【GW特別企画】師走トオル×三河ごーすと×みかみてれん「ライトノベル作家のサバイバル鼎談」

【GW特別企画】

ライトノベルは毎月150冊以上の新刊が発売されており、現在もその刊行点数は増加の一途を辿っています。日々多くの作品がしのぎを削り合い、スマートフォン向けゲームなどに市場を奪われているなどとも言われている中、打ち切りという憂き目にあっている作品の数も少なくはありません。そんな折、自著の続刊が危ぶまれた作家の一人である師走トオル先生より、こんな企画の持ち込みがありました。「今、私を含めた多くの作家さんが生き残りをかけて打ち切りと向き合ったり、様々な挑戦・試行錯誤をしています。そんな状況の一端を発信できないでしょうか」。様々なSNSの台頭によって、作品とファン、ひいては作家とファンの繋がり方も多様となっている現在、作家はどんなことを考えながら自身の作品や市場と向き合っていけばよいのか。現在の市場において、独自の視点や活動で成果をあげている三河ごーすと先生とみかみてれん先生も交えての意見交換会の模様をお届けします。

【参加者紹介】


師走トオル

第二回富士見ヤングミステリー小説大賞にて準入選となり作家デビュー。代表作にシリーズ累計50万部を突破した『火の国、風の国物語』、『僕と彼女のゲーム戦争』などがあり、現在はファンタジア文庫より『ファイフステル・サーガ』、『フリーランスが知らないと損する お金と法律の話』などを刊行している。本記事企画の発起人でもある。


三河ごーすと

第18回電撃小説大賞にて「銀賞」を受賞して作家デビュー。代表作にシリーズ累計30万部を突破する『自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ?』、『理想の娘なら世界最強でも可愛がってくれますか?』などがあるほか、GA文庫より発売したばかりの『友達の妹が俺にだけウザい』も絶好調で、発売後即重版となっている。


みかみてれん

『勇者イサギの魔王譚』にて作家デビュー。少年エース×カクヨムのコラボ企画「漫画原作小説コンテスト」にて『父さんな、デスゲーム運営で食っているんだ』が「大賞」を受賞。月刊コミックキューン誌にて漫画原作『おとめバレ』を連載しながら同人誌の個人レーベル「みかみてれん文庫」を展開しており、『女同士とかありえないでしょと言い張る女の子を、百日間で徹底的に落とす百合のお話』がAmazon Kindleライトノベルランキングで1位に輝く。


――師走トオル先生、三河ごーすと先生、みかみてれん先生にお集まりいただきました。お忙しい中、ありがとうございます。

師走:ということで、新宿にある某喫茶店よりお届けします。師走トオルです。

三河:三河ごーすとです。

みかみ:みかみてれんです。すごい雪崩式に始まるんですね(笑)。

――今回は師走先生より企画を持ち込んでいただいて、本企画が実現することになりました。あらためて御三方の関係について教えてください。

師走:私と三河さんが最初に知り合ったのって何でしたっけ? 出版社の忘年会?

三河:たぶん。あとはシャドウバースだったと思います。師走さんがTwitterでいろんな作家に対戦しようと声をかけていて、私もその一人だったとか、本当にそんなレベル(笑)。

師走:そういえばそうでしたね(笑)。三河さんがシャドウバースやってるのをTwitterで見かけて声をかけて。本当にそんな感じでした。今はそれぞれ仕事の紹介をしあったりもしてますね。

三河:お互いにライトノベル業界が、スマホゲーム業界や近隣業界との競争にさらされているということを知っていて、ゲーム界隈のアンテナを伸ばしあいましょうということで、情報交換もしてました。

師走:今でこそライトノベル作家がゲームシナリオのお仕事を頂くことは珍しくありませんが、三河さんはそれ以前から積極的にゲーム業界で動いていて、当時は「これは見習うべき」と思ってました。実際それからしばらくして、私もゲームの仕事をお受けすることが多くなったんですよね。今思い返しても三河さんの影響は大きかったです。先輩とか後輩とか関係なく、時流が見える人に倣うべきと思ってますし(笑)。

一同:――(笑)。

師走:それは置いておくとしても、今のラノベ飽和時代において、ヒット作を連発している三河さんには是非来てもらうべきと思って声をかけました。

三河:そんな大袈裟な(笑)。

師走:大袈裟じゃないですよ、間違いなく(笑)。それで三河さんに企画参加を打診して、二人っていうのもなんだからもう一人くらい呼びたいよねっていう話をしたんですよね。

三河:そう。で、僕の方からみかみてれん先生はどうだろうって。最初に知り合ったのって何でしたっけ。

みかみ:うろ覚えなんですけど、作家間で映画を観に行こうという話があって、それに誘われて付いていったら三河さんがいたのが始まりだった気がしますね。

三河:まあ、いろいろあって一緒に遊びに行くことがあったという(笑)。で、みかみさんに声をかけたのは、みかみてれん文庫で百合ものを出してとても反響を呼んでるじゃないですか。これはニッチ戦略だと思っていて、今の時代にめちゃくちゃ合っている戦略だと思ったんですよ。作家としての独自戦略で活躍している人で一番に思い浮かんだのがみかみさんだった。

みかみ:ありがたい話です。正直、こういった鼎談というかインタビューは初めてだったので、三河さんからお話をもらった時にどうしようかと考えたんですよね……。わたしはしっかりと理論を立ててやっているわけではないので、面白い話をできるのだろうかっていう不安もありましたから。ただ、最終的に決めたのは、三河さんがいるんだったらこの企画は面白くなるに違いないという信頼感です。

三河:どういうことなの……。あんまりハードル上げないで!(笑)。

みかみ:やっぱりいち業界人として、三河さんにはすごい注目していますので……。

師走:そうそう。だから私も三河さんは真っ先に候補にあげたんですよ。

みかみ:そして師走さんとは初めての顔合わせですので、失礼のないように気を付けたいと思います!

師走:とんでもありません、むしろお会いしたこともないのにご参加いただけてありがたい限りです。みかみてれん文庫の話は私もすごく気になっているので楽しみにしてます。

みかみ:頑張ります(笑)。

師走:ということで、お二人には今回私が企画提案したこの議題にお付き合いいただきたければと思ってます。こちら!

現在、ライトノベルというひとつの分野を見ても、年間で2,000冊以上という凄い数が市場に出ている。たくさんの作品が出ると買う側も何を買ったらいいかわからず、既存の人気作が売れる一方で、多くの新作が本屋に並んでいることさえ知られないまま消えていく。ネットでもたびたび紙の書籍が発売初週に売れずに早々に本屋から消え、たとえ続刊が出せても初版部数が激減し、結果として打ち切りとなってしまうことが度々話題になっている。「そういう時代」と言ってしまえばそれまでだが、今、この間も新刊は出続けていて、作家も生き残りをかけて様々な活動をしている。そこで作家としての生存戦略であったり、打ち切りを回避して続刊へと繋がった成功例を紹介したい。その上でもし「興味深い、面白そう」と思えるものがあれば、ぜひ糧にしていただきたいと思うし、たとえそうでなくとも知ってもらうことにも意味があってほしいと思っています。

三河みかみ:企画意図が素晴らしいですね。

師走:Twitterでも発信したんですが、私自身がこの例に漏れず、今やってる『ファイフステル・サーガ』というシリーズの4巻が出せるかどうかの瀬戸際だったんですよ。ラノベニュースオンラインでインタビューしていただいたり、ラノオンアワードでも高い評価をいただいたり、取り上げてもらう機会はあったんですが、最終的に力およばず紙の書籍が伸びませんでした。

三河:でも電子書籍は悪くなかったんですよね。というかシリーズもそんなに悪くないんじゃ?

師走:結果的に続刊が危うい、という状況だったので「そうなんです」とは言い辛いんですが、編集部からも「電子書籍の売り上げは昨年の新作の中でもトップクラス」だとはうかがっていました。余談気味ですが「電書の売り上げは紙の10~20%」なんて説がありますが、このパーセンテージは年々増加傾向にあり、紙より電書が売れてる例も最近は多くなっています。ですが現状のシステムとして、初版部数が紙ベースで売れた数字を基準とした勘定にならざるを得ません。そうなると初版印税も減少して、編集部的にはもちろん作家の生活という観点からも打ち切りの危機に陥ってしまうことになります。

みかみ:なるほど。

師走:かといって「電書じゃなくて紙で買ってください」と申し上げたくはないんですね。電書の利便性は素晴らしく、個人的にも大好きですし、スマホで好きなことがいつでもどこでもできる今の時代、紙の本という形で「買うタイミングや媒体」まで読者の皆さんにお願いするのは非常に心苦しいですし。ただ結果的に『ファイフステル・サーガ』は私が考える損益分岐点を突破しまして、編集部との相談の結果、シリーズ続刊が決まったという経緯があります。そこで、どうして損益分岐点を突破できたのかという事例を参考例として伝えられたらいいなって思ったんですよね。ただ私の事例だけじゃなんの参考にもならない可能性もあったので、三河さんとみかみさんをお呼びしました。

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