独占インタビュー「ラノベの素」 シクラメン先生『凡人転生の努力無双 ~赤ちゃんの頃から努力してたらいつのまにか日本の未来を背負ってました~』

独占インタビュー「ラノベの素」。今回は2025年6月10日に電撃文庫より『凡人転生の努力無双 ~赤ちゃんの頃から努力してたらいつのまにか日本の未来を背負ってました~』第4巻が発売されたシクラメン先生です。通り魔に殺されてしまった少年が、人を襲うモンスター《魔》が存在する日本に転生し、《魔》を祓う祓魔師として努力を積み重ねていく現代転生×異能バトルを描く本作。「努力」を面白く描くための工夫や、毎巻大きな盛り上がりを見せるバトルシーンについてなど様々にお話をお聞きしました。

 

 

凡人転生の努力無双4

 

 

【あらすじ】

「ニーナをイツキさんの家で預かっていただくことにしました」 とある事件をきっかけにニーナと一つ屋根の下で暮らすことになったイツキ。二年生に進級し、さらに友達も増えたイツキはニーナとともに魔法の練習を重ねたり、デートをしたりと充実した毎日を送っていた。しかし、平穏な日常は突如変貌する――。相対するはニーナの父を殺した仇敵。蕩けた地獄を生み出す第六階位。理想の世界を追い求め数百万の子どもたちを手にかけたモンスターの毒牙が迫る中――イツキは《心奥》にて自らの前世と向き合うことに。 「僕の心奥は『夜』。何でも呑み込む空っぽの世界だ」 ニーナを守るため、あらゆる過去を打ち破る『理想郷』編!

 

 

――それでは自己紹介からお願いします。

 

シクラメンと申します。執筆歴は12年ほどで、プロの作家としては今年で5年目を迎えます。最近ハマっていることは音楽を聴くことです。実は少し前にちょっといいヘッドホンを買いまして。今はそれを着けて音楽を聴きながら仕事や執筆をするのが、日課のようになっています。好きなものは基本的にコンテンツ全般で、映画やアニメ、漫画やライトノベル、ゲームなどジャンルを問わず幅広く楽しんでいます。

 

 

――ヘッドホンにこだわるくらい音楽がお好きなんですね。どういった音楽をよく聴かれるんですか。

 

好きなアーティストですと、ヨルシカでしょうか。それこそn-bunaの時代からずっと追いかけているので、最近は「すごく有名になっちゃったなぁ」なんて思うこともあります(笑)。他にはChevonというグループも好きですし、G overっていうバンドも以前からずっと推しています。いい楽曲が多いのでいろんな方にもっと聴いてほしいですね。

 

 

――本当にお好きなんですね。ライブなどにも行かれたりはするんですか。

 

実は、ライブに行くことはなくて、一人でじっくり聴くことの方が多いです。僕は音楽を一人で聴く行為は、本を読むことに似ていると考えていまして。特に最近のボカロやインターネット発の音楽シーンには、創作の衝動に溢れている若くて感性のある方々が集まっているように感じています。tuki.みたいな若くしてヒットしたアーティストも生まれていますし、最近TikTokで話題になっている「はじまりの曲」なんかは、小学5年生が夏休みの課題で制作した楽曲ですからね。音楽を聴いて、そういった新しい才能に触れることは、読書と同等に自分の感性を磨いてくれると考えています。

 

 

――ありがとうございます。映画やライトノベルなどもお好きということでしたが、最近触れた作品で印象に残っているタイトルはありますか。

 

映画だと劇場版『ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉』です。これは公開時に3回鑑賞するほど夢中になりまして、特にドラマ構成の巧みさには衝撃を受けました。また最近話題になった『教皇選挙』も面白かったです。ライトノベルですと、第36回ファンタジア大賞「銀賞」受賞作の『女王陛下に婿入りしたカラス』という作品は印象的でした。経済モノなのですが、想像以上に骨太で、読みごたえもあって大変面白い作品でした。

 

 

――SNSを拝見していてもライトノベルの感想をよく投稿されていますし、普段からかなり読まれていますよね。

 

ライトノベルを書く以上、商業出版されている最近の作品を読んでおかないといけないと思っているので、自分なりにノルマを設けて最新のタイトルも読むようにしています。

 

 

――ちなみに、ライトノベルはいつごろから読まれていたんでしょうか。

 

ライトノベルを読み始めたのは小学校高学年の頃でした。最初に読んだのは第19回電撃大賞で「銀賞」を受賞した『塔京ソウルウィザーズ』という作品だったのですが、「こんなに面白い物語がこの世に存在するのか」と衝撃を受けた記憶があります。ライトノベルの良さは、1冊でしっかりとドラマを描き切れることだと思っています。漫画だとどうしても複数巻にまたがることが多いと思いますが、ライトノベルでは1冊でその満足感を得られるということもあって、どんどんのめり込んでいきました。

 

 

――ありがとうございます。今年でデビュー5年目を迎えられたということですが、兼業作家として執筆をされているとうかがっています。両立は大変ではありませんか。

 

そうですね。どうしても仕事をしながら小説を書くとなるとやっぱり時間がタイトになってしまいますし、体力的にしんどくなることもあります。とはいえ、最近は以前に比べると、だいぶ慣れましたね。

 

 

――以前SNSでもバズっていましたが……、「青汁」のおかげなのでしょうか(笑)。

 

よくご存じですね(笑)。仕事が忙しくなってくるとどうしても野菜を摂らなくなっちゃうので、そういう時は代わりに青汁を飲んでいます。牛乳を入れると飲みやすくなるので、体調が優れない方にはおすすめです。

 

 

――青汁も創作活動を支える秘訣の一つ、というわけですね(笑)。そうした健康への気配りや日々の試行錯誤が、これまでの作家活動を支えてこられたのだと思います。その中で、ご自身にとって「これは大きな変化だったな」と感じるようなことはありましたか。

 

一番大きな変化は『凡人転生の努力無双』を書いたことです。この作品は、私にとって執筆のスタンスが大きく変わった転換点でした。それまではWEBで数字を取れればいいという思考が強くて、視野が狭かったんですよね。でも、そういった作品は「小説家になろう」や「カクヨム」の作品を読み慣れている方には楽しんでもらえますけど、WEB小説に触れたことがない人でも楽しめるかというと、そうはいかないと思ったんです。

 

 

――なるほど。作品を作る上で、WEB小説をあまり読まない層も意識するようになったと。

 

僕が最初にデビューした当初は、いわゆる「追放ざまぁ作品」が大流行していました。しかし、その流行が落ち着いて、今度は異世界恋愛ブームが到来すると、「追放ざまぁ作品」を読んでいた人たちがみんな消えてしまったんです。この現象には二つの原因があったと考えています。一つは、異世界恋愛と追放ざまぁでは読者層にズレがあったこと。もう一つは、その両方の読者層を受け入れられるような作品が少なかったことです。もちろん『魔術師クノンは見えている』や『サイレント・ウィッチ 沈黙の魔女の隠しごと』のような誰が読んでも楽しめる作品もあったのですが、決して多くはなかったと思います。こうした状況を見て、人気の移り変わりが激しい小説業界を生き抜くために、流行に左右されず、多くの方が楽しめる普遍的な物語を作ろう、と考えるようになりました。

 

 

――ありがとうございます。それでは第3巻までを振り返りながら、『凡人転生の努力無双~赤ちゃんの頃から努力してたらいつのまにか日本の未来を背負ってました~』がどんな物語なのか教えていただけますでしょうか。

 

本作は前世で何者にもなれなかった男が、ある日事件に巻き込まれて命を落とし、目を覚ますとモンスター《魔》が存在する日本に、祓魔師の家の子・如月イツキとして転生するところから始まります。イツキは前世で殺された経験から、死への強烈な恐怖を抱いており、「今度は死なないために強くなろう」と努力を重ねていくことになります。その結果、あまりにも頑張りすぎて、とんでもない強さを手に入れてしまうんです。第1巻では、圧倒的な強さと内面のギャップから生まれるコメディや、彼と周囲の人々との関係を描いています。第2巻では、海外から祓魔師の女の子・ニーナがやってきます。ニーナは家族に認めてもらいたいという思いから、才能のあるイツキに勝とうと努力を重ねます。そんな彼女とイツキとの交流が、このエピソードの中心となります。第3巻では、第1巻から登場する幼なじみのヒロイン・霜月アヤが急に魔法を使えなくなるという問題が起こり、その解決のためにイツキと共に夏合宿に参加するというエピソードが展開されます。

 

 

凡人転生の努力無双

※努力を重ねて得た力を武器に、イツキは子供ながらに最強クラスの祓魔師として活躍していく

 

 

――本作は「カクヨム」連載時には年間ランキング1位を獲得し、書籍発売後も複数回にわたって重版が行われるなど、非常に大きな反響を呼んでいますよね。現在の率直な気持ちとしてはいかがでしょうか。

 

ありがたいっていう思いが何よりも大きいです。下積み期間が長く、まったく読まれないという経験もたくさんしてきましたので、これだけ多くの方に読んでいただけていることは、嬉しい限りです。また、自分が想定していたよりも幅広い読者層に受け入れていただけたのは、いい意味で驚きでした。

 

 

――読者層が広がると、よりいろんな反応があるかと思いますが、印象的だった感想などはありますか。

 

これは「カクヨム」での話になりますが、ギフト機能のコメントで「もっとショタ系のキャラクターを増やしてほしい」というメッセージをいただいたんです。そのコメントが女性読者の方からでして、意外と女性にも読んでいただけているのだと感じました。

 

 

――シクラメン先生から見て、幅広い読者層に受け入れられている理由は何だと思いますか。

 

多くの読者に受け入れてもらえているのは、初めてこの小説を読む方でも読めるように、という点を常に意識しているからだと思っています。たとえば、作中独自の単語を出す時には絶対に説明を入れているんですよ。「魔」や「モンスター」といった、WEB小説の読者なら理解できそうな単語も説明無しには使わないですし、魔法に付随する独自の設定も、ひとつひとつ丁寧に説明していくことを意識しています。こうした説明を疎かにすると読みやすさに大きな影響が及ぶため、細心の注意を払っています。また、主人公が努力によって力を手に入れ強敵に打ち勝つという一連のカタルシスを、読み終わったときに感じてもらえるようにしています。これによって読み応えや、心地よい読後感に繋がることがこの作品が多くの方に受け入れてもらえる理由だと思います。

 

 

――なるほど。「努力」はタイトルにもなっているだけあって、本作の大きな魅力ですよね。一方で「修行パートは読者に避けられがち」というお話も耳にすることがあります。「努力」の過程を面白く描くために意識されていることはありますか。

 

修行パートが読者にとって退屈に感じられるのは、結局「何のために頑張っているのか」という目的が見えにくいからだと思うんです。「何が得られるか分からないのに頑張れない」というのが、多くの現代人が「努力」に対して抱く正直な感覚ではないでしょうか。逆に言えば、それを最初に提示してあげればいいんです。『凡人転生』の場合、序盤の「修行パート」にあたるエピソードって、魔力を増やすための方法を見つけ出したイツキが、ひたすらその正解のパターンを繰り返していく話なんです。魔法を使うために必要な「廻術(かいじゅつ)」や「絲術(しじゅつ)」といった技能についても同様に、これを身につけることで具体的に何ができるようになるのか、という結果を先に提示してから練習過程を描いています。結果を見せてから過程を見せる――そうすることで、「あ、なるほど、イツキはこれからこんな技を使えるようになるんだ。そのために頑張っているんだ」という読者のワクワク感に繋がっていると思います。

 

凡人転生の努力無双

※赤ちゃんの頃から行っていたトレーニングが、イツキの莫大な魔力量に繋がっている

 

 

――読者としても、イツキが努力と工夫を積み重ねて成長していく姿は非常に印象的でした。そんな主人公・如月イツキは、どんなキャラクターとして描かれているのでしょうか。

 

イツキの魅力は等身大なところにあると思っています。与えられた大きな力に対して過剰に反応することなく、ごく自然に受け止め、驕らず努力を積み重ねていく。そうした人並みの感覚を持ち続けている点が、彼の大きな特徴であり、読者にも共感されやすい部分なのかなと考えています。

 

凡人転生の努力無双

※魔力量に胡坐をかかず、日々魔法の練習に励むイツキ

 

 

――また、本作ではイツキの成長をゼロから描いていますよね。特に現代異能バトル作品では、青年期をメインに描いた物語が多いかと思いますが、幼少期から描こうと思われた理由は何でしょうか。

 

作中の世界をゼロから描くなら、主人公もゼロから描いた方が、読者と主人公が同じスタートラインで世界を知っていけると思ったんです。特に『凡人転生』は設定が特殊ですからね。魔法を糸にして戦うとか、階位が変わると30倍ほど強さが変わるとか。高校生ぐらいから描くとすると、そういった設定を一気に説明しないといけないですし、読者もついてこられないと思ったんです。それになにより、主人公が様々な知識を得たり、新しい技術を身につけていくリアクションを読者と一緒に楽しめるのは、幼少期から描くからこそ生み出せる面白さだと思います。

 

 

――ありがとうございます。さて、第3巻までイツキは様々なキャラクターとの出会いや、新たな魔法の習得など多様な経験をしてきたかと思います。ここまでのエピソードで、イツキを最も成長させた出来事はなんだと思いますか。

 

イツキが一番成長したのは、やはり第3巻のクライマックスだと考えています。それまで、イツキは絶えず努力を続けてきたわけなのですが、それはあくまでも彼一人の力による積み重ねにすぎませんでした。それが第3巻のクライマックスで初めて「誰かを頼る」という行動に出ることになります。一人ですべてをこなすというのは、自己完結できるので、ある意味ではすごく楽なんですよね。対して、そこに他者を巻き込むとなると、相手に負担をかけてしまうのではないかという心配や、助けを求めることへの躊躇など、どうしても心理的なハードルが生じてくるかと思います。そのハードルを乗り越えたと考えると、第3巻のクライマックスが最もイツキが成長した瞬間だと思います。

 

 

――第3巻のクライマックス、絶体絶命のタイミングで他者に頼るという行動に出たイツキと、それに応えたアヤが、二人で新たな魔法を編み出すシーンは本当に心が熱くなりました。真の意味で二人が信頼し合えた瞬間のような気がして、非常にドラマチックに感じました。

 

ありがとうございます。僕はバトルこそ一番分かりやすいドラマだと思ってるんですよ。ドラマの本質って「衝突」ですよね。「勝ちたいのになぜ勝てないのか」「そもそも何故勝ちたいのか」といった問いは、それぞれのキャラクターが持つバックボーンに深く結びついています。そうした心のモヤモヤや「どうにもならない」という閉塞感とキャラクターが対峙する様がドラマであり、バトルシーンはそれが物理化されているため、最も直接的にドラマを表現できる場だと考えています。ですから、バトルとドラマを上手く結びつけて描くことで、物語はより面白くなると思っています。

 

凡人転生の努力無双

※激戦の中でイツキとアヤはお互いの気持ちを理解していく

 

 

――それでいいますと、イツキの「朧月」をはじめ、キャラクターの本質を突き詰めたものとして描かれる固有の必殺技「五行の心奥」は、まさに「バトルとドラマの結びつき」の最たる例でしたね。

 

はい、まさにその通りです。本作における「五行の心奥」は、単に強力な技というだけでなく、そのキャラクターの生き様や本質が色濃く反映されています。能力や技が本人の抱える過去の経験や乗り越えたい壁と深く関わっていて、それを克服する鍵にもなっている……この結びつきが、異能バトルの面白さの核だと考えています。同様の描き方は、『僕のヒーローアカデミア』でも見られますよね。キャラクターの名前や性格、そして彼らの操る「個性」が密接に結びついています。このような描き方をすることでキャラクターの輪郭がよりはっきりしますし、物語のドラマも深まるかと思います。ですから、『凡人転生』においても、「五行の心奥」とキャラクターのバックボーンの繋がりをどう物語にするかには非常に気を配っています。

 

 

――シクラメン先生のこだわりが詰まったバトルですが、それを支えるのが固有の魔法の設定かと思います。「廻術(かいじゅつ)」や「絲術(しじゅつ)」のようなユニークな設定は、どのような発想から生まれたのでしょうか。

 

実は、僕自身があまり単純な力押しのバトルだと筆が乗らないタイプでして(笑)。「いかに型にはまらない戦い方で敵を倒すのか」を考えるのが好きなんですよね。前作の『中卒探索者の成り上がり英雄譚 ~2つの最強スキルでダンジョン最速突破を目指す~』では、3つまでしかスキルを持てず、それを状況に応じて入れ替えながら戦うスタイルでしたし、デビュー作の『極点の炎魔術師~ファイアボールしか使えないけど、モテたい一心で最強になりました~』に至っては、主人公がファイアボールしか使えないという設定でした。ですから、本作でも必ず何かしらの「縛り」や「制限」を設け、単純な撃ち合いではない、工夫を凝らした戦いを描こうと考えています。「絲術」や「廻術」といった魔法周りの細かい設定も、ユニークな戦闘シーンを生み出すための「仕掛け」という側面が大きいです。

 

 

――ありがとうございます。ここまでバトルとドラマについていろいろとお聞きしてきましたが、イツキにとって一番手強かった相手というと、やっぱり第1巻の雷公童子になりますかね。

 

そうですね、雷公童子との戦いが一番厳しかったと思います。1対1で戦わなければならない状況でしたし、精神的なプレッシャーもありましたから。もちろん、単純な戦闘力でいえば第3巻のラスボス・化野晴永の方が遥かに強いのですが、その時のイツキは怒りやアヤと氷雪公女を助けなければならないという使命感の方が強く、相手の強さを冷静に測る余裕はありませんでした。そういった状況もあって、イツキにとって最も印象深い強敵は雷公童子だったと考えています。

 

凡人転生の努力無双

※第1巻終盤、イツキの前に突如現れたのは、才能ある祓魔師を喰らう狩人・雷公童子だった

 

 

――続いてイツキを取り巻くヒロインたちについてご紹介いただけますでしょうか。

 

まずは、霜月アヤですが、彼女はイツキが3歳の時に出会った幼なじみです。イツキとは一緒に魔法の練習をする仲なのですが、彼女が努力するモチベーションは、イツキと肩を並べたい、隣に立ちたい、彼を一人にさせたくない、という強い想いに起因しています。意欲的にいろんな物事に食いついていく前向きな女の子であり、イツキのことを引っ張ってくれる数少ない友達です。

 

凡人転生の努力無双

※イツキに憧れを抱きながら、追いつこうと懸命に頑張るアヤ

 

そしてニーナは、イツキが小学校入学のタイミングで出会うことになる海外から来た女の子です。彼女は、イツキに対して対抗心を燃やしています。ただ、それはアヤのように「隣に並びたい」というよりは、彼女が抱える複雑な親子関係に起因しています。母親に認められたいという渇望が彼女の強い原動力となっており、彼に負けじと努力を重ねています。そうした彼女のひたむきな姿勢が、結果としてイツキにも良い刺激を与えているんですよね。

 

凡人転生の努力無双

※対抗心を燃やしながらも、イツキのことは認めているニーナ

 

 

――では、次にイラストについてお聞かせください。本作のイラストは夕薙先生が担当されていますよね。これまでの中でお気に入りのイラストと、新たに発売された第4巻で特に注目してほしいイラストがあれば教えていただけますか。

 

衝撃を受けたのは、第1巻の口絵ですね。朧月を使って雷公童子に向かっていくシーンは、本当に格好よくて驚きました。それから第3巻のアヤが見つめてくるシーンと氷雪公女が泣く場面も心に残っています。第4巻は表紙イラストも口絵も素晴らしい出来なのですが、特にクライマックス部分は印象的でした。これまでモンスターがイラストとして描かれることは少なかったのですが、第4巻では何体か登場します。ここではお見せできないのですが、そちらも楽しみにしていただきつつ、ヒロインの可愛らしい表情にも注目してもらえればと思います。

 

凡人転生の努力無双

 

凡人転生の努力無双

 

凡人転生の努力無双

※シクラメン先生がこれまでで特にお気に入りだと語るイラスト

 

 

――そして本作はコミカライズの企画も進んでいるとうかがいました。漫画版にはどんなことを期待されていらっしゃいますか。

 

キャラクターデザインは拝見しているのですが、とにかくイツキが可愛くて。やっぱりキャラクターが魅力的であることは大事だと思うんですよね。特に1巻や2巻のコミカルな部分やキャラクター同士の掛け合いは、漫画になることでより楽しんでもらえるようになると期待しています。

 

 

続いて発売された第4巻の見どころや注目ポイントについて教えていただけますか。

 

第4巻は、第3巻で少し影が薄かったニーナが再びメインで描かれる巻です。とある事件をきっかけに、ニーナがイツキの家にやってきて、2人で暮らすことになるところから物語が始まります。ニーナとのドタバタな日常を描きながら、裏では大きな話が動いていたことが明らかになる展開には注目してほしいですね。第1巻や第2巻の答え合わせになるようなお話ですので、これまで読み続けてくださった方にはきっと楽しんでいただけるのではないでしょうか。

 

凡人転生の努力無双

※第4巻ではイツキとニーナ、それぞれが自身の過去と向き合うことに――

 

 

――今後の目標や野望などがあればお聞かせください。

 

やはりアニメ化ですよね。『凡人転生』でそれを実現できたら、一番嬉しいなと思っています。『凡人転生』の魔法は魔力を糸にして戦うこともあり、ワイヤーアクションのような部分はアニメ映えすると思うんです。そのためにも、たくさんの方に書籍を手に取っていただければと思います(笑)。

 

 

――最後に第4巻を楽しみに待っていたファンの方、そしてこれから本作を手に取ってみようと思われている方に向けてそれぞれコメントをお願いします。

 

これまで読んでくださっている方には「お待たせしてしまい申し訳ありませんでした」とお伝えしたいです。第4巻は第3巻以上に書き下ろしシーンが増えているので、WEB版を読んだ方でも「全然知らない話が来た!」という新鮮さを感じていただけるかと思います。また、まだ読んだことのない方にも、ぜひ手に取っていただきたいです。WEB小説好きの方にも、2010年代に流行ったライトノベルが恋しいと感じる方にも、それぞれ楽しんでいただけるお話になっていると思いますので、騙されたと思って一度手に取っていただければと思います。

 

 

 

 

――ありがとうございました。

 

 

<了>

 

 

《魔》が存在する日本に、祓魔師として転生し、目覚ましい成長を遂げていく如月イツキの努力無双譚を綴ったシクラメン先生にお話をうかがいました。努力と工夫を積み重ねながら祓魔師としての高みへと進み続けるイツキ。彼はこれからどんな面白い魔法を見せてくれるのか、どんな戦いを見せてくれるのか。まだまだ伸びしろいっぱいのイツキの未来にワクワクが止まらない『凡人転生の努力無双 ~赤ちゃんの頃から努力してたらいつのまにか日本の未来を背負ってました~』は必読です。

 

<取材・文:ラノベニュースオンライン編集部・宮嵜/鈴木>

 

©シクラメン/KADOKAWA 電撃文庫刊 イラスト:夕薙

kiji

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『凡人転生の努力無双』特設サイト

電撃文庫公式サイト

 

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