【レポート】第17回GA文庫大賞授賞式&受賞パーティー の模様をお届け 「選考委員に土下座させるくらいのブラッシュアップを」と大森藤ノ氏も激励
2025年5月9日(金)、東京都内某所にて、第17回GA文庫大賞の授賞式&受賞パーティーが開催された。今年も歴代の受賞作家をはじめ、GA文庫やGAノベルで執筆する多くの作家陣が会場へと足を運んだ。昨年に続き、作家同士で直接コミュニケーションを図る貴重な機会ということもあり、会場のあちこちで賑わいが続いた。
第17回GA文庫大賞では前期で674作品、後期で791作品、通期で1,465作品の応募があった。そしてこのたび、4作品が《銀賞》受賞という結果となった。今回の選考はGA文庫編集部や特別審査員を務めた大森藤ノ氏の頭を大いに悩ませながら、GA文庫大賞史上初となるオール《銀賞》という結果になったとのこと。大森藤ノ氏からは「自分たちの目が節穴だったと思わせるブラッシュアップに期待をしたい」との檄も飛んだ。
受賞パーティーでは受賞者が登壇。そして多くの関係者に見守られる中、受賞への感謝と今後の意気込みを語った。『没落名家と不退転執事―お嬢様頭脳戦―(改題後は『お嬢様頭脳戦~お嬢様は頭脳ゲームの完全勝利をご所望です~』)』にて《銀賞》を受賞した細波小路氏は、「大学の書店に同世代の作家が執筆した作品のサイン本が置いてあって、非常に悔しい思いを抱いた」と、執筆の原動力となったエピソードを回顧。「10年を超える執筆歴以上の時間を、作家として生き延びていきたい」と思いの丈を語った。
『さようなら運命の人。二日前でまた会いましょう。』にて《銀賞》を受賞した四十万チマ氏は、「今作は性的な描写が多く、受賞はおろか、一次選考さえ通らないと思っていた」と、これまでの心境を吐露。一方で「受賞はしたもののそのシーン自体が問題視されている」と会場の笑いを誘いながら、「拾い上げてよかったと思っていただけるよう努力していきたい」と意気込みを語った。
『メスガキが多すぎる! ~無口クール生意気っ子の構い方~(改題後は『負けを認めたら、もっと触らせてあげるけど? ざーこ♡』)』にて《銀賞》を受賞したちゅるけ氏からは、「ただいま四十万様が、作品に性的な描写があるとおっしゃっていましたが、自分は性的な描写しかありません」と切りこみ、会場を笑いに包んだ。「若輩者で活動期間も短い」としながらも、「日々精進して、仕事を積み重ね、恥じない作品を作り上げていきたいと思います」と、受賞したことだけではなく、これからの作家人生についてもコメントした。
また、『デスゲームは悪夢の中』にて《銀賞》を受賞した冬月渉氏は残念ながら都合がつかず欠席となったが、「長らく小説を書いていて、少しずつ手応えを感じ始めていたところでの受賞だった」とその喜びを明かし、「良い物語を書いて恩返しができればと思います」とコメントを寄せた。
そして壇上にはGA文庫の編集長・三浦氏が登壇し、今回の結果をあらためて振り返った。「出版業界やライトノベル市場を取り巻く環境は、コロナ禍以降、大きく変化している」と同氏。一方で「時代の流れにあわせて、GA文庫大賞は選考方法や選考基準を常にバージョンアップしてきた。その流れの中から生まれた受賞作は、新たなライトノベル市場をけん引するような、強いポテンシャルを秘めている」と期待を寄せた。そして、「時代の変化はまだまだ続きます。その変化の中身も厳しいものが少なくないと思いますが、臆することなく創作活動に邁進してください」と檄を送るとともに、「今日という場を明日からの創作意欲の糧にしてほしい」と講評を締め括った。
続いての作家代表挨拶では、前回この場に立つことが叶わなかった第4回GA文庫大賞《大賞》受賞作家であり、第17回GA文庫大賞の特別審査員を務めた大森藤ノ氏が登壇した。大森氏は開口一番「正直自分は《金賞》を出したかったんですけど、GA文庫編集部さんがダメだって……つまり何が言いたいかというと自分は悪くないです!」と会場の笑いを誘った。また、GA文庫大賞史上初のオールシルバーという結果にも触れ、「GA文庫だけでなく他のレーベルでも評価は厳しくなってきている」と語り、「《銀賞》という評価自体を気にすることなく、我々の目が節穴だったという可能性を、それこそ自分たちに土下座させるくらいのブラッシュアップをしてもらえたらと思います」と激励した。最後には「去年は授賞式よりアニメの収録を優先してすみませんでした」と再び会場を沸かせ、コメントを締め括った。あわせて第18回GA文庫大賞では、特別審査員が大森藤ノ氏、『処刑少女の生きる道(バージンロード)』の佐藤真登氏、『ひきこまり吸血姫の悶々』の小林湖底氏の3人体制となることも発表された。
最後に登壇したのは『友達の妹が俺にだけウザい』の三河ごーすと氏。「ラノベ業界というデスゲーム会場に、新しい4人が追加されました。そしてこのゲームは自分から倒れなければ死ぬことはないデスゲームです。なので頑張ってもらいたい」と独特な言い回しで激励し、挨拶。乾杯の音頭を取ると、会場のあちこちから拍手とグラスを重ねる音が響き渡った。
歓談タイムではくじ引き抽選会も実施され、当選者が発表されるたびに大きな盛り上がりをみせていた。そして受賞者の面々は、多くの作家のもとへと足を運び、忙しなく名刺交換を繰り返しながら、アドバイスを受けたり情報を集める姿も印象的だった。第17回GA文庫大賞にて受賞し、作家としてのスタートを切る4人の飛躍を多くの出席者が願ったはずである。第17回GA文庫大賞受賞作は、2025年7月より順次刊行が予定されている。
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