インタビュー「ラノベの素」。豊田巧先生「僕は君たちほどうまく時刻表をめくれない」
豊田先生の仕事場
趣味のモノがたくさん並んでいてしっかり息抜きも
できそう。しかしシャアザクヘッドが羨ましすぎる。
――初めて自分の本を手に取った時思ったことを教えてください。
やはり感動しますよ。特に私の場合は単にサラリーマンですから、自分の書いた物が本屋さんで見れたのは、自分の名前がゲームのエンディングに出た時よりも感動しました。私は今でも発売されるたびに何軒も本屋さんに見にいきますし、掲載して頂ける雑誌には自分で掲載紹介をお願いしています。ここは、宣伝屋出身の小説家として他の方には無い部分だと思います。
――デビューしてから知った一番衝撃的な事実はどんな事ですか?
書くのがこんなに楽しいとは思いませんでした。
――デビューしてから自分が変わったと思う事を教えてください。
ゲームは集団で作ってそれを宣伝するので「とにかく売らなきゃ」という意識でしたが、作家になってからは買って頂く一人一人のおかげで、こんな楽しい事が続けれるんだと感じました。ですから、一冊一冊毎回おもしろくなるように、死ぬほど努力しながら書いて行こうと思いました。
――逆に辛かった事はありますか?
辛かった事はないですね。今サラリーマンは気楽な稼業じゃありませんから、そこで数十年務めた私としては多くの辛い事を経験したので、それに比べれば楽しく嬉しい日々です。
その中でも、一番嬉しかった事は自分の書いた児童書の取材に、こども新聞の小学生が取材に来てくれた事ですね。これは本当に嬉しかったし、もっと頑張らなくちゃと思いました。
――仲の良い作家さんはいますか。
いませんね。なにせ近年デビューしたばかりですから。仲の良い有名アニメプロデューサーとかゲームデザイナーとかCMプランナーなら一杯いますよ。(笑)
――読者は自分にとってどんな存在か教えてください。
お客様です。私が二十年前にゲームというエンターテインメントに関わると決めた時に、それはいかに皆さんが楽しめる物を作り出せるかという事だと思いました。それが作家に変わっても、この仕事が特別すごい仕事ではないのですから、ストレートに作品を買って頂いて楽しんで頂ける方は全てお客様として一生大事にしてきたいと思っています。
――作家業として一番気をつけているのはどんな事ですか?
読みやすい本を書きたいと思っています。私は文章的にどうのとか、賞をとれるようにとか思って書いていません。だけど、読んだ人が「難しいなぁ」とか「話分からん」とか思われるのはすごくショックなので、まずは、どんな人にも読める、読みやすい楽しい本を書きたいと思っています。
――ファンレターをもらったことはありますか?はじめてファンレターをもらったときの気持ちを教えてください。
ありますよ。今はみらい文庫の「電車で行こう!シリーズ」を読んでくれた、たくさんの小学生からですけどね。本当に嬉しいです。特に今の小学生は旅に出る事が少ないと聞いていたので、電車で行こう!を読んで実際に同じ行程をお母さんやお父さんと旅に行ってくれたとか聞くと胸が熱くなります。
――今までの人生で「こうしておけば良かったなあ」と思うことはありますか?
これは無いですね。私は、ゲームメーカーに入ってすぐに人生で最高に上司に出会う事が出来ました。しかし、その方はガンで亡くなってしまいました。その時に、この方は「明日死んでも良いつもりで生きなさい」という事を口ではなく生き方で教えてくれました。私のその方の葬式に出た日から、何か選ぶ時に「明日死ぬとしたら……」という問いかけをして選択しています。だから「あの時こうしておけば」という事は無いのです。
――生まれ変わるとしたら同じ人生を送りたいですか
今まで楽しかったので、こんな人生ならもう一度同じでも良いです。どんな人生でも全て同じ事ですからね。どんな人生でも幸せに生きていけますし、どんな人生でも不幸になれますからね。そして、死ぬ時人は何も持って行く事はできないのです。だから、生まれ変って環境や立場が変わっても、結局心の持ちよう方が重要なのです。アラブの石油王だって悩んでいるし、ご飯は三度しか食べれないし、そして死んでしまうのですから。
――作家としてこれからの目標を教えてください
今は誰も書かない世界を書いているので、いつまでもそんな世界を描いていきたいと思っています。鉄道、宇宙、戦争に出てくる、無機質な電車や人工衛星や戦車といった物に魂を吹き込んだ物語で、皆さんが色々な事に興味をもってくれるようになる物がいいなぁと思っています。
そして、せっかくの鉄道物なので駅の売店に並ぶような本が書けるようになりたいですね。
――最後に読者に向けて一言お願いします。
いつも私の本を買って頂いている皆さま本当にありがとうございます。そして、まだ私の本を見た事がない方は、本屋さんで一度手にとってパラパラと頭の所を読んで見て下さい。きっと、数分で何ページも進むと思いますから……(笑)。
皆さんとどこかでお会いできます事を心から願っています。
――本日はお忙しい中ありがとうございました。最後に新刊の紹介をお願いします。
11月18日発売「僕は君たちほどうまく時刻表をめくれない」なんですが、これは私の初めてのライトノベルになります。主人公は鉄道の事をまったく知らない高校生で、その彼が鉄子達と知り合ってどんどん事件がおきていく話なんです。電車を知っている人も知らない人でも「あるある」と思えるような事を詰め込んだ、今までのライトノベルにはあまり無かった鉄道物なので「こんなのもあるんだ」と是非一度気楽に読んで頂ければと思います。
PROFILE
豊田 巧(とよだ・たくみ)
元ゲーム会社の宣伝プロデューサー。
数多くの電車運転ゲームを担当。
現在は電車、人工衛星などを題材にした
小説、アニメ原作に関わる。
社会人としても経験豊かな豊田先生、インタビューありがとうございました。
ライトノベル初心者にもオススメ! 豊田先生の初ライトノベル「僕は君たちほどうまく時刻表をめくれない」は11月18日発売!
唯一の鉄道マニア必読ライトノベルとして話題になること間違いなし!
(C)小学館 イラスト/松山せいじ
[関連サイト] 小学館ガガガ文庫
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