【ラノベの車窓から】第9回 『ゴールデンタイム』

とあるライトノベル読みが読者としての視点・観点で、オススメをピックアップして紹介する「ラノベの車窓から」の第9回です。早いもので、次回でもう第10回です。月日が過ぎ去るのはラノベの刊行スピードと同じくらい速いですねぇ(何を言っているのかもう分からない)。

さて、第9回のオススメとして取り上げるライトノベルは「ゴールデンタイム」です。本作はライトノベル読者であれば、一度は耳にしたことがあるであろう「とらドラ!」の著者である竹宮ゆゆこ先生の新シリーズですね。アニメ、コミカライズ等の様々なメディアミックスで大成した「とらドラ!」と、少し異なる方向性で描かれている本作。竹宮先生顕在のラブコメは、舞台を大学に移して描かれます。

 

ゴールデンタイム

著:竹宮ゆゆこ イラスト:駒都えーじ

出版社:アスキー・メディアワークス

今回はいつもの構成とは少し切り口を変えて本作、「ゴールデンタイム」にこんな仮説を立ててみる。読者と共に歩む『ライトノベル』という在り方。「とらドラ!」の刊行が2006年から2009年の3年間、そして「ゴールデンタイム」は2010年から刊行が続いています。つまり、「とらドラ!」現役世代だった中高生は、今や大学生となっているわけですね。そして竹宮先生のシリーズも舞台が高校から大学へと移り変わっています。このことから「とらドラ!」現役世代の読者たちは、ある種の共感を持ちながら、新シリーズ「ゴールデンタイム」へとシフトしていけたのではないか、と考えるわけです。刊行にあたってそういった意図が考慮されたかどうかは置いておくとしても、考え方としてはアリなんじゃないかなと思うわけです。おっと、少し話題が逸れちゃいましたね(笑)

過去の記憶を失って今を生きる一人の青年、多田万里。そして完璧お嬢様、加賀香子。この2人のラブコメ、もといラブストーリーを描く本作。香子と付き合い出し、新たな一歩を踏み出した万里だったのですが、過去の記憶が様々な形でフラッシュバックしていきます。サークルで出会った一人の先輩、リンダこと林田奈々。そんな彼女との過去の記憶、そして過去の恋焦がれる心が強く強く万里の心を締め付けていくのです。

今巻では、冒頭から過去の記憶がより鮮明になっていく場面から物語は展開しています。リンダへの強烈な恋慕が膨らみ続け、万里は混乱と強烈な体調不良に見舞われるというなんとも情けない状況に陥ってしまいます。大学の友人達の看病を経て、香子と共に海へ行くこととなった万里。先立つものがないということで、アルバイトをしようと試みるのですが、香子の「一緒にいる時間が減るのは嫌だ」という言葉との間で、揺れ動きます。そんな中、とあるアルバイトへの誘いを受け、香子に内緒にしたまま万里はアルバイトをするのですが、そこに現れたのは……。恋の葛藤が、自分の中にいるもう一人の自分という、「とらドラ!」とは異なる切り口で描かれる本作。過去の選択と今の選択という、究極の2択を迫られて万里は今巻でひとつの大きな決断を下します。4巻にして、ついに物語はゼロからイチに向かうストーリーとなった感じがしますよね。果たして、大きな決断をした万里はこれから先、どんな苦難や葛藤と戦い、どんな「今」を勝ち取っていくのか、非常に気になるばかりです。ライトノベルという枠の外に飛び出しても、何ら遜色しないであろう本作。ターゲット層はやや高めの年齢設定になっているのかなと想像しつつ、ぜひまだ読まれていない方には手にとって欲しい作品です。

最大のライバルは自分自身、という言葉を耳にしたことがある人も決して少なくないはず。「ゴールデンタイム」はある意味、究極の自分自身との精神的な戦い、であるのかもしれないですね。そんな重厚なテーマを引っ提げているんだと信じて疑わない本作には期待せずにはいられません。まだまだ続くのでしょうが、ぜひとも終わりは、満面の笑顔で迎えられる、悲しく辛すぎない展開となるように祈ります!

【記事:らお】

URL:「とある僕等の小説目録(ライトノベル)」

(C) アスキーメディアワークス 竹宮ゆゆこ/駒都えーじ

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