【特集】「CHIBA 高校生のためのサブカル教室」登壇ライトノベル作家に聞く!【第3回:渡航先生】

2016年8月から官民協力のもと開催された「CHIBA 高校生のためのサブカル教室」。『ライトノベル』、『イラスト』、『漫画』の3コースで行われたワークショップの『ライトノベル』講座には、3人のライトノベル作家が登壇した。そこで今回、すべての講義を終えた3人の作家にインタビューを実施。いつもは書く側にいる3人の作家は、現役の高校生たちとどのように接して、どんな話をしたのだろうか。また、どんな準備や考えをもって臨んだのだろうか。全3回でお送りする特集の最終回は渡航先生。ワークショップでは「心構え」と「テキストの書き方」を担当した。≪第1回はこちら≫ ≪第2回はこちら

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――渡航先生は2回目の登場なのですが、あらためて自己紹介からお願いできますでしょうか。

ライトノベル作家、渡航でございます。2009年にデビューいたしまして、8年目に突入しております。主な代表作は『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』です。現在もまだ続いておりますので、近々またお知らせもできるのかなと! 今はTVアニメ『ガーリッシュナンバー』の原案、シリーズ構成、脚本などをやっております。2009年に『あやかしがたり』でデビューしておりまして、初版で絶賛発売中ですので、全4巻! 初版でまだ手に入る!

――『あやかしがたり』絶賛発売中です。何か最近ハマっていることがあれば教えてください。

『あやかしがたり』……。えーと、ベランダでガーデニングを始めました。サボテンが多いですね。

――サボテンですか。これは意外な一面です。サボテンは花が咲きますよね。

そうらしいんですよ。まだ咲いたのは見たことがなくて。そもそも秋口に育て始めるようなものじゃないんですけど(笑)。何かを世話しないとなぁという思いに駆られまして。

――ガーデニングをはじめようと思ったきっかけはあったんですか。

まったくないんですよね(笑)。ただ、アニメとかラノベとかもそうですけど、作り始めてから実際に形になって世の中に出るまで長期スパンじゃないですか。ラノベはどんなに早くても3ヶ月、アニメは長いと3年とかかかる。なので、目に見えて自分が何かをして、自分の手によって生きている存在がある、みたいな。そんなプチ充実感を得るためにガーデニングをやっております(笑)。

――短期的な充足感を欲されているんですね(笑)。ちなみに苦手としていることも何か教えてください。

うーん、仕事ですかね。モノを書くのは毎回苦手だなと思いながらやってますね。書くことホント向いてないなと思いながら(笑)。

――でもTVアニメの原案やシリーズ構成、ライトノベルの執筆と、たくさん書かれていますよね。

苦手だからこそちゃんとやろうみたいな(笑)。もし得意だったら、たぶん何も気にせず適当に書いてしまっていると思うんですよ。自分であんまりよくないなと思いながら、それをどうにかしようと思っていつも文章をこねくり回してみたり、構成をいじってみたりしています。

――今回、ワークショップを担当されましたが、これまで講義の経験はあったのでしょうか。

イベントでの登壇は割とあるんですけど、何かを教えたり、伝えたりすることはやったことがなかったので、初めてでした。

――オファーのあった当時はどんな感想を抱きましたか。

あぁ、ライトノベルで人に教えることは何もないなと思いましたね(笑)。いえ、誤解のないように言いますと、僕自身が人に何かを教えるような立場にいないっていうのもあります。大ベテランの先生方だったら別だと思うんですけど。10年もやってないような自分に何か教えられることがあるのだろうかと。ラノベ作家の平均的な活動期間とかはわからないんですけど、それでも自分はまだベテランと呼ばれる域には入ってないでしょうし、むしろ若手だろうなと思っているんですが(笑)。

――大ヒット作品を執筆しているからこそのノウハウとか、みなさん聞きたいと思いますよ(笑)

うーん、どうやったら運気が上がるのかとか、そういうお話しかできないんじゃないかな……。

――ちなみに運気はどうしたら上昇するんですか。

ちゃんと酉の市に行くっていう(笑)。

――運気上昇のために、みなさん酉の市に行きましょう(笑)。さて、ワークショップを終えてみて、率直な感想をお聞かせください。

特に何も教えていないなって(笑)

――そんな本末転倒な(笑)

すいません(笑)。そうですね、担当した回で言うと、メンタル的な方向性といいますか、気構えじゃないですけど、考え方といった内容で初回はお話をさせていただきました。最終回だった第6回では、中学校の国語でもやっていたであろう技術を、あらためて噛み砕いてお伝えしたんですね。それが果たして、受講された高校生たちの一助になったのかどうなのかという点には自信がありませんが。

――渡航先生は、第1回と第6回を担当されました。第6回では「テキストの書き方」というトピックスでしたが、具体的にはどのようなことを教えていたのでしょうか。

ライトノベルを書き始める人達が最初に躓く原因のひとつとして、「最初の一文」が多いのかなと思っていまして。書きたいと思っても最初になんて書いたらいいんだろうと考えて、そのまま躓いちゃう。なので、結論から書いちゃえとか、書きたいところから書いちゃえ、みたいなお話をしまして、とにかく最初に手を動かすことの重要性をお伝えしました。

技術的な面では、対句や反復、省略といった国語の教科書に載っているようなことを、実際にどうやって使っているのかというお話をいたしまして。後は比喩表現の一例といいますか、広げる方法ですね。たとえば、女の子のキャラクターを比喩したり、表現したりする時に何が必要なのか。女の子の身に着けているブランド品やその服装、読んでいるファッション雑誌。こういった要素は、一単語でその女の子のキャラクター系統や傾向を表現できたりするわけです。「C」というファッション雑誌を読んでいる子と、「N」というファッション雑誌を読んでいる子では傾向も違ってくるんです。なので、漫画やライトノベルと関りが薄いと思われそうな知識も、持っていこうというお話をしましたね。

――渡航先生もファッション雑誌にはお詳しいんですか。

詳しいわけではないですが、ざっくりとした系統分けくらいであればわかると思います。もちろん実際に書く時や、必要な時は普通に読んで調べたりします。僕はもともと出版社に入りたかったので、どこの部署に行っても大丈夫にというか、面接対策にいろいろ読んでいたんですよ。そういう意味では基礎知識として持っているので、特に抵抗なく読みますね。

――かつての就職活動の努力が今にも繋がっているんですね。

そうかもしれないですね(笑)。割と広範な知識というか、そういう知識あってこそみたいな。ライトノベルの物語を書き始めると、どうしても内側を向きがちといいますか、ライトノベルに属している文化圏へと話が集約しがちになると思っているんです。そういったストーリーにおけるエッセンスとしても有効だと思ってます。ストーリーでどの方向に向かうとしても、向かう目的地の情報を持っていないと、そもそもお話を書くことはできないだろうという意味も込めて、知識は持っておこうということですね。

――土屋つかさ先生も似たようなことを仰っていましたね。興味の幅を広げておこう、と。

意外性だったりギャップだったり落差だったり、その付け方というか。最終的には自分の中にどれだけのふり幅を持っているかになってしまうので、その幅をもっともっと広げてもらえたら嬉しいですよね。今回のワークショップは高校生が対象だったので、高校時代からいろんなものに目を通してほしいなと思いました。

――ワークショップに臨むにあたって、気を付けたことや準備したことはありましたか。

僕の中では、ありのままで行こう、という(笑)。取り繕った状態のものって、たとえば世に数多あるライトノベルの書き方の教本であったり、そういったものはある程度パッケージングされていて、見栄えがいいようになっていると思うんですね。或いは書いた人にしか実行できない特殊な教本であったり(笑)。僕としてはリアルというか、現実に僕らはどう書いているのか、そういうことをお伝えできればいいのかなと考えていました。あんまり綺麗なところだけを見せるようなことはしないようにしようと。ひとつ、若者たちの夢を砕くというのも年長者の仕事かなっていう(笑)。

――そこは育んであげてくださいよ(笑)ほかには秀章先生、土屋つかさ先生と決めた事はありましたか。

先ほど言った通り、リアルを見せることと、ちゃんと課題を用意することですね。商業作家の悪い癖のひとつでもありますけど、締切がないと書かないことも多いので(笑)。なので、課題の用意と予定の構築、実際に机に向かう時間であったり、取り組んでもらうための下地についてお話しましたね。あとは各々の得意とするノウハウを出して行こうというお話もしました。たとえば企画書で適当なことを書いて騙くらかすのは僕が一番得意だと思うんですけど(笑)。そのうえでプロットやキャラクター設定については、秀章先生と土屋つかさ先生のお2人が、システマチックに教える分には適任だろうと考えたりしましたね。3人の作家の個性と得意としているノウハウを、出来る限り高校生たちにお伝えできればいいなと思い、内容を決めました。

――講義を通して現役高校生たちの反応はいかがでしたか。

リアクションは……薄めだったかなぁと思う一方で、自分の高校時代と比べてみると、教壇に立つ人間に対する距離感って、僕もあんな感じだったのかなとは思いますね。あとは生まれてからインターネットの環境があったり、スマートフォンなんかも含め、世の中のあらゆるスピードが速いという状況に慣れているんだなと。ネットネイティブというかスマホネイティブというか……自分が興味のある事柄に関しては積極的に受容しているのかなと感じました。一方で、その枠から少し外れると、受容すること自体にも壁を感じていそうだなと。ジャンルの違いや区分けにあまりとらわれずにたくさんのものを楽しんでもらえたらいいなと思います。

――ワークショップでの指導を経て、気付いたことや再認識したことはありますか。

ライトノベルの書き方を教えることの難しさですかね。重要なことは、教わったからと言って書けるようになる類のものではないということ。書く人間はどこにいても何をしていても書くし、書かない人はどこにいても何をしていても書かない。これは物書きというものを志した人間誰しもが当たる壁であろうなとはあらためて思いました。実際に書くということこそが肝要なのだと。講義を受講した高校生の中には、既に書いているという生徒さんもいました。今回のワークショップや講義が、生徒さんたちにとって、書くことへのより強いモチベーションや動機付け、あるいはひらめきのブーストになるような形になればいいなとは思いますね。本来、ワークショップはそういった在り方が正しいのだろうなとも思いました。

――渡航先生は兼業で、かつメディアを問わず様々な作品に携わっておられると思うのですが、どんなサイクルで生活されているんですか。

えー、まわっておりません(笑)。

――まさかのノーサイクル(笑)

予定があり、納期があり、スケジュールや締切があり、あとは動かない予定。それぞれに合わせていくライフスタイルですね。デビューして8年目ということは、入社して8年目でもあるわけです。ある程度の裁量を頂戴しているので、土日に仕事が食い込めば代休をいただいていますし、昨今の流れに乗って有給休暇をフルに使って、まわってないけどまわしております。

――本業と兼業をあわせて、実情として休日はありますか。

基本的にはないですね。半日寝て過ごしたりは普通にしますけど。100%動けないという日が自ずとやって来るんですよ。勝手に電池が切れてしまう日がくると休みますね(笑)。

――睡眠時間などは取れていますか。

通常だと3時間から4時間くらいですかね。これが週単位であったり、場合によっては月単位で。たまにチートデーみたいな感じで半日寝る日がやってくる(笑)。

――死んじゃわないか心配ですけど、専業になろうとは思わないんですか。

専業になろうという思いはあんまりないですね。特に専業になるメリットが思いつかない。一人の人間がアウトプットできる総量は変わらないと思ってますし、時間が増えた分だけ脳の容量が大きくなるわけでもないですからね。

――執筆していて、詰まったり集中力が切れたりすることは。

だいたいいつもそうですね。

――いつも(笑)

もう常に(笑)。

――とはいえ、切っても切り離せないですよね。気分転換やモチベーションの回復にはどんなことをするんですか。

ほかの仕事をするか、諦めて書かないかですね(笑)。諦めて書かない時は寝るしかない。

――そういった時間を使ってコンテンツの消費側にまわったりは?

コンテンツを消費する時は3日間寝ないでやるくらい、それにのめり込んで完全に切り替えますね。遊ぶときはとことん遊ぶ。すべての連絡を断って!(笑)。

――なるほど……ん、なるほどでいいのか、これは(笑)

もうそれくらい強制的にリブートをかけないと、出てこない時は普通にあるので。特に会社が休める! でもたぶん書けない! という時はもう寝ないでゲームをするだとかですね。ただ、それだけやるとさすがに「なぜ俺はあんな無駄な時間を過ごしてしまったのか」って苛まれますね。そこから取り返そうという意欲がバリバリ湧いてくる。最終的には自分を追い込む(笑)。ぶっちゃけ、それくらい強制的に何かをインプットしないと、インプットする時間がないんですよね。

――たとえばですが、完全に切り替えず合間合間ではインプットは難しいものでしょうか。

並列処理がそこまで追いつかないです。常時なにかしらの処理をしている状態だと、表面的なことしかさらえないので、本気でインプットしようと思ったら一旦止めないと無理ですね。

――続いて、ライトノベル作家を目指す高校生に今後期待することはありますか。

ぜひライトノベル作家にはならないでいただきたい(笑)。

――えらいテーマとは真逆な切り口ですが(笑)。その心をお聞かせください。

まず誤解がないようにしておきたいんですが、僕の根底にあるのはライトノベルが大好きである、という前提です。未来ある若者たちを相手に、ワークショップを経て、その果てに否定的に聞こえるかもしれないんですけど、ライトノベルが好きであるからこそ、伝えておきたいんです。

――わかりました。ではその前提でお聞きしましょう。

多くの先人の方たちにも言われてきたように、作家はいつでも、それこそ最後にでもなれる職業だと思うんです。出典を辿るといろんな作家さんが仰ってることだと思うんですけど、私もほぼほぼ同意見でございまして。作家は最終的にはなれる職業なのだから、他のものを一度でも二度でも選んでから、作家という道を選択しても遅くはないのかなと思っているんです。

――仰ることはわかります。それでも若いからこその利点はないのでしょうか。土屋先生は「同時代性」という言葉を用いておられました。

もちろんそれを否定するわけではないです。高校生の時からライトノベル作家になるんだ、っていうのは尊い決意でもあるわけで。ただ、目指すべき夢をライトノベル作家に全振りする必要はないのかなということです。中学生から高校生くらいのメンタルって、男性であれば30歳前後までは持ち続けられると思っているので、その10年の間で、何を経験して、どんな引き出しを持つのかということも大切なんじゃないかなと。中学や高校を経験していない人はほとんどいないわけで、そこから先、作家になった時にどんなアドバンテージを有して生きていくのかという問題にぶち当たると思うんですよ。10年後、20年後のアドバンテージを探していく旅行のような期間を持って、いろんなことを見てほしいという思いがあるんです。もちろん、現役高校生だからこそ表現できる強み、というものもあるのかもしれません。ただ、それでも10年後や20年後に繋がるアドバンテージに足り得るかというと、生半可では戦えなくなると思うんですね。実際に僕もそうですが、兼業で作家をやっている方もたくさんいますし、やっぱり経験したから書けることも多いと思うので。

――なるほど。ちなみになんですが、最後の選択肢という考え方は、渡航先生がデビューした当時も持たれていたスタンスなんですか。

もちろんそうです。就職活動で全然内定が貰えなかったから、応募原稿書いたわけですし。

――ある意味で最後の選択肢だったわけですね(笑)

大学を卒業するまでに、何か職を得ようと思ったんですけど、全然内定も貰えないし、このままだとまっとうな形で職を得ることができないなって。何かあるだろうかと考えた時に、ライトノベル作家だなと(笑)。そこが商業作家になろうと決断したポイントでしたね。大学4年の夏休みに原稿は書いたので。内定がなかった状態だったからこそ、目指したものがライトノベル作家だったわけです。

――腑に落ちました、ありがとうございます(笑)

勝手に総括しちゃいますけど、あくまで他のものを選んでからでも、あらためて作家は選び直せる職業のひとつ、ということを認識していただければと思います。

――それでは最後に渡航先生の今後の刊行予定などを教えてください。

TVアニメ『ガーリッシュナンバー』が放送中でございまして、小説版『ガーリッシュナンバー』の第2巻も10月末に発売となりました。そして12月にはダッシュエックス文庫より『クオリディア・コード』の第2巻が発売予定でございます。あとは年内にもうひとつかふたつ、2017年に向けた何らかのお知らせができるんじゃないかなと。どうぞお楽しみに。

小説 ガーリッシュ ナンバー2

――本日は貴重なお話ありがとうございました。

こちらこそ、ありがとうございました。

<了>

「CHIBA 高校生のためのサブカル教室」登壇ライトノベル作家に聞く! 第3回は渡航先生にお話を伺いました。作家として作品を書くだけではなく、作家を目指す若者たちへ考え方や技術を伝える。全3回に渡ってお送りした本特集では、それぞれの作家が抱いている想いも吐露していただきました。ライトノベルはまだまだ盛り上がっていくジャンルです。今回のワークショップを受講した高校生たちが、遠くない未来にライトノベルの世界へと羽ばたいてくれることにも期待したいです。

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※渡航先生、土屋つかさ先生、秀章先生

応募方法はとても簡単。応募対象期間となる2016年11月26日(土)~11月29日(火)の期間中にTwitterで本特集記事をツイート、またはリツイートするだけ。応募者の中から抽選で1名様に「ラノベニュースオンラインのツイッターアカウント(@lnnews)」よりDMにてご連絡させていただきます。応募を希望される方は、ラノベニュースオンラインのツイッターアカウントのフォローをお願いします。

※当選発表は当選連絡のDMにて代えさせて頂きます。
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[関連サイト]

千葉市の高校生のためのサブカル教室特設サイト

主催: 公益財団法人 千葉市文化振興財団

開催協力: AKIBAPOP:DOJO

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