独占インタビュー「ラノベの素」 滝浪酒利先生『マスカレード・コンフィデンス 詐欺師は少女と仮面仕掛けの旅をする』

独占インタビュー「ラノベの素」。今回は2023年11月25日にMF文庫Jより『マスカレード・コンフィデンス 詐欺師は少女と仮面仕掛けの旅をする』が発売された滝浪酒利先生です。第19回MF文庫Jライトノベル新人賞にて「最優秀賞」を受賞し、満を持してデビューされます。あらゆる手口で人々から金を巻き上げてきた詐欺師の主人公と、彼の正体を突き止めた少女による波乱万丈のロードムービーを描く本作。主人公の腕力でも知力でもない「強さ」や、「嘘をつくときのコツを教えよう。——真実だけを、話すことだ。」というキャッチコピーの誕生秘話など様々にお話をお聞きしました。

 

 

マスカレード・コンフィデンス 詐欺師は少女と仮面仕掛けの旅をする

 

 

【あらすじ】

ライナス=クルーガー。詐欺師。見えない仮面を被って他人を演じ、手先と口先で金を稼ぐ。ある日、いつものように金持ちのカモを嵌めてやろうとしていた彼が出会ったのは――「あなた、嘘をついているでしょう」他人の魂を読んで操る左眼を持った少女、クロニカ。彼女はライナスの嘘を見抜き全財産も奪った挙句、一緒に旅をするよう脅迫する。彼女の鼻を明かすため、何より自身の金のため、様々な危機と困難が絶えない旅路を、詐欺師の手先と口先が迎え撃つ。旅の終着地で彼らを待ち受けるのは、クロニカの秘密と、詐欺師の隠していた真実で……? 近代風異能ファンタジーロードムービー、ここに開演。

 

 

――まずは自己紹介からお願いします。

 

はじめまして。滝浪酒利と申します。出身は長野県北部で、静岡県で学生時代を過ごした後、現在は愛知県に住んでいます。執筆歴は受賞の連絡をいただいた時点で4、5年ほどだったかと思います。好きなものはペンネームの由来にもなっているんですが、お酒とお金です(笑)。趣味は漫画やアニメ、ゲーム、読書などです。特にフロム・ソフトウェアの作品が好きで、『アーマード・コアVI』は発売からずっと遊んでいます。ライトノベルだと中村恵里加先生の『ダブルブリッド』、細音啓先生の『黄昏色の詠使い』、秋田禎信先生の『魔術士オーフェン』シリーズなどが好きです。最近ハマったことですと、ベストセラー祈願でバンジージャンプに挑戦したのですが、飛んでいる最中にアドレナリンが溢れ出す感覚が癖になりました(笑)。機会があればまた行くかもしれないです。

 

 

――ゲームやライトノベルなど日ごろから様々なエンタメコンテンツに触れられているようですが、執筆活動を始めたきっかけは何だったのでしょうか。

 

すべては大学生の頃に『装甲悪鬼村正』というPCゲームをプレイしたことがきっかけです。個性的な世界観、静と動を使い分けた演出、圧倒的なリアリティで描かれる戦闘、血の通ったキャラクターによって演じられるキレキレのギャグや会話劇……魅力を語りだすとキリがないですね。それらの要素が組み合わさり「善悪相殺」のテーマのもと芸術に昇華されているんですよ。もう、完全に心を奪われました。『村正』は、無気力な学生生活を送っていた当時の私に、「俺もこんな物語をつくりたい!」という初期衝動をもたらしてくれました。だから、私にとって『装甲悪鬼村正』は、物語を書く原動力であり、一生をかけて追いかけ続ける目標になっています。

 

 

――『装甲悪鬼村正』の存在は滝浪先生にとって非常に大きなものだったんですね。執筆活動を始めるにあたっては、ゲームシナリオや一般文芸などの選択肢もあったかと思うのですが、なぜライトノベルを選ばれたのでしょうか。「MF文庫Jライトノベル新人賞」に応募した理由についてもあわせてお聞かせください。

 

創作の場にライトノベルを選んだのは、「『村正』のような物語を書きたい」という私の思いを受け入れてくれそうだと感じたからです。MF文庫Jの新人賞への応募理由はちょっと適当で申し訳ないんですが、「ラノベ 新人賞」と検索した際、検索結果で一番上に出てきたからです(笑)。応募のきっかけこそ適当ではありましたが、初めての投稿作で評価シートをいただいてからは、悔しさと「いつか絶対に面白いと言わせてやるから覚悟しろ」という怨念、もとい熱意を持って作品を送るようになりました。

 

 

――その想いが届き、このたび第19回MF文庫Jライトノベル新人賞にて「最優秀賞」を受賞されました。受賞の連絡を受けた時の率直な感想をお聞かせください。

 

まず、第一期予備審査で「佳作」に選出された旨の連絡をメールでいただきました。職場から車で帰宅しているタイミングで、あまりの嬉しさに車から降りてパーキングブロックを抱きしめたことは今でも覚えています(笑)。その後は担当編集様と改稿を進めながら最終結果の発表を待っていたのですが、原稿に粗が多いことを自覚していたのもあり、上位の賞はほとんど期待していませんでした。なので、「最優秀賞」受賞の連絡をいただいた時は、とても嬉しかったのと同時に率直にびっくりしました。でも「最優秀賞」を受賞したことで、新人賞に投稿していた頃の悔しさや怨念も綺麗に浄化されてくれました(笑)。

 

 

――ありがとうございます。それでは受賞作『マスカレード・コンフィデンス 詐欺師は少女と仮面仕掛けの旅をする』はどんな物語なのか教えてください。

 

本作は金目当ての詐欺師である主人公が、心を読めるヒロインと出会い、二人で旅をしながら自分自身と向き合っていくロードムービー風小説です。付け加えるならば、頭脳バトルものではなく、力で殴り合う能力バトルファンタジーです。

 

マスカレード・コンフィデンス

※ライナスの詐欺師らしい戦いぶりにはぜひ注目してほしい

 

 

――本作はあらすじなどからも頭脳バトルを連想しがちなのですが、実際はゴリゴリのバトルファンタジーですよね(笑)。派手な能力を持つ強敵を相手に、無能力の主人公がどう戦うかなど、戦闘シーンには強いこだわりを感じました。バトルシーンを描く際にはどのようなことを意識されていたのでしょうか。

 

主人公のライナスにできるだけ多くの物理的、精神的ダメージを与えることは意識していました(笑)。彼を苦しめてやりたいという一心で、ダメージは痛々しく、敵は強くかつ恐ろしく映るよう丁寧な描写を心がけました。本作のカタルシスは、徹底して痛めつけられ、命の瀬戸際に立たされたライナスが、詐欺師らしく小細工とペテンで窮地を乗り切るところにあると思っています。バトルシーンではいかにこのカタルシスを生み出すかを大事にしています。

 

 

――確かにライナスが機転を利かせるシーンは、彼の格好良さが全面に表れていますよね。

 

ありがとうございます。そもそも私は「強い主人公」が好きなこともあり、本作でも「強い主人公」を登場させたいと考えていました。強い主人公と聞くと、『北斗の拳』のケンシロウみたいに腕力のあるキャラクターや、知略を巡らせ頭脳バトルに勝つキャラクターを真っ先に想像するかと思います。それに対して、「腕力も知力も優れていないけど強い主人公とは、どんなキャラクターなのか」を考える中で生まれたのが、ライナス=クルーガーでした。彼は詐欺師ですが、知力はそれほど高くありませんし、腕力も決して強くはありません。手先が器用で、顔が良く背も高いんですが、それだけでは主人公の武器としては物足りなさがあります。そんな彼の強さは何かというと「アドリブ力」です。物語の都合上、主人公の前に立ちはだかる障害を、その場しのぎで乗り切る力ですね。ひとつひとつの状況を切り抜ける瞬間的な発想力と行動力に関しては、作中最強の人間として描きました。

 

 

――「強い主人公」に対する思索からライナスが生まれたとのことですが、本作の物語そのものの着想は何だったのでしょうか。

 

本作の着想となるアイデアが生まれたのは、就職活動の最中でした。就職面接の場では嘘をついてはいけません。しかし、自身のステータスを包み隠さず話してしまうと、選考を落とされてしまいます。そんなことを考えている際に生まれたのが「嘘をつくときのコツを教えよう。——真実だけを、話すことだ。」という本作のキャッチコピーでした。この言葉の意味については、ぜひ本編を読んで確認してください。私の言わんとしている事を見抜いていただけるかと思います。

 

マスカレード・コンフィデンス

※ライナスはバレない嘘をつくための独自の方法論を持っていて……

 

 

――では続いて、本作に登場するキャラクターについても教えてください。

 

ライナス=クルーガーは主人公です。先ほど「強い主人公」について述べましたが、私は強い主人公が強大な理不尽に晒されたり、痛々しい傷跡を刻まれたりして、精神的苦痛に膝を折ってしまうシーンが大好きです。ロボットアニメの主人公機は壊れている時が一番美しいと感じるタイプなんです。読者の皆様にはぜひ、彼がもがき苦しみながら、いじましくカッコつける姿をワイン片手に愉悦していただければと思います(笑)。

 

ライナス

※金を何よりも大切にしている職業「詐欺師」のライナス

 

クロニカはヒロインの少女です。彼女はライナスにとって最も嫌な存在とは何かと考える中で生まれたキャラクターです。心を読めるという彼女の能力が決まってからは、なんとなく性格も固まっていきました。おそらく投稿時点の原稿では、最も個性の薄い設定ありきのヒロインだったと思います。しかし、改稿を重ねていくうちに、透明だった彼女もしっかりと己の色を見つけてくれました。

 

クロニカ

※ライナスの正体を突き止めた人の心を読む少女・クロニカ

 

イヴリーン=ハベルハバルは、第二章から登場するセリフの五割が物騒なヤベー奴です。具体的に言及するとネタバレになってしまうのですが、一言でいうと私の中のベストオブ後付けキャラです(笑)。執筆初期とは性格を別物にしたり、設定を付け足したりと魔改造を施した結果、作中での存在感もキャラの魅力も増したと思っています。ぜひとも、読者の皆さまには彼女の正体を確かめて欲しいですね。

 

イヴリーン

※第二章から登場し、物語を大きくかき回すことになるイヴリーン

 

パトリツィア=ウシュケーンは、主人公のライナスに恋してしまう女の子です。私はラブコメを書くのが苦手というか書いたことがないのですが、明るくて空気の読めない恋愛枠が一人欲しかったので登場させました。最初はパトリシアという名前の予定だったのですが、捻りが無くて嫌だったのでシをツィにしてみたところ、後日某アトリエゲームの登場キャラとモロに被っていると知って衝撃を受けました(笑)。

 

パトリッツァ

※ライナスを好きになってしまった家出中の貴族の娘パトリツィア

 

 

――ライナスは創作した他者の人生や記憶、感情を自分のモノであるかのように演じることを得意としていましたよね。滝浪先生も物語を書く際は、創作したキャラクターに体をゆだねるような形で書かれていたりするのでしょうか。

 

いえ……期待外れの回答かもしれませんが、小説のキャラクターは自分自身とは切り離して客観視しながら書いています。とはいえ、キャラクターは私自身の感情や考えを誇張したり、脚色したり否定したりしながら独立させていくイメージで作っているので、完全な他人とまでは言えないかもしれないです。また私は読み手としても、物語と自分自身とを切り分けるタイプらしく、登場人物への感情移入や自己投影もあまりできません。そういった感性も、今後読者の皆様に寄り添う際に必要かと思いますので、頑張って磨いていきたいです。

 

 

――なるほど。キャラクターを憑依させるわけではなく、自身の考えを織り交ぜながら、客観的な視点でキャラクターを動かしているんですね。そんなキャラクターたちの中で、特に書きやすいと感じるキャラクターはいましたか。

 

ライナスが自身の詐欺行為や金に対するポリシーを述べている場面は、かなり筆が乗っていましたね。とんでもねえ野郎だなコイツと思いながら、楽しく書けました(笑)。あとはイヴリーンとパトリツィアの二人が喋っているシーンでしょうか。この二人は思考が単純なこともあり、私自身が深く考えずともセリフを出してくれる非常に書きやすいキャラクターです。書いている内にお気に入りになったキャラクターでもありますね。

 

 

――ありがとうございます。そして、書籍化に際してはイラストをRoitz先生が担当されました。お気に入りのイラストやキャラクターデザインを見た際の感想を教えてください。

 

お気に入りのイラストは全部なんですが、強いて挙げるとするならカバーイラストです。まさに物語の世界を体現した一枚で、作者でありながら、作品について教えられているかのような感覚を覚えました。キャラクターデザインで言えばメインの四人は本当に素晴らしいですね。ライナスは私の無茶な注文通り「イジメがいのありそうな生意気なイケメン」になっていて感動しました。クロニカは可愛らしい顔立ちや、前髪の横ハネがとても素敵ですね。イヴリーンやパトリツィアも、色々と細かい設定や小物のディティールを描いていただいて嬉しかったです。

 

マスカレード・コンフィデンス

※滝浪先生が特にお気に入りだというカバーイラスト

 

マスカレード・コンフィデンス

※キャラクターデザインも細部までこだわりが詰まっている

 

 

――それではあらためて、著者として本作の見どころ、注目してほしい点を教えてください。

 

主人公のキャラクターにはとことんこだわりましたので、ぜひとも彼の愚かしくも格好いい、健気で馬鹿げた人生を楽しんでもらいたいです。また近代ファンタジー風の世界観や、無能力者が能力者に挑む異能バトルといった要素が好きな方は、お気に召してもらえるかと思います。

 

 

 

――今後の目標や野望があれば教えてください。

 

目標である『装甲悪鬼村正』のような、圧倒的に面白く、誰かの人生の中に生き続けて終わらない物語を書きたいです。今は自分の未熟さを痛感するばかりですが、少しでも理想の物語に近づけるよう精進していきたいです。

 

 

――最後に本作へ興味を持った方、これから本作を読んでみようと思っている方へ一言お願いします。

 

担当編集者様のご尽力やイラスト担当のRoitz様の素晴らしいイラストに報いるため、そして読者の皆様に楽しんでいただくため、全力で書き上げました。少しでも読者の方に面白いと感じていただければ、それが一番です。どうかよろしくお願いします。

 

 

――ありがとうございました。

 

 

<了>

 

 

詐欺師のライナスが幾多の強敵と遭遇しながら、人の心を読む少女・クロニカと共に歩む旅路を綴った滝浪酒利先生にお話をうかがいました。死中に活路を見出すライナスの戦闘スタイルや外連味のある掛け合いなど魅力たっぷりの本作。二人の旅路の行方も気になる『マスカレード・コンフィデンス 詐欺師は少女と仮面仕掛けの旅をする』は必読です!

 

<取材・構成:ラノベニュースオンライン編集部・宮嵜/鈴木>

 

©滝浪酒利/KADOKAWA MF文庫J刊 イラスト:Roitz

kiji

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マスカレード・コンフィデンス 詐欺師は少女と仮面仕掛けの旅をする (MF文庫J)

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