラスαでオシャレになれる。これもう全人類手に取った方がいいんじゃないかなって僕は思ってるんですよ(笑)。こんなアプローチをしている作品は他にないので、とにかく手に取ってもらえればと思います。

長岡:MBさんとまったく同じ意見ですね(笑)。MBさんのファンの方でこの作品を読んでみようと思っている方も多いと思うんですけど、既に知っている理論が登場したりもするので、そういう方にはぜひストーリー側に集中していただきたいです。そうじゃない方はストーリーを読んでいるうちにオシャレになれる。どちらの方にも楽しむという気持ちで読んでもらえたらと思います。

U35:構えなくてもファッションを学ぶことができる、読んでいくうちに楽しみながら学べるという点はとても重要で大事な部分だと思います。洋服に興味がないという方や、洋服に少しでも怖いというイメージを持っている方にも、全然怖いことはないのだと知ってもらうきっかけにもなるラノベだと思います。ぜひ読んでみてください。

――お客さんが巻数を経るごとにどんどんオシャレになっていく様子が見えると面白いかもしれないですね。

MB:そうですね、そういうトレンドを巻き起こしたいですよね。これからはファッション誌を読む前に『魔王は服の着方がわからない』から入っていただければ(笑)。

――本日はありがとうございました。

<了>

トークセッション&サイン会も開催され、第1巻が発売中の『魔王は服の着方がわからない』より、長岡マキ子先生、U35先生、MB先生の御三方にお話を伺いました。物語を楽しみながら実用性の高いファッションノウハウが身に付く異色の本作は必読です。第2巻の発売も楽しみにしましょう。

©長岡マキ子MBU35

[関連サイト]

ファンタジア文庫公式サイト

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魔王は服の着方がわからない

長岡マキ子(著), U35(イラスト)

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