主人公よりも猫が活躍!? 作家・遠野九重がオススメする至極の猫小説5選!

医師でもあり、2021年6月10日に自身13冊目となる小説『役立たずと言われたので、わたしの家は独立します!』の第2巻を上梓した遠野九重さんに、お勧めの猫小説について聞きました。

提供元:カドカワBOOKS編集部

 

 

役立たずと言われたので、わたしの家は独立します! 2

 

 

【第2巻あらすじ】

ナイスナー王国として独立宣言し、領地を得たフローラ。温泉水を使った化粧水を開発したり、ネコ精霊が勝手にお店を開いたり、どんどん賑やかに! だが、一方で教会からナイスナー王国を危険視する声が上がり……。

 

 

――どうしてお勧めの猫小説・猫漫画を紹介することになったのか教えてください。

今執筆中のシリーズである『役立たずと言われたので、わたしの家は独立します!』は猫の精霊がたくさん出てきて、主人公を喰う勢いで活躍するんですが、編集担当さんに「猫にはこだわりあるんですか?」と聞かれまして。そしたら、自分でも意外なぐらい色々な猫が出てくるフィクションの名前があがったので、それらの大好きな猫小説を紹介しつつ、最後にこっそり自著を宣伝させてもらうというような記事があったら面白いかもねという話になったんです。

 

■遠野九重がオススメする猫小説5選

・『猫の地球儀』

・『ガンパレード・マーチ 5121小隊 熊本城決戦』

・『お直し処猫庵』

・『夏への扉』

・『陽だまりの彼女』

 

・『猫の地球儀』

<遠野九重のオススメポイント!>

人類が絶滅した、遠い未来のお話。人工衛星に住むネコたちが地球を目指して奮闘します。焔の「最初の1回目だけが本当の真剣勝負」「それ以降は求愛ダンスみたいなもの」というケンカ観は、現実の猫に照らし合わせても納得できます。他にも多くの「ネコあるある」がセリフ回しに光るので、猫好きの方はぜひご一読ください。電子書籍でも配信中です。

 

・『ガンパレード・マーチ 5121小隊 熊本城決戦』

<遠野九重のオススメポイント!>

いわゆる「榊ガンパレ」ですね。PSゲーム『高機動幻想ガンパレード・マーチ』のノベライズ。全長1メートルを越える巨大な猫「ブータ」がマスコットキャラクターとして登場しますが、実はファンタジックで壮大な背景を持っており、猫らしい気ままな挙動とのギャップにビックリさせられます。個人的な性癖として偉そうな言葉遣いで喋る猫が好きなんですが、そこに見事に直撃しました。

 

・『お直し処猫庵』

<遠野九重のオススメポイント!>

猫庵と書いて「にゃあん」と読みます。「ねこあん」と読むと表紙の猫店長がしょんぼりするので気を付けてください。喋る猫の店長とイケメンの美青年が、猫庵を訪れる人々の悩みを解決する連作短編集です。猫店長も壮大な背景を持っており(織田信長や徳川家康と顔見知り?)、普段は偉そうな言葉遣いで喋るのですが、それでも猫としての本能に引っ張られるところが可愛らしいです。毛玉を出されると追いかけてしまったり、喉元をくすぐられるとほんわりしてしまったり。読むと家に猫店長が欲しくなるシリーズです。

 

・『夏への扉』

<遠野九重のオススメポイント!>

言わずと知れた古典SF、ネコ小説といえばこれを避けては通れないと思っています。猫の持つ魅力というか魔力のひとつって、ツーンとしている時と、ゴロゴロ甘えてくる時のギャップだと思うんです。どれだけ呼びかけてもスルーされる時があるからこそ、向こうからスススッと寄り添ってくるときの可愛らしさが何十倍にも引き立つ。小説を書いている時であっても、ついつい構ってしまうわけです。この魅力が中盤以降のヤマにギュッと凝縮されています。今まで気ままに振舞ってばかりだった飼い猫のビートが主人公を守るため、牙を剥き、爪を立てる。一時の別離を挟んでの再会ではビートから主人公への感情が垣間見えて、胸が熱くなります。

 

・『陽だまりの彼女』

<遠野九重のオススメポイント!>

既読の方は「確かにこれは猫小説」と頷き、未読の方は「えっ、これが猫小説!?」となる一冊。一般には「女子が男子に読んでほしい恋愛小説No.1」のキャッチコピーで知られていますが、実は猫小説です。あんまり語りすぎるとネタバレになるのですが、ヒロイン真緒の「気ままさ」と「一途さ」のグラグラ感は猫好きの心にグッと刺さります。読み終えたあと、二人(?)の幸せを願わずにいられない一冊です。

 

 

――現実の猫と遠野さんの関わりについて教えてください。

小学生のころ「授業中にフラッと外に遊びに行く子」だったんですが、そうしてフラフラしているときに野良猫と仲良くなりまして……。その後の学生時代も野良猫を見るとテンションが上がる感じでした。大学で酔っ払って猫に絡んだりとか(笑)。

 

――遠野さんにとって猫の魅力というのは何なのでしょうか?

動物と人間の関係って2つあると思うんですね。動物なのだけど人間と心交わす、懐いたり、相手が労ってくれたりっていう。人間と同じ仲間や友として見るというか。逆に、人間とは違う、言葉を交わせないし種が違うゆえに何を考えているか分からない、そういう気ままさに驚きとか愛おしさを感じたりとか。猫の場合、この2つの落差が大きい上に、どっちも可愛らしさに繋がっているからズルいですよね(笑)。ベタベタに懐いてくる時があるから、気ままな姿が引き立つ。けれど一方で、気ままな振る舞いがあるからこそ、甘えてくる姿も引き立つ。もう可愛さの永久機関ですよ。あと、猫ってサイズ感が絶妙ですよね。ハムスターみたいに「握りつぶしてしまうんじゃないか」って不安はないし、かといって大きすぎて抱き上げられない、ということもない。可愛がるのにちょうどいい。しかもモフモフで暖かい。人間じゃ猫に勝てませんよ(笑)。

 

――猫が出てくるフィクションというのはその両面を扱っているということでしょうか?

扱っている、というか前提にしていますよね。猫は気ままで、どこで何をしているか分からない「底知れなさ」がある。だからこそ『ガンパレード・マーチ』のブータや『お直し処猫庵』の猫店長みたいな「尊大な口調で深いことを口にする猫」というキャラクターが成り立つ。一方でゴロゴロと懐いてくる面にフォーカスすると『陽だまりの彼女』みたいなアプローチになる。『猫の地球儀』の焔たちも「現実の猫たちも猫会議でこんな話をしているんじゃないかな?」というリアリティが含まれているので、このあたりは読んで確かめてほしいですね。『夏への扉』については作品紹介のところに書きましたが、気ままさと甘さのギャップそのものをガツンとぶつけてくるので、まさに猫好きにしか書けないSFだなと思っています。

 

――今回は「猫小説」を紹介していただいたわけですが、他にもイチオシしておきたいものってありますか?

イチオシが十個くらいあるのですがどうしましょう(笑)。漫画、グッズ、LINEスタンプからそれぞれ1つずつ紹介とか……?

 

――LINEスタンプが気になるところですが、では漫画から

ちょっと前にTwitterでも話題になったのですが、ジャンプルーキーに掲載されている『ぼくとねこ』(作:you)が好きですね。いわゆるポストアポカリプスもので、猫と二人(一匹と一人)で生きていく男の子の話です。猫は気ままな存在だから、主人公のことを忘れてどこかに行ってしまうかもしれない。そんな不安があるからこそ、主人公が食料調達から戻った時、そこに猫がいることにホッとさせられる。主人公と読み手の心情が「猫」を媒介にして一体化するんですよね。だからこそ主人公が家に帰れなくなる終盤の展開は、もはや我が事のように読んでしまう。ボロ泣きでした。無料で読めるので、未読の方は今すぐにでも読んでいただければ幸いです。とくに家で猫を飼っている方はグッとくるものがあると思います。

 

――それは気になりますね。続いてグッズのほうですが、ときどきTwitterに写真を投稿されてるアレですか。

はい、アレです(笑)。HAPiNSの『ふくふくにゃんこ』というキャラクターグッズで、新商品が出るたびに買い足してます。最近だと『ふくふくにゃんこ ~にゃんこたちのしあわせな島のものがたり~』という絵本も出ましたね。とにかく絵柄がキュート! 絵本の内容もかなり感動系になっていて、短いページ数ながらじんわり胸が温かくなります。作家としての視点で語るなら、ふくふくにゃんこに限らず、フィクションにおける猫って「野良猫」が微笑ましく描けることが特徴の1つだと思っています。これが「野良犬」だと、どこか寂しい、あるいは危険な印象が付き纏う。けれど野良猫の場合、猫は猫同士で群れて楽しくやっている姿を提示しても、そこまで不自然なものにならない。この「猫同士が群れて楽しくやっている姿」を前面に押し出したのがふくふくにゃんこのウリかな、と思っています。

 

――では最後にLINEスタンプを……

こちらはよく編集さんとの会話の最後に送ってるものですね。『にわねこ』(作:庭猫もる)というシリーズなのですが、猫が飛んだり跳ねたり、寿司を食べたり、そこに醤油をドーン! マヨをマー! ポン酢をポーン! します。わけが分からないと思いますが、このフリーダムさが最大の魅力ですね。『役立たず~』のネコ精霊はこのスタンプにかなり影響されています。

 

――最後に自著の『役立たずと言われたので、わたしの家は独立します!』の猫の魅力を教えてください。

実はWEBからの追加で書き足したんですが、立ち上げのときの編集さんと使い魔的なものが加わったら面白いんじゃないかと話したんです。ファンタジーでいて嬉しい使い魔といえば、忠犬的で有能な使い魔っていうのもあるかなとは思うんですが、あえてそこで、趣味全開にして(笑)。何でもできるけど、主人公であるフローラの言うことを100%聞くわけではない、そういう感じの猫精霊っていうのを出したら、結構ハマりまして。感想なんか読んでる限りでは、読者さんにも好評だったのかなと。阿倍野ちゃこ先生には2巻まででめちゃくちゃたくさん猫を描いてもらいました。可愛いイラストとあわせて、自慢の猫たちなので、ぜひ読んでみてください!!

 

 

©遠野九重/KADOKAWA カドカワBOOKS刊 イラスト:阿倍野ちゃこ

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