独占インタビュー「ラノベの素」 冬月渉先生『あなたは悪夢の参加者に選ばれました。』
独占インタビュー「ラノベの素」。今回は2026年1月15日にGA文庫より『あなたは悪夢の参加者に選ばれました。』が発売された冬月渉先生です。第17回GA文庫大賞にて《銀賞》を受賞し、満を持してデビューされます。悪夢の中に閉じ込められた少年少女が、デスゲームを生き残るために命をかける姿を描いた本作。ゲームに対して異なるスタンスを持ったキャラクターや引き込まれるデスゲーム作りへのこだわりなど、様々にお話をお聞きしました。

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【あらすじ】 「ナイトメアゲームの参加者が揃いました」平凡な高校生・春斗が目を覚ますと、悪夢の中に閉じ込められていた。響き渡るのは不気味な館内放送――夜明けまでにこの見知らぬショッピングモールから脱出できなければ、死よりも恐ろしい苦痛を味わうことになる。半信半疑の春斗の前に現れたのは、血まみれの追跡者だった。その場に居合わせた8名の参加者と共にこの理不尽な悪夢を生き残るためには、ルールに隠された唯一の突破口を見つける必要があるが――?あなたは悪夢の参加者に選ばれました。さあ、いのちを投げ捨てるつもりで、がんばってください。 |
――それでは自己紹介からお願いします。
冬月渉と申します。冬が好きで暑いのが苦手です。ペンネームの「冬月」も冬好きが由来になっています。
――ありがとうございます。続いて冬月渉先生が小説の執筆を始めたきっかけについて教えてください。
実際に書き始めた時のことはよく覚えていないのですが、高校生の時に授業で読んだ中島敦の『山月記』がきっかけになっているのではないかと思っています。『山月記』の登場人物である李徴の気持ちに感銘を受け、こういう感情を言語化するのが小説家なのであれば、自分もいつか小説を書いてみたいと思ったことを今でもはっきりと覚えています。実際に書き始めたのはその何年か後なので、直接的な要因ではないかもしれませんが、『山月記』がなければ物語を書くという考えがそもそも自分の中に生まれていなかったような気がします。
――なるほど。『山月記』のような教科書に載っている作品はどこかお堅いイメージがあると思うのですが、執筆にあたり「ライトノベル」を選んだ理由は何だったのでしょうか。
ライトノベルを選んだ一番の理由は、10代中盤から後半の若者に向けた物語が書きたいという思いがあったからです。小説に限らず大人になってから物語に触れると、「学生時代に見たり読んだりしていたら何か変わったかもしれない」と思うことがたびたびあるので、中高生に届く話を書きたいという気持ちを強く持っています。他にも選考の経過が細かく、結果の発表までが早いライトノベルの賞が魅力的だったというのも大きな理由です。ライトノベルには「設定の自由度が高い」というイメージがあり、自分が描く物語にあっているかなと思っています。
――今回の受賞は、冬月渉先生の描く物語を若い読者へ届ける大きな一歩になるんじゃないかなと思います。あらためて第17回GA文庫大賞《銀賞》の受賞、おめでとうございます。まずは率直な感想をお聞かせください。
ありがとうございます。実は第17回のGA文庫大賞には2作品を応募していて、片方が早々に落選してしまったんです(笑)。なので、今回の受賞はないかなと諦めていたため、電話をいただいたときは本当に驚きました。
――受賞作以外も応募されていたんですね。
そうなんです。しかも受賞作ではなく落選した方が本命でした(笑)。ただ、あとになって読み返してみたら、
――ライトノベルの小説賞はいくつかありますが、GA文庫大賞に応募したきっかけは何だったのでしょうか。
GA文庫大賞には何年か前に一度だけ応募したことがあり、その時は三次選考で落選してしまいました。ただ、個人的にはとてもいい評価をしてもらえたと感じ、もしかしたら相性がいいかもしれないと思ったのが応募先に選んだ理由です。
――ありがとうございます。それでは受賞作『あなたは悪夢の参加者に選ばれました。』について、どんな物語か教えていただけますでしょうか。
本作は登場人物が悪夢のゲームに参加させられる物語です。テーマ性やメッセージ性より、深く考えずに楽しめるエンタメとしての物語を意識しています。実際に達成できているか分かりませんが、読んでいてページをめくる手が止まらないといったようなお話を目指して執筆しました。

※家で寝ていたはずのキャラクターたちは、突如悪夢のゲームに参加させられることに
――なるほど。冬月先生が目指した通り、本作は先の展開が非常に気になる物語になっていましたね。あらためて着想についてもお聞きしたいのですが、「デスゲームもの」を描こうとした理由はなんだったのでしょうか。
ありがとうございます。実のところ、これまで自分が書く物語はいまいち面白くないなと感じることが何度かありまして(笑)。なんで面白くないのかと考えた結果、ライブ感の不足が一つの理由じゃないかと感じたんです。いわゆるハラハラドキドキといったリアルタイムで読者の感情を揺
――そういった課題も持ちつつ、受賞後には改稿を重ねてきたと思います。改稿作業で印象に残っていることはありますか。
これまでは基本的に一人で書いていたので、改稿作業は担当編集さんから細かく意見をもらえるのが新鮮ですごく楽しかったです。自分にない視点からコメントをいただけるのが本当にありがたく、「なるほど」と思いながら作業させていただきました。元々物語を読み返す推敲の作業は、自分と向き合わざるを得ないので本当に苦手なんです(笑)。いつもは少し嫌な気持ちになりながら自作を読み返すのですが、担当編集さんが間に入ることで考えが内向きになりすぎず、気持ち的にすごく楽でした。小説は一人で勝手に書けるところがいいところだと思ってはいるのですが、人と一緒に作るのも面白いなと実感しました。
――また、デスゲームっぽい物語がいいと考え執筆されたということですが、本作のゲームシステムは読んでいてものすごく引き込まれるものでした。ナイトメアゲームのルールはどのように考えたのでしょうか。
ナイトメアゲームのルールはとにかく複雑になりすぎないことを意識していました。漫画と違って図解ができないので、一読するだけですっと入ってくるゲームになるように心がけました。「脱出ゲーム」、「対決ゲーム」、「バトルロイヤルゲーム」はアイデアを持ってきた時点で大まかな設定やラストの展開も一緒に見えていたので、そこから逆算して細部を考えた記憶があります。この三つはあまり悩まず、楽しく書くことができました。

※殺人ピエロから逃げる「脱出ゲーム」から物語はスタートする
――個人的には、名前の挙がらなかった「すごろくゲーム」の設定が秀逸だなと感じました。
そうおっしゃっていただけて嬉しくはありつつも、実は「すごろくゲーム」だけは少し苦戦をしまして(笑)。もともとのルールや構想だと複雑になってしまうと感じたので、いかにして文章にした時に読みやすくできるかを突き詰めた結果、今の形に落ち着いたんです。正直なかなかアイデアが固まり切らず、「二度と書くかこんなもん!」と思いました(笑)。
――ありがとうございます。では、そんな苦労の末に生まれた悪夢のデスゲームに挑む主要キャラクターについても紹介をお願いします。
主人公の山吹春斗は、「みんなで助かりたい」というスタンスでゲームを動かしていくキャラクターです。能動的に動くので、書き手としても大変ありがたい存在だったと思います。

※悪夢の中に閉じ込められた平凡な高校生・山吹春斗
春斗のライバルになる冬木羊一も著者として非常に描きやすいキャラクターでした。「一人でいいから助かりたい」というスタンスのキャラクターで、春斗との対比は物語を動かすエンジン的なものだったような気がします。

※春斗と正反対のスタンスでゲームクリアを目指すライバル・冬木羊一
また、春斗と共にナイトメアゲームに囚われるヒロインの桔梗奈津美は典型的な幼馴染キャラクターとして描いています。

※春斗がナイトメアゲーム内で最初に遭遇する幼馴染ヒロイン・桔梗奈津美
彼らを含め、ナイトメアゲームの参加者は9人登場しますが、それぞれのキャラクターの魅力は読者の方々が見つけていただけたら嬉しく思います。
――本作はデスゲーム作品でありながら、9人の参加者の中に紛れた黒幕を探す「ミステリー」でもあったと思います。ふたつの要素を両立させるうえで、気を付けたことがあればぜひお伺いしたいです。
本作ではミステリーに比重が傾かないように気を配りました。あくまでゲームをメインに描いているので、整合性やロジックにこだわりすぎて物語のスピード感を損ねないように、と意識していました。ゲームオーバーが直接的な死に繋がらないのも、キャラクターの生死よりもゲームそのものを描こうという気持ちが強かったからです。

※ゲームクリアを巡り、プレイヤーたちが疑心暗鬼になる場面も
――続いて、本作のイラストについてもお聞かせください。書籍化に際してはイラストを色素先生が担当されました。キャラクタービジュアルをはじめて見た時の感想や、お気に入りのイラストについてはいかがですか。
自分には絵心がないので最初に色素先生のイラストを見た時、「プロの方はすごいなぁ」と圧倒されました。すべてのイラストが素敵だと思いますが、特にお気に入りなのは登場人物の全員が描かれた見開きの口絵イラストです。ぱっと見て、各キャラクターの雰囲気が伝わってくるところがすごく好きなんです。

※冬月渉先生がお気に入りだと語る口絵イラスト
――本作の見どころや注目してほしい点も教えてください。
読んでくれる方がそれぞれ見どころやお気に入りのシーンを見つけていただけたらと思っています。ひとつ言えることは色素さんのイラストは本当に素晴らしいです。
――今後の野望や目標があれば教えてください。
今後もいい物語を書いていきたいと思っています。
――最後に本作へ興味を持った方へ一言お願いします。
自分は書き手なので面白さを保証することはできませんが、ぜひ本作を手に取って読んでいただけたら嬉しく思います。
――本日はありがとうございました。
<了>
ゲームオーバーで死よりも恐ろしい悪夢にとらわれ続けることになるデスゲームの物語を綴った冬月渉先生にお話をうかがいました。全員で生き残るため、理不尽なゲームのなかにある突破口を探る主人公の思考と、先の読めない展開に注目してほしい本作。緊張感あふれるデスゲームが魅力的な『あなたは悪夢の参加者に選ばれました。』は必読です!
<取材・構成:ラノベニュースオンライン編集部・三上/鈴木>
©冬月渉/ SB Creative Corp. イラスト:色素

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