独占インタビュー「ラノベの素」 橋本秋葉先生『そしてエクソシストは甦る』

独占インタビュー「ラノベの素」。今回は2026年7月15日にGA文庫より『そしてエクソシストは甦る』が発売された橋本秋葉先生です。第18回GA文庫大賞にて《銀賞》を受賞し、満を持して書籍を刊行されます。若い頃に天才ともてはやされるも、とある出来事をきっかけに凋落した元エクソシストの物語。本当に立ち上がることができない、苦悩に満ちた姿が描かれる天才の主人公についてはもちろん、そんな彼を立ち上がらせようとするキャラクターたち、悪魔との凄絶な対峙シーンについてなど、様々にお話をお聞きしました。

 

 

そしてエクソシストは甦る

 

 

【あらすじ】

二〇二五年、春。僕はエクソシストを辞めた。比類なき才覚で【暁のエクソシスト】の称号を手にし、祓魔師界のスター街道を歩むと思われた若き天才、シチロウ。しかし彼は現在、エクソシストを辞めて無職となり、かつての面影もない暮らしをしていた。生活費に困っていたシチロウは、オカルト好きの大学生、アズラから奇妙な依頼を受ける。神様に襲われる夢を見る少女のカウンセリングという、なんてことない依頼のはずが、裏には悪魔の影が見え隠れし――。神に寵愛されし天才は、エクソシストである運命から逃れられない。

 

 

――それでは自己紹介からお願いします。

 

橋本秋葉と申します。小説は書き始めたのは13歳の頃からで、公募に応募するようになってからも長らく様々な賞の一次選考を通過しない日々が続いていました。それからしばらくして、第12回小説野性時代新人賞にて「奨励賞」を受賞させていただき、その後WEBで連載していた別作品である『S級勇者は退職したい!』を書籍化、そしてこのたび第18回GA文庫大賞で《銀賞》を受賞させていただきました。好きなことは散歩で、携帯も持たずに1日2時間ほど歩いていることが多いです。苦手なものはSNSです。最近ハマっていることは掃除とゲームで、ゲームでは『Dark and Darker』というダークファンタジー的なダンジョン探索ゲームにハマっていましたね。

 

 

――最近ゲームにハマられたということですが、昔から遊ばれていたわけではないんですか。

 

いえ、そういうわけではなく中学生の頃からオンラインゲームをメインに遊んでいました。『メイプルストーリー』などのMMORPGやFPSも結構プレイしていましたね。高校生の頃はそれこそ、同級生と一緒に朝までプレイして、そのまま学校に行って、学校で友達とネトゲの話をして、帰宅したあと少し仮眠を取り、またすぐにプレイするみたいな生活を送っていました(笑)。

 

 

――学生時代から廃人ムーブがすごい(笑)。小説については13歳の頃から執筆を開始されたというお話でしたが、授賞式でも15年以上書き続けてきたとおっしゃられていました。あらためて執筆の経緯を教えてください。

 

明確に覚えているのは、小学生の頃から作文が好きだったということです。国語の時間の作文の課題を、原稿用紙2枚くらいでいいところを5枚や10枚と平気で書いちゃうような子供でした。これといってすごい作文を書いてきたとか、コンクールで入賞したというようなことはなかったのですが、ひたすらに文章を書くという行為が好きだったんです。それから中学生になり、小説を書いてみたらとても楽しくて。

 

 

――作文好きに至るまでに、本などもたくさん読まれてこられたんですか。

 

小学生の頃はかなり図書室に通っていました。当時は『デルトラ・クエスト』や『地獄堂霊界通信』とか、児童文学の作品なども読んでいたと思います。

 

 

――好きで文章を書くことを続けてこられた中で、具体的に小説家を志した理由はなんだったのでしょうか。

 

僕が小説を書いていたのが、当時の「モバゲー小説(現在のエブリスタ)」で、ケータイ小説が台頭していた時期でもありました。その時に小説を書く人たちのコミュニティがあり、所属していた人たちが公募やコンテストに挑戦している人が多く、感化されて僕も応募したいなと思ったのが始まりでしたね(笑)。

 

 

――ありがとうございます。そうして様々な賞に応募されてきた中、第18回GA文庫大賞にて《銀賞》を受賞されました。受賞の連絡をいただいた時の心境はいかがでしたか。

 

すごく正直なことを言うと、二次選考を通過したあたりで「受賞するんじゃないか」と思っていたんです。2025年に入ってから小説の書き方を少し変え、手応えを感じていました。もう少しわかりやすく表現すると、ほんの少しだけ「小説の書き方がわかった」ような感覚があったんです。

 

 

――なるほど。橋本先生は第12回小説野性時代新人賞でも受賞されているわけですが、ライトノベルの賞も狙っていた、という感じなのでしょうか。

 

いえ、小説を執筆し始めた頃はライトノベルを書いていました。ただ、当時のモバゲー小説で知り合い、僕にとっては師匠的な存在で、現在は歴史小説や伝記小説で活躍している先生がいらっしゃるんですけど、その方に「君は文芸の方が向いている」と言われた時期があったんです。それをきっかけにライトノベルからは少し離れ、文芸の賞にも送り奨励賞をいただくことができました。ただ、そちらで芽が出ることはなく、もう1回初心に戻り、WEBでライトノベルを書き始めるようになりました。そこでの手応えもあって、公募にまた挑戦しようと思ったんです。

 

 

――GA文庫大賞への応募の決め手はなんだったのでしょう。

 

2024年の暮れに第10回GA文庫大賞で受賞されていた山下泰昌先生にお会いする機会があって、GA文庫大賞をオススメされました。なので、2025年にGA文庫大賞を目指すことは決めていて、それを決めたのが2025年の2月頃だったと思います。その過程において締め切りまでは少し時間があったこともあり、電撃小説大賞にも応募していました。その後、予定通りにGA文庫大賞にも応募した感じですね。

 

 

――お話をうかがっていると、かなり筆が早いのではないかと感じるのですが。

 

そうですね。1ヶ月あれば1本書けるとは思います。過去にちょっとした実験をしたことがありまして、本当に頑張れば2週間で1本を書き上げることができるんです。ただ、継続できないことが判明しました(笑)。2週間で1本のペースを仮に6回続けても、その後の執筆が急激に滞るんですよ。本作については2回書き直しているのですが、全体を含めると1ヶ月半くらいで執筆したと思います。

 

 

――ありがとうございます。それでは受賞作についてもうかがっていければと思います。『そしてエクソシストは甦る』について、どんな物語なのか教えていただけますでしょうか。

 

一言で表すと、落ちぶれた天才エクソシストが、再び復活して悪魔に立ち向かうお話になります。本作はホラー映画の『エクソシスト』や『ヴァチカンのエクソシスト』など、悪魔祓い系の映画を集中的に見ていた時期に、応募作を考えていたことがきっかけで生まれました(笑)。

 

そしてエクソシストは甦る

※かつて天才と呼ばれたエクソシストは、無職となり落ちぶれてしまっていた……

 

 

――受賞から刊行までは改稿作業に費やす時間も多めだったと思うのですが、改稿作業の中で印象的だったことはありますか。

 

応募原稿時から比べると、主人公のキャラクターが明るくなったと思います。もともとライトノベルとしてはかなり暗く重たい物語ではありました。それをライトノベルとして、最終的にわかりやすくするという意味でも、明るい部分を出すよう改稿しました。改稿の結果、よくなったと実感しています。

 

 

――それでは本作に登場するキャラクターについても紹介をお願いします。

 

主人公のシチロウについてですが、もともと書きたいと思っていた「後退」をテーマにしたキャラクターです。ただの天才ではなく、落ちぶれた天才。一度挫折をして、本当に落ちこぼれてしまい、自分を信じることができなくなった天才です。どのように彼が自信を取り戻し、才能を発揮していくのかに焦点を当てています。

 

シチロウ

※エクソシストを辞めて無職となっているシチロウ(キャラクターデザインより)

 

ラピスはシチロウにとっての相棒的な存在ですね。一般的なシスターのイメージもありつつ、がさつという(笑)。そんな親しみやすいキャラクターになりました。

 

ラピス

※シチロウが【祓魔機関】で共に戦っていたラピス(キャラクターデザインより)

 

アズラは夢追い人として描いています。ホラー作家になるという夢を持っていて、そうなれることを信じて疑わず、まっすぐ夢に向かっているオカルト好きな女子大生ですね。

 

アズラ

※オカルト案件でシチロウとつるむ女子大生(キャラクターデザインより)

 

シチロウの師匠のカミキは、シチロウとは対極の凡人として描きました。才能はほとんど持っていなかったけど、意地と執念を持っているキャラクターとなっています。作中ではあまり焦点をあてることはできませんでしたが、自分がカミキのようなタイプなので、結構思い入れの強いキャラクターでもあります。

 

カミキ

※【泥沼のエクソシスト】とも呼ばれていたシチロウの師匠(キャラクターデザインより)

 

そしてもうひとり、ダウナですね。彼女は天才と凡人の狭間にある秀才キャラクターです。かつてのシチロウに憧れるも、才能を引き出しきれていないキャラクターでもあります。このキャラクターも自分としては共感しやすいと感じている一人ですね。シチロウは天才なわけですが、天才に対して僕はあまり共感が得られないんじゃないかと思っているんです。だからこそ逆に、師匠のカミキや秀才と評されるダウナといったキャラクターの方が共感しやすいんじゃないかなと。

 

ダウナ

※シチロウに憧れていたエクソシストのダウナ(キャラクターデザインより)

 

 

――主人公のシチロウについてお聞きしたいのですが、彼は落ちぶれた天才として描かれていますよね。そして真に折れてしまった心をもう一度奮い立たせる難しさを、まざまざと見せつけてくるキャラクターでもあると思います。シチロウを描く上での難しさなどはありましたか。

 

これは自分自身でも、「なんでシチロウは立ち上がらないんだろう?」と思いながら執筆していました(笑)。執筆を続ける中で、立ち上がるタイミングを自分でもまったく掴めていなかったんです。プロットの段階ではもっと早く立ち上がれたはずだったんですけど、非常に時間がかかりました。もちろん無理やり立ち上がらせることもできたとは思います。ただ、「ここで立ち上がるのは不自然だ」という思いや、「立ち上がるのはここじゃないのかな」ということを考えながら執筆していました。場面場面で立ち上がる姿を想像こそするんですけど、結局自分自身が納得できず、シチロウが立ち上がるまでの時間がかかったのだと思います。

 

 

――読者はシチロウの姿にやきもきした感情を抱くこともあると思います。シチロウという主人公とどのように向き合いながら読むといいでしょうか。

 

シチロウには期待を持ってほしいです。かつては天才として名をはせていたエクソシストであるということ。そしてシチロウの周囲のキャラクターたちも、シチロウが立ち上がることを願い、動いているところもあるので。物語の最後まで期待感を持ってもらいたいなと思います。

 

 

――ありがとうございます。そして本作はエクソシストという職業へのこだわりも垣間見える、悪魔祓いのシーンも印象的でした。悪魔とは2つの段階を経て対峙し、戦うわけですよね。

 

そうですね。最初は異能バトルのようなシーンを除いて、悪魔祓いのシーンだけで描こうと考えていました。ただ、絵面が地味だと感じてしまって(笑)。映画などの悪魔祓いのシーンは、映像的な要素も面白さを演出する上で非常に重要だと思うんです。ただ文章だけだと地味さが際立ってしまいます。映画の『エクソシスト』には原作の小説もあるんですが、そちらもどちらかというと、「精神的疾患と悪魔憑きとの違いは何か」という部分が主となっていて、それをやってもライトノベルのエンタメとしてはどうなのかなと感じていました。ライトノベルとして楽しめる要素は何だろうと考えた結果、悪魔祓いの姿を描きつつ、悪魔の精神世界に潜って戦うという設定を考えました。

 

そしてエクソシストは甦る

※悪魔と対峙するシーンは必読

 

 

――それでは続いて、イラストについてもお聞きしたいと思います。書籍化に際してはイラストをSKYん先生が担当されました。あらためてビジュアルを見た時の感想や、お気に入りのイラストについて教えてください。

 

もともと執筆時はそこまでキャラクターの外見を考えていなかったのですが、最初に拝見した時に、イメージにぴったりだと感じたんです。シチロウが、キャラクターたちはこういう造形だったんだと思ったのが最初です。頭の中でぼんやりと描いていたキャラクターとも重なって見えつつ、でも新鮮でという不思議な感覚でした。

 

 

――なるほど。キャラデザを見たことで、改稿などの執筆に影響はありましたか。

 

ラピスに関しては結構あったと思います。当初からシスターっぽくしすぎないことは意識していたんですけど、実際のイラストを見たことで、柔らかさのようなものが追加されました。キャラクターデザインの方が本文中のラピスよりもリアルな感じがして、会話文の細かい語尾や雰囲気を修正しています。

 

そしてエクソシストは甦る

※改稿時に印象が少し変化したというラピス

 

 

――お気に入りのイラストについても教えてください。

 

やはり表紙が印象深いです。迫力も伝わってきますし、これが絵の力なのかと。また、口絵には神社を背景にラピスが描かれている1枚があるんですけど、そのイラストが絵画っぽくてすごく印象に残っています。光の使い方もすごいなって感じましたね。

 

そしてエクソシストは甦る

 

そしてエクソシストは甦る

※橋本秋葉先生がお気に入りだというイラスト

 

 

――ありがとうございます。あらためて本作の見どころや注目してほしい点はどんなところですか。

 

落ちぶれた天才というものが、どのように復活するのか。また、悪魔祓いのシーンはかなり気合を入れて書いたので、悪魔の恐怖というか、悪魔にとり憑かれた人間の恐怖を感じてほしいなと思います。ホラー好きや映画『エクソシスト』を見たことがある方は楽しめるんじゃないかなと思います。

 

 

――今後の野望や目標があれば教えてください。

 

野望としては本作が売れてほしいです。そして、エクソシストの本場でもあるバチカンに行ってみたいですね(笑)。雰囲気を味わいたいというのもありますが、会えるものなら本職のエクソシストにも会ってみたいです。作家としてはとりあえず、生き残れるように頑張りたいですね。

 

 

――それでは最後に本作へ興味を持った方へメッセージをお願いします。

 

エクソシストや悪魔祓いという設定もそうなんですけど、才能というものをテーマにして描いているので、ちょっとでも心に触れるものがありましたら、ぜひ読んでいただきたいなと思います。硬派な雰囲気やダークな雰囲気を、本作から感じ取っていただければ嬉しいです。

 

 

――本日はありがとうございました。

 

 

<了>

 

 

かつては天才と呼ばれるも、落ちぶれてしまった元・エクソシストの青年の生き様を綴った橋本秋葉先生にお話をうかがいました。人間は落ちるところまで落ちると、ここまで立ち上がることができなくなってしまうのかという強烈なインパクトも受ける本作。悪魔に嘲笑われながらも、天才がどう立ち上がるのか目が離せない『そしてエクソシストは甦る』は必読です!

 

<取材・文:ラノベニュースオンライン編集長・鈴木>

 

©橋本秋葉/ SB Creative Corp. イラスト:SKYん

kiji

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『そしてエクソシストは甦る』特設サイト

GA文庫公式サイト

 

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