独占インタビュー「ラノベの素」 日ノ出しずむ先生『高校全部落ちたけど、エリートJKに勉強教えてもらえるなら問題ないよね!』

独占インタビュー「ラノベの素」。今回は2023年11月2日に講談社ラノベ文庫より『高校全部落ちたけど、エリートJKに勉強教えてもらえるなら問題ないよね!』が発売された日ノ出しずむ先生です。第15回講談社ラノベ文庫新人賞にて「優秀賞」を受賞し、満を持してデビューされます。素直でおバカで明るい主人公を取り巻く、「なんのために勉強をするのか」をテーマにした本作。ギャグコメディとしても見どころの多い作品内容についてはもちろん、登場するキャラクターについてなど、様々にお話をお聞きしました。

 

 

高校全部落ちたけど、エリートJKに勉強教えてもらえるなら問題ないよね!

 

 

【あらすじ】

中学3年生の海地しげるは高校受験のため電車で会場へ向かう途中、霧島澪音という少女と出会う。彼女もまた受験生で、超エリート高校である全能寺学園を受験するのだという。澪音が降車した直後、しげるは澪音が受験票を落としていることに気づき、彼女の後を追って電車を降りる。その結果、彼は試験に間に合わず、”高校浪人”が確定。しげるは受験勉強に集中するため、親戚が経営するアパートに下宿することに。アパートの大家の海地巫女子や、名門中学に通う秀才少女・神尾まゆりらとともに騒がしい浪人生活をスタートするが、ある日、隣室に無事に高校に受かった澪音も引っ越してきて……! 第15回講談社ラノベ文庫新人賞<優秀賞>はお勉強ラブコメだ!

 

 

――それでは自己紹介からお願いします。

 

日ノ出しずむと申します。九州の田舎のほうに住んでいます。ラノベの公募には18、19歳くらいから応募するようになりました。自分には幼馴染がいるんですけど、自分が公募へと応募するようになってから、その幼馴染も「自分も応募する」と言いだしまして、その結果、幼馴染の方が先にデビューしてしまい、「あれ?自分、結構長く頑張ってきたのに」と長らく思ったりもしていました(笑)。好きなことは『ウマ娘』が流行りだしてから、結果は芳しくないんですけどリアルの競馬をやるようになったのと、ネット麻雀も好きですね。苦手なものはコミュニケーションがあまり得意ではないのと、絵を描くことも得意ではないです。

 

 

――高校卒業の前後から公募への応募を始められたとのことですが、小説執筆のきっかけはなんだったのでしょうか。

 

自分は4、5歳の頃から漫画っぽいものを描いていたんですよ。もちろん大したものではなくて、円形に顔を描いて手と足を生やしたようなものだったんですけど、そこでどうにも絵が苦手だということが判明し、小学生になってからは演劇やお芝居をやるようになりました。ただ、これも高校生の頃に、自分は大人数で何かを作り上げていくことが向いてないのではと思うようになり、最終的に一人でもやれる小説を書き始めるようになったのがきっかけだったと思います。部活動の演劇では脚本もやったりしていたので、文章の執筆経験自体は活きていたのかなと思います。

 

 

――漫画、そしてお芝居と経験をされてこられたわけですが、ライトノベルにはどこで触れられたのでしょうか。

 

高校時代に友人が読んだりしていたので、自分も読んでみようと思ったのがきっかけでしたね。最初に『涼宮ハルヒの憂鬱』を読んで、これは面白いと。それから、『イリヤの空、UFOの夏』という作品に出会ったんです。読んだ瞬間、これは自分には書けないと思わされてしまったことをよく覚えています。これはあくまで、いち読者だった高校時代のお話なんですけど、いろんなライトノベルを読んで、自分も頑張ったら書けるんじゃないかっていう気持ちがあったんです。でも『イリヤの空、UFOの夏』を読んだ時、その気持ちが完全に打ち砕かれたわけです。でも、この時にこの作品を超えることが自分の中での夢と目標になった気もしますね。

 

 

――ありがとうございます。それではあらためて、第15回講談社ラノベ文庫新人賞「優秀賞」受賞おめでとうございます。まずは率直な感想からお聞かせください。

 

担当編集の方から連絡をいただいたんですけど、最初はやっぱり信じられなかったです。第15回には2本の作品を送っていて、今回受賞させていただいた『高校全部落ちたけど、エリートJKに勉強教えてもらえるなら問題ないよね!』ではない作品の方が、感触としては良かったので、まさかこっちが受賞するとは思っていませんでした(笑)。そんなことを思いつつも、やっぱり嬉しい気持ちでいっぱいでしたね。

 

 

――ちなみに講談社ラノベ文庫新人賞に応募した理由はなんだったのでしょうか。

 

公募への応募は何年かずっといろんなところに応募していたんですけど、一次選考を通過するかしないかの鳴かず飛ばずな状況が続いていました。そんな時に講談社ラノベ文庫新人賞では二次選考を通過すると担当編集さんがついてくれるという仕組みがありまして、ひとまずここを狙ってみようと考えたんです。それから二次選考を通過するタイミングがあり、現在の担当編集さんについていただいたところから、講談社ラノベ文庫新人賞への応募が中心になっていきました。

 

 

――ありがとうございます。受賞後は先にラノベ作家としてデビューされたという幼馴染の方へ連絡はされたんですか。

 

すぐ連絡して、追いついたよじゃないですけど、自分もそこまでいったぞと伝えました。もともと自分の方が先に書き始めていたわけなので、面目は保たれたわけですね(笑)。同じ講談社ラノベ文庫新人賞の第9回で、『遥かなる月と僕たち人類のダイアログ』でデビューした深雪深雪先生なんですけど(笑)。

 

 

――幼馴染の方のデビューも同じ公募からだったんですね(笑)。そんな深雪深雪先生は、日ノ出先生の連絡にはどのような反応をされていましたか。

 

「よかったじゃん」みたいな(笑)。深雪深雪先生が受賞した時、自分はもっと喜んだと思うんですけど、ちょっと温度差があったのかなって思いました(笑)。

 

 

――なるほど(笑)。幼馴染と2人でラノベ作家になるというお話自体が、もはやラノベですらありますね。幼馴染の方とは、それこそ家族ぐるみで過ごしてこられたりしたんですか。

 

そうですね。家も近所で幼稚園と小学校が一緒で、家族間で交流もありました。中学と高校はそれぞれ別の学校に通っていたんですけど、顔は合わせていましたし、作家として再び交わることになりました(笑)。

 

 

――ありがとうございます。それでは受賞作『高校全部落ちたけど、エリートJKに勉強教えてもらえるなら問題ないよね!』がどんな物語か教えてください。

 

本作は高校受験に失敗した男の子が、頭も良くて可愛い女の子に勉強を教えてもらうというお話です。自分自身、小中高と勉強をしなさいと言われ続けてきた中で、どうして勉強をするんだろうっていう思いがずっとありました。不登校や引きこもりになってしまって、学校に行けず勉強ができていない人たちもいると思うんです。そんな人たちが幸せになる方法ってないのかなと考えたのが、この物語を考える上で最初に想い抱いたことだったと思います。作中でも主人公が「なんで勉強するんだろう」と悩むシーンを盛り込んだりしていて、自分なりではあるんですけど、「こういうことで勉強をした方がいいんだろうな」って、考えながら書いた作品でもあります。

 

高校全部落ちたけど、エリートJKに勉強教えてもらえるなら問題ないよね!

※なぜ勉強をするのか、そんなテーマにも迫るラブコメディ

 

 

――物語の成り立ちをうかがうと、ラブコメの要素はありつつちょっと固めな作品というイメージを抱く方もいるのかなと思うのですが、実際はコメディてんこ盛りですよね(笑)。

 

そうですね(笑)。これにはいくつか理由があって、本作と一緒に送ったもうひとつの作品が、暗くて重たいセカイ系の物語だったんです。そちらを先に書いてから、この作品を書き始めたこともあって、できるだけ明るく笑えるお話にしたいと思っていたんです。それと本作の執筆に際しては、自分がすごく好きだった2010年前後の青春ラブコメを題材にした作品を意識したところもありました。それこそ『僕は友達が少ない』や『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』といった、あのあたりの作品の雰囲気やテンション感を大切にしました。

 

高校全部落ちたけど、エリートJKに勉強教えてもらえるなら問題ないよね!

※笑えるシーンが随所に盛り込まれている点も魅力のひとつ

 

 

――なるほど。私自身、本作を拝読させていただいた際、ちょっとした懐かしさを彷彿とさせる物語の雰囲気を感じていたのですが、2010年前後の青春ラブコメを意識されていたんですね。

 

はい。自分もあの頃に戻りたいという気持ちを抱きながら執筆しました(笑)。

 

 

――本作はコメディ寄りのラブコメディで、先ほどおっしゃられたもうひとつの応募作は重めのセカイ系とのことでした。これまでの応募作も同様のジャンルで執筆することが多かったのでしょうか。

 

自分に一番の衝撃を与えた『イリヤの空、UFOの夏』の影響が本当に大きくて、ライトノベルとは『イリヤの空、UFOの夏』のような物語であると思い込んでしまったというか、刷り込まれた部分はかなり大きかったと思います。それこそちょっと暗めな世界に、身動きの取れない女の子がいて、でも自分には何もできないという無力感に苛まれる主人公がいて……という物語を本当に何本も書いてきました。でも書き続けていくうちに、どうもそれじゃダメらしいというのがわかってきたんですよね(笑)。セカイ系の流行った2000年代から、自分も次の世代へ行かないといけないと思うようになり、2010年代前後のラブコメも意識したりと、セカイ系以外の物語も執筆していくようになりました。そういった考え方の変化も今回の受賞に繋がったのかなと思います。

 

 

――では続いて本作に登場するキャラクターについて教えてください。

 

主人公の海地しげるは、受験に失敗して女の子に勉強を教えてもらおうという、もともとの物語の骨子ありきで考えたキャラクターでもあります。なので、どうしようもなく間の抜けている主人公にしようと考えて執筆しました。できるだけ頭のよさそうなことは言わず、それっぽいことを言ったとしても、どこか的がズレていたりします。変に格好をつけない素直なキャラクターを意識しました。みなさんにはぜひこの主人公を面白く読んでもらえたらなと思います。

 

海地しげる

※愛すべき素直なおバカ・海地しげる

 

ヒロインの霧島澪音は、主人公が高校浪人となる理由を作ったキャラクターでもあります。自分が今までに出会った、頭はいいんだけどどこか抜けている女の子を、こういう子いたなあって思いだしながら書きました(笑)。主人公にとにかく甘いヒロインであってほしいなと思いながら書いています。

 

霧島澪音

※頭はいいのにどこか抜けている霧島澪音

 

神尾まゆりは中学生の女の子で、執筆に一切苦労を感じないキャラクターでした。いつも斜に構えていて、主人公のことを常に「どうしようもないですね」と言っているキャラクターなんですけど、とにかく書きやすかったです。主人公に一見冷たく、でもまんざらでもないぞっていう、それこそ2010年前後にいたツンデレです。個人的にもここは外せませんでした(笑)。

 

神尾まゆり

※年下のツンデレ少女・神尾まゆり

 

海地巫女子は主人公の叔母です。この作品を執筆していた当時、個人的にだらしないお姉さんがマイブームになっていたんですよね(笑)。執筆のきっかけはそういった理由ではあったんですけど、いざ書いて読み返してみると、自分が大人になったら「こうなっていたい」という、理想の将来像に近い感じになっていました。巫女子姉さんは不労所得で生活しているキャラクターなんですよ。自分も不労所得で生活したいと思っていたので、こんな感じになれたらいいなって思います(笑)。

 

海地巫女子

※主人公を養うと公言する海地巫女子

 

 

――本作は紹介していただいた4人のキャラクターを中心に描かれていくわけですが、会話劇のテンポのよさと、読みやすさも大きな特徴だなと感じました。

 

ありがとうございます。会話劇については、当時高校生ではありましたけど、演劇やお芝居で脚本を書いていた経験が活きているんじゃないかなと思います。どんなテンポで喋ればお客さんに伝わりやすいか、喜んでもらえるのか、かなり考えていました。また、会話劇の面で触れると、先にデビューした深雪深雪先生の『遥かなる月と僕たち人類のダイアログ』も相当意識していました。お前がこういう風にやるなら、自分はこういう風にやるぞ、みたいな(笑)。

 

 

――ありがとうございます。そして、書籍化に際してはイラストをかれい先生が担当されました。あらためてビジュアルを見た時の感想や、お気に入りのイラストについて教えてください。

 

思い通りというか、思った以上……いや、想像以上のイラストを描いていただいたと思っています。自分が文章を書いている時は、なんとなくこんな感じの子っていう、非常にぼんやりとしたイメージだったんですけど、イラストとして描いていただいたことで、こんなキャラクターだったのかという大発見でもありました。自分のイメージを遥かに超えて、いいデザインだなって思います。本当にどのキャラクターもこれ以上ないくらいに完璧だったんですけど、特に神尾まゆりがお気に入りというか、自分の中ですごく好きなデザインだなって思います。

 

高校全部落ちたけど、エリートJKに勉強教えてもらえるなら問題ないよね!

 

あとは挿絵で描かれている、主人公がまゆりに蹴られている一枚もいいなと思いますし、口絵も全部よかったです。とにかく本当に良いイラストばかりなので、ぜひみなさんにも見ていただけたらなと思います。

 

高校全部落ちたけど、エリートJKに勉強教えてもらえるなら問題ないよね!

※かれい先生による魅力的なイラストは必見

 

 

――あらためて、著者として本作の見どころや注目してほしい点はどんなところでしょうか。

 

見どころは会話の部分、主にギャグでしょうか。何も考えずに笑ってほしいと思います。主人公が受験を諦めたというスタンスから、段々と勉強することになってゆき、誰かに教えてもらうことに対して前向きになっていく姿を面白おかしく描いているので楽しんでいただきたいですね。そして本作については、特に中学生や高校生に読んでほしいなと思っています。学校に行きたくないとか、なんで勉強をしてるんだろうとか、モヤモヤしていることがある学生に読んでもらって、ちょっとでもそういう気持ちが晴れてくれたら嬉しいなって思います。そして2010年代前後のラブコメに思い入れのある方や好きな方、自分と同年代で懐かしい気持ちを感じてもらえる方に読んでもらって、当時の気持ちを思い出しながら楽しんでもらえたらなって思います!

 

 

――今後の野望や目標があれば教えてください。

 

第一に、できるだけたくさんの方に本作を読んでいただけたらなと思います。そして先程も触れましたが、中高生の方に楽しんでもらえたらなと思いますね。そして自分も最終的には、巫女子姉さんみたいに不労所得で生きていきたい人間ではあるので、ゆくゆくは書けば書く程バカ売れみたいな作家になりたいです!(笑)。そうなれるように、どんなものを書いたらいいのかと悩みながら、その第一歩を見つけることが、近々での目標になるのかなと思います。まずは頑張って2巻に繋げていきたいです!

 

 

――最後に本作へ興味を持った方へメッセージをお願いします。

 

とにかく笑えるお話として書いていますので、読んで笑って、楽しい気持ちになって、少しでも嫌なことを忘れて、人生って意外とどうとでもなるよって思ってもらえたら嬉しいです。自分も作家としてデビューしたばかりなので、今も作家志望で頑張っておられる方もたくさんいると思うんですけど、自分も長い間悩んで、書き続けてきた結果、こうやって選んでいただくことができました。なので、諦めずにお互い頑張りましょうっていうことを伝えたいです。本作は2023年に刊行されたラブコメの中で、一番作者がバカになって書かれた作品だと思うので、すごく笑えるんじゃないかなと思います。ぜひよろしくお願いします!

 

 

――本日はありがとうございました。

 

 

<了>

 

 

思わぬ理由で高校浪人をすることになった主人公と、そんな彼を取り巻くヒロインたちのドタバタ劇を綴った日ノ出しずむ先生にお話をうかがいました。「なんのために勉強をするのか」というテーマはありつつも、笑って楽しく読める1冊ではあることは間違いありません。『高校全部落ちたけど、エリートJKに勉強教えてもらえるなら問題ないよね!』は必読です!

 

<取材・文:ラノベニュースオンライン編集長・鈴木>

 

©日ノ出しずむ/講談社 イラスト:かれい

kiji

[関連サイト]

講談社ラノベ文庫公式サイト

 

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高校全部落ちたけど、エリートJKに勉強教えてもらえるなら問題ないよね! (講談社ラノベ文庫)

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